2022年7月22日に令和4年度 私立大学等改革総合支援事業に係る調査について(依頼)が通知されました。
一昨年7月15日→昨年8月10日→今年7月22日なので、まあ遅くもなくという感じなのと、お盆に入る前でよかったという印象があります。
令和4年度は令和3年度と引き続き、以下のタイプがあります。
タイプ1:『Society5.0』の実現等に向けた特色ある教育の展開』
タイプ2:『特色ある高度な研究の展開』
タイプ3:『地域社会の発展への貢献』※地域連携型・プラットフォーム型
タイプ4:『社会実装の推進』
選定校予定数を見ると昨年から少し厳しくなったように思います。
さて、本ブログでは昨年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1からどう変わったか、どこに注意すべきなのか、気になる点についてメモとしてまとめます。
また今年度のキーワードは、アセスメントプラン、オープンバッジ、総合的な英語力の評価、多様な背景と受入れ
- 過去2年の選定校・選定率と令和4年度の選定予定数
- 改革総合支援事業を見る上でのポイント
- 改革総合支援事業タイプ1の構成と点数(令和3年度との比較)
- 改革総合支援事業タイプ1の各設問について
過去2年の選定校・選定率と令和4年度の選定予定数
令和2年及び3年の改革総合支援事業の選定結果と今年度の選定予定校数は下記となります。なお、数字は大学だけではなく、短大や高専も含んだものです。
R2申請校 | R2選定校 | R3選定率 | R3申請校 | R3選定校 | R3選定率 | R4選定予定数 | |
タイプ1 | 556 | 130 | 23% | 554 | 117 | 21% | 105 |
タイプ2 | 87 | 51 | 59% | 88 | 42 | 48% | 45 |
タイプ3 | 191 | 56 | 29% | 192 | 61 | 32% | 165(20~40グループ含む) |
タイプ3(プラットフォーム) | 193 | 131 | 68% | 175 | 101 | 58% | |
タイプ4 | 96 | 52 | 54% | 97 | 49 | 51% | 80 |
今年はタイプ1はさらに厳しくなりそうですね。他は例年通りといった感じの印象です。
タイプ1は年々難しいというか、今まで採択されていなくて、採択されるのはかなり難しい状況で、年々脱落をしていくというのが正しい表現な気もします。
改革総合支援事業を見る上でのポイント
毎年書いているものですが、改革総合支援事業(教育の客観的指標)でよくやりがちや注意すべき点をまとめておきます。
- 基準時点は確認したか?特に年度や月には注意が必要で、今年は基準日が過去2年より早い(元に戻っている)
- 各設問の要件及び確認書を確認し、全てが適合しているか?
- 例示されている根拠資料例でなくてもいいが、要件にあった根拠資料は揃っているか
- 現場から出てきた資料及び主張だけではなく、大学としての組織的に判断したエビデンスなのか
特に4つ目が重要で、現場の「私はこう思うから、この資料は正しい」は通用しません。誰もがその資料が該当の設問の資料であることが納得できる客観性が非常に重要です。
また年度などは設問で異なるので、特に注意しておきましょう。
さて、改革総合支援事業を担当する人は現場に根拠資料を依頼し、それを取り纏めて〇点でしたという横流しと取りまとめ作業は誰でもできます。
それぞれのエビデンスが的確かを判断し、現場は実施していないといっても解釈や見落としにより実際にやっているケースもあります。そのため、担当者自身の確認や情報収集能力も大変重要です。
そのうえで、点数が足りない箇所については企画をすることが担当者としての仕事だと思います。
改革総合支援事業タイプ1の構成と点数(令和3年度との比較)
続いて、おおまかに質問の比較一覧を載せておきます。
今回は変更点も多く、マイナーアップデートとメジャーアップデートの間ぐらいな変更のイメージです。
改革総合支援事業タイプ1の各設問について
ここからは各設問についてです。なお、個人的な観点から留意事項を入れていますが、まずは各設問の確認事項を通知された書面からご覧ください。
