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大学の内部質保証Q&A

大学の内部質保証についてQ&Aをまとめています。なお、本記事は著者の学びや体験に基づくものです。内部質保証は大学によって、システムや考え方等が異なります。(まだ回答を書いていない質問もあります)

また本Q&Aをに関する設問は本ブログの問い合わせフォームやツイッターのDMやツイートからお願いします。

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内部質保証全般について

内部質保証とは何ですか?

内部質保証とは何か、そういわれても具体的にイメージすることは容易ではありません。もちろん各評価機関で内部質保証の定義は明示されています。例えば表1は各評価機関から内部質保証に関する定義についてまとめたものです。(引用先は各評価団体名のリンク先です)

表1 認証評価機関の内部質保証の定義・説明(2020年10月14日時点)

 認証評価機関名

内部質保証の定義・説明 

大学基準協会(2020)

PDCAサイクル等を適切に機能させることに よって、質の向上を図り、教育、学習等が適切な水準にあることを大学自らの責任で説明し証明していく 学内の恒常的・継続的プロセスのこと

大学改革支援・学位授与機構(2004)

※(令和2年3月改訂)

大学が継続的に、自ら教育研究活動等の点検及び評価を行い、その結果を改善につなげることにより、教育研究活動等の質を維持し向上を図ること

日本高等教育評価機構(2020)

高等教育機関が、自らの責任で自学の諸活動について点検・評価を行い、その結果をもとに改革・改善に努め、これによって、その質を自ら保証することを指す。

大学・短期大学基準協会(2019)

教育の継続的な質の保証を図り、社会的に魅力ある大学であり続けるために、自己点検・評価に積極的に取り組み、それに基づき教育研究活動の見直しを継続的に行う

大学教育質保証・評価センター(2019)

大学は、その教育研究水準の向上に資するため、点検及び評価を行うに当たっては、適切な項目を設定するとともに、適当な体制を整えたうえで、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表します。これらの活動に組織的に取り組み、大学の教育研究活動等の改善を継続的に行う仕組み

これらを見て、ざっくりまとめると大学が継続的に教育研究活動等を自ら点検・評価から改善することで質を向上し保証するといった意味となります。

ただ(おそらく)これらの定義を見ていて内部質保証が分かりにくい理由の1つとして、内部質保証はのプロセス(=自己点検・評価を行い改善するプロセス等)なのか、(例えば学生の)質を担保している状態(=一定以上の知識・能力等を身に付けた状態)を指すのか、それとも別の意味もあるのか、といった点が分かりにくい事があるかもしれません。さらには内部質保証の組織が必要とかあるとさらに分かりにくさが増します。そこで「内部質保証」はこのように考えてはどうかと思います。

教育の質が「一定以上」にある=適切な水準以上であることを示すために、常に自分達の教育研究を振り返って、見直すことを常にし続ける事である。また教育研究の課題が見つかっても、それはカリキュラムや学生が原因と決めつけないで、多角的な視点から検証を行い、自らも改善するべきところはないかを振り返り、改善する仕組みがあってこその内部質保証である。さらに一定のゴールに達してもそれは維持しなければならないが、教育の質の「一定以上」は大学内外の環境や価値観の変容によって変わる可能性がある為、常に改善は必要し、自らの質の向上をし続けなければならない。

=常に最高・最適・最善は模索し続けるが、これらの基準は変容するために自分達が(最高・最適・最善に)達成したと思ってもその先があるかもしれない為、常に改善が必要かどうかをチェックし、必要であれば改善する事が重要。

内部質保証というキーワードを焦点にあてると分かりにくいので、自己点検・評価がきちんと出来ているかどうか、さらには自己点検・評価の質はどうなのかといった点からも考えてみるといいと思っています。

内部質保証にメリットはありますか?

