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令和2年度の文部科学省の予算案について~私立大学の立場から~

2019年12月20日に文部科学省のサイトにて、令和2年度の予算の案が公表されました。文部科学省がどのように予算の案を作っているのかを予め把握しておくことは、特に補助金の業務をする上で必要な事です。

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そこで、令和2年度(2019年度)の私立大学の補助や関連のものだけ、重要なものや新規分をピックアップしました。なお、文部科学省全体の令和2年度の予算額は令和元年度予算額を比較すると微減ですが、子ども・子育て支援新制度移行分を含めると増えています。

一般補助の教育の質に係る客観的な指標

今年の一般補助には、教育の質に係る客観的な指標として昨年度より少し厳しい指標が出てきました。また増減率が2018年度は指標の達成度(点数)によって+2%~-2%だったのが、今年度は+5%~-5%と増減率が拡大しました。

大規模大学のように補助金額が大きいところは影響が大きいですが、例えばFDやSDの参加率が100%など達成するには中々難しいものもありました。印象的には数年前の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の教育の質的転換でしたね。

さて令和2年度は次のように書かれています。

大学等の運営に不可欠な教育研究に係る経常的経費について支援する。アウトカム指標を含む教育の質に係る客観的指標の本格導入等を通じたメリハリある資金配分により、教育の質の向上を促進する。

昨年度も同様な事が記載されていましたので、令和2年度も教育の質に係る客観的な指標(もしくは同等のもの)はあるでしょう。

この指標については、単に補助金担当者が各部局に対して、指標を達成しているかどうかを聞くだけではなく、出来ていない場合はどうしたらいいかを大学全体として考えないといけない性質の補助金になっています。

補助金担当者というとエビデンスだけまとめて提出する仕事という人もいますが、そうではなくて、どうすれば戦略的に補助金の増額が出来るのかを提案出来ないといけない仕事であると捉えています。

 

私立大学等改革総合支援事業

令和2年度にも私立大学等改革総合支援事業があります。まずは令和元年度の予算案との事業の説明内容を比較してみます。

令和元年度 令和2年度
特色ある教育研究の推進や、産業界・他大学等との連携、地域におけるプラットフォームを通じた資源の集中化・共有など、役割や特色・強みの明確化に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援する。 「Society 5.0」の実現に向けた特色ある教育研究の推進や、地域社会への貢献、イノベーションを推進する研究の社会実装の推進など、特色・強みや役割の明確化・伸長に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援する。

<参考>2019年度予算:文部科学省

令和元年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1ではデータサイエンスに関する設問は多く追加されるなど、補助金担当者はかなり苦慮したことかを感じます。

令和2年度をみると「「Society 5.0」の実現に向けた特色ある教育研究の推進」とあるので関連の文書はチェックしておいたほうがいいかもしれません。

例えば文部科学省の「Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」では大学改革(P20-21)の内容として次のキーワードがあります。

Society5.0に向けた人材育成 〜社会が変わる、学びが変わる〜 昨年11月から林大臣の下で議論をすすめ、この度まとめられました|今日の出来事:文部科学省

STEAM教育、デザイン思考などの教育、文理融合、全学的な数理・データサイエンス教育、学部横断的な教育、MOOCsの活用

なお、これらのキーワードは令和元年度の私立大学等改革総合支援に含まれているものばかりです。

<参考>

Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府

 

知識集約型社会を支える人材育成事業

グローバル人材育成の為の大学の国際化と学生の双方向交流の推進の中で知識集約型社会を支える人材育成事業が新規としてあります。

内容としては、入学した後に自分の専門を学びながら選んでいくレイトスペシャライゼーションプログラムやダブルメジャーな、また才能ある学生に個別最適化した学びを実現するプログラムが挙げられています。(全学的な共通教育を整備し、そこから専門教育に進むという昔の教養部のイメージでしょうか)

<参考:レイトスペシャライゼーションプログラム)

学びの特徴|大手前の強み|学部・大学院|大手前大学

桜美林大学 リベラルアーツ学群 学部の特色|大学ポートレート

さて、気になるのは、教育プログラム以外にも教学マネジメント改革への対応や全学的な管理運営体制の強化(例:研究業績重視の人事給与マネジメント改革やFD/SDの実質化)がイメージ図にありますので、大学が全学的に改革を行う、教学マネジメント指針を具体化する(その予定がある)大学であることが求められそうです。

 

おわりに

他にも、高大接続に関わる予算として、大学入学者選抜における共通テストの調査研究を行う「大学入学者選抜における共通テスト改革推進事業」が新規で出ています。

また若者の地元定着と地域活性化を推進することを目的とした、産学官が連携し、地域が求める人材を養成するための教育改革を実行するとともに、出口(就職先)と一体となった大学による地方創生人材教育プログラム事業があるので、地方の私立大学は多少関係あるかもしれません。

私立大学の実務家教員の教育課程編成への参画を求める事の国からの無茶ぶりさと無茶な対応案

2019年度の私立大学等改革総合支援事業で対応がまずムリゲー(設問)というかクソげー(設問)の1つに、専任問わず実務家教員の教育課程編成の参画があります。

この実務家教員の教育課程編成の参画については2018年に出された文部科学省中央教育審議会のグランドデザイン答申において、多様な教員について書かれた中で記述がありました。

社会のニーズを踏まえた教育を幅広く展開させることができるよう、実務経験を有する者の大学教育への参画を促すため、専任教員として実務家教員を配置することができる旨を、大学設置基準上、確認的に規定する。

実務家教員を配置することが社会のニーズを踏まえた教育になるかは少し疑問ではありますが…。

特に科目の到達目標を踏まえていない、15回の授業は自分で話が出来る知識すらないから外部スピーカーや自分語りで終わってしまう実務家教員はどうなのでしょう

さらに同答申では次のことも記載されています。

実務家教員が自らの実務における経験を教育課程に反映することで教育の質を向上させるために、実務家教員で6単位以上の担当授業科目を持つ場合は、教育課程の編成等に責任を負う者とするよう努めることとする。

この教育課程の編成等に責任を負うとはどのような意味を指すのでしょうか。責任を負うのであれば何かあった場合は賠償なり辞める事も踏まえていいのかと感じます。

さて、この答申後、2019年8月13日に「学校教育法施行規則等の一部を改正する省令等の施行等について(通知)」が出ました。これにより大学設置基準が一部改正され、実務家教員に関しても大学設置基準に入ることとなります。

この通知の中では、実務家教員に関して詳細に説明がされています。例えば実務家教員とは次の事が記載されています。

  • 専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験を有し,かつ,高度の実務能力を有する教員
  • 大学設置基準でいう実務家教員については,職位や雇用形態の別を問わず,また,改正省令施行の際現に大学に在職する教員を含むこと。
  •  実務家教員の実務の能力については,保有資格,実務の業績及び実務を離れた後の年数等により,判断されるものであること。
  • 実務を離れた後の年数については,おおよその目安として,10 年以内であることが望ましく,実務を離れる前の実務経験の長さも考慮されること。

また大学設置基準では次のようになります。

 (専攻分野における実務の経験及び高度の実務の能力を有する教員)
第十条の二大学に専攻分野におけるおおむね五年以上の実務の経験を有し、かつ、高度の実務の能力を有する教員を置く場合であつて、当該教員が一年につき六単位以上の授業科目を担当する場合には、大学は、当該教員が教育課程の編成について責任を担うこととするよう努めるものとする

これを見る限りは実務経験がある教員が6単位以上持っている場合、専任・兼任等にも関係なく、教育課程の編成について責任を担うように努める必要があります。まあ務めるなので、努力義務なのでしょうが、大学設置基準にある以上は様々なところから、実務家教員の教育課程編成の参画が求められています。

そして2019年の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1ではこの実務家教員が教育課程編成に関る仕組みがあるかの設問が出現しました。 

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またこのQ&Aで実務家教員は兼任教員も含むとしていますので、実務経験が5年以上あって年間6単位を持つ教員全てが教育課程編成等に参画する仕組みがある大学はほぼ皆無でしょう。 

兼任(非常勤)の実務家教員からみた無茶ぶりさ

兼任教員で科目を持つことを依頼され、半期1科目2単位を2科目、前期及び後期を担当することになった場合、急に「あなたは教育課程編成に責任をおうことになりました。つきましては〇〇の会議に参加が義務です」と言われたらどう思うでしょうか?

