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大学の学位プログラムと近年の政策における関連メモ

最近、仕事をする上で「学部学科単位」より「学位プログラム単位」でお願いする事が多くなってきました。ただ、ふと思うと学位プログラムを学科と同義語で使う事があると感じるのですが、定義を考えると実は同義語であるとは言えません。

学位プログラムの定義は「大学等において、学生に短期大学士・学士・修士・博士・専門職学位といった学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を明示し、それを修得させるように体系的に設計した教育プログラムのこと」(中央教育審議会,2009)ですが、理解を深める為に近年の政策文書から、学位プログラムに関する記述を抜き出し整理してみます。

 

学位プログラムの議論

近年の政策の議論

まずは2005年に文部科学省中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像(答申)」の学位プログラムに関連した記述をみてみます。

この将来像答申では各大学にアドミッション・ポリシーやカリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシーを明確にする事を求めると共に、学位と課程について次のように記載されています。(中央教育審議会,2005)

教育の充実の観点から、学部・大学院を通じて、学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程(プログラム)中心の考え方に再整理していく必要があると考えられる。

しかし、将来像答申の後の学士課程答申を見ると学位プログラムについての記述は答申内でわずかにありますが、具体的な説明はされていません。

(学士課程答申で明らかにしているのは「学部段階の教育を「学士課程教育」」とし、学士課程で共通に獲得される学修成果の例として「学士力」が示された事です)(中央教育審議会,2008)

学位プログラムについて具体的に高等教育政策の中に示されたものとして、2009年の中教審大学分科会(第74回)の配布資料「学位プログラムを中心とした大学制度の再構成について」があります。

ここでは学位プログラムを「大学等において、学生に短期大学士・学士・修士・博士・専門職学位といった学位を取得させるに当たり、当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を明示し、それを修得させるように体系的に設計した教育プログラム(文部科学省,2009)と定義をしています。

また学位プログラムを中心とした大学制度への移行した場合の効果として「知識・能力の証明として国際的に通用性のあるものに整理される」(文部科学省,2009)が挙げられ、3つの方針もそれぞれに明確化及び整理がされると示されています。

また三つの方針のガイドラインには「三つのポリシーは,そのような教育課程(授与される学位の専攻分野ごとの入学から卒業までの課程(以下「学位プログラム」という。))ごとに策定することを基本とすることが望ましい」(中央教育審議会,2016)とされ、学位プログラムにはそれぞれに三つの方針の整備が求められています。

直近の答申、グランドデザイン答申では「学位プログラムごとに卒業認定・学位授与の方針にどのような分野でどのような能力を身に付けるプログラムなのか記載すること等の取組を促進」(中央教育審議会,2018)と記載されています。

議論の簡単なまとめ

学位プログラムは2000年代後半では学位に応じて達成すべき能力を明らかにし、設計したプログラムの事でしたが、近年では学位プログラムは三つの方針を策定し体系的に設計された教育プログラムと理解していいかと考えます。

 

学位プログラムと教育組織

学士課程教育では、1学位プログラム=1学科としている大学もかなり多いでしょう。筆者の大学も学士課程教育では原則として1学科に1学位プログラムしかありません。

また国側も教育組織と学位プログラムについて「学生の所属する組織=教員が所属する組織=提供される学位プログラムが、一対一の関係にあることが原則となっている。」(中央教育審議会,2017a)とされています。

これは3つの方針の策定公表の義務付けとともに従来の学部学科での教育課程は学位プログラムとして機能している事が前提です。

しかし学位プログラムについては「学部・学科という組織が複数の学位プログラムを提供することがあり得るし、異なる学部・学科が共同で学位プログラム(いわゆる学際領域学位プログラム)を提供することもあり得る」(深堀,2017)とされるように、こんなイメージも考えられます。

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つまり、1学科内に複数の学位プログラムがあり、それぞれに3つの方針が定められ、複数の学位を持つケースです。

また今は、縦ではなく横も考えられます。こちらはグランドデザイン答申に書かれていますね。

学位プログラムを中心とした大学制度
○ 大学には、教員と学生が所属する学部等の組織を置くこととされているが、大学が自らの判断で機動性を発揮し、学内の資源を活用して学部横断的な教育に積極的に取り組むことができるよう「学部、研究科等の組織の枠を越えた学位プログラム」を新たな類型として設置を可能とする。その際、当該プログラムに対する責任体制を明確にする。 

横断的な学位プログラムについて、例えば柴山イニシアティブでも触れられ、2019年度には制度改正と制度の周知、2020年度から本格実施されることと工程表で示されています。

<関連記事>

www.daigaku23.com

さて、横断的な学位プログラムのイメージはこんなのでしょうか。

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この図はシンプルにしていますが、実際は横断的な学位プログラムの3つの方針を基につまみ食いのように各学位プログラムから科目を引っ張り、体系的な教育課程(カリキュラム)を作っていくイメージです。

大学としては既存のものを使って、新たな学位プログラムを設置できる事は、学生募集で行き詰った時のカンフル剤として使えなくもなさそうです。ただ学部単位で教育研究や学生支援を行っている大学は、教員の負担や学生の支援をどうするかなど、解決しなければならない問題も多く出てきそうであるなと感じます。 

 

               参考・引用文献 

中央教育審議会(2005)『我が国の高等教育の将来像(答申)』http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101.htm

中央教育審議会(2008)『学士課程教育の構築に向けて(答申)』http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2008/12/26/1217067_001.pdf

中央教育審議会(2009)『学位プログラムを中心とした大学制度の再構成について』(平成21年1月22日第74回大学分科会配布資料)http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/siryo/attach/1259115.htm

中央教育審議会(2016)『「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン』http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/01/1369248_01_1.pdf

中央教育審議会(2017)『学位プログラムを中心とした大学制度の検討の可能性』(平成29年10月30日大学分科会第6回制度・教育改革ワーキンググループ配布資料)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2017/11/01/1397943_1.pdf

深堀 聰子(2017)『学位プログラム化の要件-大学教員のエキスパート・ジャッジメントの涵養』京都大学高等教育研究,23:85-96.

※いずれも閲覧日は2019年3月10日