内部質保証は、大学の理念や方針に従って、今の教育研究や様々な活動について自らが質を担保し、質を改善していくプロセスが重要です。言い換えると、自らがきちんと振り返り、あるいは外部からの指摘によって問題や過ちを認識し、改善することが内部質保証の肝要です。

一方、内部質保証を推進する執行部や大学評価室や学長室は「内部質保証に取り組め」と現場に落とし込もうとしたり、よくわからないことを押し付けようとすることもあり、「内部質保証は単に業務が増えるだけで自分たちには何のメリットがあるのか」と不満に思うこともあるでしょう。

ただ内部質保証は問題を認識し、それを改善するプロセスも重要です。また「学生の教育を充実する、質をあげるにはどうするかを常に試行錯誤しながら取り組む」ということも内部質保証であると言えます。

つまり、内部質保証は特別なものではなく、私達大学に関わる構成員全てに関係し、常に足元あるいは横に寄り添っているものであると考えます。内部質保証というから特別な感じがしますが、日常的にどう良くすればいいかをやっている事こそが内部質保証の小さなピースなのです。

なぜ内部質保証を試みなければならないのですか?

(今回は小規模大学からの視点です。大規模大学や研究大学は異なります)

さて今回は大きな理由として2つを挙げてみます。

まず、1991年の大学設置基準の大綱化というものを知っていますか?

ちょっと昔の話ですが、昔は大学設置基準で教育研究がガチガチにしばられていました。それこそ箸の上げ下げまで言われるように何をするのかを細かく決まっていたのです。ただこの時代は護送船団方式で大学は守られている時代でもありました。

しかし時代は変わります。高等教育の個性化や多様化が求められ、1991年に大学設置基準が改正されました。この改正で大学の規制は大幅に緩和されることとなったのです。

ある程度自由に教育が出来るようになったからこそ、大学自身は自分達の教育の質を担保し、それが常に向上するように義務が出来ているのです。

さて、規制が緩んだからといって良いことばかりではありません。各大学は改革を行なわないと生き残れない時代になりました。最近の「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」では大学間の連携や「経営改善に向けた指導の強化や経営困難な場合に撤退を含む早期の適切な経営判断を促す指導を実施する。また、破たん処理手続の適正化による学生保護の充実を図る。」とされ、文部科学省として撤退もやむを得ないと捉えることも出来ます。

さて、大学が生き残りをしなければならない環境下で、大学の質保証は何があるかというと、設置する時やAC(アフターケア)、認証評価、内部質保証などがあげられます。

これらは連携しているようで連携していないのですが、例えば大学を作った時は大学設置基準等を踏まえて質が担保されていても、翌年はそれが出来ていないかもしれません。

今のご時世、国は守ってくれませんので、教育の質が出来ていないということは大学にとって致命的です。また今は様々な情報を大学は公開する必要がありますので、大学のステークホルダーは公開情報を見て、大学の現状を伺い知ることが可能です。大学が生き残る為というとあまりポジティブな理由ではありませんが、教育の質を常に向上を目指し、それを積極的に発信しないと大学としては厳しい状況であることは間違いありません。(ただしこれは大学によりますが、殆どの大学は永続的に大学が残るとは言えないでしょう)

そもそも内部質保証は自分達が良いと思うもの(教育)だけを追求していく事と同義ではありません。大学外の状況もふまえ、外部の意見や視点も入れながらより良い教育研究をしていく姿勢こそが必要です。

(2020.10.19一部追記修正)

内部質保証はFDをやっていればいいのですか?

内部質保証を論文検索すると、内部質保証とIRやFDを絡めた論文や事例をみることができます。こう書くと、IRやFDをやっていれば内部質保証は出来ているのでは?と思うかもしれません。

さて、内部質保証はどこまでの大学の活動を含むのでしょうか?答えは殆ど全てとなります。例えば認証評価団体の一つである大学基準協会では10個の基準を定めています。この基準は教育だけではなく、学生の受け入れ、学生支援などが挙げられます。FDはこの中の1つに過ぎず、範囲は教育改善が主となります。なお、FDとは何かを書くと1つの記事になってしまうので、後ほど別の参考記事のリンクを貼っておきます。(そもそもFDやSDは文部科学省が出す答申や補助金の定義で徐々に意味合いが変わってきています。)

さて、内部質保証はFDをしていればいいのかは、FDは内部質保証のツールにすぎないという認識をします。教育に課題が見つかり、そのためにFDを行い、課題が改善されるサイクルがきちんとできていれば、内部質保証はできているでしょう。ただFDを漠然とやるだけ、今回のFDをはどこから外部講師を呼ぼうかなと学内の課題をふまえもせず、FD委員長の聞きたいことだけをやるFDであれば、内部質保証とFDを結びつけることは出来ません。

さて、色々と話がずれた気がしますが、FDをやっているかといって内部質保証は出来ているとは断定出来ません。FDをはツールに過ぎず、きちんと改善に活かせるようなFDが必要なのです。

<関連記事> 

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【NEW】内部質保証をすすめるにはどうしたらいいのでしょうか? 

