2021年3月26日(金)に文部科学省のホームページで「設置計画履行状況等調査の結果について(令和2年度)」が公表されました。以前はこの設置計画履行状況等調査の結果は2月下旬に公表されていましたので、ここ数年は遅い公表時期です。
この設置計画履行状況等調査とは文科省では次のように説明しています。
<参考>
大学の設置等の認可や届出の後において、認可又は届出時の附帯事項への対応状況、学生の入学状況及び教員の就任状況など設置計画の履行状況等についての報告を求め、その状況に応じて必要な指導・助言を行うことにより、設置計画の確実な履行を担保する。
簡単にいうと、「大学や学部・学科をつくるときに出した計画書は約束だから、約束はやぶってないよね。やぶったらペナルティだぞ!」というものです。そのため大学は報告書を出し、書面調査、(書面調査の結果によって必要に応じ行われる)面接調査・実地調査がおこなれるのです。
そしてこの履行状況等調査では、指摘事項として、法令違反・是正・改善の意見がつけられることがあります。是正がつくと結構重いイメージですね。
近年の指摘事項の件数
まずは平成27年度からの設置計画履行状況等調査の調査対象や指摘をされた校数(短大等も含む)を見てみましょう。
H27 | H28 | H29 | H30 | 令和元 | 令和2 | |
調査対象 | 450 | 443 | 412 | 442 | 437 | 455 |
意見あり | 270 | 237 | 208 | 118 | 107 | 100 |
警告 | 1 | 0 | 0 | |||
法令違反 | 0 | 0 | 0 | |||
是正 | 9 | 2 | 5 | 18 | 9 | 5 |
改善 | 269 | 237 | 208 | 108 | 95 | 97 |
平成29年までは是正意見をうけても、是正をしない場合に出される警告というものもありました。
さて、全体と通してみると調査対象の大学数は400-450をいったりきたりしていますが、意見ありの大学、是正・改善の数はここ6年間を通してみるとかなり減っています。
令和2年度履行状況等調査結果の意見
是正意見はさほど多くはないのですが、改善意見はそれなりに数があるので、ざっと簡単にまとめてみました。まずは是正意見からdす。
教員に関する事項 | 就任辞退又は辞任が続いている。 |
定員に関する事項 | 平均入学定員超過率が低い。(0.29倍) |
平均入学定員超過率が低い。(1.97倍) | |
学生確保の取組も従来の取組の延長である。 | |
コースの配属学生数が計画の定員を遵守すること。 | |
学生支援に関する事項 | 多くの留学生が退学・除籍している。 |
続いて改善意見です。
教員に関する事項 | 専任教員数が設置計画から減少している。 |
定年規程に定める退職年齢を超える専任教員数の割合が高い。 | |
専任教員の就任辞退または辞任について原因分析と課題改善策を講じること | |
100名の入学定員について長期的な学生確保の見通しがたっているとはいえない。 | |
定員に関する事項 | 入学定員未充足の改善に努めること。 |
入学者選抜の適切な実施等を通して、入学定員超過の改善に努めること | |
学生支援に関する事項 | 高い割合で退学者等が発生している。 |
多くの留学生が退学となっている。 | |
その他 | (実習に関して)個人情報の扱いについて。 |
(専門職大学)授業の学生数の40人について、専門職大学設置基準の趣旨をふまえ、最小限とすること | |
カリキュラムポリシーで、学修方法・学修課程、学修成果の評価の在り方等が明確でない。 |
ふと思って、弊ブログの平成26年度の履行状況等報告書に関する記事を見てみました。
そうすると平成26年度はバラエティーに富んでいた指摘事項ですが、今はだいぶ決まっているようですね。ただ教員の就任辞退や退任は先方から申し出があったらどうしようもないですし、待遇の改善などもふまえてしなければならないですので、難しい課題もあると思います。
また気になる改善として「教育内容等の充実等を通じ、入学定員未充足の改善に努めること」という表現がよく出てきました。これは文科省としては教育内容の充実と入学定員充足は関連性があるというメッセージですね。(実際はそうではないという関係者もいるでしょう)