2023年での中央教育審議会大学分科会(第175回)で「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について(諮問)」が出されております。
とうとう、国としては我が国の危機である少子化に対して、高等教育の方向性を変わることをこの諮問を出されています。
そもそも以前から、大学が淘汰されるのはやむをえないというスタンスではいたものの、23区の規制を含め、想像以上に高等教育の維持がされていたように思います。
とはいえ、昨年・今年と他の大学や業者の方から話を聞くと、募集状況の動きがいつもと違うという話も聞きます。
言うまでもなく大学としては少子化により、様々な影響があります。収入もありますし、補助金や様々な制度、学部学科の改組へも影響し、教育研究の質の維持向上にも困難をきたすでしょう。
今後は国として高等教育全体の適正な規模や地域における質の高い高等教育へのアクセスといったことが検討され、2040年以降を見据えた政策の転換があるのではないでしょうか。
そこで、諮問について少し気になる点をメモ、コメントをいれています。
- 諮問1 2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿
- 諮問2 今後の高等教育の適正な規模と地域における質の高い高等教育へのアクセス
- 諮問3 国公私の設置者別等の役割分担
- 諮問4 高等教育の改革を支える支援方策の在り方
- 終わりに
諮問1 2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿
グランドデザイン答申では2040年に向けた検討がされていましたが、ここから2040年以降の社会を見据えた高等教育とされています。
また少子化だけではなく、社会情勢が目まぐるしく変わり、遠隔授業、デジタル化、脱炭素化等の世界的な潮流に伴う産業構造の変化を見据えた成長分野をけん引する人材の育成などがあり、それらを支援する制度もでき、運用されているものもあります。
しかし、大学として多額な先行投資をしなければならないものもあり、なかなかそうは簡単にはいきません。
また本諮問では留学生や社会人というキーワードもあり、多様な価値観が集まるキャンパスといいますが、スケールメリットがないと、学生・学修支援などへのインプット(金・人)も大学として難しい現状があるのではないでしょうか。
諮問2 今後の高等教育の適正な規模と地域における質の高い高等教育へのアクセス
ようは「大学の連携、再編・統合を促進を進めるよ!」ですね。最近だと学校法人清泉女学院との法人合併に関する協議開始についてというニュースもありました。
大学間の連携というのも、共同で事務を実施とか、教育課程とか、運用するまでにかなりの時間と協議が必要です。近年は大学や地域とのプラットフォームがありますが、共同事務というのはかなりハードルが高いとは聞いています。
再編・統合はあまり事例がありませんが、言い方を変えれば吸収ということもあるかと思います。むしろそれが主ではないですかね?
なお、大学(とその法人)が突然なくなると卒業生へのサポート(各種証明書等含む)をどうするかという課題もあります。
最後に再編、統合、吸収した場合は教職員はどうなるのか?という不安を同業者から出てくるように思いますが、全てが救われるというのはかなり楽観的ではないかと思っています。(特任で再雇用とかはありそうな話なかと思っています)
とはいえ、地方の高等教育機関が果たす役割も重要であり、その多面性を考慮する必要があるとも諮問の中では言われていますが、高等教育へのアクセスなので私学とは限りません。
ここは今後の高等教育は単なる規模の縮小ではなく、質の高い教育を提供する新たな高等教育構造と大学の連携が求められるということですね
諮問3 国公私の設置者別等の役割分担
ここが今回の諮問で気になるところです。以下が設置形態別の役割です。
国立は世界最高水準の教育研究の先導や学問分野の継承・発展等
公立は設置者である自治体の地域活性化の推進や行政課題の解決への貢献等
私立は高等教育の中核基盤として、専門人材の輩出や多様性確保等
短大は地方の進学機会を確保と教育・保育、看護、介護等の人材養成
高専は実践的・創造的な技術者の養成
専門職大学は専門職業人の養成
専門学校は医療・福祉、工業、ITなど地域産業・社会を担う専門人材の輩出に貢献。
昔言われた大学の機能別分化「①世界的研究・教育拠点②高度専門職業人養成③幅広い職業人養成④総合的教養教育⑤特定の専門的分野(芸術、体育等)の教育・研究⑥地域の生涯学習機会の拠点⑦社会貢献機能(地域貢献、産学官連携、国際交流等)」とかはどっかいってしまったようですね。
ここにこう書かれるということは政策、さらに補助金等にも関わってくるところかと思います。
諮問4 高等教育の改革を支える支援方策の在り方
ここは短いので要点も何もないのですけど、高等教育は国力と未来に直接関わる重要な要素なんだけど、資源配分と効率化が前提で、財源の確保が必須だよ。でも国は財政が厳しいし家計負担の高さが問題とは思っている。だから基盤的経費や競争的研究費の充実を検討するし、足りない部分は民間投資を含めた多角的な財源確保も検討するよ。ということですね。
金はないけど、支援の充実は必要だから配分を考えるけど、足りないなら外からも金とってこい、雑多にいうとこんな感じでしょうか。
終わりに
個人としては韓国の高等教育事情が気になっているのですが、こういうニュースもありました。
あまり明るい諮問ではないのですが、各大学がどのように生き残っていくのか、多角化していくのか、収入をどうするのかといった検討することもまったなしなのでしょうね