そもそもいくつか問題があるように思います。まず1つ目は兼任教員の給料は、科目を担当し、1コマあたり月に〇万円を支払います。責任を持たせるという事は、重みがでますのでそれだけのフィーがないといけないと感じます。給料も払わずに責任だけ押し付けてはいけません。2つめは会議への参画の難しさでしょうか。

また雇用形態の別に問わず条件に合う実務家教員に教育課程編成の責任を担わせるのはかなり無茶苦茶だなと感じます。

 

教学マネジメント体制と教育課程編成検討会議の曖昧さ

私立大学等改革総合支援事業や経常費補助金の増減に関係がある「教育の質に係る客観的指標」に対応するには、教学マネジメント体制の構築をする必要があります。大学によってはこれを教育課程編成の委員会や会議としている大学もあるでしょう。

※教学マネジメント体制では教育課程の編成に関する全学的な方針策定、検証、評価を行う組織であることが条件。また教育課程の編成を目的としていることが不可欠。

教学マネジメント体制として、教育課程の編成に関する方針や検証・評価を行い、教育課程の編成を目的とする会議を設置し、年に2回以上を開催しなければなりません。そして構成員は学長や学部長や専門的な支援スタッフなどとなります。

一方、実務家教員は教育課程編成の検討する会議体への参画です。正直、教学マネジメント体制の会議と教育課程編成を検討する会議とどう違うのかは非常にあいまいです。

 

教育課程編成の流れ

では、一例として教育課程を変更する場合の編成の流れを私立大学を例として見てみます。(※アイコンに他意はありません)

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例えば各部局(学部・学科)で教育成果やアンケートによる評価、自己点検評価によって教育課程の変更が出てきます。

そうすると次は教育課程の編成を検討する会議で検討され、各部局とやり取りをしながら教育課程編成について議論します。この会議は、例えば先ほどの教学マネジメント体制の会議の事もありますし、教授会でもあるでしょう。

最後に学長が決定し、学則変更を理事会に提出、変更した学則は文部科学省に届出を行います。

この流れだと実務家教員は、上の画像でオレンジ枠の会議に参加しないといけません。ただカリキュラム検討は非常に時間がかかる作業で年1回の会議で出来るものではありません。議論を重ねるために、打ち合わせをかなり行う必要があるのです。

そしてこの流れで実務家教員、しかも兼任教員に参加してもらうのはあまり現実的ではないように思います。

補助金対応の為の実務家教員参画案

もし教育課程編成の会議と教学マネジメント体制が同じ場合は実務家教員が参画するのは現実的ではありません。ということで私立大学等改革総合支援事業に対応する抜け道として新しい教育課程編成の検討会議を設置します。

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この流れとして、各部局で検討した教育課程を実務家教員参画の検討委員会で検討し、そこから教学マネジメント体制の会議(教育課程編成を審議する会議)で審議し、学長に提出するようにしてみます。これで実務家教員が教育課程編成に参画していると言えるかもしれませんね。う~ん、自分で書いてみて、かなり無茶ですね。

注意:なおこれは私学事業団や文部科学省に確認を取ったものではありません

大学の就職率が変わる?~補助金から見る就職率の算出の変更と課題~

大学が公開している重要な情報として、就職率があります。そして就職率は(大学によっては)学生募集の戦略上、非常に大きな意味を持ちます。例えば就職率がいいと高校生や保護者へのアピールポイントになりますし、逆に就職率が低いと学生の面倒見が悪いと捉えられたりしますね。

さらにはここ数年ですが、マスメディアの調査により大学ランキングなどで就職率ランキングなど評価指標が作られてもいます。

例えば「大学ランキング」には就職率ランキング(規模別)や就職率ランキング(学部別)など様々なランキングが掲載されています。

大学ランキング 2020 (AERAムック)

大学ランキング 2020 (AERAムック)

 

就職率を上げることは大学にとって重要であり、就職率は大学のホームページや大学案内などに、〇〇県内で就職率〇位と書いたりして、他の大学より就職率が良い事をアピールする事もある訳です。

また大学は学校教育法施行規則第172条の2により、教育研究活動等の情報を公表することが求められ、就職についても情報公表が求められています。

第百七十二条の二 大学は、次に掲げる教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとする。

~略~

四 入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること

 

なお、ここで求められているのは就職者数であって、就職率ではありません。よって、就職者数のみを公表している大学も少なくありません。(試しに適当な大学の情報公開ページから就職者数を見てみましょう。就職率を出していない大学も見つかるはずです)

さて、2019年度の私立大学の補助金の令和元年度「教育の質に係る客観的指標」が出たことにより就職の情報公開について、一定の指針が示されたと感じています。おそらく、教育の質に係る客観的に対応する大学の就職率は、詳細に他大学と比較しやすいものになっていきます。

そして今まで公開されている就職率は新しい計算式によりだいぶ下がった就職率になってしまうかもしれません。

就職率とは何か~概要と課題~

就職率を出すには、就職者or就職者+進学者等/学生数になりますが、学生数については①卒業者数とする場合と②就職希望者数とする場合があります。また就職率なのか、進路決定率なのかにもよって、母数は異なります(表1)

大学の就職率

表1では母数が卒業者数とする場合で進路決定者(進学する学生や他の進路(留学や短期間の就職者)の学生)は進路決定率を算出します。進路決定とは何を指すかは、大学によって違うかもしれませんが、例えば何らかの進路が決まっているとして一時的な職※の学生も入る場合は進路決定率はあまり低くなる事はないかもしれません。

※雇用期間が1年間未満

就職率①の場合は、大学院などに進学する学問分野の学科はどうしても就職率が低くなってしまいます。特に理系分野や心理学など大学院に行って資格取得を目指す場合は進学が多くなります。就職した者/就職希望者数から算出される就職率②が一般的な就職率と言われるものでしょう。

就職率の課題

ただ就職率②は、ある程度操作が出来てしまう事が課題です。それは母数となる就職希望者数は変動出来る数字である為です。

就職希望者とは就職を希望している学生です。そこには進学希望などは入りません。そして、就職をあきらめて大学卒業後は就職しないと決断してしまった人も就職希望者として入れないケースもあると聞きます。

そうなると、大学4年生3月に就職希望かどうかを聞いて、「就職はしない」と答えれば、就職希望者とみなさないという事も出来てしまう訳です。母数が減ると、就職率はぐ~んと上がる可能性もあります。これは就職率の議論をする上で以前から指摘されている事ですね。

 

文部科学省の就職率の取扱や定義について

文部科学省でも就職率の取扱いについて定めています。

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「就職率」については、就職希望者に占める就職者の割合をいい、調査時点における就職者数を就職希望者で除したものとする。

2「就職率」における「就職者」とは、正規の職員(1年以上の非正規の職員として就職した者を含む)として最終的に就職した者(企業等から採用通知などが出された者)をいう。

3「就職率」における「就職希望者」とは、卒業年度中に就職活動を行い、大学等卒業後速やかに就職することを希望する者をいい、卒業後の進路として「進学」「自営業」「家事手伝い」「留年」「資格取得」などを希望する者は含まない。

4「就職率」の調査時点は、「4月1日現在」とする。

ここの文部科学省の就職率は就職希望者であり、進学希望などは含みません。また就職者は正規職員であるものをいい、非正規(アルバイト等)は含まないのです。

※ただ各大学がホームページ等で公開している就職率の就職者数は、単に「就職者/就職希望者」と表記されているだけだと、文部科学省の取扱いのように非正規を含んでいないかどうかは確認できないケースもありますね。

 

補助金により明確化された就職率

2019年度、経常費補助金の増減率に関わりのある「教育の質に係る客観的指標」の1つに私立大学で就職率の公開の仕方や方法に一石を投じるものがありました。その内容としては大きくは下記の3点にまとめることができます。

  • 就職率は学校基本調査を用いて算出すること
  • 就職率の算出方法について具体的に指示されていること
  • 就職率の算出及び公表は学科で行うこと

就職率は学校基本調査を用いて算出する

どの大学のデータも同じでないと、就職率を持つ意味は変わってきてしまいます。補助金上では学校基本調査を使うようにと示されました。学校基本調査は基幹統計の1つであり、このデータを用いる事は大学は既にあるデータを使用する為、「教育の質に係る客観的指標」に対応する大学からの就職率は、同じデータ定義での就職率が出てくることになります。

就職率の算出方法

ここが今回一番重要なポイントかと感じています。今回、学校基本調査を用いて、就職率を算出することとなっています。その定義は下記のようになります。

「就職者」+「進学者のうち就職している者」)/(「卒業者」-「大学院研究科等進学者」+「進学者のうち就職している者」

これだとちょっと分かりにくいですね。という事で一般的な就職率と「教育の質に係る客観的指標」の就職率を下記のように表してみます。まずは一般的な就職率です。

就職率

※学校基本調査では、他にも「不詳・死亡」などの欄がありますし、他にも欄はありますが分かりやすくするために、一部を省略しています。

就職希望者が分母に赤字の就職者を計算して就職率を算出します。なお、緑色の進学したけど就職した人や、雇用期間1年未満の人を入れるかどうかは大学によるかもしれません。

そして「教育の質に係る客観的指標」の就職率はこのようになります。 

教育の質に係る客観的指標の就職率

「教育の質に係る客観的指標」では就職率は、青色の進学は除き、オレンジの部分を母数とし、赤字の就職者と「進学し就職したもの」が就職者として扱います。

そうすると今まで就職希望者数が母数だった就職率ではなくなります。その為、就職希望者数から就職率を算出し100%と公表している大学は、今回の就職率の算出方法によって、公表就職率からだいぶ下がってしまうといった事があり得ます。

