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大学の内部質保証とは何か?~Q&Aから理解する質保証~

大学の内部質保証についてQ&Aをまとめています。なお、本記事は著者の学びや体験に基づくものです。内部質保証は大学によって、システムや考え方等が異なりますので、私立大学、大学基準協会で受審している大学に努めている一職員の立場から書いたものであることを前提にお読みください。

また本Q&Aをに関する設問は本ブログの問い合わせフォームやツイッターのDMやツイートからお願いします。

【更新】 2/1 内部質保証の理解について

     2/8 内部質保証を担う職員の育成について

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内部質保証全般について

内部質保証とは何ですか?

内部質保証とは何か、そういわれても具体的にイメージすることは容易ではありません。もちろん各評価機関で内部質保証の定義は明示されています。例えば表1は各評価機関から内部質保証に関する定義についてまとめたものです。(引用先は各評価団体名のリンク先です)

表1 認証評価機関の内部質保証の定義・説明(2020年10月14日時点)

 認証評価機関名

内部質保証の定義・説明 

大学基準協会(2020)

PDCAサイクル等を適切に機能させることに よって、質の向上を図り、教育、学習等が適切な水準にあることを大学自らの責任で説明し証明していく 学内の恒常的・継続的プロセスのこと

大学改革支援・学位授与機構(2004)

※(令和2年3月改訂)

大学が継続的に、自ら教育研究活動等の点検及び評価を行い、その結果を改善につなげることにより、教育研究活動等の質を維持し向上を図ること

日本高等教育評価機構(2020)

高等教育機関が、自らの責任で自学の諸活動について点検・評価を行い、その結果をもとに改革・改善に努め、これによって、その質を自ら保証することを指す。

大学・短期大学基準協会(2019)

教育の継続的な質の保証を図り、社会的に魅力ある大学であり続けるために、自己点検・評価に積極的に取り組み、それに基づき教育研究活動の見直しを継続的に行う

大学教育質保証・評価センター(2019)

大学は、その教育研究水準の向上に資するため、点検及び評価を行うに当たっては、適切な項目を設定するとともに、適当な体制を整えたうえで、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表します。これらの活動に組織的に取り組み、大学の教育研究活動等の改善を継続的に行う仕組み

これらを見て、ざっくりまとめると大学が継続的に教育研究活動等を自ら点検・評価から改善することで質を向上し保証するといった意味となります。

ただ(おそらく)これらの定義を見ていて内部質保証が分かりにくい理由の1つとして、内部質保証はのプロセス(=自己点検・評価を行い改善するプロセス等)なのか、(例えば学生の)質を担保している状態(=一定以上の知識・能力等を身に付けた状態)を指すのか、それとも別の意味もあるのか、といった点が分かりにくい事があるかもしれません。さらには内部質保証の組織が必要とかあるとさらに分かりにくさが増します。そこで「内部質保証」はこのように考えてはどうかと思います。

教育の質が「一定以上」にある=適切な水準以上であることを示すために、常に自分達の教育研究を振り返って、見直すことを常にし続ける事である。また教育研究の課題が見つかっても、それはカリキュラムや学生が原因と決めつけないで、多角的な視点から検証を行い、自らも改善するべきところはないかを振り返り、改善する仕組みがあってこその内部質保証である。さらに一定のゴールに達してもそれは維持しなければならないが、教育の質の「一定以上」は大学内外の環境や価値観の変容によって変わる可能性がある為、常に改善は必要し、自らの質の向上をし続けなければならない。

=常に最高・最適・最善は模索し続けるが、これらの基準は変容するために自分達が(最高・最適・最善に)達成したと思ってもその先があるかもしれない為、常に改善が必要かどうかをチェックし、必要であれば改善する事が重要。

内部質保証というキーワードを焦点にあてると分かりにくいので、自己点検・評価がきちんと出来ているかどうか、さらには自己点検・評価の質はどうなのかといった点からも考えてみるといいと思っています。

内部質保証にメリットはありますか?

内部質保証は、大学の理念や方針に従って、今の教育研究や様々な活動について自らが質を担保し、質を改善していくプロセスが重要です。言い換えると、自らがきちんと振り返り、あるいは外部からの指摘によって問題や過ちを認識し、改善することが内部質保証の肝要です。

一方、内部質保証を推進する執行部や大学評価室や学長室は「内部質保証に取り組め」と現場に落とし込もうとしたり、よくわからないことを押し付けようとすることもあり、「内部質保証は単に業務が増えるだけで自分たちには何のメリットがあるのか」と不満に思うこともあるでしょう。

ただ内部質保証は問題を認識し、それを改善するプロセスも重要です。また「学生の教育を充実する、質をあげるにはどうするかを常に試行錯誤しながら取り組む」ということも内部質保証であると言えます。

つまり、内部質保証は特別なものではなく、私達大学に関わる構成員全てに関係し、常に足元あるいは横に寄り添っているものであると考えます。内部質保証というから特別な感じがしますが、日常的にどう良くすればいいかをやっている事こそが内部質保証の小さなピースなのです。

なぜ内部質保証を試みなければならないのですか?

(今回は小規模大学からの視点です。大規模大学や研究大学は異なります)

さて今回は大きな理由として2つを挙げてみます。

まず、1991年の大学設置基準の大綱化というものを知っていますか?

