平成25年度から始まった私立大学等改革総合支援事業ですが、特に教育の質的転換型(タイプ1)は全学での教育改革や取組を要求するものが多く、大規模大学では申請をしにくく、小規模大学や単科大学では比較的取組をすると点数に直結しやすく選定されやすい事業でした。
つまり全学での改革がしやすい小規模中規模大学にとっては、私立大学等改革総合支援事業は補助金を増額する絶好の事業とも言えました。
ただ平成30年度の私立大学等改革総合支援事業の結果を見る限り、どうも小規模中規模大学にとって、だいぶ厳しい状況になってきていると感じます。
私立大学等改革総合支援事業タイプ1と大規模大学
平成30年度の私立大学等改革総合支援事業の選定状況を見ると、全てのタイプに選定された東京都市大学をはじめ、東洋大学や芝浦工業大学などの大規模大学もタイプ1「教育の質的転換」に採択されています。
今後は教育改革を進める大学が増えると、規模が大きい大学の採択も増えてくるかもしれません。一方、私立大学等改革総合支援事業の選定校数は年々少なくなってきており、選定をされる為の競争、どうやって点数を取っていくかは情報戦であり、より厳しくなっています。
私立大学等改革総合支援事業からプラスされる補助金
「私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準」を確認すると選定された場合、一般補助による増額と特別補助による補助金の増額があります。
一般補助による増額は、その大学の一般補助(ただし除外あり)から定められた割合の金額が加算されます。こちらは大学によりますが、大規模大学程一般補助は多いので、改革総合支援事業に選定されると増額が大きい事は言うまでもありません。
特別補助の増額
一方、特別補助ですが、改革総合支援事業のタイプ1の定められた区分の合計点で増額分が異なります。平成30年度の算定方法は下記となります。
〔算定方法〕
① 私立大学等改革総合支援事業調査票の「タイプ1」の「1.組織運営の活性化」、「2.教育内容・教育方法に関する取組」及び「3.教職員等の質的向上に関する取組」で掲げた取組内容について、当該大学等の取組状況を基に算出した点数に応じ、表1により得た額を(A)とする。
② 私立大学等改革総合支援事業調査票の「タイプ1」の「4.高大接続改革の推進」で掲げた取組内容について、当該大学等の取組状況を基に算出した点数に応じ、表2により得た加算額を(B)とする。
③ (A)及び(B)の合計額を増額する。
私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 31 年 3 月)より
また特別補助の額は下記となります。
出典: 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 31 年 3 月)
今年のタイプ1は満点は84点、選定ラインは55点となっています。最低でも550万円は特別補助として出ます。この額が多いか少ないかについては大学によって異なると思います。
また昨年の場合はどうであったかを見てみましょう。なお算定方法は平成30年度とさほど変わりませんが、平成29年度は95点満点、選定ラインは79点でしたので、下記の表を見ると、おそらく特別補助で二千万近くは出ることになります。
う~ん、今年は設問が大幅に変わってかなり苦労したのですが、特別補助ががくんと落ちてしまっています。
出典: 私立大学等経常費補助金取扱要領・私立大学等経常費補助金配分基準(平成 30 年 3 月)
なお、平成28年度は平成29年度よりは低い特別補助額になっています。
(ただ平成30年度は、教育の質の指標もあるので、タイプ1の分の補助金はそっちに行ってしまったのかもしれません)
私立大学等改革総合支援事業のタイプ1に申請する意味はあるか?
特別補助額だけを昨年と比較すると、だいぶ下がっている事が分かります。これだけで申請する意味があるかどうかは論じる事は難しいですが、改革総合支援事業に選定を受けるための大学側のコストは人件費なども考えるとかなり大きいです。
その為、補助金が欲しいだけでは、補助金増額の恩恵にあずかりにくい規模の大学としては改革総合支援事業の選定を目指す事はモチベーションを保つ事は難しくなりつつあるのではないかと感じてもいます。
むしろ、改革総合支援事業に応募をする・選定をされるという事について、大学として何らかの意味付けをしないといけないのではないでしょうか。