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令和5年度認可申請・届出・収容定員増加からみる大学及び専門職大学への指摘事項

大学、学部、学科、研究科、専門職大学を新たに作るときは、認可申請や設置届出をする必要があります。また収容定員を増やす場合も認可申請が必要です。

また文科省に申請や届出をして、無事に受理されてもいくつか意見がつくことがあります。今回はその意見について、どのようなものがあるかを一覧としました。

なお、今回は法人やガバナンスに関する指摘が非常に目立つなという感想です。

概要について

対象としたのは令和5年度に開設する大学・学部・学科・研究科、専門職大学、収容定員増となります。

大学設置・学校法人審議会:文部科学省

また本記事では類似の意見はとりまとめたり、特定がすぐにできないように一部は具体的名称を削除・修正しています。

どれで指摘されているのか分かりやすいように①大学か専門職大学か、②設置認可・届出・定員変更については、指摘されているものに印をつけています。なお太字・赤字については、こちらが重要だと思う箇所ですので、参考程度にしてください。

組織、教員組織や募集、編入に関する指摘について

まずは、組織や教員組織、募集についてです。

  大学 専門職大学 設置
認可
届出 定員
変更
事項
組織       ・学生等の募集を停止中の組織については、適切な時期に廃止等の措置を講ずること。
教員組織   完成年度前に、定年規程に定める退職年齢を超える専任教員数の割合が高いことから、定年規程の趣旨を踏まえた適切な運用に努めるとともに、教員組織編制の将来構想について着実に実施すること。
教員組織       ・専任教員資格審査の結果により、教員の補充が必要とされた授業科目については、確実に教員を充足させること。
募集・定員管理     〇〇学部(〇〇学科)の入学定員超過の是正に努めること
※通信の事例もあり
募集・定員管理       〇〇学部(〇〇学科)の定員未充足の是正に努めること
募集・定員管理       ・既設校の今後の定員充足の在り方について不断に検討を行い、定員未充足の改善に取り組むこと。
募集・定員管理       特別指定校推薦選抜、指定校推薦選抜、同窓生子女推薦選抜では、アドミッション・ポリシー①に掲げる「高等学校等で、全ての科目の基礎となる国語・英語を中心とした基礎学力を身に付けている。(知識・技能)」を面接で評価すると説明しているが、高等学校での学習の記録である調査書等を通じて学生の学力を確認するのではなく、面接を通じて基礎学力を確認する趣旨や、国語・英語を中心とした本学の学修に必要となる基礎学力を面接のみでどのように評価し、担保するのかが明らかでないことから、面接で基礎学力をどのように評価するのかを含め、入学志願者等に対しあらかじめ分かりやすく示すことが望ましい。
募集・定員管理       ・新設専門職大学において、確実に学生を確保できるよう、地元自治体の協力も仰ぎつつ着実な計画のもと、戦略的に取り組むこと。また、学生確保の実態を踏まえ、法人運営や教育研究等へ与える顕在的・潜在的なリスクの把握、分析を不断に行い、財務計画の見直しや学生確保の取組の改善を機動的に行える態勢を整えること。
編入       3年次編入学生への教育研究指導体制について「履修単位が多く、学生が単位修得に困難が生じそうな場合、チューターや指導補助員が面談などを通して2年間を超える履修についても指導していく」とされており、2年間での卒業が困難と想定される者も3年次に編入学生として受け入れるように見受けられる説明がされているが、入学前から2年間では卒業できない者を3年次編入学生として受け入れることは適切ではないことから、新入生(1年次への入学生)として入学を案内することを含め、「3年次編入の入学者選抜資格を与える」際には、本学科の設定する修業年限に十分に留意して対応すること。
編入       編入学の単位認定に当たって、審査チームを設置することや、具体的な人員構成及び作業量の見通しについて説明されているが、審査チーム内の教員の役割分担等の具体的な説明がなく、審査の公平・公正性や効率性を考慮した体制であるか明確ではない。また、入学者選抜委員会や教授会における審査の業務負担が考慮されておらず、単位認定の審査に係る業務量全体が想定されたものよりも増加する可能性がある。加えて、編入学者の出願資格は社会福祉学等を修めた者に限定されておらず、編入学の単位認定に係る審査が必要となる単位の数や種類は各個人によって大幅な差異が発生し得ることを踏まえれば、想定を上回る業務負担が発生することも予想される。これらのことから、審査の公平・公正性及び効率性を踏まえた体制となっているかや入学者選抜委員会及び教授会等も含めた審査業務に係る業務負担について改めて整理するとともに、想定以上の審査に係る業務負担を考慮した体制となっているかについても検討した上で、適切な体制の確保に努めること。
編入       編入学者について、認定単位数によっては入学資格が与えられないか、または2年間の学修期間では卒業が困難であるために、3年次に編入学することができない者も想定されることから、入学希望者に対してはあらかじめ3年次への編入学のための必要認定単位数及び認定された単位数を示すこと。また、3年次編入学が認められない場合には他大学等への進学を望む者もいると想定されることから、適切な時期に、入学希望者に伝達すること。
編入       編入学者は様々な背景を持つ者が入学することが想定されるため、学修の継続のためには学修指導業務のみならず厚生補導業務についても非常に重要となるが、生活全般等に関する相談にも対応するとしている指導補助員単独では対応が困難な相談事項も想定されることから、厚生補導業務における教員と指導補助員との連携体制や業務分担について、学生との直接の対面の機会が少ない通信教育課程の性質も踏まえあらかじめ検討しておくことが望ましい。