就職者数や就職率の公開

「教育の質に係る客観的指標」では就職率を学科ごとに算出と公表を求めています。ただ現状ではいくつか大学の就職率を見てみると、学部ごとのみ公表している大学も散見されます。

今回は学科ごとに就職率の公表が大学のホームページ・大学ポートレート・広報誌等で広く公表することが求められています。また今年度に対応するには2019年10月1日時点で公表する必要があります。そうなるといくつかの大学は新たに学科ごとの就職率を公表することになりますね。

 

終わりに

今回、補助金による政策誘導みたいな形で就職率について一定の指針が出たと言えるかもしれません。この就職率は母数が卒業者数を基本としているので、今まで就職率が100%に近かった大学はどのようになるのでしょうか。

また補助金上では(高い点数を取るためには)算出した就職率が学科系統分類表によって分けた学科の就職率が平均以上である必要があります。大学が擁する学科の8割以上の学科の就職率が平均以上であることも求められています。そうなると大学は1年以上の雇用期間がある就職者数を増やさないとなりません。また今回の新たな算出方法では専修学校の進学や留学は就職率を下げてしまう計算式です。これはちょっとおかしいのではないかとも思いますが…。

ただ「教育の質に係る客観的指標」の就職率に該当する設問は対応しないと大学が判断すれば、特に従う必要性はありません。どこまでの大学が今回の「教育の質に係る客観的指標」の就職率について対応するかはまだ分かりませんが、就職率の算出や持つ意味が今年は変化があったことは 

私立大学は補助金で何をしないといけないのか~試行として図解版~

私立大学の収入は、学生からの納付金(学費等)だけではなく、補助金や寄付金などもあります。補助金は常に一定の額が配分されるのではなく、算定基礎によって算出されますが、近年は大学の取組みによって補助額がだいぶ変わるようになりました。

例えば、本ブログでも書いている私立大学等改革総合支援事業の選定結果や教育の質に係る客観的指標によって、+αがされたり、一定割合が増減されるようになりました。
それも取組みをすれば増えるのではなく、一定額が減らされ、頑張って補助金は現状維持や+αになっています。

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 そこで私立大学は、大学(全体)として教育に関する取組みをきちんと行っていかないとならないと判断する大学も多くあるでしょう。

では2019年度において私立大学等改革総合支援事業タイプ1の「特色ある教育の展開」と教育の質に係る客観的指標のために大学としてどのような事をやらないといけないのでしょうか。

補助金と大学の教育に関する取組みイメージ

概要のみですが、どのような事を大学は取り組むのかを簡単なイメージ図にしてみました。(図が見にくい人は本記事の一番下にあるPDF版をご覧下さい)

2019年度私立大学 補助金

これはイメージ図なので、組織間の関係性などは大学によって異なります。また赤枠のものは経常費補助金の交付に係る「教育の質に係る客観的指標」に関する事業や組織です。

さてIRが大学内の調査を担っているとこの図ではしておりますが、そうするとIRは補助金の中で重要な位置であると言えるかもしれません。

また産業界(地域社会)も点検評価への参画や、学修成果に関する協議、データ分析を用いたPBLの実施、関連として実務家教員の教育課程編成への参画が求められています。

学部等においては、様々な制度や仕組み、取組が求められるようになりました。ただ中には一部の学部や科目でもいいというものもあります。これだけの事をやらないといけないのかと思う人もいるでしょうが、既に制度がある、取り組んでいるというものも数多くあるはずです。

改革総合支援事業と客観的指標の図解PDF

上記の図のPDFはこちらから閲覧が出来ます。

 

令和元年度「私立大学等改革総合支援事業」タイプ1「特色ある教育の展開」に関するメモ(暫定版・9.26追記)

8月下旬に令和元年度「私立大学等改革総合支援事業」の調査の依頼が来ました。
そこで昨年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の変更点と気づいた事をまとめます。なおQ&Aが出ていないので、暫定版であり、今後随時追記修正します。

なおこの事業のタイプ1は一昨年まではマイナーチェンジで、昨年は大きく変わり、今年はさらに大きく変わっています。そしてその内容も大学の現場にかなり踏み込んできているものになります。

 

令和元年度「私立大学等改革総合支援事業」タイプ1の概要について

今年度のタイプ1は概要もだいぶ変更されています。まずは概要を昨年度と比較して見てみます(表1)

      表1 私立大学等改革総合支援事業タイプ1概要

  2018年度 2019年度
名称 教育の質的転換 特色ある教育の転換
説明 全学的な体制での教育の質的向上に向けた取組を支援。 教育の質向上に向けた特色ある教授・学習方法の展開を通じた教育機能の強化を促進。
選定予定校数 175大学 200大学
満点 84点 89点

選定校数が減っているのは毎年度の事ですが、今年は175大学とだいぶ少なくなってきました。

また特に顕著なのは、教育の質的転換という名称ではなくなり、「特色ある教授・学習方法」となっている事ではないでしょうか。もう教育の質に関する取組みは当たり前でこれからは特色を出している大学に配分する流れですね。なお、前者は経常補助の教育の質に係る客観的指標に移ったとみていいのかもしれません。(2019.8.29ではまだ判断出来ていません。9月頭に指標が出たそうですがこれから確認します。)

また今年から収容定員規模別の要素が加わる事も新たな点ですね。

さて次は各設問が昨年度と今年度を比較し、どうなったかを示した図です。

令和元年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1

2018年度(左列)の赤字設問が2019年度の設問からなくなったもの、2019年度(右列)の青字が今年から新しく加わったものです。また赤字で太字の箇所は令和元年度教育の質に係る客観的指標に移動している設問です。

大きな特徴としてFDやSDに関するものは殆どなくなっている、データサイエンス関連や社会との連携が大幅に増えていることでしょうか。特にFDについては昨年度は具体的なFDの内容が指定されていましたが今年は客観的な指標はFD組織と参加率のみとなっています。

1.教育の質向上

ここから各項目について気づいたことや昨年度との変更など個人的なメモをまとめていきます。

①IR情報を活用した教育課程の検証

昨年度は教学体制とされていた箇所です。ただ内容、要件等は変更ありません。ここでのIR情報の定義も「学修時間・学修実態、授業評価結果、学修成果、資格取得実績、就職等進路実績、卒業生調査」と同様です。

ただ基準日は平成31年4月1日ですので昨年度以前にやっていない場合は、ここは諦めるしかない項目です。昨年度の設問毎・回答毎の結果を見ると申請校(622)では52%、選定校(207)では82%が検証をしていると回答をしています。

大学としては、学長や学部長を含めた教育課程編成に関する組織で半期に1度は委員会を行い、点検評価の中でIR情報を使って行えばいい設問ですね。

②IR機能強化

今までIR担当をする教職員は専門的なプログラムを受講している事が最高得点でしたが、その項目はなくなりました。(大学によってはIR担当者を履修証明プログラムに参加させていたところもあったかと思います。)

その代わり、「IRに関する外部研修会に講師として派遣した実績がある」が出ています。これ、かなり難しい設問ですよね。私が知っている限りでは全国にそう多くはないはずです。また依頼もIR担当者個人に依頼されたものだと証明する書類が中々ないので、他組織から当該大学組織(学長など)に依頼状があるのがベストかと思います。

また要件から削除された内容として法人部門という内容の削除、IR情報の公表がなくなりました。なお変わらないものとしてIRに関する研修の定期的な受講ですが、根拠資料として示されているのは研修報告書等なので、研修先の印などはなくても問題ないはずです。また今年は自学が主催・共催する研修会も含むと要件に記載されています。

※基準が9月末なので他大学と連携して出来ない事はないですね。例えばコンソーシアムがある地域ではコンソーシアムが音頭をとって研修会を行い、各会員のIR担当を講師として招聘するとか。ただ自学にIR担当部署があること、それなりの実績がある事が前提ですが…。

③卒業時アンケート調査

昨年度から出されたこの項目により、卒業時調査を実施した大学も結構あると聞いています。この設問で大きなネックが回収率によって点数が異なる事です。最高得点を取るには回収率が80%以上である必要があります。そして今年からの変更が回収率のみならず調査分析結果を公表しているかどうかです。

また卒業見込みの段階で調査する必要がありますが、どこで卒業見込みとするかです。例えば卒業見込み証明書を出せるようになったらいいとする人もいます。ただ卒業見込証明書はかなり早く出せたりしませんか?ここは検査院が来ると怖いので、私は後期の成績が出てからの時期に卒業時調査を実施するようにしています。

なお公表の深度については「調査分析結果」とありますが、こういうのもいいですかね?(過年度比較が望ましいとしていますが、昨年度初めて実施した大学はそれは出来ないですね)

www.kansai-u.ac.jp

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④アクティブ・ラーニング

アクティブ・ラーニングについては、大きな変更はあまりありません。アクティブ・ラーニングの要素に「反転授業」が含まれた事ですね。講義及び演習の授業でPBLやディスカッション、グループワーク等の文言が授業形態や各授業回に含まれているかをチェックします。

