新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い、大学は遠隔授業などを進めて所も多いかと思います。この遠隔授業には動画配信といったオンデマンド型やテレビ会議などの双方向方、課題研究等があります。
さて今回のテーマは遠隔授業の手法ではなく、遠隔授業と学事日程や単位制度についてです。特に遠隔授業を行うにあたり、再度単位制度の確認もふまえてみます。
なお、既に文部科学省から「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&Aの送
付について(4月 21 日時点)」が出ており、この内容を本記事では必要な個所のみ出来るだけ分かりやすく書いていきます。
授業回数と弾力的な学事日程
まず遠隔授業の前に単位制度と学事日程(含む授業回数)について整理します。大学設置基準第23条で、授業は10週または15週にわたる期間として行うことが記載されています。
この記載で語弊があるのが、授業は絶対に15週やらないといけない、もしくは15回やらないといけないといった事です。また週=回として、絶対に15回の授業が必要であるといった話も聞きます。
さて、まず2単位の講義の場合で見てみます。2単位講義だと90時間の学修時間が必要となるので、こんなイメージでしょうか。
上の図だと、授業をしっかり15週にわたって行った場合ですね。ただ、大学設置基準23条には「教育上必要が、かつ、十分な教育効果をあげることができると認められる場合はこの限りではない」とも書いています。例えば、今まで大学内の科目で、講義の扱いだけど、見学実習やサービスラーニングを行う科目があり、授業の途中で学外にて学習するといったものはないでしょうか?
例えばイメージはこのような感じです。
上記のような事は、おそらくかなりの大学で実施されてきたのではないでしょうか?
ここで重要なのは、授業回数ではなく、その科目が何単位・どのような授業形態であり、どのぐらいの学修時間が必要かという事です。まずは学修時間をきちんと確保する(大学として説明できる)事が重要であり、回数は柔軟に考えていい訳です。
2020年度前期の状況だと4~6月はキャンパスが使えない=面接授業が出来ない場合、遠隔授業ではなく、7月~9月で同一科目の面接授業を週に1~2回行い、学修時間を確保するといった事も検討できるかと思います。つまり、15回の内、数回を削るという解釈は考えられないわけですね。(※学則や諸規定の確認は必要です)
(学修時間を確保できれば、いろんな運用ができると思います。なお関連する文科省の通知は下記となります。)
<参考>
大学設置基準及び短期大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について(通知)平成25年3月29日
面接授業はどこまで遠隔で行っていいのか?
2020年度の前期は、本来は面接授業だが、授業の最初のほうは急遽遠隔授業で行うと判断した大学も多くあります。そもそも面接授業は大学で卒業に必要な単位のうち、60単位までは認められています。また遠隔授業の場合は学則等できちんと示す必要があります。
例えば既に遠隔授業のケースとして、同志社大学の例があります。
そして同志社大学の学則(第8条の2及び第9条の5等)にはマルチメディアに関して記載されていますね。
メディアによる授業(ここでは遠隔授業と同義とします)では、卒業に必要な124単位の内、60単位を上限としていました。
さて上記図の右側のように、2020年度は面接授業の予定であったものが遠隔で行う場合は60単位の上限に含めないと特例が出ています。
【重要】本年度後期や次年度の各授業科目の実施方法に係る留意点について(令和2年7月27日)では2021年度も特例が適用されるとされています。
面接授業のうち、遠隔授業はどこまで認められるのかといった質問もありますが、上記の特例で全て解決してしまいそうです。
ただ本来は15回の授業のうち、全てを遠隔で行うと遠隔授業として扱う=124単位のうち、遠隔は60単位までの上限に入れる必要があるのではないしょうか。
大学としてどこまでを遠隔としていいかの判断は非常に迷う所です。対面が主であると大学が主張できる回数は、授業を行った回数の半分以上は必要かなとは個人としては思います。
ただこの特例には条件があり、①シラバス通りに実施しているか、②教員による授業の実施状況の把握(学生の出欠や参加など)、③大学による授業の実施状況の把握は必要です。これらをどう把握するかは課題であり、教員にアンケートを行うなどいくつか方法はあるでしょう。
チャートにするとこんな感じでしょうか。
シラバスは変えていいのか?
この記事のタイトルからちょっとずれますが、遠隔授業を行うことによりシラバスの見直しが必要になるかと思います。大学の方針や立場として「シラバスは文科省に出しているから変更はまかりならん」と言っている大学もあるとSNSで見かけましたが、そんな事はないかと思います。
例えば、大学や学部等を設置する際にシラバスを提出していますが、この状況であればきちんとアフターケアで報告すればいいかと思います。重要なのは遠隔授業を入れる場合に、その科目の到達目標をどうやって達成するように授業を組みなおすか、学生が到達目標を達成できたかではないでしょうか。
終わりに(単位制度の誤解釈の例)
授業の遠隔上限60単位をフルに活用とし、単位制度に関して独自の解釈を行い、認証評価で指摘されたのが今はなき創造学園大学です。この大学では60単位は遠隔、64単位は対面としていました。そして、この大学が受けた認証評価では教育に関して多くの指摘事項がされています。
(参考)日本高等評価教育評価機構 創造学園大学 平成22年度評価結果
上記の結果の4ページに教育について改善を要する点がありますが、それに対しての理事長からの回答が当時の大学のホームページに掲載されていました。
それは「創造学園大学に係る日本高等教育評価機構の判断について(PART1)(既にWEB上からは削除)」というタイトルであり、単位制度を誤解釈している興味深い文書です。