教員の年齢について、毎年度みかけるものですね。これは、設置認可でOKが出る先生だと業績などの関係からどうしても年齢が高い教員が多くなってしまうという設置のジレンマでもあります。

入試については、昨今の(私学の)補助金項目とも関連しますが、アドミッションポリシーの中で掲げる内容について、何をどのように評価するかはきちんと検討しないと、面接で何を評価するのかといった今回のような指摘が出てきます。

編入学の指摘は、今回は1大学のみだったのですが、編入学生の受け入れの適切性をきちんとする必要があり、3年次編入なのに残り2年で卒業できるようにきちんとしなさいということを問われています。

教育、大学運営や施設について

続いて教育や大学運営についてです。

  大学 専門職大学 設置
認可
届出 定員
変更
事項
教育       設置の趣旨・目的等が生かされるよう、設置計画を確実に履行すること。また、学術の中心として広く知識を授けるとともに深く専門の学芸を教授研究するという大学の目的、さらに専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開するという専門職大学の目的に照らし、開設時から充実した教育研究活動を行うことはもとより、その水準を一層向上させるよう努めること。
教育       教育課程連携協議会の適切な運用等により、養成する人材像やディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシー等に基づき、時宜に応じた教育課程が、将来にわたって持続的かつ効果的に編成されるとともに、その教育水準を一層向上させるよう努めること。
教育       DPにおける能力や知識と科目について、シラバスや授業科目の概要から、その知識や能力修得に寄与するものがあるのか必ずしも明らかでない。
教育       カリキュラム・ポリシーについて、学修成果の評価の在り方等に関する具体的な記述が見受けられないことから、適切に改めること。
教育       ・当該科目を担当する教員と、その教員の専門性が異なる。
教育       総合演習や卒業研究など複数の領域にわたる内容を扱う授業科目についてはは、設定されたテーマに対応するためには専門の異なる複数の教員で対応する必要があることが想定されるため、専任教員単独ではなく兼任教員を含めた複数の教員で担当するなど、各領域を専門とする教員が適切に連携した上で実施することが望ましい。
教育       ・カリキュラム・ポリシーに、「シラバスに成績評価基準を明示した上で厳格な成績評価を行う」とあるが、シラバスでは「評価方法」として、例えば「課題レポート100%」といった記載に留まっている授業科目等が散見されることから、カリキュラム・ポリシーに示された成績評価を行うための評価基準や評価方法等について、各授業科目のシラバスにより具体的かつ明確に記載することが望ましい。
大学運営       事務組織のうち、大学事務課(専任職員4名)が、教務、学生の厚生補導、図書館司書、研究支援や外部資金関係業務を担当するなど、一つの部署に過度な負担がかかるように見受けられるため、事務組織の積極的な見直しを検討すること。
大学運営       ・新設専門職大学の規模に応じた適切な事務組織となるよう採用計画を着実に実行するとともに、財務書類等の作成はじめ、事務職員としての資質能力を向上させるための研修等一層の充実を図ること。
施設・設備       ・二以上の校地において教育を行うことから、学生及び教員の教育研究等に支障のないよう留意すること。また、学生の課外活動等にも配慮すること。