ただ昨年も困ったのは、「討論、討議、ディスカッション、グループディスカッション、グループディスカッション」というように微妙に表現が異なるケースがあるので、最後は目視で確認しないといけない科目がある事ですね。

この設問は昨年度もありましたが、今年の要件の追記として、開講科目の定義や単一科目で複数の担当教員での実施の一例などについてです。

⑤情報リテラシー科目

この事業での情報リテラシーの定義はちょっと疑問を感じなくもないのですが、今年は全学部あるいは一部の学部で実施しているかが追加されています。ただ個々の設問は情報リテラシーというより初年次教育科目の要素が入っている印象があります。図書館の利用法は初年次教育科目で、レポート・論文の書き方はライティング科目でやる事もあります。

ただ用語解説や確認表を見ると「授業全体を通して情報利活用能力を養成する教育」とあるので情報科目が全学部必修化されていれば良さそうです。(昨年度は1つの学部でも必修科目として情報リテラシー科目があればよかったのですけどね。なお、正課科目であり、休講でない事も今年は明記されています。)

⑥ICT利用

昨年度を大きく変わりません。全学部等の記載もありませんので、一部でやっていれば問題ないかと考えています。(クリッカー・ポートフォリオ等があればいいですが、電子黒板等もシラバスや授業内容によっては該当するかもしれません)

⑦GPAの活用

学修成果の議論の中で直接評価の話題としてGPAの活用がたまに出てきます。今回、GPAの活用について、昨年度までの個別指導だけではなく、進級判定又は卒業判定に用いていることも項目として挙げられています。

なお、授業科目履修者に求められる成績水準や成績評価基準の平準化は一部の科目でも構わないとされていますので、FD等でやっているかも確認する必要がありそうです。そしてここは全学部等の条件はないので、一部は学部単位でやっている、一部は一部の科目でもやっていれば点が取れる設問ですね。(ただ全学部でGPAが導入されていることが必須です)

ただ「エ 教員間もしくは授業科目間の成績評価基準の標準化」はGPAを無理やり標準化するのではなく、成績評価を適切に厳格化し合わせることが必要なのですよね。単にある授業科目だけGPAが高いから成績は低めにやってはいかんと感じます。

(参考 学士課程答申用語集 「GPA」)

【GPA:Grade Point Average】(p20,26,27等)
アメリカにおいて一般的に行われている学生の成績評価方法の一種,一般的な取扱
いの例は次のとおりである。
① 学生の評価方法として,授業科目ごとの成績評価を5段階(A,B,C,D,F)で評価し,それぞれに対して4・3・2・1・0のグレード・ポイントを付与し,この単位当たり平均(GPA,グレード・ポイント・アベレージ)を出す。
② 単位修得はDでも可能であるが,卒業のためには通算のGPAが2.0以上であることが必要とされる。
③ 3セメスター(1年半)連続してGPAが2.0未満の学生に対しては,退学勧告がなされる。
(但し,これは突然退学勧告がなされるわけではなく,学部長等から学習指導・生活指導等を行い,それでも学力不振が続いた場合に退学勧告となる。)
なお,このような取扱いは,1セメスター(半年)に最低12単位,最高18単位の標準的な履修を課した上で成績評価し,行われるのが一般的である。

⑧成績状況とCAP制度

昨年とほぼ変わらないです。(なお要件にCAP制度を超えて履修させる仕組みの詳細な説明が今年は記載されました)

気になるのは「学生の成績状況に合わせて、緩和あるいは厳格化させる制度」で厳格化とある事です。昨年度は学修者への支援と書いてありましたが、そのうちGPAが一定以下は履修制限という事が書かれています。(後者の制度を取り入れている大学はあまりないのではないでしょうか。単位が取れなかったから、次の学期はもっと履修させたいと真逆の要望も聞きます)

⑨ティーチング・ポートフォリオ

昨年は義務付けとなっていましたが、今年は導入し活用する仕組みがあることが問われています。(仕組みがあることなので、今年は活用している根拠資料までは求められていないのが要点ですね。という事はそのうち活用して結果まで求められる可能性があるわけですね。)また研究業績書がティーチングポートフォリオではありません。

少し参考になるものとしてこんなものがあります。

harp.lib.hiroshima-u.ac.jp

⑩TA等の教育サポートスタッフ

これは昨年度とまったく変わらない内容です。TAがいない大学の場合はSA等で対応している大学もあります。なお説明会はダメで資質向上等を目的とした研修である必要と書かれています。

⑪学修成果等の可視化

学修成果の可視化としてディプロマサプリメントが出てきました。これもやっている大学は少ないと思います。(どんなものでも大学がディプロマサプリメントと言い張ればいいかもしれませんし、これを機に企業の人がシステムの売り出しをしてきそうですね)

www.daigaku23.com

なお通常の学位記等では該当しないとあります。

⑫学修成果に関する産業界等との協議

今まで3つの方針等について産業界等の意見を聞く設問はありましたが、学修成果については初めてではないでしょうか。

ただ産業界等と「学修成果として含めるべき内容及び学修成果に関する情報の示し方」についての協議なので基準日である9月末までには対応できる設問です(例えば既に包括協定と結んでいる産業界等の団体と行うといった事もOKな気がします)

大学によっては地元自治体と包括協定を結んでいたりしますが、公共団体はダメとの事なので、企業に時間を取ってもらって協議するのが最善ですね。

また学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知):文部科学省

は除くとあるので、学校法人が出資している会社はダメそうですね。(逆にこれに該当しない関連法人ならいけるとも解釈できます)

2.高大接続

高大接続に関しては昨年度から発展した内容が多い印象です。

⑬一般入試における多面的・総合的な評価

一般入試に加えて、小論や絵性、面接等の多面的・総合的に評価する入学者選抜をしているかが問われている設問です。

ここでの変更点は「2科目以上の出題科目による学力検査に加えて」の点です。昨年度はこの表記がなかったので1科目受験でもいいという判断ができました。またきちんと多面的・総合的な評価について検査内容が分かる資料が必要です。

⑭一般入試における記述式問題の出題

「思考力・判断力・表現力」を評価するため、記述式問題を出題していることを募集要項に明記しているかで、昨年度より設問が1つ増えています。

ここでは次の2つが問われています。

  1. 特定の科目で記述式問題があるか(教科や内容は問わない)
  2. 科目限定はないが、記述式総合問題を出題しているか

ただ募集要項等で記述式問題の出題の意図や評価すべき能力などの明示も必要との事です。

⑮AO・推薦入試における基礎学力把握

昨年はAO入試や推薦入試で大学独自に実施する調査を全ての学部でやっているかが問われていました。つまり、AO入試が複数回あってもどれかでやっていれば、やっていると大学として判断するという事も出来ました。

しかし今年は全ての学部&全てのAO入試及び推薦入試となりました。ただAO入試で面接や口頭試問などをやっていないという事はあまり想定出来ない気がします。

⑯アドミッション・オフィサー

今年は教員まで対象になったのが大きな変更ですね。ただ教員と職員のアドミッション・オフィサーが関わっている、教職協働でないと最高得点は取れないようになっています。

これは教員の扱いが難しいですね、授業は除くけどその業務に専従するものとすると小規模大学だとそんな教員はいないでしょう。(こういう入試関連は委員会で担当とかが多いような気もします。それだと今の解釈では該当するかが難しい判断ですね)

⑰入学前教育の実施

昨年は全ての選考方法で実施しているかでした。ただ3月入試の実施や昨年度は3月28日ぐらいまで合格を出すという事も多くの大学で行われたいたせいでしょうか、12月以前の入学手続きを取る入学予定者に課題の提出の義務付けとなりました。

ここはあまり詳細に書かれていないのですが12月以前に入学手続きしたもので1月以降に入学前教育の提出義務付けの通知をしていたのでもよさそうですね。

⑱高大連携強化

今年は高校と連携した入学前教育、つまり推薦を行った高校の指導のもとに入学予定者に対して大学入学までの学習計画を立てさせ、取組状況を高校を通じて大学に報告するというものが追加されています。

あとは大学と高校の定期的な協議体制、人事交流や合同研修、高校生の大学の学習経験の提供などなので例年と変わらずです。

3.データ活用による教育展開とデータ活用人材の育成

今年から加わった設問が多いです。はっきり言って小手先では対応できないものも多く、大学としてもその分野に資産を投入しないといけないものもあります。

⑲IRに係る専門職の配置

新規のような以前のIR機能強化から派生したもののような設問の気もします。今回はIRの専門性を有する専門職を置いているかが問われています。

例えば研究をしている、統計解析業務経験、統計解析関連学位、授業を1学期以上しているなどですね。特任のIRerとして採用している場合はこれでいけそうですが、専任の場合は実績などの根拠資料を積み重ねていくしかないのかなと感じます。(そもそも職員しか置いていないところは、ちょっとハードルが高い設問です)