ちょっと昔の話ですが、昔は大学設置基準で教育研究がガチガチにしばられていました。それこそ箸の上げ下げまで言われるように何をするのかを細かく決まっていたのです。ただこの時代は護送船団方式で大学は守られている時代でもありました。

しかし時代は変わります。高等教育の個性化や多様化が求められ、1991年に大学設置基準が改正されました。この改正で大学の規制は大幅に緩和されることとなったのです。

ある程度自由に教育が出来るようになったからこそ、大学自身は自分達の教育の質を担保し、それが常に向上するように義務が出来ているのです。

さて、規制が緩んだからといって良いことばかりではありません。各大学は改革を行なわないと生き残れない時代になりました。最近の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では大学間の連携や「経営改善に向けた指導の強化や経営困難な場合に撤退を含む早期の適切な経営判断を促す指導を実施する。また、破たん処理手続の適正化による学生保護の充実を図る。」とされ、文部科学省として撤退もやむを得ないと捉えることも出来ます。

さて、大学が生き残りをしなければならない環境下で、大学の質保証は何があるかというと、設置する時やAC(アフターケア)、認証評価、内部質保証などがあげられます。

これらは連携しているようで連携していないのですが、例えば大学を作った時は大学設置基準等を踏まえて質が担保されていても、翌年はそれが出来ていないかもしれません。

今のご時世、国は守ってくれませんので、教育の質が出来ていないということは大学にとって致命的です。また今は様々な情報を大学は公開する必要がありますので、大学のステークホルダーは公開情報を見て、大学の現状を伺い知ることが可能です。大学が生き残る為というとあまりポジティブな理由ではありませんが、教育の質を常に向上を目指し、それを積極的に発信しないと大学としては厳しい状況であることは間違いありません。(ただしこれは大学によりますが、殆どの大学は永続的に大学が残るとは言えないでしょう)

そもそも内部質保証は自分達が良いと思うもの(教育)だけを追求していく事と同義ではありません。大学外の状況もふまえ、外部の意見や視点も入れながらより良い教育研究をしていく姿勢こそが必要です。

(2020.10.19一部追記修正)

内部質保証はFDをやっていればいいのですか?

内部質保証を論文検索すると、内部質保証とIRやFDを絡めた論文や事例をみることができます。こう書くと、IRやFDをやっていれば内部質保証は出来ているのでは?と思うかもしれません。

さて、内部質保証はどこまでの大学の活動を含むのでしょうか?答えは殆ど全てとなります。例えば認証評価団体の一つである大学基準協会では10個の基準を定めています。この基準は教育だけではなく、学生の受け入れ、学生支援などが挙げられます。FDはこの中の1つに過ぎず、範囲は教育改善が主となります。なお、FDとは何かを書くと1つの記事になってしまうので、後ほど別の参考記事のリンクを貼っておきます。(そもそもFDやSDは文部科学省が出す答申や補助金の定義で徐々に意味合いが変わってきています。)

さて、内部質保証はFDをしていればいいのかは、FDは内部質保証のツールにすぎないという認識をします。教育に課題が見つかり、そのためにFDを行い、課題が改善されるサイクルがきちんとできていれば、内部質保証はできているでしょう。ただFDを漠然とやるだけ、今回のFDをはどこから外部講師を呼ぼうかなと学内の課題をふまえもせず、FD委員長の聞きたいことだけをやるFDであれば、内部質保証とFDを結びつけることは出来ません。

さて、色々と話がずれた気がしますが、FDをやっているかといって内部質保証は出来ているとは断定出来ません。FDをはツールに過ぎず、きちんと改善に活かせるようなFDが必要なのです。

またFDで出来る改善は万能ではない、全ての分野に対して行うものではないということの理解も必要です。例えばSDや組織改善、組織文化を徐々に変えていくことも内部質保証をすすめる上では必要となるのです。

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内部質保証をすすめるにはどうしたらいいのでしょうか? 

内部質保証がまったくできていない場合のケースを今回は想定してみます。今回は基本的な事のみ書いてみます。

内部質保証をすすめる基本となるのが自己点検・評価です。これは作業的に(あるいは作文としての)自己点検・評価ではなく、課題を認識し、きちんと改善や改革(あるいは維持)をすることが必要です。

現状が上手くいっているのか、それとも課題があるのか、その課題の原因はどこか?、上手くいくため・向上するためにはどうしたらいいのかを判断し、検討する素地があり、改善が出来る組織文化や組織がないことには内部質保証をすすめるうえではかなり大変です。

ただ小規模・中規模大学の場合はトップダウン形式で点検・評価をして改善を指示するということも考えられますが、この場合は執行部やその周りに何でも分かる人などスーパーマンが必要かもしれません。

また学内でどのように点検・評価の結果が改善されているのか、また内部質保証におけるルート(筋)はどうなっているのか、内部質保証システムの全体像はどうなっているのかも明らかにすることも必要です。

内部質保証の仕事をしている人や役職者だと内部質保証システムは見えているかもしれませんが、一教職員だとシステムの一部しか見えないこともあります。内部質保証をすすめるには特効薬はありません。どちらかというと体質改善みたいなイメージをもって一歩一歩着実に取組むことが必要だと考えます。