1.教育の質向上
①全学的な教学マネジメント体制の構築
全学的な教学マネジメント体制の設問として体制は変わらないのですが、求められる取組みが変わりました。昨年は①体制構築、②IR情報を活用した教育課程の検証や改善サイクルだったのが、今年は①IR情報の活用、②アセスメントプランに則った点検・評価の実施(大学及び学部)が求められています。
また本体制において、効果的・効率的な教育課程の運営のために必要な教職員の業務内容の整理・点検を実施しなければなりません。
体制については、条件があるのでしっかり確認し、特に専門的な支援スタッフについて、大学としてどうするのかは確認が必要です。
2.IR機能の強化
点数配分が大きくなっているので、結構重点項目です。
内容は大きく変わりはありませんが、他大学等へIRのコンサルや講師をやっていることが重要です。
外部講師やコンサルティングは比較的ハードルが高いので、まずは定期的に研修会に参加させるのがよいかもしれません。
3.卒業時アンケート調査の実施・公表
学生の課程全体を通じた成長実感や満足度を測定するための卒業時調査の実施と結果の公表が問われています。
昨年から回答率は85%か、50%以上が求められているのですが、卒業時としながらも卒業年次にすればいいといった緩めな設問ですね。
4.アクティブ・ラーニング型の科目の開講
これは毎年度ある息の長い設問です。今年度は、アクティブラーニング型の科目が60%・50%・40%と求められており、昨年度は最大値で50%だったので少し厳しくなっています。
またアクティブラーニングの用語の定義は教学マネジメント指針の用語解説を参照と書かれるようになりました。
「教学マネジメント指針」(令和2年1月22日 大学分科会):文部科学省
5.情報リテラシー科目の開講
昨年と大きく変わりません。ただ、担当者として迷うのがレポートの書き方やプレゼンテーション技法まで入っていて、初年次教育とかなり混同してしまう人もいるのではないでしょうか。
ただ、例年取れていれば問題ない設問です。
6.ICTを利活用した教育の計画、体制及び双方向型授業や自主学生支援などの実施
今まではICTを活用していればよかったのですが、今年からは全学的な計画を策定し、技術支援や教育支援を行う体制の整備が必要です。組織的にやりましょうといったことですかね
計画と体制整備があればいいのですが、体制整備さえあれば計画は何とかなりそうではいます。
あとは例年のように、ICTで双方向や自主学習支援があればいいだけですね
7.GPA制度の導入及び活用
GPAをきちんと活用しているかで、個別指導、進級・卒業判定、授業科目履修者に求められる成績水準の設定、教員間もしくは授業科目間の成績評価基準の平準化が必要です。
授業科目間の成績評価基準の平常化は、その内容の会議やFDの実施などもいけるかもしれませんね。(内容次第ではあります)
8.CAP制度の設定
単位の上限をしているか、さらに成績状況に応じてCAP制度の緩和か厳格化をする制度が求められている設問です。
昨年と変わらないので、さほど大変ではありません。
ここ、そのうち単位の上限は年間で50単位未満であるとか出してくるのかなとも思っています。(今年はそんなのはありません)
9.ティーチング・ポートフォリオの導入・活用
例年ある設問ですが、今年は点数が少し下がりました。
さて、ティーチング・ポートフォリオはそのものか、名称はそうでなくても、その機能を持ち、活用している(制度がある)ことが求められています。
なお、義務付けではなく、制度としてあればいいのでやりやすい設問です。
10.大学の教育活動への学生の参画促進
これはTAやSAなどの学生サポートスタッフだけではなく、大学運営・自己点検・評価に学生がはいっているかも問われます。
昨年と設問の書き方は変わっていますが内容は変わりません。
学生サポートスタッフはTAやSA、ピアサポートも含みますが、大学運営のほうが何らかの手立ては必要でしょう。(例えば該当する委員会に学生に参加してもらうなど)
11.学習成果等の可視化
ディプロマ・サプリメントの点数が昨年より減っていますが、毎年度変わらずに求められているものです。