⑳卒業後アンケート調査等と活用

卒業後アンケートが発展版となり、卒業生の就職先等の進路先の意見聴取までやっていないと最高得点が取れなくなりました(ただ回答率や数が書いていないので、今後のQ&Aなのでの見解が出てくるかもしれません。)なおこれも調査をやるだけではなく、結果を公表することが求められるとともに、その結果を教育改善に結び付ける仕組みの構築が必要になりました。

就職先に関する調査は「学部等卒業生の就職先組織数以上」とあるのでそのまま解釈すれば卒業生が就職した組織全てにアンケートを送れよという無謀な話ですね。まともにやったら、企業側には多くの調査票が届く事になるでしょうし。

㉑選抜方法の妥当性の検証

昨年度は入学者の追跡調査で全ての選別方法で実施が必要でしたが今年は具体的に入学後の学習状況等調査をそのクロス分析が必要になっています。(ただあまり大きな変更点はないようです)

㉒数理・データサイエンス教育

統計や数学、コンピュータサイエンスに関する科目を全学部or一部の学部で必修か選択(全学部のみ)が問われています。

例えば全学共通教養教育にこれらの科目があれば話は早いのですが、カリキュラムに関することなので9月末までに対応は難しい設問です。なお、授業の一部の回で取り扱うのはNGのようです。

㉓データサイエンス教員FD

FDの実施or行員の派遣で点数が取れますが、出来そうなのはFDの実施でしょうか。ただ中々難しいですね。他大学と共催で行ってしまうのが簡単な気がします。
(講師派遣はその分野の教員がいないと難しいですし、相手があっての事ですから)

㉔情報教育における実践教育の実施

企業からの実際の課題や実データを用いて、データ分析を行っていることがシラバスから確認できればいいみたいですが、これ、社会科学系のプログラムでやっている気がします。

ただデータサイエンス教育なのか、例えば経営からみたPBLなのかとか、アプローチが色々とある気がするのですよね。そもそもこういうのはデータサイエンス教育ではなくて、ゼミとかでやってそうです。

多様な教育体制と社会との連携

一言でまとめると既に取り組んでいる大学の「ボーナスステージ」です。

㉕分野・学部等横断的カリキュラム検討体制

昨年はカリキュラムコーディネーターが求められていましたが、今年はリベラルアーツやSTEM教育、分野・学部等横断カリキュラムについて総合的に検討を行う組織が求められています。本学だとカリキュラムを検討する委員会や〇〇センター(例えば大学教育センターみたいなセンター)あたりでしょうか・。

ただ不思議なのは、文部科学省の別でSTEAM教育(STEAM=Science, Technology, Engineering, Art, Mathematics)と言っているのに合えてSTEM教育としたかですね。

www.mext.go.jp

㉖インターンシップ科目

インターンシップで企業と提携して2週間以上しているか、さらに必修として開講して実績があるかどうかです(専門職大学ですかね?)なお資格取得の実習はダメとの事なのでかなり厳しい条件です。

㉗実務家教員の教育課程編成への参画

高等教育の修学支援制度では実務家教員の実務経験は何年でも大丈夫でしたが、この事業では実務経験が5年以上となっています。

この実務家教員が全員教授会やカリキュラム委員会に参加出来ていればいいわけですが6単位以上の授業科目となるとどこまで含むのでしょうか?

※追加のQ&Aで非常勤教員も含むと見解が出ました。この対応として今年度は無理ですが、次年度以降も見据えると非常勤教員全員を集める会議を教育課程編成に関する会議にしてしまうしかないかなと思っています。

この疑問については大学設置基準第10条の2「専攻分野における実務の経験及び高度の実務の能力を有する教員」に同じ内容があります。なお、第10条の内容は専任教員についてなので実務経験5年以上かつ年間6単位以上の授業科目を持つ教員という事になります。

設置基準では「実務家教員について~努めるようにする」とありますが、補助金で実質強制をしている訳ですね。

㉘主専攻・副専攻制等

主専攻・副専攻の義務付けとありますが看護とか資格系の学部はがっちりすぎてそんなのを入れる余裕を取るのが困難な学部もありますね。

㉙学事歴の多様化

今回からの新規項目で3学期制あるいは4学期制を入れているかが増えました。もしくは秋入学でも可みたいですが、制度としてあることが必要なようです。(制度としてあればいいので実績はなくてもよい)

㉚オープンエデュケーション

自学の教育リソースを広く提供しているかどうかですが、MOOCに参加している大学は該当しますがそれ以外だと自学のHP等でやっているかどうかですね。

 

終わり~所感~

全体としてカリキュラムに関わる設問が増えて、すぐに対応できるものは少なくなりました。言い換えると小手先では対応しにくくなったという印象もあります。

点検評価の観点からだと、補助金により点検評価として参考にしなければならないものや方法が決められてきたかと思います。また以前は小規模中規模大学が少し頑張れば得点が取れる印象でしたが、今は全学として行える、専門職を雇えるなど、もともとの財産がないと厳しいものも出てきているなと感じますね。

私立大学等改革総合支援事業のタイプ1「教育の質的転換」に応募する事の是非

平成25年度から始まった私立大学等改革総合支援事業ですが、特に教育の質的転換型(タイプ1)は全学での教育改革や取組を要求するものが多く、大規模大学では申請をしにくく、小規模大学や単科大学では比較的取組をすると点数に直結しやすく選定されやすい事業でした。

つまり全学での改革がしやすい小規模中規模大学にとっては、私立大学等改革総合支援事業は補助金を増額する絶好の事業とも言えました。

ただ平成30年度の私立大学等改革総合支援事業の結果を見る限り、どうも小規模中規模大学にとって、だいぶ厳しい状況になってきていると感じます。


私立大学等改革総合支援事業タイプ1と大規模大学

平成30年度の私立大学等改革総合支援事業の選定状況を見ると、全てのタイプに選定された東京都市大学をはじめ、東洋大学や芝浦工業大学などの大規模大学もタイプ1「教育の質的転換」に採択されています。

今後は教育改革を進める大学が増えると、規模が大きい大学の採択も増えてくるかもしれません。一方、私立大学等改革総合支援事業の選定校数は年々少なくなってきており、選定をされる為の競争、どうやって点数を取っていくかは情報戦であり、より厳しくなっています。

 

私立大学等改革総合支援事業からプラスされる補助金

「私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準」を確認すると選定された場合、一般補助による増額と特別補助による補助金の増額があります。

一般補助による増額は、その大学の一般補助(ただし除外あり)から定められた割合の金額が加算されます。こちらは大学によりますが、大規模大学程一般補助は多いので、改革総合支援事業に選定されると増額が大きい事は言うまでもありません。

特別補助の増額

一方、特別補助ですが、改革総合支援事業のタイプ1の定められた区分の合計点で増額分が異なります。平成30年度の算定方法は下記となります。

〔算定方法〕
① 私立大学等改革総合支援事業調査票の「タイプ1」の「1.組織運営の活性化」、「2.教育内容・教育方法に関する取組」及び「3.教職員等の質的向上に関する取組」で掲げた取組内容について、当該大学等の取組状況を基に算出した点数に応じ、表1により得た額を(A)とする。
② 私立大学等改革総合支援事業調査票の「タイプ1」の「4.高大接続改革の推進」で掲げた取組内容について、当該大学等の取組状況を基に算出した点数に応じ、表2により得た加算額を(B)とする。
③ (A)及び(B)の合計額を増額する。

 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 31 年 3 月)より

また特別補助の額は下記となります。

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出典: 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 31 年 3 月)

今年のタイプ1は満点は84点、選定ラインは55点となっています。最低でも550万円は特別補助として出ます。この額が多いか少ないかについては大学によって異なると思います。

また昨年の場合はどうであったかを見てみましょう。なお算定方法は平成30年度とさほど変わりませんが、平成29年度は95点満点、選定ラインは79点でしたので、下記の表を見ると、おそらく特別補助で二千万近くは出ることになります。

う~ん、今年は設問が大幅に変わってかなり苦労したのですが、特別補助ががくんと落ちてしまっています。

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出典: 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 30 年 3 月)

なお、平成28年度は平成29年度よりは低い特別補助額になっています。

(ただ平成30年度は、教育の質の指標もあるので、タイプ1の分の補助金はそっちに行ってしまったのかもしれません)

私立大学等改革総合支援事業のタイプ1に申請する意味はあるか?

