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文科省の大学入学共通テストの新型コロナ対策の素案の所感と知っておいていただきたいこと

2020年10月14日のニュースで「大学入学共通テスト 新型コロナ対策の素案まとめる 文科省」が出ました。

www3.nhk.or.jp

このニュースに関してSNSでは大学関係者から色んな意見が出ております。ただ素案という事ですので、今後さらない改善案が出ることを思いつつ、小規模大学の現状を踏まえ、今の素案が現実的かどうかを検証してみます。

なお、本記事は下記のツイートを文章化したものです。

また本記事は著者の体験から書いたものであり、体験は今までの大学入試センター試験のため、大学入学共通テストにはそのまま適用できない可能性もあります。

大学入学共通テストの新型コロナ対策の素案について

まずは素案について簡単にまとめておきます。上記のニュースによると大きくはこの4つでしょうか。

  • 試験会場は定員の半分以下
  • 1つの試験が終わるたびに換気
  • お昼は自席かつ会話は控える
  • 濃厚接触者も無症状であれば、条件付きで別室受験

大学として問題になるのは1つ目と4つ目になるかと思います。2つ目の換気は既に対面授業でもやっており、サーキュレーターの配備などもしています。3つ目は昼食会場として控室を用意していましたが、今回はそれは難しそうですね。

試験会場の確保と限界について

試験会場は定員の半分以下ということですが、まず前提として教室の定員=座席数が300席あるとすると試験時に使えるのは最大で半分です。(どれだけの席が試験時に使えるかは教室の形状にもよります。)これをここでは試験定員とします。

今回、文部科学省が言われているのは最大座席数の半分以下なのか、試験定員なのかは文脈では分かりません。もし試験定員の半分であれば、大学側としてかなり対応が難しい状況になりかねません。

今までのセンター試験では、小規模大学では施設面に関して試験会場に適した教室をフル活用しています。もし試験定員の半分であれば、単純に部屋は2倍の数が必要になります。しかし、ある程度の規模を持った教室は限りがあり、それは既に全て使っている状況下で1部屋あたりの受験生を減らして試験室を増やすには小規模教室なども運用しないと難しいかもしれません。

そうなると次に出てくる課題が人材の確保です。試験室が1部屋増えると、例え10人の受験者がいる受験室であっても、2人のスタッフが必要です。大きな部屋だと受験生数十人人でスタッフ1名だったのが、受験生5人でスタッフ1名になると教職員がいくらいても足りません。

大きな大学だとセンター試験の業務は、教職員はアドミッションオフィスや入試担当以外はどちらか1日のみというケースもあると聞いたことがあります。しかし小規模大学だと教職員数も少ないので、職員は2日間ともフルで働き、それでも人が足りなくて院生や学生のアルバイトもお願いして運営している状況でもあります。もし試験定員の半分の数で受験生を受け入れることが確定した場合は人材の確保と配置が重要になります。

施設面の他の課題について

文科省の素案とは直接関わりはありませんが、受験生が大学までどうやって行くかも考えないといけません。遠くに駅から遠方の場合はバスを出している大学もあるかと思いますが、コロナ禍においてはバスは余裕を持った乗車にする必要があります。

バスの手配は経済的な面で解決できますが、大学内あるいは大学近隣のバス亭にどこまでバスをまわせるのかといったシミュレーションは必要になります。

また公共交通機関は乗れないという人は車での送迎もあるでしょうが、地方大学でない限りは大学内に多くの駐車場を用意することが出来ません。濃厚接触者の場合は公共交通機関を使わないとありますが、解決すべき課題はいくつもあります。 

濃厚接触者の受験について

この点が今回の素案の1番の課題ではないでしょうか。確かに体調不良などで別室という想定はいままでもされておりますし、万が一嘔吐された際の対応もマニュアルがあり、対処できるようになっています。

しかしコロナについては今までとはまったく対応が異なります。無症状であるという前提であっても、では試験を監督するスタッフの安全はどう確保するのかは検討しないといけません。防護服をきて1日監督をするか、一人用の透明な囲いをつくってそこで受験してもらうとか、中々難しい課題です。

また、先ほどの施設面の課題にも書いたように別室受験だとスタッフの確保も必要です。まさか濃厚接触者は一堂に集めて別室としてもいいとはならないと思いますので、濃厚接触者がいれば、それだけ別室を用意する必要があります。

解決策はあるのか

文科省は「指針は出す。共通テストは大学が行うものだから後は自己責任、よきにはからえ」というスタンスから変わらないのだろうなと思っております。ただ人や施設の課題が解決できないと、受験生にしわ寄せがいってしまう懸念もあります。 

おそらくこのような課題に対して、他の外部会場も使えばいい、外部業者に委託をすればいいという意見も出てくるかもしれません。しかし大学が行う共通テストに外部業者が入っていいのか、何か問題が起こったときに責任はとれるのか、一般アルバイトでスタッフの質はどう担保できるのかなど懸念事項は多々あります。

現状のコロナの状況も踏まえ、大学としてどこまで対応できるか、大規模な国立大学だけではなく、入学共通テストの我が国の大学共通のものとなりますので、単に責任回避的な案ではなく現実的な対策案を検討いただきたいと願っています。