内部質保証がまったくできていない場合のケースを今回は想定してみます。今回は基本的な事のみ書いてみます。

内部質保証をすすめる基本となるのが自己点検・評価です。これは作業的に(あるいは作文としての)自己点検・評価ではなく、課題を認識し、きちんと改善や改革(あるいは維持)をすることが必要です。

現状が上手くいっているのか、それとも課題があるのか、その課題の原因はどこか?、上手くいくため・向上するためにはどうしたらいいのかを判断し、検討する素地があり、改善が出来る組織文化や組織がないことには内部質保証をすすめるうえではかなり大変です。

ただ小規模・中規模大学の場合はトップダウン形式で点検・評価をして改善を指示するということも考えられますが、この場合は執行部やその周りに何でも分かる人などスーパーマンが必要かもしれません。

また学内でどのように点検・評価の結果が改善されているのか、また内部質保証におけるルート(筋)はどうなっているのか、内部質保証システムの全体像はどうなっているのかも明らかにすることも必要です。

内部質保証の仕事をしている人や役職者だと内部質保証システムは見えているかもしれませんが、一教職員だとシステムの一部しか見えないこともあります。内部質保証をすすめるには特効薬はありません。どちらかというと体質改善みたいなイメージをもって一歩一歩着実に取組むことが必要だと考えます。

内部質保証について、他大学の事例を聞いてもイメージができません

ここ数年で認証評価機関のセミナーや説明会で内部質保証に関する説明や事例を聞く機会が増えました。また立命館高等教育研究第20号では内部質保証が特集されるなど、論文や事例も少しずつ公開が増えています。

ただ、内部質保証のイメージができないのはもっともで、認証評価機関の定義を見ても大きな枠組みの定義が説明されています。また内部質保証のシステムは大学によって大きく異なりますので参考程度にしかなりません。内部質保証システムを分析した研究もありますが、まだ対象範囲は限定的です。これらでは文章上では内部質保証を理解したつもりでも、自分の言葉で説明するのは難しいかもしれませんね。

さて、大学の内部質保証をイメージするにはどうしたらいいのでしょうか?それには、自学の意思決定システムと誰がキーパーソンなのかを洗い出す作業から始まります。一般的な内部質保証を理解するのではなく「所属組織がどのように意思決定をするのか、どのように点検・評価がされているのか、それともボトムアップ型で動いているのか、改善課題は真正面から改善しようとしているのか」などから、理解していくのが一つの方法ではないでしょうか。

内部質保証と組織について

内部質保証推進のために、新たな組織をつくるべきでしょうか?

新たな機能の為には、新しい組織が必要であると考える人・組織はあるかと思います。ただ内部質保証は点検・評価からどのように改善をするかの仕組みが重要であり、既存の組織があれば新しい組織は必要ありません。例えば、執行部の会議を内部質保証推進するための組織として規定している大学もあるでしょう。ようは現状の教学マネジメントや大学ガバナンスから、大学の諸活動の改善等の指導・支援が出来る組織があれば、その組織の規程を整備し、内部質保証を推進する組織としておくことも考えられます。

しかし、下記のようなものが該当する場合は、大学として内部質保証の推進する組織について再考すべきだと思います。

  • 規定では内部質保証推進組織だが、実態がまったくない。
  • 規程にはない組織が内部質保証を推進している。
  • 他の委員会との役割が明確でない

1つ目の認証評価用に内部質保証推進組織をつくり委員会は開催しているけど、改善支援なども何もしていない場合は組織を置いておくだけ無駄です。内部質保証推進組織のメンバーにもよりますが、組織として忌憚のない協議が出来る、実効性のある案を作成できる仕組みをつくる事が重要です。