特別補助額だけを昨年と比較すると、だいぶ下がっている事が分かります。これだけで申請する意味があるかどうかは論じる事は難しいですが、改革総合支援事業に選定を受けるための大学側のコストは人件費なども考えるとかなり大きいです。

その為、補助金が欲しいだけでは、補助金増額の恩恵にあずかりにくい規模の大学としては改革総合支援事業の選定を目指す事はモチベーションを保つ事は難しくなりつつあるのではないかと感じてもいます。

むしろ、改革総合支援事業に応募をする・選定をされるという事について、大学として何らかの意味付けをしないといけないのではないでしょうか。 

平成30年度私立大学等改革総合支援事業の選定状況の所感

平成31年(2019)年2月26日に私立大学等改革総合支援事業の選定結果がようやく文部科学省のホームページに掲載されました。

前年度の公表が平成30年2月5日でしたのでいつもより大分遅めの公表です。しかも今まで出ていた選定の内示も各大学にはありませんでした。

 

平成30年度私立大学等改革総合支援事業は私立大学等改革総合支援事業の委員長所見によると「635校(大学・短期大学・高等専門学校)の審査を行い、278校を支援対象校として選定」しているそうです。

 

タイプ1「教育の質的転換」について

このタイプ1は募集時は200校の選定が予定されています。タイプ1の得点分布をみると84満点中55点が選定ラインですので約65%を取っていればよかったですね。70%あれば安心と思っていましたが、この見立てで間違いなかったようです。

ただ文部科学省の2019年度予算案から次年度の改革総合支援事業のタイプ 1 「特色ある教育の展開」 175校程度とされていますので、選定はもう少し厳しくなりそうです。2019年度は設問が一切変わらないとしても70%以上でようやく選定に手が届くぐらいですので、安心のマージンを取るなら85%ぐらいは点数を取っておきたいですね。

なお、今年は満点が2大学おりますが、どんな大学なのか、どんな根拠資料なのか、どんな解釈なのか非常に興味あります。

複数のタイプに選定されている大学ですが、下記のようになります。なお、下線はタイプ1の教育の質的転換に採択されている大学です。

4つのタイプに選定されている大学

東北公益文科大学芝浦工業大学東洋大学法政大学金沢工業大学、同志社大学、関西大学、神戸学院大学福岡工業大学、長崎国際大学

全てのタイプに選定されている大学

東京都市大学

規模が大きい大学が複数選定されているのが非常に気になる所です。またその中でもタイプ1に選定されている大規模大学があります。

今までタイプ1は全学部でやっているかどうかが問われる設問が多く、小規模・学部数が少ない大学が有利と考えていましたが、今年はどうやらそうでもないようです。

各設問ごとの特徴

ここではいくつか設問毎・回答毎の該当件数から、特色があるものをピックアップしてみます。

どういう設問があるかはこちらをご覧下さい。また本ブログの関連記事は下記となります。

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設問1(3つのポリシーの点検評価)及び設問2(教学マネジメント体制)

この2つは、選定校の大学はどちらの設問も80%以上が得点を取っています。今までの改革総合支援事業や経常費補助の教育の質の指標と関わりがあるとの、これは取組自体は難しいものではないのと、設問1では短期間で対応しやすい事もあるでしょうね。

点検評価にあたって学生の代表者の参画は、例えば自己点検評価委員会に入っていただき、意見を聴取すればいいだけですから、対応自体は難しい事ではありません。(難しいのは、適切に自己点検評価をしているか、その点検評価に学生の意見聴取をどう組み込むかです)

設問3(IR)

IRの最高得点である、IRの企画や実施方法等に関する専門的な高等教育プログラムを履修した者を配置についえは、選定大学では18%、申請校では12%となっています。

これは個人の学修にも大きく左右される設問でもありますし、履修証明プログラムや学位などを必要としますので、短期間で対応できない設問でもあります。

今後はIRに関する履修証明プログラムなども出来るでしょうが、それでもすぐの対応は難しいですね。早いのは学内で該当する学修する人をIRに据えるか、外から持ってくるのですかね。

設問5(卒業時アンケート)

選定校では67%が80%以上の回収率・実施率で実施している事になっていますが、これ驚くべき数字かと思います。また申請校でも47%の大学が80%以上の回収率・実施率だそうです。

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4年の秋とか冬にやった調査を根拠資料にしていたりしませんかね。このあたりは卒業予定の定義の解釈にもよりますが、 これはちょっと疑義があります。

設問11(履修系統図・ナンバリング)

履修系統図やナンバリングの作成や公表ですが、今までにも履修系統図やナンバリングの作成がありましたし、公表は難しくなかったので、殆どの大学が出来ていますね。これは次年度は教育の質の指標に組み込まれる気がします。

設問12(GPA)

GPAの活用で成績水準の設定や成績評価基準の平準化は難しいだろうなと思っています。結果を見る限りは出来ている大学と出来ていない大学が別れていますね。

教育、それも成績評価に関わるものは慎重にならざるを得ないので、妥当だとは思います。

設問14(学修成果等の活用)

全学部で出来ている大学の割合として、選定校では86%、申請校では52%となっています。これは私が想像するより高い数値です。

きちんと仕組みと活用実態を示す根拠資料があればいいですが、私自身はかなり慎重になった設問です。仕組みをどう示すかや実態をどう示すかは、判断が難しいので、結果は驚きでしたね。

設問15(カリキュラム編成にかかる教職員)

カリキュラム編成のための専門的知識を有する専任職員が、選定校では半分の大学にカリキュラム編成に参画しているようです。

ただこれも個人の学修に頼る部分もある設問なんですよね。

設問21(SD)

意外とSDの参加率が100%の大学多いですね。選定校で約72%もあります。ただハラスメント研修や学生の厚生補導に関わる研修もあるなど、定義が幅広い事もあるでしょう。

設問23-24(高大接続関連)

これはどの設問も点数を取れている大学が増え、昨年から安定している結果のように感じます。そろそろ、これらは教育の質の指標に移るかもしれませんね。

おわりに

今回、かなり頑張っている大学があるのではというのが設問毎の結果を見ていて感じる第一印象です。もし自分が監査や会計検査院の人間だったら、設問5、14、15あたりは厳しくチェックするだろうなと思います。

4年生は卒業予定だから、4年生の秋に調査をやったものは卒業時調査として根拠資料にしているとか、学修成果の活用で仕組みだけで実態がないとかありそうな気がしています。 

教学マネジメント特別委員会の議論のまとめと気になる点のメモ

2018年11月に文部科学省の中央教育審議会で出された「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)(中教審第211号)」は、2040年の展望や高等教育が目指す姿、教育研究体制、そして教育の質保証と情報公開について記載がされています。

そして2018年12月に中央教育審議会の大学分科会に「教学マネジメント特別委員会」が設置されました。この委員会の所掌事務は「各大学等における教学マネジメントの確立に向けた方策(学修成果の可視化や情報公表の在り方を含む)について専門的な調査審議を行う」とされ、2019年1月16日時点で第1回は12月18日、そして第2回は1月16日と2回開催されています。

議論は平成31年度3月以降も続くようですが、この特別委員会で審議された内容は、大学にさせる為に、私立大学であれば私立大学等改革総合支援事業に盛り込まれる可能性は十分あります。

 

教学マネジメントに係る指針と気になる点

教学マネジメント特別委員会の第2回の資料を見ると、「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項の全体像(案)」や今後の特別委員会の審議ロードマップがあります。

この指針については既にグランドデザイン答申に記載されています。

その上で、各大学の教学面での改善・改革に係る取組を促していくために、必要な制度改正に加え、各大学における取組に際してどのような点に留意しどのような点から充実を図っていくべきかなどを網羅的にまとめた教学マネジメントに係る指針を、大学関係者が参画する大学分科会の下で作成し、各大学へ一括して示す

               ~略~

【参考】教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき事項の例
・プログラムとしての学士課程教育と三つの方針の策定、全学的な教学マネジメント
の確立について
・カリキュラム編成の高度化(ナンバリングや履修系統図の活用、編成における外部
人材の参画等)、アクティブ・ラーニングやICT を活用した教育の促進
・柔軟な学事暦の活用、主専攻・副専攻の活用、履修単位の上限設定(CAP 制)の適
切な運用、履修指導体制の確立、シラバスにおいて標準的に期待される記載事項の
提示、成績評価基準の適切な運用、学生個人の学修成果の把握、学修時間の確保と
把握、学生による授業評価
・FD(ファカルティ・ディベロップメント)の高度化、SD(スタッフ・ディベロップ
メント)の高度化
・教学IR 体制の確立
・情報公表の項目や内容等に係る解説 等

<関連記事> 

www.daigaku23.com

そして今回の教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(案)は下記になります。

  1. 学修目標の具体化
  2. 授業科目・教育課程
  3. 成績評価
  4. 学修成果の把握・可視化
  5. 教学マネジメントを支える基盤(FD・SDの高度化、教学IR体制の確立)
  6. 情報公表

上記6個について、気になる点をまとめます。

1.学修目標の具体化

三つの方針の策定が義務化となり、2017年度から大学は学位プログラムごとに方針を策定しています。この三つの方針の中で「卒業認定・学位授与の方針」所謂ディプロマポリシーは学生の学修目標として機能し、「具体的かつ明確な目標を示す必要」と指摘されています。

試しにいくつかの大学のディプロマポリシーを検索してみてください。大きくまとめた(ふんわりとした)ディプロマポリシーが散見されるかと思います。これを「具体的に示しなさい」、その際は「「学生は~することができる」という記述で能力を規定することが原則として必要」と指摘しています。