内部質保証について、他大学の事例を聞いてもイメージができません

ここ数年で認証評価機関のセミナーや説明会で内部質保証に関する説明や事例を聞く機会が増えました。また立命館高等教育研究第20号では内部質保証が特集されるなど、論文や事例も少しずつ公開が増えています。

ただ、内部質保証のイメージができないのはもっともで、認証評価機関の定義を見ても大きな枠組みの定義が説明されています。また内部質保証のシステムは大学によって大きく異なりますので参考程度にしかなりません。内部質保証システムを分析した研究もありますが、まだ対象範囲は限定的です。これらでは文章上では内部質保証を理解したつもりでも、自分の言葉で説明するのは難しいかもしれませんね。

さて、大学の内部質保証をイメージするにはどうしたらいいのでしょうか?それには、自学の意思決定システムと誰がキーパーソンなのかを洗い出す作業から始まります。一般的な内部質保証を理解するのではなく「所属組織がどのように意思決定をするのか、どのように点検・評価がされているのか、それともボトムアップ型で動いているのか、改善課題は真正面から改善しようとしているのか」などから、理解していくのが一つの方法ではないでしょうか。

内部質保証は卒業時の能力の担保と関係がありますか?

内部質保証は質の保証を達成している状態や質を向上するためのプロセスなども含んでいます。そのため内部質保証=卒業時の能力の担保ではありませんが、卒業時の能力がきちんと担保出来ていることは内部質保証の一つであると言えます。

ただ卒業時の能力の担保は内部質保証というより、アセスメントといったほうが、馴染みがいいかもしれません。アセスメント活動の一環として、学生の知識・能力・スキル・態度等を測定し、測定結果から教育課程をどうすればいいか、教育方法はどうすればいいか、その他改善課題は何があるかといった議論から改善に繋げることは内部質保証活動の一つであると考えられます。

内部質保証に根拠資料は不可欠ですか?

内部質保証システムがきちんとまわっていて、内部質保証をきちんとできていることを示すには根拠資料が必ず必要です。

この根拠資料は次の2つが必要です。

  • 制度や計画・方針を示すもの
  • 運用・(点検評価含む)活動した事実を明らかにしているもの

最初の「制度や計画・方針」は、大学の方針・中期計画・規程やその他文書化されたものを指します。これは規程集がきちんとある、適切に方針や計画が策定・見直しがされ、広く共有されていればそんなに問題はありません。ただし、規程などは整合性があるか、規程同士の連関がきちんとなっているかの確認は定期的に必要です。

次に運用した事実を明らかにしているものです。これは方針・計画・規程に基づき、適切に活動をしているか、組織的に行っているかを示す資料が必要になります。特に見落としがちなのは、活動はしているのに書面で活動が確認できない委員会や組織についてです。会議をしているのに、次第しかなく、会議で使われた資料はおろか記録さえない場合は組織として適切に活動しているとは(内部質保証の観点から)は言えません。

また記録は議事録で十分であり、発言録などでなくても問題ありませんので、大学としてはどんな組織体であってもきちんと記録はとっておきましょう。

内部質保証に必要な根拠資料(規程・会議議事録)の収集・蓄積は必要か?どうすればいいですか?

認証評価であまり笑えない笑い話として「◯◯委員会で✗✗に関する記録はあるか」と実地調査1日目で聞かれたときに2日目に担当者が憔悴しきった顔で資料を出すということがあるそうです。

認証評価だけではなく、日頃の内部質保証システムにおいても自己点検・評価はフィクションではなく、エビデンスを踏まえたものである必要があるので、根拠資料、特に規程や会議記録等が重要です。

文書課や法務課などがある大学であれば、規程の収集・マネジメント、会議等の記録の収集・蓄積は該当部署があるので、認証評価などで問われたときに困ることがないかもしれません。そうでない大学だと規程や会議記録についてきちんと収集・蓄積、さらに確認するプロセスが内部質保証には不可欠です。

例えば規程であれば、規程システムできちんと整理する、さらに規程の改正は透明性を確保する、第三者が規程について確認する体制を構築する必要があると安心です。言い換えると学部以下レベルの規程が全学の方向性や方針と反しない、整合性を保てるようなシステムが必要です。

また会議の記録については、毎年度(あるいは数年おき)に行う自己点検・評価の際に確認をすることや、委員会のメンバーや事務局となっている担当職員に留意するように大学として指示を出すことが必要です。委員会の委員が教員だと毎年度変わることもありますが、職員であれば異動や担当替えぐらいです。また私自身は過去に学長名で内部質保証と根拠資料として文書を出すようにしたこともあります。

組織的な内部質保証や自己点検・評価とはなにか?

