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大学の学部学科のトレンドと学部学科改組の外部委託

大学が学部学科を改組する、あるいは新しく立ち上げる(設置認可や設置届出)をする場合はかなり大きな事項ですが、大学で働くものとしては大学全体の潮流は聞いておきたいという気持ちがあり、先日、大学の学部学科のトレンドというセミナーを拝聴しました。

ただセミナーを聞いていて、ふと「大学の学部学科のトレンドとは何だろう?」と思ったのです。大学の学部学科のトレンドと全て丸投げすることによる怖さをちょっと書いてみます。

なお、ここでは大学のトレンドを今後新しく学部学科を作る場合にどの分野や何を主軸とするのかといった日本の大学全体の潮流を指します。

学部学科のトレンドの要因は何があるのか?

学部学科のトレンドといっても、様々な要因がありますが大きく分類できるのではないでしょうか。少し考えられるものをあげてみます。

社会情勢や政策からのトレンド

数年前までは看護師が足りないというデータから、看護師を養成する学部学科が多く設置されました。

そこでおこったのは看護系の教員不足で、新設大学から誰か紹介してほしいという依頼があったとか。ただ今回とはテーマが違うので省略します。

近年では、数理・データサイエンス・AI教育からデータサイエンス系の学部学科が出てきていますね。言うまでもなく、この分野は社会から求められており、人材養成も必要とされています。

国としても政策の一つとして推し進めているのと、AI戦略2019の概要を見ると大学は教育改革として4つのレベルが設定され、数理・データサイエンス・AI教育を実施することが求められています。

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出典:AI戦略2019の概要,内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当),2019

昨年度の志願状況

志願状況からもトレンドを見る事が出来ます。例えばこんな記事からも大まかに動向が把握できますね。

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ただこれは既に終わっているトレンドであり、今後もこれが続くとは限らない、あるいは短期的かもしれないというトレンドです。また毎年変わる可能性もあり、各分野の志願者数の増減だけで、大学の新規の学部学科をどうしようと考える大学はほとんどないはずです。

コンサルタントが勧めるトレンド

大学のコンサルタントはあまり知られていないかもしれませんが、いくつもあります。参考となるのはhigh190さんのこのブログの最後にある記事です。

high190.hatenablog.com

大学のコンサルタントといっても、①純粋なコンサルを主としているところ、②大学関係に書籍や備品を納入する会社がやっているところ、③今まで大学コンサルをしていたが独立したところなど様々です。

ただ②についてはたまに注意が必要と考えていて、コンサルタントが主というより、自社の製品を購入してもらったり、取引が主という場合があります。そうすると多額の設置経費がかかる学部学科のほうがコンサルにとって都合がいいわけです。

学部学科の改組と外部委託の怖さ

大学が学部学科の改組をするということは、かなり大がかなりなことです。また改組の目的としては様々ですが、その一つに大学のリブランディングやテコ入れがあるでしょう。ただこれなら絶対に受験生が集まるという魔法の学部学科はありません。

学部学科の改組を定員充足のために行うのであれば、外科手術みたいなものだと思っています。ただ大学によっては全部丸投げでやってもらうこともあるそうです。

ただ実際に教育研究を行うのは大学です。言うなれば責任は大学が持つことが大前提なのです。

基本的には大学自身が今のリソースを基本としつつ、各大学で何を目指すのかを踏まえて学部学科を検討しなければいけないのではないでしょうか。もちろん検討の中で社会情勢といったトレンドは加味する事はあるでしょう。

また外部から紹介されたトレンドが本当にトレンドかどうかは大学自身が判断しなければなりません。その背景は何があるのか、何が狙いなのかは慎重に調べる必要があります。