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主要授業科目の位置づけと検討の際の論点や留意事項について

令和4(2022)年度10月より大学設置基準が改正され、基幹教員の制度がスタートしました。この基幹教員はすぐさま始まるものではなく、移行措置があるので、大学によって適用する年度は異なります。

※学部等の設置申請をいつやるかにより異なります。

www.daigaku23.com

さて、この基幹教員制度において、主要授業科目をどうするかというのが大学として大きな課題ではないでしょうか。

参考 大学設置基準等の一部を改正する省令等の公布について(通知) P2

https://www.mext.go.jp/content/20220930-mxt_daigakuc01-000025195_01.pdf

ここで再度通知において基幹教員の該当箇所を確認してみます。(下線は筆者)

③ 基幹教員等
ア 大学は、各教育課程上主要と認める授業科目(以下「主要授業科目」という。)については原則として基幹教員(教育課程の編成その他の学部の運営について責任を担う教員(助手を除く。)であって、当該学部の教育課程に係る主要授業科目を担当するもの(専ら当該大学の教育研究に従事するものに限る。)

この主要授業科目について文部科学省の設置基準のQ&Aには下記のように解説されています。(下線は筆者)

Q15. 「主要授業科目」とは、どのようなものですか。
「主要授業科目」とは、学生に学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を育成するために必要な科目群であり、各授業科目のうちいずれが主要授業科目に当たるかは、当該授業科目と3つのポリシーとの関係等を踏まえ、各大学等で判断するものです。なお、当該判断に当たっては、大学設置基準上、授業科目は必修科目、選択科目及び自由科目に分けて教育課程を編成することとされていることも踏まえ、各教育課程上のこれらの区分別の科目の位置付けも勘案いただくことが必要です。

さてこれらを踏まえて、主要授業科目はどのように考えればいいのでしょうか?
(なお、本記事は筆者の個人的なメモとなります)

主要授業科目は全ての科目に適用されるか?

主要授業科目は3つのポリシーとの関係性を踏まえることが必要であり、関係性があればすべての授業科目を主要需要科目とすることは可能です。ただし、全ての科目を主要授業科目とするにはきちんと議論を経て、対外的にも理解できるような理由が必要でしょう。
なお、個人としては全ての科目が主要授業科目とみなすのは非常に困難であるという立場です。例えば専門課程の関連する科目などは主要授業科目とするのは中々難しいのではないでしょうか。

もし多くの科目を主要授業科目とするのであれば3つの方針や補足資料(カリキュラムマップ等)を確認し、適切でないのであれば再度見直すことが必要ではないでしょうか。

・教員の個人の主張で主要授業科目を決めるのではなく、組織的に議論が必要。その際、密談ではなく適切な委員会や組織で検討を行い、記録を作成すること
・特に演習科目でゼミにより内容が異なる場合は要注意←到達目標が同じで、やることが違うというのは要検討

必修科目・選択科目・自由科目について

主要授業科目を考えるうえで必修科目・選択科目・自由科目にも留意する必要があります。この区分について、大学の設置の手引きによると必修科目・選択科目・自由科目は下記のように説明されています。

「必修科目」…当該学科等の教育目的を達成するため,卒業要件として修得を必要としている科目
「選択科目」…学生の履修目的に応じて選択し,修得単位を卒業要件に参入する科目。(選択必修科目を含む)
「自由科目」…単位認定できるが卒業要件に算入しない科目

これを見るとすべての必修科目は主要授業科目と考えることができそうですが、必修科目=主要授業科目ではないということもありえるので、大学や各学位プログラム等で検討は必要です。

例えば、よく必修としてなっていそうな初年次教育の科目やゼミなどは3つのポリシーと関係性はあるのでしょうか。また自校教育をやっている大学もありますが、これもきちんと関連性があるのでしょうか?

またゼミなどは様々な能力を涵養したり、知識を習得できるという話も聞きますが、その場合は該当ゼミが3つの方針、特にDPのどこに該当するのか、その関係性あるDPが到達目標と関連があるか=到達評価をしているかなどまで確認が必要でしょう。

・ある科目が主要授業科目となり、複数クラスを開講する場合、(例えば語学など能力別クラス分けを除き)、シラバスが(ある程度)共通で、修得する能力や知識なども方向性が一緒かどうか
・特に演習科目でゼミにより内容が異なる場合は要注意←到達目標が同じで、やることが違うというのは要検討

教育課程外の科目について

さて、ここで資格課程、特にカリキュラムの外に出している科目群です。大学によっては卒業単位に含めると規定しているケースもありますが、3つのポリシーとの関係性がないと主要授業科目とするのは難しそうです。

ではこれらの科目を主要授業科目とするべく、三つの方針に入れるのであれば、教育課程に入れることも想定→ただし資格免許によっては注意が必要になります。

※教育課程外の資格課程を担当しているだけの教員は基幹教員になれない可能性があるので要注意

履修モデルとの関係について

履修モデルを策定し公表している大学もかなりあるかと思います。この履修モデルは、養成する人材像に対応して策定することが前提です。

そのため、履修モデルに含まれていない科目については主要授業科目とみなせるかどうかは慎重な議論が必要です。

主要授業科目の議論について

主要授業科目は組織的に議論することが不可欠です。各科目の先生に「担当科目は主要授業科目ですか?」と聞けばいいやと考えている大学はほとんどないかと思います。

この主要授業科目の検討は、然るべき会議体で①3つの方針との関係性、②各科目の到達目標・評価・授業内容は最低限確認するところは必要だと考えています。流れとしては下記のようなものが考えられます。

  1. 大学として主要授業授業科目に関する方針や申合せ(どのような科目が主要授業科目になり得るかを示したもの)を策定
  2. 各学位プログラムで、3つの方針を再度確認、必要に応じて修正
  3. カリキュラムマップや履修モデルから、主要授業科目となるべきDPと関連が深い科目を選出(しかるべき会議で複数回検討)
  4. 大学全体で、各学位プログラムで主要授業科目についてばらつきがないかをチェック

そのうえで、大学・学長が決定する手順となるのではないでしょうか。
<参考>
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律:文部科学省

主要授業科目確定後の公表の検討

主要授業科目については、学生の手引き(大学によっては履修の手引き等)で明示するのか、大学のホームページに掲載するのか、教育課程表にいれるかなどの検討が必要です。

またカリキュラムマップや履修モデルで主要授業科目とわかるようにするなどの検討と公表も必要でしょう。

(リンク)主要授業科目を入れているカリキュラムマップ

主要授業科目をカリキュラムマップに入れている大学のリンクをまとめておきます。なお、紹介している大学はいずれも主要科目と明記しているので、主要授業科目でない可能性もあります。

城西国際大学

カリキュラム・マップ|城西国際大学

明星大学

カリキュラムマップ/カリキュラムツリー | 明星大学