令和4年度10月より、大学設置基準の大幅な改正がされています。今回の改正の中で大きな変更の一つとしてあるのが、専任教員から基幹教員という変更でしょう。
そこで文科省から出ている資料などから、基幹教員について、どう理解すればいいか個人のメモとしておいてみます。
なお、今回使用するのは令和4年度大学設置基準等の改正についてが主となります。
既存の制度から基幹教員はいつ移行するか?
基幹教員うんぬんを始めるまえに、制度適用について触れたいと思います。大学設置基準の大幅な改正は令和4(2022)年度10月1日から施行となります。しかし基幹教員(及び施設)については、経過措置が設けられています。これは基幹教員の規定の適用はせずに専任教員と同じ扱いができることになります。
なお、経過措置があるのは下記となります。
- 教室、研究室、図書館、保健室、事務室その他必要な施設を備えた校舎を有するものとする規定
- 研究室に関する規定
- 教員に関する規定
なお、令和7年度以後に大学や学部等の設置申請を行う場合は、この改正後の規定の適用が必要です。(令和6年度開設の場合は選択可)
なお認証評価でもこの改正について問われると思うので、認証評価受審が間近な大学はどうするか検討が必要かもしれません。
ただし、経過措置については設置基準改正のQ&Aをみると特に適用の期限がありません。
大学として、いつ基幹教員制度を適用するか組織決定をする必要がある。
その場合は、準備の期間、設置申請や認証評価なども鑑みて、適用開始を検討する。(なお、留意として設置を契機とすることは好ましくない)
一部の学部のみ適用は認められない
専任教員から基幹教員へ
さて、今回専任教員から基幹教員へと変わりました。ただ全ての専任教員が基幹教員へ移行する訳ではなく、条件を満たした場合のみとなります。つまり、基幹教員に該当しない教員というものも該当します。
基幹教員に該当するかどうかはは教育課程の編成等に責任を担うかどうかでしょう。
- 基幹教員→教育課程の編成等に責任を担う教員
- 基幹教員以外の教員→研究に従事する教員、地域連携、就職、各種センターの教員など(教育課程編成に責任を負わない)
このように基幹教員以外の教員は、各種センターにいる教員なども該当する場合があります。ただセンターに所属する教員であっても、後述する年間8単位以上の教育課程に係わる授業科目を担当し、教育課程編制の責任を担う(該当する会議に出席している)場合は基幹教員となれることが想定できます。
内部監査(教学監査)や認証評価などで年間8単位以上に該当する基幹教員は、教育課程の編制に責任を担うことができているか、議事録(出席)確認を想定。なおこれに関して、実質上は要件を満たしていない場合はきびしい処分の対象となるとされています。
人事計画については新制度にあわせて検討されているか確認
基幹教員の定義
続いて基幹教員の定義を確認してみます。基幹教員は大きく2つのパターンがあります。
まず前提条件として、教育課程の編成その他学部の運営について責任を担う教員であることです。この責任を担うとは何かはあとにまわします。
その上で下記のどちらかが該当する場合は基幹教員に該当します。
- 当該学部の教育課程に関わる主要授業科目を担当する(専ら当該大学の教育研究に従事する者)
- 1年につき、8単位以上の当該学部の教育課程に係る授業科目を担当するもの。クロスアポイントメントや複数の学部(センター)で基幹教員となることが可能。ただし該当学部等の必要な教員数の4分の1以下と数に制限あり
なお、クロスアポイントメントについてはこちらをご参照ください。
また学部学科等に必要な教員数の計算方法は従前と変わらないのでこちらの記事をみてください。
この算定方法によって、算出された必要な教員数の中で4分の3以上は専ら当該大学の教育研究に従事する教員となります。(他大学や企業とのクロスアポイントメントの教員ばかりでは駄目ということですね。)
ちょっと分かりにくいので、ここで大学等の設置の書類(改正適用版)の教員数の表をみてみましょう。
