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大学設置基準の専任教員(基幹教員)の必要教員数の計算方法

私の周りの職員に聞くと、大学に関する法令といえばと聞くと学校教育法や大学設置基準と聞くことがありますが、実際に内容を理解している人はあまり多くありません。

 

大学事務組織は非常に慣例を大事にし、変更を嫌います。別にそれは悪いとはいいませんが、ある時に担当者がこれでいいやとやってしまったものが慣例となって、法令に沿ったものではないという事が起こりうる事があります。また大学の規程を確認しないでやってしまう事もありますね。

 

さて、大学設置基準は「大学を設置するにあたり、必要な最低限の基準」を定めた省令です。(大学設置基準第1条)必要最低限の基準となりますので、その基準より低下してはいけませんし、その基準以上を目指さないといけません。

 

例えば、教員組織については第7条から、単位制度については第21条に定められております。(単位制度については舘昭先生の「改めて大学制度とは何か」を問う、東信堂が非常に参考になります。)

 

 

大学設置基準における教員数の計算例

今回は、大学設置基準の中で、第13条(専任教員数)について取り上げ、ある大学は教員が何名必要なのかを計算してみます。

 

※参考 総務省法令データベース 大学設置基準

第13条は大学における専任教員の数は、別表第一により当該大学に置く学部の種類及び規模に応じ定める教授等の数(共同学科を置く学部にあつては、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる教授等の数と第四十六条の規定により得られる当該共同学科に係る専任教員の数を合計した数)と別表第二により大学全体の収容定員に応じ定める教授等の数を合計した数以上とする。とされています。

 

つまり「Ⅰ学部の種類と規模に応じた教授の数(別表1)と、Ⅱ大学全体の収容定員に応じ定めた教授等の数を合算した数以上の教員が必要(別表2)」をそれぞれ計算し、最後に合算が必要という事です。

 

例えば、A大学があったとします。A大学の学部学科構成は以下の通りです。

 A大学 2学部3学科 入学定員500名、収容定員2,000名

 (内訳)

 法学部 法律学科 入学定員200名、収容定員800名・・・①

 文学部 歴史学科 入学定員100名、収容定員400名・・・②

     国文学科 入学定員200名、収容定員800名・・・③     

 

法学部は1学部1学科、文学部は1学部2学科の構成です。なお、計算が複雑になりますので学際系や編入等は今回は入れずに簡単な構成にしています。

 

 

それではまずⅠの学部の種類と規模に応じた教授の数のうち、法律学科から教員数を計算します。教員数は大学設置基準の別表第1を参照下さい。なお別表は、学部を1学科で組織する場合と2以上の学科で組織する場合は見る箇所が異なりますのでご注意下さい。

(参考)

              別表第一 学部の種類及び規模に応じ定める専任教員数 (第十三条関係) 
イ 医学又は歯学に関する学部以外の学部に係るもの

学部の種類 一学科で組織する場合の専任教員数 二以上の学科で組織する場合の一学科の収容定員並びに専任教員数
収容定員 専任教員数 収容定員 専任教員数
文学関係 三二〇―六〇〇 一〇 二〇〇―四〇〇
教育学・保育学関係 三二〇―六〇〇 一〇 二〇〇―四〇〇
法学関係 四〇〇―八〇〇 一四 四〇〇―六〇〇 一〇
経済学関係 四〇〇―八〇〇 一四 四〇〇―六〇〇 一〇
社会学・社会福祉学関係 四〇〇―八〇〇 一四 四〇〇―六〇〇 一〇
理学関係 二〇〇―四〇〇 一四 一六〇―三二〇
工学関係 二〇〇―四〇〇 一四 一六〇―三二〇
農学関係 二〇〇―四〇〇 一四 一六〇―三二〇
獣医学関係 三〇〇―六〇〇 二八 二四〇―四八〇 一六
薬学関係(臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの) 三〇〇―六〇〇 二八 二四〇―三六〇 一六
薬学関係(臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするものを除く。) 二〇〇―四〇〇 一四 一六〇―二四〇
家政関係 二〇〇―四〇〇 一〇 一六〇―二四〇
美術関係 二〇〇―四〇〇 一〇 一六〇―二四〇
音楽関係 二〇〇―四〇〇 一〇 一六〇―二四〇
体育関係 二〇〇―四〇〇 一二 一六〇―三二〇
保健衛生学関係(看護学関係) 二〇〇―四〇〇 一二
保健衛生学関係(看護学関係を除く。) 二〇〇―四〇〇 一四 一六〇―三二〇