ただなんちゃってディプロマ・サプリメントや、これは本当にそうなのかを疑問をもつ取組みがみられる大学もありますね。
なお、仕組み(制度)があれば大丈夫なので、まだディプロマ・サプリメントを出していない大学も多くあるでしょう。
12.学修成果の企業等との意見交換の実施
いわゆるステークホルダー(企業)との学修成果について意見交換をしているかですが、ポイントは企業等の採用プロセスと学修成果です。
大学がどのように学修成果を示せばいいかを企業と情報交換するというのは11のディプロマ・サプリメントとも関連がありますね。
まあ手っ取り早いのは、キャリア支援部署から採用担当者を紹介してもらう、学内企業説明会の時に1時間程度もらって、意見交換の実施でしょうか。
13.学修歴証明のデジタル化「NEW!」
新しくきた設問です。
大学全体や履修証明などで証明書のデジタル化やオープンバッジの導入が該当します。なお、コンビニで出せる証明書はデジタル化ではないそうです。
オープンバッジについては、数理・データサイエンス・AI教育で導入している大学が最近多いですね。
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2.高大接続
14.学力を多面的・総合的に評価する一般選抜の実施
大学の理念や課題を踏まえて、アドミッションポリシーで入学者に求める能力を明確化したうえで、この取組みが求められます。
なお、今年から要件が変わり、学力検査と調査書が必須で、そこに面接・ディベート・プレゼン・探究的な学修の成果等の資料などが必要となります。
15.一般選抜における記述式問題の出題
ここは大きな変更なしですね。一般入試でも一部の試験でOKですが、全学科等でやっていることは必要ですね。
16.入学者選抜の多面的・総合的評価及び学生の能力を伸長するための取組
一昨年から設定された設問で多面的・総合的評価とそれを伸ばす取組として初年次教育などを行っているかが主な内容です。
なおこれは既に終わっている令和4年度入学者選抜が対象なのと、昨年度の改革総合支援事業との整合性には注意しましょう。
学生の能力を伸長する取組みは正課外も対象になるため、初年次教育を実施していれば、何とかなる設問だと思います。というより曖昧過ぎて、何とでもなってしまうものですね。
17.アドミッション・オフィサー
例年同様の設問で、アドミッションオフィサーは募集業務だけではなく、面接官として入っている・選抜の会議に入っているなどがエビデンスから確認できるといいと思います。
教員だと大きい大学のアドミッション部門にいる大学の専門の先生をイメージするのですが、例年の結果をみると各大学はかなり緩い判断をされているのかもしれません。
あとはアドミッションオフィサーの講座や養成プログラムに参加しているとエビデンスとして担当者としてはいいなと思います。
18.「数学」「情報」の試験問題の出題
昨年は出題することを明記していればよかったのですが、今年は募集要項に必須化することを明記、選択教科化することが明記などが必要となっています。
昨年より新たに一部の学部でという選択肢は注意が必要です。
これは大学入学共通テスト利用入試も該当します。
なお、一部の学部で数学の試験を課していれば最低限の点数はとれそうです。
19.総合的な英語力の評価「NEW!」
英語力を4技能の評価が問われています。4技能(読む、書く、聞く、話す)のうち、一部でも欠けていればダメということなのですが、外部の試験の活用ぐらいしかやり方がなさそうな感じです。
20.多様な背景を持った学生の受け入れへの配慮
この多様な背景は、本当に多様で、性別・年齢・国籍・家庭環境だけではなく、女子学生の占める割合の少ない学部における女子学生選抜も含まれるとのことです。
その入試情報の公表と実施があり、入学後の学びを支援するための体制があれば3点となっています。
21.高等学校教育と大学教育の連携強化
高校との連携で以下の事項について取組みをしているかが問われています。
- 大学等における学修を高校生が経験する機会(合同授業の実施等)の提供
- 高等学校又は教育委員会との年2回以上の定期的な意見交換体制の構築
