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大学の単位と、単位に必要な勉強・学習時間の考え方~単位制度と1単位45時間について~

「大学生の勉強時間が足りない」と言われて続けています。では勉強時間が「足りない」の根拠は何でしょうか?

例えば諸外国の調査結果との比較で話がされる事があります。また日本の大学の単位制度の観点から論じられることもあります。ただ自分もそうでしたが、学生の時は単位制度についてはよく分かりませんでしたし、大学の単位制度がどのようになっているかをきちんと説明出来ない人も大学の中にはおります。

そこで今回は、大学生や大学で働き始めたばかりの人が分かるように大学の単位制度について解説をしていきます。

 

大学の単位制度とは

今の(大学の)単位制度は、第二次世界大戦後にGHQの指導により、米国に倣って導入されたものといわれ、各科目の学修の必要な時間を単位としています。

また単位は1単位45時間が原則ですが、これは社会人が1週間に労働する時間(平日8時間・土曜5時間)であるというのが定説です。(ただ諸説あります)

では単位制度の時間(1単位=45時間)は何をもって定められているのでしょうか?

この単位制度の根拠は「大学を設置するにあたり、必要な最低の基準」である大学設置基準の第21条となります。

第二十一条 各授業科目の単位数は、大学において定めるものとする。
2 前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。
一 講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。
三 一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
3 前項の規定にかかわらず、卒業論文、卒業研究、卒業制作等の授業科目については、これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には、これらに必要な学修等を考慮して、単位数を定めることができる。

この省令で特に押さえておくべき点は「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもって構成する」です。

一単位の授業科目は45時間の学修が必要だという事が基本です。ではここから「講義及び演習」と「実験、実習及び実技」についての単位と学修時間の考え方を見ていきます。

 

講義及び演習の学習時間と単位の考え方

講義及び演習について、大学の単位に関して大学設置基準には次のように記されています。

講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする

さっき「大学設置基準に1単位は45時間の学修と必要とする」だったのに「講義や演習は15-30時間の授業でいいの?」と思うかもしれません。初めて読む人は何を言っているかが分かりにくい文ですね。

この点ですが、まず1単位は基本45時間であるが前提です。

この45時間の内、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位とできるということです。つまり15~30時間は大学によってフレキシブルに設定が出来ます。

(※大学の上位規程である学則(「大学 学則」で検索かけるとたくさん出てきます)を見ると必ずこの単位に関する部分があるかと思います。いくつか学則を見てみましたが、設置基準に則って定めている大学が多いようです)

この大学が定める時間の授業ですが、教室内等で授業を行う時間とイメージして下さい。要は、時間割で組まれている時間の授業時間です。

講義演習で1単位の場合

1単位の講義演習は45時間ですので学習時間の内訳はこのようになります。

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1単位だと45時間の内、授業時間は15時間必要です。45時間-15時間で残りは30時間となり、この30時間は授業外での学習時間、つまり事前事後(予習復習)の時間となります。

1単位の講義の授業で15回実施するものはあまりないかもしれませんが、例えば15回の授業で授業時間が30時間で開講すると、事前事後学習は毎回の授業で(事前事後合わせて)1時間だけやればいい事になります。(上図の破線で囲まれた箇所の部分の話です。)

1単位講義は資格系の学科などで、専門科目で単位を沢山取らないといけない時に英語や教養科目を1単位講義科目とする場合があります。

講義演習で2単位科目の場合

ただ今はセメスター制度の大学も多く、半期で2単位の授業がかなりあると思います。そこで2単位(1単位の授業時間は15時間と設定)の場合を見てみましょう。2単位になるので、必要な授業時間は下記の通りです。

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授業時間は「1単位15時間の授業時間×2単位=30時間(授業時間)を基礎としますので、1単位は45時間の学修(時間)を忘れてはいけません。2単位ということは90時間の学修時間が必要です。

90時間(単位)ー30時間(授業時間)=60時間。つまり60時間は授業時間以外での学習の時間となるわけです。これは15回の授業の2単位の講義だと、15回×2時間授業時間で、各回の授業に2時間の事前学習と2時間の事後学習が必要です。これがオーソドックスですね。

各回の授業で4時間もの事前事後学習は多いよと思う場合は、授業時間60時間の講義もなくはありません。そうすると、15週で授業を終わらせる場合は、週に2コマの授業を入れて、毎週の事前事後学習は2時間にする事も制度上は出来ます。(ただこういう事は大学側の負担もありますし、殆ど見ない例です)

さらに4単位の講義で15回だと週に2コマの授業を実施、事前事後学習は毎週8時間があるという場合もあります。

最初の話に戻りますが、2単位の科目だと60時間の事前事後学習が必要なのに、実際にはそんなに事前事後学習をしていない事が多いので「学生は勉強していないから足りていない!単位制度が実質化していない」と言われている訳です。

 

実験、実習及び実技の学習時間と単位の考え方

講義演習での考え方を押さえてしまえば、そんなに実験、実習及び実技の単位と学修時間の考え方は難しくありません。まず大学設置基準を見るとこのようになっています。

実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする

これをもとに1単位あるいは2単位について見てみます。(実習は4単位などもありますが、考えは全て同じです)

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実験、実習及び実技については30-45時間までを授業時間と出来ます。つまり45時間全てを授業時間に全振りする事も出来ます。

1単位30時間で計算すると、2単位の実習や実験であれば、60時間の授業時間が必要になります。例えばスポーツの実技の科目2単位の場合は、週に2コマ(連続)で授業を行い、授業時間で60時間を確保し、残りの30時間を事前事後学習といった事もあり得ます。1単位の実習で集中授業であれば、1日9時間程度で5日間で45時間とする場合もあるでしょう。

 

何故、大学職員は単位制度を理解しなくてはいけないか

まず、単位、特に講義や演習は授業と授業外の学習で構成されていることを押さえましょう。その上でで教育そのものではなく教育研究支援として授業外学修を増やすための取り組み(例えば学習空間の構築など)が職員に求められます。例えば、ラーニングコモンズなどの教育研究環境の充実などがあるかと思います。

また最近は公開しているシラバスに授業時間について記載するケースが(補助金の条件もあり)増えました。たまにこの部分を大きく間違えているシラバスもあって、ここをきちんとチェックできるようになる事は最低限求められる能力知識だと思います。

100分授業の大学の増加

近年は、さらに100分授業で14週の授業を行う大学も増えてきています。15週確保する為には学年暦上、かなり切羽詰っており、14週にする事で余裕をもったスケジュールを組むことが出来ます。

ただ単位制度についての考え方、特に事前学習と授業と事後学習がある事は変わりません。まずはきちんと基本を理解する事が不可欠です。

(更新 2019年9月2日)