そうすると、大学によってはディプロマポリシーの見直しが必要です。でも「~することができる」だと、規定するものが多くなり、ディプロマポリシーはかなり長文になりそうな気がします。

またディプロマポリシーは産業界のニーズだけではなく、国際社会や地域社会も含むニーズを見る必要があるのと、方針を産業界や地域社会といった外部の関係者の意見をふまえて作成する必要とも言っています。

ただ私立大学等改革総合支援事業のタイプ1や教育の質に係る客観的指標では三つの方針の点検評価に学外の参画が条件になっていますね。

2.授業科目・教育課程

教育課程は体系性と順次性が学士課程答申などからも言われています。そのためにカリキュラムマップについて言われてきました。今回の委員会では、「(カリキュラムマップを)学生に分かりやすい形で提示されること」や「学内外に教育課程の体系性を明らかにする観点から「ナンバリング」を実施すること」の必要性が指摘されています。

さらにカリキュラムの編成は、体制を整えて大学及び学位プログラム全体で組織的に行われる必要とありますので、教授会で議論したからカリキュラム変更が出来るという事ではなく、専門の委員会などでカリキュラムについて検討する必要があるかもしれません。
なお、これは私立大学等改革総合支援事業タイプ1の②「教学マネジメント体制」にも同様の内容があります。

またこれから起こりそうな事として、キャップ制度が機能していないと指摘がされていますのでキャップ制度の厳格化(半期で〇単位まで)もありそうです。(ただし認証評価ではおおよその目安はあります)

3.成績評価

成績評価は厳格化というキーワードでまとめられると考えています。ただ「成績評価について、事後に意図されたとおりの成績表が行われたか検証を行うことも重要」とあるのは引っかかります。

4.学修成果の把握・可視化

今回、きちんとディプロマポリシーと学修成果を結びつけるように書かれています。また今後学修成果等の情報は公開が義務化されるでしょうが、これらについては「ベンチマーク等が可能となるように共通理解となるような形で指針において示す必要がある」そうです。またディプロマサプリメントの作成と活用についても指摘されています。

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5.教学マネジメントを支える基盤(FD・SDの高度化、教学IR体制の確立)

高度化とは何でしょうか?「教員の参加状況は必ずしも十分とは言えない」や「教学マネジメントに係るPDCAサイクルの一環として有効に機能するように」と言われています。
例えばPDCAサイクルで課題が出た場合に、その課題に対するFDを行うという事でしょう。


また授業アンケートを用いたFD(既に私立大学等改革総合支援事業タイプ1に設問あり)やFDとSDが合体したPD(professional development)のキーワードも挙げられています。

こういうPDとか出てくると、また一部で混乱するので、きちんと定義づけをしていただきたいです。


⑥情報公表

こちらはグランドデザイン答申や情報の公表の今までの議論をみたほうがいいですね。

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ただ情報公表については

公表義務付けが考えられる情報又は一定の指針を示すことが考えられる情報の定義や数値の算出方法、わかりやすい形での公表方法等について、各大学の実態等を踏まえつつも、ベンチマーク等が可能となるように共通理解となるような形で指針において示す必要がある

とされていますので、今後指針が出てくるでしょう。

 

終わりに

今回見た限りではそんなに目新しい事はありません。また2018年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1の設問とほぼ同様の内容もあると思われます。

ただ2019年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1は、選定校予定数がさらに減る見込みです。つまり補助金によって、文部科学省や国側は政策誘導しにくくなりますので、このような指針や法令改正で誘導するのでしょうか。

なんか、今回の事項を見ていると大学設置基準の大綱化前のように雁字搦めになりそうな将来が彷彿します。 

2019年以降の私立大学の支出抑制と行く末

18歳人口が2018年以降から減少する2018年度問題は、大学の学生募集や大学経営で大きな問題です。大手私立大学や有名ブランド大学ではない小中規模大学や地方に立地している大学は、数年前から2018年度問題に戦々恐々としていました。

ただ関東近郊の小規模中規模私立大学、そして中堅の私立大学は大学の定員超過抑制の政策の為に、入学者数が回復した例もかなりあったそうです。

でも、大学(特に東京23区内や地方都市の中心にはない小規模中規模大学)は冬の時代というより終わりのない氷河期に突入していくと考えています。

 

大学の現状

大学の今、直面している現状や今後起こるであろう社会の内容として、定員超過の抑制や厳格化、消費税が10%にアップ、補助金等の傾斜配賦などが挙げられます。

定員超過をどうするか?

私立大学等経常費補助金の観点から

平成27年7月に通知された「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」は私立大学に大きな衝撃でした。この時は入学定員充足率が1.0倍を超える(例えば100名の入学定員があると101名となる)と、その分の補助金を差っ引くよという内容でした。

平成31年度から、入学定員充足率が1.0倍を超える入学者がいる場合、超過入学者数に応じた学生経費相当額を減額する措置を導入する。現在の一般補助における教育研究経常費等の算定の中でも、学部において収容定員充足率が1.0倍を超えている学生分は措置していないが、平成31年度からは、入学定員充足率が1.0倍を超える入学者に見合う額をさらに減額する予定である。一方で、定員管理の適正化に向けた努力をする中で、結果として定員を下回ることも考えられることから、入学定員充足率が0.95倍以上、1.0倍以下の場合には、一定の増額措置を行う予定である。

今まで大学は、入学定員1.29倍近くの入学者受入れをしていた大学も少なくはなく、「補助金を減らされてはいかん!」と入学定員超過をあまりしませんでした。つまり、今まで入学できていた高偏差値帯の受験者がつまって、ところてん式に中堅大学やさらにその下の大学にまで受験者がきたのです(※大学によっては入学辞退を見込んで合格を出したのに、辞退をせずに、入学定員を超える入学者数となってしまった大学・学部もあります)

 

そして平成30年9月の「平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の
取扱について(通知)
」で上記の引用部分について「当面実施を見送り、後記措置の実施状況及び効果等を検証しつつ、3年後を目途に実施の要否を検討」と変更されました。

ただ、定員管理適正化に向けた入学定員充足率が1.0倍を下回る場合は増額措置があります。

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入学定員充足率と私立大学等経常費補助金

出典: 平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)

今回、1.0倍を超えた事による減額措置がなくなった事で、私立大学側は少し安堵しているかと思います。特に小規模大学だと数人程度で入学定員超過率が大きく変動しますので、合格者数やどれぐらい辞退しどうかを読むのが非常に難解になっているのです。

ただ、大規模大学は入学定員1.0倍を超えたことにおる減額措置がなくなり、定員より少し多い入学者受入れをすると、その下の大学は入学者数が減るという事も十分あり得ますね。

設置等に係る認可の基準と入学定員超過

学部学科を新しく設置する時は、どういう時でしょうか?例えば、大学の外部環境が変わって、社会のニーズに合わせた学部学科が必要になった時が挙げられます。(言い換えると、募集しても上手くいかなくて定員割れをしているから、学部学科を変えて、テコ入れをしようですね)

ただ大学側が学部学科等を設置する場合は、学部単位で平均入学定員超過率が一定値未満である必要があります。

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大学設置申請と平均入学定員超過率

出典:平成30年度大学設置等に係る事務担当者説明会資料(その1)

学部の規模に応じて数字は異なりますが、平均入学定員超過率を1.05倍~1.15倍未満にしておく必要があるのです。これは大学側は「数年間は学部等の設置はしない!」としていればいいですが、何かの際に学部学科等の設置をする、収容定員を増やす申請は出来なくなります。

消費税10%への対応

2019年10月1日から消費税率及び地方消費税率が引き上げられます。

大学に払う入学金や授業料には消費税はかかりません。ただ言うまでもなく大学が支出するものについては消費税がかかります。つまり、来年の10月から支出は増える事になります。

一方、学生の授業料や補助金で大部分を占めている収入については、学費を値上げしない限り、急に増える事はありません。(附帯事業収入は除きます。)

2014年に消費税が5%から8%となり、学費を上げた大学ばかりではありません。小規模中規模で地方の大学は、「学費を上げると学生募集に影響があるのでは?」と考え、経費を削って対応した大学もあるでしょう。

そして消費税10%となり、支出は増えて収入は据え置きの大学だと財政はかなり厳しくなります。

補助金の配分

2019年1月14日、文部科学省の「2019年度文部科学省 予算(案)の発表資料一覧」が公表されました。今回は、奨学金事業の充実や授業料減免等の充実に関する予算がかなり増額されて出されています。

私立大学への支援などの私学の振興についても、私立大学等経常費補助は微増ですが教育の質に係る指標が本格導入されることや、私立大学等改革総合支援事業は選定予定校数が減少するなど、補助金を取っていくのはかなり難しくなっています。

補助金を取るには、地域や研究など分野特化したり、大学改革に勤しむ事が求められています。

 

2019年(年度)以降の大学の支出抑制

学生は多くとれなくなった、学費は値上げできない。さらに補助金も取りにくく(もらいにくく)なった事により、収入はほっておくと下がります。

一方、消費税増税に加えて、最近はキャンパスのICT環境整備や少人数教育、学習環境の構築などで、ひと昔前の大人数講義が中心だった時代と比較して、支出が増えています。

そうすると必要になるのは何を減らすか?です。

事業を減らす?

