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大学の指導補助者はどう取り組むか〜検討事項と懸念事項〜

2022年10月の大学設置基準の改正で、指導補助者という制度が出来ています。これは従来の授業補助者と異なり、授業への参画の促進を行い、学生へのより手厚い指導体制を確保することにより、大学教育等の質向上が期待されるものです。

以前、どこかで大学教員が授業を助手やTAにまかせっきりで、自分は来ないという噂話を聞いたこともありますが、一定化の条件の下で授業を持てるということでしょう。

指導補助者の検討事項

まず大学として指導補助者を導入するうえで検討すべき最低限の事項について、思いつく者を並べてみます。

指導補助者の対象はどこまで含めるのか

この制度ですぐ出来そうなのは、TA(主に院生)などにそのまま授業を持ってもらうという所でしょう。ただし、この制度では在学中の学部学生や同等の能力がある者についても、大学の判断で採用することが出来ます。(学生の場合は、一定の基準を定めておかないと質の担保ができないかもしれないという懸念があります。声が大きい人が、無理矢理指導補助者にねじ込むとか)

またキャリアカウンセラーがキャリア系科目の一部や関連科目の一部を担当したり、技術職員をはじめとした(専門資格や経歴を持つ)職員も授業の一部を持つことも想定出来ます。

大正大学のチューター制度は拡大すればこの指導補助者でいけるかもしれません

www.tais.ac.jp

指導補助者は授業のどこまで(n回)担当していいのか?

文科省の大学設置基準の改正のQ&Aをみると「一の授業科目において行われる各回の授業の一部を分担するのみならず、1回の授業の全部を担当することも許容され得る」とあります。

例えば15回の授業の中で①1回の授業の一部を担当する②1回の授業の全てを担当するなど柔軟な方法がとれるわけですが、では疑問に思うのは指導補助者がメインの授業回数はどこまでOKなのかという点です。

授業科目の大半の授業を指導補助者を担当することは原則として想定されないとされています。

ここでふと思い出すのは、対面授業でのオンライン授業を実施する解釈についてです。これは対面授業であっても全ての学生が授業時間の半分以上を対面で受講するなら、残りはオンラインを取り入れることが可能です。

これを参考とするなら、指導補助者がメインで授業をするのは半分以下が望ましいのではないかと考えています(私見ですので、各大学で判断するところになります)

指導補助者の研修はどうするのか?

以前、指導補助者の研修について、教員が参加するFDに一緒に参加すれば、この要件は満たせるのかといった質問をもらったことがあります。

FDの内容にもよりますが、個人的には先生方のFDではなく、指導補助者用の研修会を実施してほしいと考えています。

それではどのような内容をすればいいのでしょうか。例えばプレFDなどのようなものが一つの答えではないでしょうか。

www.highedu.kyoto-u.ac.jp

ただプレFDもTAとしてのFDという場合もあるので、指導補助者としての内容が適切かは確認が必要です。

個人的には芝浦工業のこういう内容であればいいのではないかと思っています。

edudvp.shibaura-it.ac.jp

他にもあまり該当者はいないと思いますが、実務家教員養成講座のような履修証明プログラムを修了している場合、教育工学などを修めている場合は大学としてOKとしてもいいかもしれません。

指導補助者の規程の作成

規程なのか、内規なのか、申し合わせなのかは大学によりますが、授業担当教員と指導補助者の責任関係や具体的な役割分担なども入れた取り決めや、指導補助者を入れる場合のルール(例えばシラバスに事前に記載しておく)や申請様式(もしくは稟議書で対応?)といったものも定めておく必要があります。

指導補助者の懸念点

この指導補助者についてはいくつか懸念点があります。

・指導補助者になった場合の賃金はどうするか

従来の授業補助者から指導補助者になるということは仕事内容も変わるため、大学はそれぞれの規定と照らして、指導補助者になった場合は賃金をどうするか考えなければなりません。

・指導補助者は該当者の経歴にどう影響するか?

指導補助者になった場合、個人調書・履歴書等ではどのように取り扱われるかは今後定まっていくかと思います。

特に教歴なのか、違うのかといったことは当事者にとっては気になるところかもしれません。

終わりに

指導補助者と検索すると、授業補助者・教育補助者・指導補助者と様々な言葉が出てきており、意味もまちまちです。このあたりの言葉を大学が使っている場合は、まずはきちんと既存の規程から定義をしっかりすることから本制度の運用の第一歩は始まりそうです。