2つ目はイメージしやすいのは院政でしょうか。組織はあっても傀儡で、後ろで誰かが操っているケースですね。3つめはイメージしやすいのは自己点検・評価委員会と内部質保証推進組織の役割が明確でないというケースを見聞きします。小さな大学だと一緒でも分からなくもないですが、大学基準協会の評価結果をみるかぎりは一緒にしているケースは好ましくないように感じます。

さて、質問に戻りますが、内部質保証推進組織については、役割が明確化できる、規程で確認でき、きちんと改善支援が出来る組織があれば新たに委員会などを作る必要はありません。大学によってケースが異なりますが、委員会が増えれば増えるほど、煩雑になりますので、シンプルで分かりやすい内部質保証システムを構築するにはどうすればいいかを検討してはどうかと思います。

ワンマンな大学で内部質保証は推進できますか?

一族経営の学校法人の大学や、理事長や学長が非常に強い権限を持っており、トップダウン形式で大学運営がされている法人あるいは大学もあるでしょう。

内部質保証は課題を認識し、それに対して改善を行うことが重要です。また一人で課題を認識し、それに対する改善策を練り、実行させるのはよほどの超人でなければ難しいでしょう。内部質保証を推進するには、組織として複数の人が関わる事によって多様な視点から課題を認識することが重要なのだと考えます。

また特に最新の情報にアクセスできない、大学外の環境を知らないなど自分自身をアップデートできていない、あるいは側近にそのような人がいないケースが仮にあるとすると内部質保証を推進するには課題がたくさんあるかもしれません。

自己点検・評価とPDCAサイクルについて

とりあえずPDCAサイクルをまわしておけばいいですか?

PDCAサイクルを聞いて、思い浮かぶ一つに岡崎体育さんの曲で「まわせPDCAサイクル」というものがあります。テンポのいい曲に社畜の悲哀が醸し出されている歌ですが、これを聞くたびに意味のないPDCAサイクルはグルグルといくら回転させても何も生まないと感じます。

さて、内部質保証の話をする上では自己点検・評価、またPDCAは外す事はできません。(自己点検・評価は法令によって実施し、公表することが定められていますね)

ただ先ほども書いたように単にPDCAを回すだけ(作文するだけ)では労力の無駄ですし。またPDCAサイクルは常に上昇志向になるものではありません。もしかすると負のスパイラルになっている可能性もあります。

重要なのは自己点検・評価、PDCAサイクルの質が担保できているかです。例えば適切な目標設定がされているか、評価や改善案は複数の視点からされており、大学の方針・学修者・ステークホルダー等を踏まえたものになっているかなどが挙げられます。これは自己点検・評価の客観性をどう担保するかといった課題とも言えます。

内部質保証と大学職員

【NEW】大学職員は内部質保証に関わることはありますか?

大学職員が内部質保証に関わることがあるかという質問は、大学職員は教育に関わることがあるのかという質問に似ているなと思います。教育に関わるか・関わらないかは業務内容にもよりますが、例えば施設担当であってもどのような教育環境が今の教育に適しているのか、大学の構成員にとって居心地のいいキャンパスとはどのようなものかなどを考えると教育に関わりがあります。

また人事であれば、大学設置基準をふまえての人事計画策定や管理が求められることもあります。また資格課程があれば、各資格課程(及び分野)に必要な教員数や後任人事をどうするかまで理解する必要もあります。そのためには各教員の担当科目や研究業績などにも知見が必要です。

さて、内部質保証は教育だけではなく、管理運営や財務などまで幅広い範囲を含んでいます。つまり、殆どの大学職員の日常業務は内部質保証に関わっているとも言えます。

ただし、内部質保証で重点的に点検・評価や改善をするのは教育や学生の受け入れなどかもしれません。そのため、業務によっては内部質保証と関わりがあるとは思えないことがあるかもしれないですね。

参考文献

大学改革支援・学位授与機構(2004)『大学機関別認証評価実施大綱(令和2年3月改訂)』

大学・短期大学基準協会(2019)『大学評価基準』

大学教育質保証・評価センター(2019)『大学機関別認証評価 実施大綱』

大学基準協会(2020)『大学評価ハンドブック』

日本高等教育評価機構(2020)『令和3年度 大学機関別認証評価 受審のてびき』