内部質保証システムを構築し、有効的な内部質保証をするには組織的に自己点検・評価をすることが不可欠です。

例えば自己点検・評価報告書を大学の自己点検・評価委員会から作成依頼がきたら、委員長が一人で執筆し、誰も確認しないまま提出するといったことはないでしょうか。これは組織的とは言えません。

組織的とは、然るべき場所で案件について議論を重ね、その事項に関わる人ができる限り参加し、合意形成をしていくプロセスであると考えています。

誰かが勝手に案を作成し、誰も確認しないまま出す、もしくはトップが出したものについて意見を言う機会(雰囲気)がないのであれば、内部質保証の素地があるとは言えないと考えています。

もちろん誰かが原案を作成し、それに対して議論・審議をするということはあるでしょう。

また内部質保証を推進する組織、自己点検・評価を統括する組織は、組織的に自己点検・評価が行われているのか、会議の次第・資料・記録なども確認することが必要であると考えます。

質保証や評価の為に多くのデータを出さなければいけないのは何故ですか?業務が増えて困っています。

内部質保証や自己点検・評価をすすめる上で、各部局や部署に評価担当部署あるいは内部質保証を推進する組織、またIRを担う部署(センター)から多くのデータの提出を求められることがあります。確かにデータを多く出すのは業務が増えることになりますので、困った点かもしれません。

ただ内部質保証は「頑張ったから、その頑張りを評価しましょう」ではありません。きちんとエビデンスを示すことが必要であり、そのために様々なデータを集める必要があります。

一方、評価担当部署、内部質保証推進する組織、IRを担う部署はやみくもにデータを集めればいいわけではありません。必要なデータのみを依頼するといった最低限のマナーは必要ですし、IRを担う部署の知的好奇心を満たすためにデータを求めてはいけません。またデータをもらう際はどのような目的を伝え、きちんとフィードバックする事も必要です。

なお、データは分析してみて、何か変化があっただけではなく、何もなかったという事も往々にしてあります。(例えばブログ管理者が先日やってみたものとして、2019年度と2020年度の某調査の各1年次の教育に関する設問の回答を調べると特に変化がなかったといったものがありました)

内部質保証と組織について

内部質保証推進のために、新たな組織をつくるべきでしょうか?

新たな機能の為には、新しい組織が必要であると考える人・組織はあるかと思います。ただ内部質保証は点検・評価からどのように改善をするかの仕組みが重要であり、既存の組織があれば新しい組織は必要ありません。例えば、執行部の会議を内部質保証推進するための組織として規定している大学もあるでしょう。ようは現状の教学マネジメントや大学ガバナンスから、大学の諸活動の改善等の指導・支援が出来る組織があれば、その組織の規程を整備し、内部質保証を推進する組織としておくことも考えられます。

しかし、下記のようなものが該当する場合は、大学として内部質保証の推進する組織について再考すべきだと思います。

  • 規定では内部質保証推進組織だが、実態がまったくない。
  • 規程にはない組織が内部質保証を推進している。
  • 他の委員会との役割が明確でない

1つ目の認証評価用に内部質保証推進組織をつくり委員会は開催しているけど、改善支援なども何もしていない場合は組織を置いておくだけ無駄です。内部質保証推進組織のメンバーにもよりますが、組織として忌憚のない協議が出来る、実効性のある案を作成できる仕組みをつくる事が重要です。

2つ目はイメージしやすいのは院政でしょうか。組織はあっても傀儡で、後ろで誰かが操っているケースですね。3つめはイメージしやすいのは自己点検・評価委員会と内部質保証推進組織の役割が明確でないというケースを見聞きします。小さな大学だと一緒でも分からなくもないですが、大学基準協会の評価結果をみるかぎりは一緒にしているケースは好ましくないように感じます。

さて、質問に戻りますが、内部質保証推進組織については、役割が明確化できる、規程で確認でき、きちんと改善支援が出来る組織があれば新たに委員会などを作る必要はありません。大学によってケースが異なりますが、委員会が増えれば増えるほど、煩雑になりますので、シンプルで分かりやすい内部質保証システムを構築するにはどうすればいいかを検討してはどうかと思います。

ワンマンな大学で内部質保証は推進できますか?

一族経営の学校法人の大学や、理事長や学長が非常に強い権限を持っており、トップダウン形式で大学運営がされている法人あるいは大学もあるでしょう。

内部質保証は課題を認識し、それに対して改善を行うことが重要です。また一人で課題を認識し、それに対する改善策を練り、実行させるのはよほどの超人でなければ難しいでしょう。内部質保証を推進するには、組織として複数の人が関わる事によって多様な視点から課題を認識することが重要なのだと考えます。

また特に最新の情報にアクセスできない、大学外の環境を知らないなど自分自身をアップデートできていない、あるいは側近にそのような人がいないケースが仮にあるとすると内部質保証を推進するには課題がたくさんあるかもしれません。

トップダウンで言う事だけにしたがっていればいいですか?

内部質保証というと、上からの指示にしたがって定められたプランからPDCAをまわしてまわして上に結果を報告し、内部質保証を推進する組織が改善指示を出すというイメージがあるかもしれません。

大学の組織文化にもよりますが、トップダウン式で全てが決まっていて、それに従って達成していれば内部質保証が出来たといえれば非常に楽な事です。しかしこれには危険も含んでいます。まず上からの指示・計画・数値目標が見当違いである、それらに従うとどう考えても逆効果のケースです。あるいはゴミみたいな指示や計画では達成しても意味がありません。また決められたことだけをやっていればよいという文化は大学・学部学科等から独自性が失われていく危険も考えられます。

内部質保証としてあるべきは、必要なポイントは押さえておくけど、学部学科の多様性や自主性も尊重しつつ、ダメな点も自己点検・評価を行いきちんと報告できる風土や自由にやって良かった点は内部質保証組織として褒める風土を醸成することです。

つまり失敗例を報告し、それを責め立てるのではなく組織としてどう失敗を活かせるかを共有すること、学部学科等の自主性に応じた取組みで良いものは褒め(あるいは顕彰等もつけ)大学全体で共有化し、できるものは推進していくといったことが必要です。

私学ですが、大学組織ではなく、法人の組織内に内部質保証を推進する組織をおいていいですか?