教育については、特に気になったのは「DPに基づく知識や能力に対応する科目を明示しているが、実際にシラバスをみたら、その知識等に関して確認できないよ」ということですかね。

この科目はいろんな知識や能力を身に付けられるといっても、それは教える側や大学が分かっていればいいのではなく、誰でも分かるように学生がどこでその知識や能力を担保できるかを明示しておく必要があります。

ガバナンス、法人関係について

最後にガバナンスや法人関係です。個人の印象ですが、昨今のガバガバガバナンスの影響か、これに関連する指摘事項が多いように思われます。

  大学 専門職大学 設置
認可
届出 定員
変更
事項
監査       ・内部監査組織の設置等により、監事を支援する体制の充実を図ることが望ましい。
監査       遠隔地に所在する設置校があることから、監事を支援する組織と監事との連携等により、監事による監査の体制の充実に努めること
監査       ・監事監査において教学監査を実施していないことから、今後の監査に関する計画(監査項目及び実施体制等)を改めること。
理事会・評議員会       ・令和3年度中に開催された理事会及び評議員会の実出席率が低いことから、実出席を増やすよう努めること。
理事会・評議員会       会議の運営に関し、以下の事項について適切に行うこと。【・理事会及び評議員会の開催順序】
理事会・評議員会       理事に教学関係者がいないことから、教学側の意見が適切に反映し得る体制の構築に努めること。
理事会・評議員会       ・理事長を始めとする学校法人を構成する一人一人が、専門職大学の設置に係る計画への共通理解を持ち、果たすべき役割を十分に認識した上で、適切に連携をしながら当該計画を履行すること。
理事会・評議員会       ・役員の半数以上が、大阪府知事所轄の本法人と同一名称の法人の役員を兼務していることから、学校法人の運営の独立性に疑念が生じないよう留意すること。
理事会・評議員会       ・評議員が欠員となっていることから、速やかに補充すること。
理事会・評議員会       ・令和3年度中に開催された評議員会の実出席率が低いことから、実出席を増やすよう努めること。
理事会・評議員会       ・理事会及び評議員会の委任状の様式について、白紙委任状ともとれる記載があることから、その内容を改めること。
財務       ・私立学校法の収益事業の趣旨を踏まえ、特別の理由のない限り、その 収益を私立学校の経営に充てること。
財務       ・学生生徒等納付金に対する教育活動支出の割合が同系統の学校法人の平均値に比べ低いことから、学生生徒等納付金の学生への還元に取り組むこと。
財務       ・法人全体の基本金組入前当年度収支差額がマイナスの状態で継続していることから、収支均衡を前提とした中長期的な財務計画の策定・実行など、経営基盤の安定確保に取り組むこと。
財務       近年の経常収支の状況を踏まえて予算を編成し、予算と決算の乖離が少なくなるようその精度を高めること。
財務       ・開設年度前年度以降に借入を予定しているため、負債について計画どおり償還し、負債の減少に努めること。
財務       ・改組転換(既設の短期大学等を廃止して、その教員組織、施設設備を基に新たな大学等を設置することによる標準設置経費等の特例)に該当するため、審査基準上、設置経費が標準設置経費を下回っても差し支えないが、校舎(機器備品、図書等)の整備に当たり教育研究に支障がないよう着実に実行すること。
その他       ・未整備の規程を整備すること。
その他           ・学生確保の実態を踏まえ、法人運営や教育研究等へ与える顕在的・潜在的なリスクの把握、分析を不断に行い、財務計画の見直しや学生確保の取組の改善を機動的に行える態勢を整えること。
その他       ・設置の趣旨・目的等が生かされるよう、設置計画を確実に履行すること。また、学術の理論及び応用を教授研究するという大学院の目的に照らし、開設時から充実した教育研究活動を行うことはもとより、その水準を一層向上させるよう努めること。
その他     「審査意見への対応を記載した書類」の審査意見への対応が十分でない

理事会や評議員会では、今でもそんな杜撰なことをしているのかとの感想しか出てきません。なお、某大学の理事に教学関係者がいないという指摘は、経営のみで大学運営をすると現場としては苦しいだろうなと思います。

また教学監査とはいっても、この辺りは何をするのかはあいまいな印象があります。(教学まで詳しい監事でないと、頓珍漢な質問や指摘をして、よけい大混乱、負担が増えることになるのです)