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令和5年度私立大学等改革総合支援事業の選定結果分析のメモ

令和5年度私立大学等改革総合支援事業の選定結果が2月7日に公表されました。

www.mext.go.jp

過去の選定公表日をみると例年よりはちょっと早いように思います。

  調査通知 調査締切 大学への通知(内示含) 選定公表
2016年 5月27日 9月9日 12月2日 3月7日
2017年 7月31日 10月6日 11月13日 2月5日
2018年 7月31日 10月9日 なし 2月26日
2019年 8月27日 10月28日 3月4日 3月19日
2020年 7月14日 11月30日 2月15日 3月19日
2021年 8月10日 11月30日 なし 2月18日
2022年 7月22日 10月31日 2月10日 2月中旬
2023年 7月24日 10月31日 2月7日 2月7日

なお、だいぶ昔は内示があって年内には結果が分かっていた時もありました(そのぶん調査結果締め切りも早かった)

今回はタイプ1(特色ある教育の展開)について、選定に関してのメモをまとめています。

改革総合支援事業タイプ1の今までの選定率について

まずタイプ1の選定結果を過去5年分まとめました。

年度 満点 選定点 申請校 選定校 選定率
2019年 89 48 583 178 31%
2020年 99 68 556 130 23%
2021年 96 73 554 117 21%
2022年 95 69 539 102 19%
2023年 97 70 496 102 21%

これを見ると、下記といった点が挙げられます。

  • 近年は選定点は変わらない
  • 申請校は年々減っている
  • 選定校数も5年前と比較すると約60%弱
  • 選定率は選定校が減っているから最近はあまり変わらない

なお、文科省のHPで公表されている得点分布を見ると、選定ラインに多くの大学がいますので1点の違いで選定されていない大学もありそうです。

出典:https://www.mext.go.jp/content/20240207-mxt_sigakujo-100001428_3.pdf

また収容定員規模別の選定状況を見ると収容定員が4000人未満の小規模大学が選定率は高くなっていますが、これは〜〜〜について全学部で実施しているかといった設問が多く、大規模大学ほど難しい状況があるゆえでしょう(これは例年変わらないですね)

出典:https://www.mext.go.jp/content/20240207-mxt_sigakujo-100001428_5.pdf

だから、今回改革総合4タイプ全てに選定されている中規模・大規模大学は学内にやり手がいるのでしょうね。

設問から見るタイプ1の監査と検査のポイント

ここからは簡単に気になる設問のみ見てみましょう。なお設問については下記の参考記事をご覧ください。

www.daigaku23.com

2.IR機能の強化

ここは他大学へのIRの普及に向けた取組や研修受講が必要です。選定校では比較的他大学への普及活動を実施していますが、選定されていない大学はそもそもIR機能がない大学等も130あるようです。

3.卒業時調査

数年に1回ですが、必要な回収率が上がっている設問です。選定校では多くの大学で85%以上の回収率なので、選定されるためにはこれは外せないでしょう。

なお、卒業時調査はIRでは卒業の高揚感でいい結果が出やすくなるので、本当に適切な調査かは疑問と雑談レベルで話すことがあります。

6.ICTを活用いた双方向型授業

ICTを利活用した質の高い教育を実現するための全学的な計画を策定し、技術支援・教育支援を行う体制を整備したうえで、双方向型や自主学習支援についてやっているか問われていますが、選定校は95%が実施しています。体制整備さえ行えば、あとはタブレット使った授業など(例えば教職課程)があればクリアできるでしょう

7.GPA制度の導入及び活用 

GPAを用いて下記の取組をしていればいいのですが、難しいのは2と4でしょうか。4については仕組みさえあれば何とかできますが、2については成績評価の厳格化もあわせて考えると制度設計はかなり大変です。

  1. 成績不振者に対する個別学修指導の実施
  2. 進級判定又は卒業判定
  3. 授業科目履修者に求められる成績水準の設定
  4. 教員間もしくは授業科目間の成績評価基準の平準化の取組 
12.企業との意見交換

これ、意見交換さえして、きちんと見直しに議論に使用すればいいので、結果として改善出来ない場合もありますし、まずは企業と意見交換の場を設定しましょう。

キャリアセンターなどから懇意にしている企業や団体を紹介してもらえれば何とかなります。

14〜19 入試関連

検討すべきは記述式や、数学・英語4技能ですね。ただ令和7年度入試の検討を考えると時間があまりないのと、入試をいじるのはかなりハードルが高いです。

24.IRの専門職の配意や情報公表

情報公表はホームページのどこかにあればいいので、IRの専門性の担保をきちんとやる必要があります。個人的にはIR担当者がIRに関する研究やデータベースに関する専門資格を持っていればエビデンスは作りやすいですね。

25.数理・データサイエンス・AI教育

企業等の実データ等を用いて組織の課題解決に資するデータ分析などの実践的なデータサイエンス教育を行う数理・データサイエンス・AIに関する授業科目を、学部等において開講しているかが協定を結んだりする必要があります。参考になるのは北陸大学でしょうか。

28.実務家教員の活用促進

今年から全ての実務家教員(兼任含む)へのFD実施が加わり、満点を取るのが少し難しくなりました。ただ選定校の約40%は満点をとっているので、下記の取組全てを実施しています。ここは比較的点を取れるので、学内調整でなんとかなるところかもしれません。

ア 大学等の教育の質を向上させるために、令和5年度の教育課程編成にあたって、 年間6単位以上の授業科目を担当する実務家教員を参画させている。

イ 実務家教員が担当する授業科目の割合について、前年度より増加している。

ウ 全ての実務家教員に対して、大学教員として必要となる教授法や最新の学術内容を 教育するFD等を受講させている。 

32.過年度との比較

昨年より点数があがったらボーナス加点のところですが、結果をみるとあまり恩恵を受けているところが少ないですよね。これ本当にいりますか?