内部質保証を推進する組織は、委員会といった形だけではなく、プロジェクトといった事例もあります。つまり、内部質保証を推進する組織はきちんと規定があり、質保証に関する実態があれば構成員や組織形態は縛られるものではありません。

さて、私立大学だと法人組織と大学組織が異なることが往々にしてあり、総合学園であったり、複数大学をもつ学校法人もあります。さて、質問のケースですが、学校法人に大学しかない小さな学校法人はともかく、大学内に内部質保証の推進組織をおいたほうが、教学マネジメントやガバナンスの観点からも質保証に対する活動は行いやすいと考えます。

法人組織に内部質保証の推進組織があると、他の学校の案件もあるかもしれませんし、どうしても経営と教学を分けて活動をすべきだと思いますので、そこは難しいのではないでしょうか?(ただし学校法人や大学の文化にもよりますね)

もちろん内部質保証は中期計画に則る事も必要なので、法人とのやり取りも必要です。

自己点検・評価とPDCAサイクルについて

とりあえずPDCAサイクルをまわしておけばいいですか?

PDCAサイクルを聞いて、思い浮かぶ一つに岡崎体育さんの曲で「まわせPDCAサイクル」というものがあります。テンポのいい曲に社畜の悲哀が醸し出されている歌ですが、これを聞くたびに意味のないPDCAサイクルはグルグルといくら回転させても何も生まないと感じます。

さて、内部質保証の話をする上では自己点検・評価、またPDCAは外す事はできません。(自己点検・評価は法令によって実施し、公表することが定められていますね)

ただ先ほども書いたように単にPDCAを回すだけ(作文するだけ)では労力の無駄ですし。またPDCAサイクルは常に上昇志向になるものではありません。もしかすると負のスパイラルになっている可能性もあります。

重要なのは自己点検・評価、PDCAサイクルの質が担保できているかです。例えば適切な目標設定がされているか、評価や改善案は複数の視点からされており、大学の方針・学修者・ステークホルダー等を踏まえたものになっているかなどが挙げられます。これは自己点検・評価の客観性をどう担保するかといった課題とも言えます。

自己点検・評価は認証評価の時だけやっておけばいいですか?

大学は学校教育法109条により、自己点検・評価を行い、その結果を公表することが求められています。

第百九条 大学は、その教育研究水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備(次項及び第五項において「教育研究等」という。)の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。

自己点検・評価は負担が生じるものですし、出来るだけ負担を軽くしたい、嫌な所は目を背けたいといった事があるかもしれません。ただ認証評価は7年に1回受審することが求められていますので、その時だけ自己点検・評価をするのは少なすぎます。

そもそも認証評価は内部質保証の有効性について見ており、その為には恒常的な質保証が不可欠=自己点検・評価が必要です。第2期の認証評価ではいくつもの大学が認証評価の時だけ自己点検・評価をやっていると指摘を受けていました。

つまり、認証評価は今までの自己点検・評価の積み重ねと内部質保証の推進が当然の事と考えられます。認証評価の時だけ頑張ろうは、内部質保証を推進しているとは言えないでしょう。(自己点検・評価を積み重ねて、認証評価を受審するのは当然の事であり特徴でも何でもありません)

ただ、自己点検・評価は毎年やりなさいという訳ではありません。大学によっては数年おきの大学もあります。効果的な自己点検・評価のサイクルは大学によって異なるでしょう。(少なくとも教育や学生の受け入れなどは毎年自己点検・評価すべきと考えています)

<参考>

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自己点検・評価は何を基準として行えばいいですか?

自己点検・評価をどのように行うかは大学によって異なります。私学の自己点検・評価についていくつか話を聞くと、次のような取組み例があります。

  1. 中期計画に基づいて、達成状況やどうだったかを点検・評価する。
  2. 毎回受審している認証評価機関の評価基準や評価の視点に基づき、自己点検・評価を行う。
  3. 大学の各種方針にもとづき、各組織が方針に基づいて自ら改善を行うための自己点検・評価を行う。

例えば1は数値目標や定量的な目標があって、それを達成したかどうか、そのプロセスはどうだったか等を点検・評価します。

2については、認証評価機関が定めている評価の視点や基準に基づいて自己点検・評価を行います。これをやっておくと認証評価時に改めて自己点検・評価をする必要がなくなります。また基準も明確であるため、点検・評価はしやすいです。

3は裁量がかなりある点検・評価となります。教育は品質管理のように決まったアウトプットばかり出来るものではありませんので、ゆらぎや不確実性も評価できると考えます。ただし3については、各組織が行った自己点検・評価をきちんと検証する機会や組織が必要であり、不満のはけ口報告書とならないように留意することが必要です。

何を自己点検・評価するかが明確になっているのは1と2ですが、工場製品ではありませんので、ある程度の不確実性や各組織の独自性も認めるような評価や組織文化は必要ですね。

自己点検・評価に評価の視点は必要ですか?