大学は様々な事業を行っています。例えば地域連携、国際、正課外などです。事業があるという事は、予算や人員のリソースを注ぎ込んでいるとも言えます。

でも、なぜか「大学は事業廃止が苦手だよな」と思っています。前年主義が強く残っている組織や人に要因がある場合や、その事業をスタートさせたときの人の想いが強く残っている場合もあります。特に事業をスタートさせた人が学内にいる場合は、なかなか事業を廃止できない場合が多いです。

(でも、その人が定年や他の組織に行ってしまうとあっさりと事業がフェードアウトしてしまう事もあります)

予算を減らす?

収入が少なくなるのなら、その分予算を減らすという選択肢も手っ取り早い方法です。例えば学生の教育に直接関わらない管理系の予算の削減から始まります。

そして次が教育関連の予算や人件費です。教育系の予算は何とか死守したい所ですが、本部から総額で〇%は予算削減と言われると昨年度若干余った予算から減らしていきました。

人件費を減らすと早いでしょうが、おそらく人件費削減に着手された場合は余程の時ですね。

教育のコストの見直し

大規模大学はともかく、小規模大学だと教育にかかるコストの見直しも視野に入れて動いているでしょう。例えば、兼任(非常勤)教員が担当していた科目を専任教員が担当したり、開講科目・授業数の見直しといった事も行わないといけなくなるかもしれません。

施設の見直し

施設は維持するだけでお金がかかります。一方、教室が足りないという声も本学内ではあります。教室規模ごとの最低限の数はどれぐらいか?、時間割を最適化して、みっちりつめるとどうなるかなど、教育のコストの見直しと同時に施設のコストを出来るだけ下げようという動きも出てくるでしょう。

 

支出抑制について

大学で働いている者として、教育研究のカットする事は出来るだけしたくはないと思います。でも、管理系の予算を削るのにも限界があります。

そうすると、学生の授業料や補助金以外に、寄付金を集めたり、事業収入を増やしていくのが1つの解になるでしょう。 

 

高等教育無償化に向けて、大学が確認・検討すべき事項(メモ)

高等教育の無償化が2020年度から始まります。ただ、これは給付が2020年度から始まるという事です。

無償化には、①無償化の支援対象者が要件を満たし、②該当の大学が無償化の対象となっている必要があります。なお、大学側は高等教育の無償化の対象大学となる場合は申請をする必要があるとの事です。

大学側が確認・検討する事項の個人的チェックリストをまとめました。このリストは、大学の今までの教育等の取組み状況によっては、関係ない項目、さらに必要な項目もあります。

おそらく某外部の〇〇〇〇院の検査の時に確実に詳細に見られる所ですよね。

なお高等教育無償化の詳細は、下記の平成30年11月22日をご覧ください。

高等教育段階の教育費負担軽減:文部科学省

 

チェック・検討リスト

学生の支援者の要件に関する事項

・既存のGPAの活用と今回の制度の整合性の確認・検討

・出席率や修得単位数について、迅速な把握や対応できる仕組みの構築

・(可能であれば)在学生で対象となる学生の割合見込みの算出

大学側の要件

実務家教員の配置

・全教員の職歴と担当科目の関係

・シラバスに実務経験のある教員によるシラバスの項目(検索できるようにしておく)か、「実務経験のある教員による授業科目一覧」を作成し、大学のHPで公開する。

・念のため、学科単位での実務家教員が担当する単位数の確認。

 

外部人材の理事の任命

・外部理事の現状の確認

・外部理事に期待する役割の明確化(法人としての考えの明確化)

・外部理事の担当する職務内容について

厳格な成績評価の実施・公表について

・毎年度の学生の学習状況を確認するシステム・制度

・2019年度(平成31年度)のシラバスに、授業の方法及び内容、到達目標、成績評価の方法・基準の項目があるか

・成績の客観的指標(GPA)についての確認

・GPAの算定についてのHPの公表

・GPAの活用状況についてのHPでの公表

・成績分布状況の資料(IRに依頼?)

・上記項目の記載について、シラバスのガイドラインを定めているか。また公表はどうするか

・実務家教員の科目の記載欄はあるか

・単位の認定について明確(ポリシー化等)を行い、シラバス等で明らかにしているか(もしくは関連規程があるかを確認)、公表はどうするか

・既存のGPAの活用と今回の制度の整合性の確認・検討(再掲)

・出席率や修得単位数について、迅速な把握や対応できる仕組みの構築(再掲)

 

・学生の学修状況に係る参考情報の公表(学修行動調査、卒業時調査等の報告書公表も該当?)

財務・経営情報の開示

・情報開示のURLと適切に開示されているか

 

チェックリストを考える上でのメモ

大学進学後の学生の支援者の要件と大学の対応

高等教育の無償化の支援の対象となっても、学習状況について一定の要件が支援対象者に求められています。具体的には以下のものです。

 

○ 具体的には、以下のいずれかに該当する場合には、直ちに支給をしないこととする。

ⅰ 大学等により、退学・停学その他の処分を受けた場合

ⅱ 修業年限で卒業できないことが確定したと大学等が判断した場合

ⅲ 1年間に修得した単位数が年間の標準的な修得単位数の5割以下の場合

1年間の出席率が5割以下であるなど学習意欲が著しく低いと大学等が判断した場合

 ○ また、毎年度の確認において、次のいずれかに該当する場合には、大学等が「警告」を行い、それを連続で受けた場合には支給をしないこととする。

ⅰ 1年間に修得した単位数が年間の標準的な修得単位数の6割以下の場合

ⅱ GPA(平均成績)等の客観的指標が学生の所属する学部等において下位4分の1に属する場合

ⅲ 1年間の出席率が8割以下であるなど学習意欲が低いと大学等が判断した場

 まずここから確認すべきは、標準的な修得単位数の5割以下です。例えば、大学や該当学部の標準的な年間の修得単位数の平均なのか、キャップ制度(履修登録の上限)の半分かでも対象学生は異なります。

また出席率が5割や8割以下とありますので、出席状況を迅速かつ確実に把握する事が求められるでしょう(最近は、学生証にあるICチップを読み取ってシステム上で出席率を管理する大学も増えましたね)

GPAについては、下位4分の1とありますので、成績全体・出席率などを包括的に把握し、警告までするシステムを大学側は構築する必要があります。

課題として、平成30年度の経常費に関わる「教育の質に係る客観的指標」に「GPA制度の導入、活用」の設問があります。これは平成29年度以前の私立大学等改革総合支援事業にあった内容の為、GPAが〇以下(おそらく固定値)であれば退学勧告に用いると規定している大学もあるでしょう。

今回の無償化でのGPAは「学生の所属する学部等において下位4分の1に属する場合」とあるので、既に規定しているGPAの活用との整合性をどうするかを検討しなければなりません。 

あと「出席率8割以下など学習意欲が低い」との記載が気になります。

「国側は、授業は全部出席するもの」という事なのでしょう。ただ「試験規定などで3分の1以上欠席すると試験出来ない」という大学も多いので、学生からすると3分の1までは休んでもいいというのが昔からありましてね、今回の無償化の要件で、3分の1休むと学習意欲が低いとみなし、警告をしなければならないのですね。

  

高等教育の支援措置の対象となる大学の要件と対応

実務経験のある教員による授業科目の配置

まずは言葉の定義を確認します。

 

             言葉の定義

実務経験のある教員

学外での勤務経験だけではなく、担当する授業科目に関連した実務経験を有している者

実務経験のある教員による授業科目

実務経験を十分に授業に活かしつつ、実践的教育を行っていること

 

今回はオムニバスや学外のインターンシップや実習・研修が授業の中心などの実務的教育から構成される授業科目も該当します。

 

さて、どれぐらいの単位数を実務家教員に配置すればいいかですが、卒業に修得が必要となる単位数の1割以上ですので、大学であれば124単位の13単位以上となります。(ここは、各大学が定める卒業要件の単位数ではなく、各設置基準を基準とするようです)

 

実務経験のある教員による授業科目か否かについては、授業計画(シラバス)等で明記する必要があります。これは誰が明記するか、本人の実務教員という申告か、どこかの会議体で該当の教員の職歴や業績を見ながら実務教員科目とシラバスに明記するか、おそらくここは外部の検査の対象となると思いますので、授業担当教員の自己判断だけではなく、どこかの会議体できちんと確認をすべき事項だと思います。

 

資格系科目が中心の学部であれば、担当する授業科目に関連した実務経験を有している教員は多いですので、あまり心配はしていません。また実学等を従事する大学や学部であれば、専任の実務家教員はいるかと思うので、その教員が担当する科目単位数を合わせれば何とかなりそうです。