- 高等学校と大学等との合同研修の実施
- 高等学校と連携した入学前教育の実施
今年は人事交流または合同研修から、合同研修のみとなりましたね。なお、合同研修は職員同士もよさそうなので、傘下校との合同研修でもいけるかもしれません。
㉒入学者選抜の妥当性の検証
昔はデータ活用の区分にあった設問ですが昨年から高大連携へと移動しました。
IRによるデータ分析+検証をしたという記録があれば問題ないかと思っています。
3.データ活用による教育展開とデータ活用人材の育成
㉓IR等の知識を有し、データ分析を実施する専門職の配置及びIRの情報公表
今まではIRの専門職の配置のみが問われていて、専門性の担保(エビデンスの確保)に苦労したのですが、今年から、教学IRを担当する組織や部局の概要や実施している教学IRの主な内容を大学ホームページで情報公開する必要がでてきました。
またIRが機関決定等に資する提案や情報提供を行っていることも必要です。
まあ、なんちゃってIRは淘汰されよというメッセージでしょうか。
㉔数理・データサイエンス・AI教育に係る科目の開講
数理・データサイエンス・AI教育科目が必修か選択かで点数が変わる設問です。この辺りは、数理・データサイエンス・AI教育の認定制度で該当する大学が多いのではないでしょうかね。
また実際の企業等の実データを使った取組みもしているかを問う設問も一緒にあります。
4.多様な教育体制と社会との連携
㉕分野・学部等を超えたカリキュラム編成の実施
学部を超えて、リベラルアーツやSTEAM教育、分野・学部等横断カリキュラムを実施しているかが問われている設問です。
どれがリベラルアーツなのかとかは大学の判断なのですよね(昨年度問合せしても、あまり要領を得なかったところでした)
㉖分野・学部等を超えたカリキュラム編成の改善・検証
設問㉕の点数が取れていることが前提の質問です。
昨年は㉕と㉖は連携されていなかったのですが、今年からは若干変更があるので要注意です。
㉗インターンシップ科目の実施
なお令和2年度はインターンシップ科目で全ての履修者が2週間以上のインターンシップをすることが求められていましたが、令和3年度からは当該科目の一部の履修者が2週間以上実施していればいいと変更されています。
誰か一人でも2週間(土日いれると稼働は10日かな)
㉘実務家教員の教育課程編成への参画
本設問では5年以上の実務を有する教員で年間6単位以上担当する教員に対し、教育課程編成に参画する仕組みの構築が必要です。
また昨年度とは異なり、令和4年度の教育課程の編成にあたり、実務家教員が参画した実績が求められます。
つまり、今回から制度だけではなく、実績も問われています。
なお「実務家教員 教育課程 規程」で検索するとグレーな規程がありますね。
㉙学生の学修の幅を広げるような教育課程の工夫「NEW」
設問タイトルが変わっているのですが、昨年まであった主専攻・副専攻から発展したものです。入学後の主専攻分野の決定や主専攻の転換の弾力化とかもあるのでレイト・スペシャリゼーションが追加されたような感じですね。
イの場合は学科を決めずに、入学後に総合的な学修や基礎科目の履修を通じて所属する学科を決める制度とのことなので、取り組んでいる大学がどこまであるのかは興味があります。
(おそらく資格課程中心の学部・大学はかなり難しいかと感じます)
㉚学事歴の柔軟化に関する取組み
こちらも昨年と同様ですが、大学院で秋入学を実施していれば該当するので、点数が取れる大学もあるでしょう。
㉛教育リソースの活用
一昨年はオープンエデュケーションとなっていた設問です。昨年度も書きましたが、点数を取るのであれば学生への自主学習ツールとしての活用を行う(きちんと案内する)ことですね。
5.教育改革全体の統括
昨年から始まった、気分的にはクイズ番組で今までは10点の設問なのに、最後の設問だけは100点といった感じの設問です。
昨年度の改革総合支援事業の満点に対する得点の割合がどれだけ伸びたかが評価される設問で、20%以上、10~20%未満、5~10%未満によって点数が変わります。20%以上だと5点の配点なので割合としては結構大きいです。
昨年選定されていると結構きついところですね。