大学は自己点検・評価を行い、その結果を公表することが必要です。ただ自己点検・評価のやり方については、どのようにすべきかは求められておりません。そのため、大学によって自己点検・評価のやり方はそれぞれです。

例えば、自己点検・評価をすすめる為に、大学によってはどのような点を評価するかを示した評価の項目、項目を細分化した評価の視点、評価の視点の判断基準や判断のポイントを設定していることもあります。学内の各組織は評価の視点や判断基準に則って、現状説明を簡潔に記し、評定などを判断するといったやり方をする場合もあります。

表 自己点検・評価の例

評価の項目

評価の視点

評価の基準やポイント

現状

評価

(S~D)

教育課程を体系的に編成しているか

順次性のある科目の配置になっているか

DPにを達成するカリキュラムか

(現状を記載)

評価の視点があると、自己点検・評価をする側は何について自己点検・評価をすればいいかが明確となり、大学としてもどの事項が出来ているのか、出来ていないのかが把握出来ます。また認証評価機関が定める認証評価の際の評価の視点と同一とした場合は、認証評価を受審する時は認証評価のための自己点検・評価をする必要はなく、認証評価の受審の負担を減らすことも出来るでしょう。

ただ自己点検・評価は必ずしも評価の視点が必要なわけではありません。大学の中期計画や各種方針に則り、各組織の自主性を踏まえながら自己点検・評価をすることも考えられます。ただ、次のような問題(例)が出てくる場合があります。

  • 計画(Plan)がインプット型(人や世さんを増やすなど)で達成することがどう考えても難しいものばかり
  • 何をしたか(Do)と評価(Check)が同じような記述で、評価が明確でない。
  • 毎年度ほぼ同じ自己点検・評価をしていて、進捗なにもなし

評価の視点があると何を評価すればいいかが明確なので、中期計画や方針に則って組織の自主性による自己点検・評価は大学として自己点検・評価をどのように行うかといった周知が必要でしょう。

評価の視点を設定することは、大学として目指すべき方向性ややるべきことが明確になりますが、デメリットもあります。決まったことだけを評価するようになると、偶発的に行ったもの、試しに試行錯誤しながらやってみたものが評価されにくい、現場の自主性が評価されないといったこともあります。

大学としてどのように自己点検・評価を行うかは組織文化にもよりますが、自己点検・評価の方法は1つではないので、大学がよりよくなるための評価とはどういうものかを想定しながら自己点検・評価システムを作っていく必要があるでしょう。

自己点検・評価のスケジュールはどうすればいいですか?

自己点検・評価のスケジュールはPDCAをどのタイミングでP・C・A行うのか、どのスパンで行うのかを考える必要があります

どのタイミングでP・C・A行うかは、年度末から年度初めであるという大学が多いと思います。ただ以前、自己点検・評価の悩みを聞いたときにP・C・A(年度末だとC・A・Pですね)をやって、改善はいつ反映すればいいのかというものがありました。要は自己点検・評価は時間がかかる作業だから改善策は翌年度の計画には反映できないのではという事です。

この場合は日常からCはやっておく、あるいは2~3月にある程度のP・C・Aをやっておいて、4月に確定させるといった事が不可欠です。A年度をうけて策定した改善案をA年度の翌々年度に反映されるのは状況も変わりますし、内部質保証の観点からはあまり好ましいとは思えません。また内部質保証の観点からは自己点検・評価を実施した組織以外からも適切な自己点検・評価になっているかのチェックが必要です。

毎年度の自己点検・評価はかなり負担であると感じる人もいるでしょう。しかし、全ての領域について自己点検・評価を実施する必要があるでしょうか?

例えば施設などは毎年度自己点検・評価を行うのではなく数年おきのスパンでもいいかもしれません。大学によって状況は異なりますが、適切な自己点検・評価のスパンは何年サイクルなのかを考えておく必要があります。

内部質保証とOODAループについて

内部質保証や大学の自己点検・評価活動においてPDCAサイクルにはいくつもの批判があります。また今は大学外の流れも早くなり、様々なことに直ぐに対応が必要となっています。一時期、高速でPDCAというような本も出ていますが、最近はOODAループという考えもあります。ただPDCAサイクルは手法ですが、OODAループは思考法であり、PDCAサイクルがダメだからOODAループを採用ではなく、PDCAサイクルとOODAサイクルをうまく組み合わせることのほうが内部質保証にとって有用でしょう。

OODAループの詳細は下記を参照ください。

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自己点検・評価でPlan(計画)はどのように立てればいいでしょうか?