 

事例の法律学科の必要教員数

別表1によると、法学関係の学部は、1学科で組織しておりますので収容定員400~800名は14名の教員が必要です。よって①=14人です。

 

事例の文学部部歴史学科の必要教員数 

続いて文学部の歴史学科ですが、2以上の学科で組織されています。歴史学科の収容定員が400名ですので、文学関係の2以上の学科を見ると収容定員200~400名で6名必要です。よって、歴史学科の教員数は6名となります。

 

事例の文学部国文学科の必要教員数

続いて国文学科ですが、国文学科の収容定員は600名です。2以上の学科ですので、歴史学科と同じ数値を使いますが、収容定員は600名ですのでその場合は別表1の備考4「収容定員がこの表の定める数を超える場合は、その超える収容定員に応じて四〇〇人につき教員三人(獣医学関係又は薬学関係(臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするもの)にあつては、収容定員六〇〇人につき教員六人)の割合により算出される数の教員を増加するものとする(ロの表において同じ。)。」を見ます。

※別表1の備考はこの記事には引用していませんので、法令を直接確認して下さい。

 

つまり、800名ー400名(別表1)=400名(別表1備考4)となりますので、6人(別表1)+3人(別表1備考4)=9名となります。

 

別表1による事例の必要教員数

さて、これらを合計すると「Ⅰ学部の種類と規模に応じた教授の数」となります。

法律学科14人+歴史学科6人+国文学科9人=29名

 

事例の別表2の必要教員数

続いて、「Ⅱ大学全体の収容定員に応じ定めた教授等の数」を計算します。

これは別表2をみます。

              別表第二 大学全体の収容定員に応じ定める専任教員数 (第十三条関係) 

大学全体の収容定員 四〇〇人 八〇〇人
専任教員数 七  一二

 

A大学は収容定員で2,000人です。先ほどの国文学科のように別表2にも備考2に「収容定員がこの表に定める数を超える場合は、収容定員が四〇〇人を超え八〇〇人未満の場合にあつては収容定員八〇人につき教員一人の割合により、収容定員が八〇〇人を超える場合にあつては収容定員四〇〇人につき教員三人の割合により算出される数の教員を増加するものとする。」とあります。

 

まず収容定員800人は12人となります。・・・①

続いて別表を超えた人数は2000人ー800名=1200名です。400名につき教員が3名ですので9名となります。・・・②

①+②=21名となります。

 

大学設置基準上で必要な教授の数

さて最後に注意が必要なのは、必要最低限の教授の数が大学設置基準によって定められています。

それでは今回の事例ではⅠ学部の種類と規模に応じた教授の数とⅡ大学全体の収容定員に応じ定めた教授等の数を計算します。

 

別表1で必要な教授の数

 法律学科14人→必要な教授数は7名

 歴史学科6人  →必要な教授数は3名

 国文学科9人  →必要な教授数は5名

国文学科は9名ですので4.5名ですが、この場合は切り上げて計算をしていきます。別表1で必要な教授の数は15名となります。

 

別表2で必要な教授の数

 別表2で必要な教員数は21名です。これの半分以上ですので11名の教授の数が必要です。

 

教授の数は、設置基準上で必要な教員数で教員組織を編成している大学ほど、今後数年間にわたって定年退職などでどのように変わっていくかはシュミレーションが必要です。認証評価などで、教授の数が足りないという事は、コンプライアンス違反として指摘される事が多いですので、人事担当者は注意が必要です。

 

教員数の計算は、学部学科の改組や人事を担当する際に必ず必要となります。大学職員にとって教員数計算は押さえておきたい知識の一つです。

 

<大学設置基準の他の項目については章ごとに次で解説しています> 

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