2023年3月8日(水)に行われた中央教育審議会総会(第134回)会議資料において、次期教育振興基本計画の答申案が示されています。
また3月8日に次期教育振興基本計画について(答申)(中教審第241号)が公表されました。
6月16日には閣議決定されたものが公表されています。
計画はPDFで82ページもあるのだかなりの量となるのですが、高等教育や大学に関する部分は、今後政策誘導という形で大学に影響があるかと思うので、個人的なメモとしてまとめてみました。(ざっと見たい人は、公開されている概要をみてください)
なお、ざっとみただけなので、後日答申が出たら改めて見直しをします。
- 目標1 確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成
- 目標2 豊かな心の育成
- 目標3 健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成
- 目標4 グローバル社会における人材育成
- 目標5 イノベーションを担う人材育成
ここからは目標別に高等教育・大学についてです。
目標1 確かな学力の育成、幅広い知識と教養・専門的能力・職業実践力の育成
ここでは大学に関して、入学者選抜改革、学修者本位の教育の推進、文理横断・文理融合教育の推進、キャリア教育・職業教育の充実があります。
大学入学者選抜改革
ここは今までとあまり変わりません。入学共通テスト、入学志願者の思考力・判断力・表現力の評価、学力の3要素の多面的・総合的な評価が示されています。私学においては、私立大学等改革総合支援事業タイプ1の要件でもありますね。
(今後は全ての大学に関係する経常費補助金などにもいくのでしょうか)
学修者本位の教育の推進
こちらは教学マネジメント指針、さらにはグランドデザイン答申をふまえてとなります。指摘されている内容は今までの高等教育政策から外れるものではないですが、特に学位プログラムの編成・実施や学修成果の可視化、教育の工夫などは問われるでしょう。
またここでは大学間の連携としてプラットフォームや大学等連携推進法人制度の活用、共同カリキュラムなどが推進されています。
※おそらく教学マネジメント指針(追補)も含めて確認しておけば大丈夫でしょう。
文理横断・文理融合教育の推進
文理融合もここからスタートではなく、今まで言われているものであり、補助金の要件ともなっています。ただし、注意すべきは、「大学間連携や地域社会のリソースを結集したプラットフォーム形成を通じて、課題解決を含む文理横断型の教育プログラムを構築し、地域の高度化やイノベーション創出を担う人材を育成する大学等の取組を支援する。」とありますね。
キャリア教育・職業教育の充実
高等教育では、「産業界等と連携し、適正なインターンシップをはじめとする学生のキャリア形成支援に係る取組の更なる推進を図るとともに、ボランティア等の学外で行う活動の授業の一環としての位置付け、単位化を促進する。」とあります。
ボランティアの授業の一環としての位置づけと単位化の促進は、ボランティアをやるだけで単位をあたえるのは、学位授与の観点から適切なのかはそれぞれ考える必要があるかもしれません。
※単位にしても、卒業単位にならないのであればまた話は違うかと思います。
※一方で単位がないと学生がボランティア活動に参画しにくいといういけっもききます。
また「大学等が行う社会人や企業等のニーズに応じた実践的・専門的なプログラムを認定する「職業実践力育成プログラム」の活用を促進するとともに、大学等による組織的・継続的なリカレント教育の実施に向けた支援を行う。」とあるので、このあたりは補助事業などが出そうですね。
関連指標
この目標で大学関連の指標です。個人的に気になったもの(補助金に関連しそうなもの中心)は赤字となっています。
・大学生の授業外学修時間の充実
・大学と企業等とで連携して実施する、企業の課題解決や製品開発等を題材とした授業科目の開設(PBLの実施) を行う大学の割合の増加
・主専攻・副専攻制を導入する大学の割合の増加
・4学期制を採用する大学の割合の増加
・課程を通じた学生の学修成果の把握を行っている大学の割合の増加
・教育研究活動等の改善等の観点から、就職先等の進路先から卒業生の評価を聞く機会を設けている大学の割合の増加
・職業実践専門課程の認定校数の増加
・職業実践力育成プログラム(BP)の認定課程数の増加
目標2 豊かな心の育成
いじめ、同と公教育、生命の安全教育の推進など子供に関する事項が多いのでここはあまり大学に係るものはありません。
目標3 健やかな体の育成、スポーツを通じた豊かな心身の育成
ここは「運動やスポーツに親しむ資質・能力を育成するとともに、生活習慣の確立や学校保健の推進等により、心身の健康の増進と体力の向上を図る。」とされているものです。
ここも大学関連はあまりありませんが、福祉やスポーツ分野であれば「スポーツを通じた共生社会の実現・障害者スポーツの振興」は教育と少し関りがあるかもと思います。
目標4 グローバル社会における人材育成
この目標は海外留学や留学生受入れ、さらには関連する教育などが含まれています。
大学に関連するものとして、留学生受入れ推進、大学の国際化、外国語教育の充実などがあります。