Planを立てるには、大学の様々な方針、中期計画、様々な大学評価結果なども踏まえる必要があると考えます。方針といっても抽象的なものも少なくないので、中期計画などに基づき、計画を立案することが多いでしょう。ただし中期計画に記載がない場合は方針などから計画を策定する必要があります。

ここで注意が必要なのは、好き勝手に自分(例えばその組織の長)がやりたい事だけを書くことが目標を設定したとはいいません。内部質保証では個人ではなく、組織としてきちんとPDCAサイクルをまわしていくことが重要です。個人の想いが計画に入ることも否定しませんが、組織としてコンセンサスが不可欠なのです。

また組織として現実的、達成可能な目標を作成することが必要です。例えば目標としてインプットするだけ、具体的には「予算や人員配置などの資源投入や、組織の設置・整備・再編などを記載した目標」ばかりたてても自分達の努力だけではどうにもならない事や、決める・実行するのは自分達でない計画(Plan)はいくら立てても無意味です。

ゴミみたいな計画(Plan)を作ると、その後に続くDCAもゴミになってしまう恐れが高いです。PDCAゴミ箱モデルとかというのでしょうかね?だからこそ、きちんとしたPlanの策定は重要です。

 <参考>

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【NEW】何故、PDCAサイクルは批判されるのでしょうか?

大学の内部質保証あるいは自己点検・評価はPDCAサイクルが基礎となっています。しかし、大学あるいは教育においてPDCAサイクルの導入は合わないというような批判も聞きます。

その理由として、経営学的なPDCAサイクルは教育には合わないという批判、工場などの工程管理の現場ではPDCAサイクルは適しているが教育は対象によって現場で絶えず状況が変わるので工程管理ではないという批判、「PDCAサイクルとはそもそも~」というようにPDCAサイクルの原理原則からの批判などがあります。いずれの批判でも、教育現場とは合わない現場目線の重要性や、PDCAサイクルを導入するとどこかに統制されるのではないかといった考えが根底にあるのかもしれません。

内部質保証と教育研究や他の活動について

アセスメント、教育評価と内部質保証はどのような関係ですか?

ここではアセスメントを教育評価、例えば成績、GPA、学生への調査などとします。今は学生のラーニングアウトカムを明確にする必要がありますので、アセスメントでどのような能力を身に付けたかを学生自身だけではなく第三者にも分かるようにする必要があるのです。

ではアセスメントをして、学生が一定の知識や能力を身に付けていることが分かれば内部質保証をしていると断言できるでしょうか?内部質保証が不断的な改善も含むとすれば、断言は難しいのではないかと考えます。

例えば1時点(年度)での学生の質が担保出来ているとしても、次(翌年度)はどうかは分かりませんよね。

アセスメントで得た情報はただ持っておくのではなく、きちんと活用して毎年度教育改善をすることが内部質保証の第1歩となります。達成したからOKではなく、毎年度不断的にディプロマポリシーに示した能力が身についているかを確認し、現状に満足するのではなく強欲なまでに教育改善をしていくことが内部質保証ではないでしょうか。

入試広報でPRする場合、どう使えますか?

(ここでは大学広報ではなく、入試広報を想定しています。)

内部質保証ができている(例えば認証評価で適合判定が出た)からといって、入試広報でPRできますか?内部質保証が出来ているといっても通用するのは、おそらく同業者ぐらいでしょう。

入試広報ではどのような情報が有用なのかは、大学・学部(学問分野)にもよるでしょう。例えば単純に国家資格の取得率がPR出来る学部、就職や教育プログラムがPR出来る学部など様々です。また保護者に対してなのか、高校に対しての広報なのかでもどのような情報を出せばいいのかは違うかもしれません。

卵が先か鶏が先かみたいな議論になりそうですが、内部質保証をするということは自らが教育研究について改善を行い、質を向上させる取組をしている(出来ている)と判断出来ます。その為、結果として教育研究が充実すれば入試広報にも有用でしょう。

つまり内部質保証そのものは入試広報に有用ではないけれど、内部質保証の活動を通じて充実している教育研究はきちんとアピールすれば入試広報に有用なのではないでしょうか。そのためにも入試広報では、単に教育の上辺だけを紹介するのではなく、入試広報担当者が所属組織の教育をきちんと理解し、足を稼いで学内の取組みを取材することも手ではないかと思います。

内部質保証と大学職員

大学職員は内部質保証に関わることはありますか?

大学職員が内部質保証に関わることがあるかという質問は、大学職員は教育に関わることがあるのかという質問に似ているなと思います。教育に関わるか・関わらないかは業務内容にもよりますが、例えば施設担当であってもどのような教育環境が今の教育に適しているのか、大学の構成員にとって居心地のいいキャンパスとはどのようなものかなどを考えると教育に関わりがあります。

また人事であれば、大学設置基準をふまえての人事計画策定や管理が求められることもあります。また資格課程があれば、各資格課程(及び分野)に必要な教員数や後任人事をどうするかまで理解する必要もあります。そのためには各教員の担当科目や研究業績などにも知見が必要です。

さて、内部質保証は教育だけではなく、管理運営や財務などまで幅広い範囲を含んでいます。つまり、殆どの大学職員の日常業務は内部質保証に関わっているとも言えます。

ただし、内部質保証で重点的に点検・評価や改善をするのは教育や学生の受け入れなどかもしれません。そのため、業務によっては内部質保証と関わりがあるとは思えないことがあるかもしれないですね。

職員が内部質保証を理解するにはどうしたらいいでしょうか?