使うのは令和6年度版の設置の書類の教員数を記載する箇所です。令和6年度は従前の基準、改正後の基準を選ぶことができます。
まず従前の教員数の表です。
そして設置基準改正後の表です。
新しい表では、兼任教員から基幹教員以外の教員となりました。
また教員の種類は次の4種類があります。(違いに分かりにくい箇所があるので著者で下線を引いています)
a.基幹教員のうち,専ら当該学部等の教育研究に従事する者であって,主要授業科目を担当するもの | ||||||||||||
b.基幹教員のうち,専ら当該学部等の教育研究に従事する者であって,年間8単位以上の授業科目を担当するもの(aに該当する者を除く) | ||||||||||||
c.基幹教員のうち,専ら当該大学の教育研究に従事する者であって,年間8単位以上の授業科目を担当するもの(a又はbに該当する者を除く) | ||||||||||||
d.基幹教員のうち,専ら当該大学の教育研究に従事する者以外の者又は当該大学の教育研究に従事し,かつ専ら当該大学の複数の学部等で教育研究に従事する者であって,年間8単位以上の授業科目を担当するもの(a,b又はcに該当する者を除く) |
※bとcの違いは、当該学部か当該大学です。
今後基幹教員について、データベースを作る場合は上記の4つに分類するといいかもしれません。
なお、8単位に関して、新設学部等において、授業科目が全て初年度から開講されないので、完成年度までに8単位を満たせばよいとされています(出典:設置の手引きQ1-22)
また単位について、オムニバスの場合は担当の割合を乗じる必要があります。
さて、この8単位についてですが、各学部等の教育課程の修了に関する単位として位置づけられている場合などとされています。
つまり、教育課程外で資格課程があって、上記に該当しない場合は8単位に含まれないことも想定できますので、大学の規程の確認が必要です。
主要授業科目とは何か
次に基幹教員の条件の一つである「主要授業科目」についてです。この主要授業科目とは、各大学・学部等のDPで定めた学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を育成するための必要な科目群のことを言います。
設置の書類の教育課程の様式をみると、主要授業科目はどれかをつけさせるようになってますね。
なお、設置の手引きに掲載されている上記の表の記載事例を見ると、全ての科目が主要授業科目とはなっておらず、全ての科目がDPと関連あるから主要授業科目であるという主張は通せるかは懐疑的です。また今後既存の学部学科のカリキュラムでどれが主要授業科目かの検討は必要でしょう。
教員人事のあり方の検討
従前の基準では教員数のみ気にすればよかったのですが、この基幹教員制度は、大学のセンターの教員なども基幹教員として貼り付けできます。一方、科目担当(主要授業科目を担当していない、教育課程外の科目のみ担当など)によっては基幹教員の条件を満たさないケースも考えられます。
教員数が設置基準より多い大学であればさほど問題はないのですが、私学では教員数は設置基準ギリギリのところもあるでしょう。その場合は科目担当や基幹教員は誰が該当するのかといったことも事前に確認が必要です。
そのためには教員人事のありかた(計画など)の再検討が必要かもしれません。
その他 いろいろと検討すること
上記以外で最後にいろいろと検討することを列挙してみます。
- 情報公表をどうするか(教員数表の見直しが必要)
- 人事が学部についている場合と大学全体の最適化の課題(例えばセンター教員の貼り付けなど)
- クロスアポイントメントについて、教員側からの申し出にも備えて規則や規定の確認と整備
- 就業規則や教員の勤務関連の規程(規定)の確認と検討
最後に、この基幹教員制度は、教員数を減らすことが可能となってしまいます。学生の不利益にならないようにしないといけないのですね。
また履歴書について、現時点の設置の書類では職歴に基幹教員かどうかは書かせることはないのですが、将来的にはありえるか、各大学の公募書類の中で記載をさせることもあるかもしれないと思っています。