日本人学生・生徒の海外留学の推進
コロナが落ち着き、ようやくオンライン留学から対面留学に切り替わってきました。ここでは短期留学の推進や留学支援について記載されており、トビタテも含め、官民、あるいは大学に対して引き続き支援があるものだと思います。
外国人留学生の受入れの推進
ここでは留学生の受入れだけではなく、教育研究の活性化や外国人留学生に対する経済的支援が書かれています。また気になるのは「企業等と連携した国内就職支援等の受入れ環境の整備を推進する。」とあるので、キャリア支援の観点からも今後動向をみることが必要となります。
大学の国際化
国際かについて、留学生だけではなく教員の受け入れも含んでいます。また教育については、「海外大学との大学間協定に基づく交流の拡大、ジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリーのプログラム構築の促進、オンラインの効果的な活用を含む国際交流・研究ネットワークの構築・拡大、質の保証を伴う持続可能な国際連携・海外への拠点展開・キャンパスの多様性促進等に取り組む大学等」などもあり、もともと国際化にあまり着手していない大学にはハードルは高いですが、海外の大学との連携は国際交流の部署・教学部署・企画部署とともに検討しないといけないなと思います。
外国語教育の充実
大学に関しては英語の4技能の英語力の評価が問われていますね。私立大学等改革総合支援事業でも今年は問われましたが、来年も引き続き大学に英語4技能の評価の推進が続きそうです。
(非常に手間がかかるので、結局は外部試験に頼ることになるのでしょうか)
関連指標
・海外に対する教育事業に参加した日本側の教職員・学生・児童・生徒の数の増加
・海外に対する教育事業に参加した相手国側の教職員・学生・児童・生徒の数の増加
目標5 イノベーションを担う人材育成
ここはイノベーション人材育成が目標なのですが、大学については大学院や研究推進も含まれています。また教育では人材育成、起業家教育(アントレプレナーシップ教育)の推進もここに含んでいます。
大学院教育改革
認証評価では昨今大学院の指摘が多くされています。例えば3つの方針の不備、きちんとした学修成果の把握が行われていないなどですね。
今回の大学院教育改革については、「優秀な人材の進学促進と修了者の進路確保、キャリアパスの多様化等を、行政・産業界等とも連携しつつ推進」や「様々なセクターで活躍する高度な博士人材を育成するとともに、機関の枠を越えた産業界等との連携した教育プログラムの構築を推進」などが示されています。
若手研究者・科学技術イノベーションを担う人材育成
重要なキーワードとして、博士後期課程学生の処遇向上とキャリアパスの拡大ですね。またURAやライフイベントと研究との両立のためのサポート体制も含まれています。
大学・専門学校等における専門人材育成
専門職大学や専門職学科の教育の充実の推進が示されています。
理工系分野をはじめとした人材育成及び女性の活躍推進
東京工業大学の入試のニュースが記憶に新しいところですが、大学関連だと「大学における女子学生・女性教員の在籍・登用状況等の情報公開の促進や、理工系等の分野における女子を対象とする大学入学者選抜の促進を図るほか、理工農系の分野に進学する女子学生への修学支援の取組等を進める。」とありますので、この流れはまだまだ続くものだと思います。私学文系大学には厳しい時代になりますね。
優れた才能・個性を伸ばす教育の推進
入試での多様な能力が評価される仕組みの拡大があるので、この辺りは今後なんかしらの方針が示されそうです。
起業家教育(アントレプレナーシップ教育)の推進
数年前からこれが流行りでしたね。なお、ここは下記のように記載されているので、数理・データサイエンス・AI教育のように各大学で取り組むのが当然みたいになっていくのでしょうか。
第6期科学技術・イノベーション基本計画等に基づき、スタートアップ・エコシステム拠点都市に参画する大学において海外大学等と連携し、科学技術等の活用も含めた実践的なアントレプレナーシップ教育を行うとともに、これまでの成果を全国の大学に展開する。
<参考リンク>
大学の共創拠点化
国立大学に特化した内容です。「国立大学法人等が、地域、産業界等多様なステークホルダーとともに、共創拠点(イノベーション・コモンズ)化を推進」とあります。
指標
・学部入学者数に対する修士入学者数の割合の増加
・修士入学者数に対する博士入学者数の割合の増加
・生活費相当額(年間180万円以上)を受給する博士後期課程学生数の増加
・博士課程修了者の就職率の増加
・博士課程修了者を研究開発者採用した企業の回答のうち、「期待を上回った」「ほぼ
期待通り」が占める割合の増加・自治体や企業等と連携し社会や地域のニーズに対応できる医療人材の養成に取り
組む大学の割合の増加・自然科学(理系)分野を専攻する学生の割合の増加
・大学(学部)の理工系の学生に占める女性の割合の増加
・全国の大学等における起業家教育(アントレプレナーシップ教育)の受講者数の増
加・大学と企業等とで連携して実施する、企業の課題解決や製品開発等を題材とした授授業科目の開設(PBL の実施)を行う大学の割合の増加(再掲)