この内部質保証のQ&Aも全てについて網羅している訳ではありません。また大学の設置形態や組織など様々な要因により、大学が考える内部質保証は異なります。

内部質保証の理解には、内部質保証そのものを理解しようとすると何を見ればいいかが分からなくなりますので、所属組織の教学マネジメントはどうなっているのか、ガバナンスはどうか、規程上ではどうなっているのかなどをまずは資料から読み取ってみましょう。

また内部質保証の理解は、今までの高等教育政策の理解、他大学の状況を知ることも重要です。例えば論文検索で「大学、内部質保証」と検索するといくつか他大学の事例が出てきますので、そこで概要をつかむことも出来ます。

<参考>CiNii Articles 検索 -  大学 内部質保証

また一番良いのは認証評価機関の評価結果報告書でしょう。しかし評価機関によって内部質保証に関して見るべき観点や評価の方法が異なりますので、所属大学が受審する認証評価機関の評価結果報告書、特にここ2~3年分を読んでみましょう。

【NEW】質保証を担う職員の育成はどうすればいいですか?

質保証を担うといっても、役割は様々です。例えば内部質保証推進組織の運営や関わりをする人、大学評価に関わる人、FDやSDに関わる人がいます。ここではこれら全般、あるいは複数について関わる場合について考えてみます。

内部質保証に関わるということは事務手続きだけが得意なのではなく、大学の実状と大学外の実状をみすえ、大学として何をすべきなのかを判断できる(考える)ことが必要です。

そのためには大学に関する知識とアップデートが不可欠ですし、大学執行部や各部局との橋渡しや調整もする仕事もすることがありますのでコミュニケーションや信頼性が必要です。また経営と教学のバランスをとる判断や動きもしなければなりません。単に異動したから、中途採用で、マニュアルがあるからすぐに出来る仕事とは断言できない分野であります。

内部質保証そのものに焦点をあてた大学外部の勉強会は少ないのですので、まずは高等教育政策、自組織の実状などから勉強し、1年程度で育て上げるぐらいの気長さは必要だと感じています。また教員だと、学内での役職で経験をしてもらう、認証評価機関の認証評価の評価委員をしてもらうといった事も考えられます。

その他

内部質保証の充実のために、いくつもの評価機関から認証評価を受審したほうがいいですか?

率直に言って、無駄という回答しか出来ません。この理由として、認証評価を受審するには多大な労力が必要です。認証評価のための自己点検・評価報告書を作成し、根拠資料を整備するだけでもかなり大変です。

また認証評価機関によて、内部質保証の評価基準や項目及び視点は微妙に異なります。認証評価機関を変える度に対応できていれば素晴らしいですが、それよりも大学の教育研究がどうなればよくなるかにリソースを振るべきではないでしょうか?

内部質保証で指示する人たち(組織)は、言いたいことだけいって結果は評価されないのですか?

(ここでいう評価は内部質保証を担う組織等(あるいは集団)が、大学の文脈に資した内部質保証において適切な活動をしているか・できているかといったことを指します。)

さて、内部質保証はそれ自体も自らが適切に内部質保証を出来ているかを検証する事が必要です。教育成果や学生募集とは異なり、毎年やらなくてもいいと筆者は考えますが、定期的に内部質保証を推進する組織が点検評価を行い、学内に共有することは必要でしょう。

ただ自己点検・評価は信用ならん、自分達だと甘々になるに違いないと思う人がいるかもしれません。そこで外部による評価の活用もあります。外部の評価というとまずは認証評価が思い浮かぶかもしれませんが、大学が独自に行う外部評価もあります。

大学が独自に行う外部評価は、私立大学だと政策誘導により3つの方針に関して行うことが求められているケースもあります。しかし適切に外部評価を活用すると大学の教育研究活動の評価、自己点検・評価が適切かどうかなどを行えば、大学の内部質保証について評価を行う事にも繋がります。

認証評価は受けなければいけないのですか?内部質保証と関係ありますか?負担でしかないのですが…

認証評価が苦痛であるとか、大変というのはよく分かります。例えば2020年度に認証評価を受審する場合、認証評価の自己点検・評価報告書をとりまとめるのは2019年度ですし、さらにその準備や学内の周知などは前々年度(2018年度)から始まることもあります。

認証評価は7年に1回受審することは法令で定められていますが、認証評価受審数年まえは準備、受審後は指摘事項などの対応で認証評価の呪縛は5~6年はあるのではないでしょうか。

また認証評価は、2018年から第3期目となり、認証評価として見られるところは、自己点検・評価をやっているか→内部質保証の制度はあるか→内部質保証は有効かどうか(有効的にやっているか)と変化しています。認証評価のために内部質保証をするのではなく、日頃取組んでいる内部質保証が適切かどうかを認証評価が確認するといった理解になります。

さて、認証評価は受け身であると尚更負担感を感じます。例えば逆の発想をして認証評価をどう有効に使うかを考えてみてはいかがでしょうか?例えば自分達の取組みがどのように評価されるのか、課題は分かっているけど内部の事情でどうしても改善できない点は認証評価結果を外圧として使うなど効果的・有効的な使い方は色々とあります。

参考文献

大学改革支援・学位授与機構(2004)『大学機関別認証評価実施大綱(令和2年3月改訂)』

大学・短期大学基準協会(2019)『大学評価基準』

大学教育質保証・評価センター(2019)『大学機関別認証評価 実施大綱』

大学基準協会(2020)『大学評価ハンドブック』

日本高等教育評価機構(2020)『令和3年度 大学機関別認証評価 受審のてびき』