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教育再生実行会議 ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)のメモ

2021年6月3日に教育再生実行会議からポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)が公表されました。

◆教育再生実行会議 提言◆ ポストコロナ期における新たな学びの在り方について(第十二次提言)(令和3年6月3日)
本文
参考資料

 

また6月8日に開催された中央教育審議会大学分科会(第161回)でも本提言が資料としてあがっており、概要などが示されております。

近年の教育政策は文部科学省からではなく、首相官邸から出てくるものも見ておく必要がありますので、この提言は概要などはかならず押さえておく必要があります。

ただ概要だけでは細かい所は分からず、今後政策誘導として上がってきそうだなと思う点は予め押さえておくことも必要です。そこで個人的なメモではありますが、第十二次提言について、教育に関わる箇所のみのメモを置いておきます。

またメモをスライドにしたものも一緒に掲載します。読むのが面倒な人は見出しの次にある画像ファイルだけ見て下さい。

(今回はリカレント教育や学生支援、グローバルは省略しております)

遠隔・オンライン教育の普及・推進について

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今までオンライン教育といっても、先駆的な大学はやっているかなぐらいだったのがコロナ禍により多くの大学で遠隔・オンライン教育が行われるようになりました。

遠隔・オンライン教育については、この半年ぐらいに大学紀要などで事例などが多く発表されています。またオンライン教育に関する調査も大学で行われているケースもあります。

国としてもいくつか調査があったかと思いますが、オンライン教育については(一部の意見という前提ではありますが)メリットや課題について整理をしています。

メリットがいくつも挙げられていますが、注意すべきはあくまで意見があったと述べられているだけです。つまり、どれぐらいの数の意見があったのか、メリットとして挙げるには妥当なのかは読み手には判断がつきません。

メリットについて気になる点は、このような提言でメリットが書かれることはある意味、遠隔・オンライン教育のメリットが定義づけられてしまうような恐れや出来たこと(プロセスや体験等)がメリットであるが、大学として求められるアウトカムについては触れられていないことは気になります。 

また国としては、今後パンデミックが落ち着いたとしても昔のような教育ではなく、遠隔・オンライン教育も活用することを考えているようです。もちろん遠隔・オンライン教育の効果はきちんと検証せねばならず、今後この辺りの研究支援か補助事業が出てくるのではないでしょうか。

もちろん遠隔・オンライン教育だけにしろとこの提言で示しているでのはありません。正課外活動も含めた学生生活が重要であることは前提とし、対面の重要性も示唆しています。

読み方によっては、正課外活動だけ対面にしろとも解釈できないこともないです。これは今まで国に寄せられた意見の結果なのかもしれませんね

データ駆動型教育と遠隔・オンライン教育

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データ駆動型の教育というあまり見慣れないワードが提言に入っています。

端的にまとめると、学生の学習に関わる学修内容や理解度の色んなデータを使って、個人最適化した教育を目指そうよという事ですね。

その為には、遠隔・オンライン教育の推進も重要で、特に国としてはいくつもこんな事をするよという軸を出しています。

このデータ駆動型の教育ですが、LMSを前提としているようです。そのうちLMSがなくば大学教育にあらずみたいに言い出すかもしれないと思いつつ、教学システム=LMSでは必ずしもないわけです。

今後はLMSの導入及び維持管理はコスト(金・人)がものすごくかかるので、ICTに関わる施設計画とも含めて拡充なども考えねばなりません。

教育の改善を通じた質の保証

 

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今の大学教育ではアウトカムが重視され、「何が出来るようになったか」が問われています。今回の提言もDPの具体化などで触れられています。

ただこの提言ではかなり具体的だと思うのが、学生の履修や授業科目への精選まで含んでいることです。これをもとにカリキュラムをシンプル化しようとか、CAP制度の厳格化(例えばセメスターだと半期で16-20単位)といったことも政策誘導で盛り込まれてくるかもしれません。

また全体として、全国学生調査を今後活用したいのだなという考えがヒシヒシと伝わります。特に学生時代のデータと社会人のデータを統合して研究利用したいという文章があり、将来的には大学や学部ごとに職種や給料などの統計分析に使われるかもしれません。

なお、大学のデータを使う場合は大学によって、あるいは調査やシステムによってデータの算出方法や定義が異なる場合があるという事があります。この辺りを統一化も含めて実施しないといけないように思います。

例えばコモン・データ・セットなども参考になるかもしれません。

終わりに

今回の提言では、他にも学部・教務のデジタル化や学生支援、施設なども触れられています。ただ提言を見ているとラーニングアナリティクスなども参考になる場合もありそうだなと感じます。

あとこの提言ですが、カーボンニュートラルとか、流行りの文言を出来る限り突っ込んだろ感がぬぐえませんね。