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第3期認証評価1年目受審大学の大学評価結果の提言から見る内部質保証や教育課程・学習成果のメモ~大学基準協会を中心として~

大学は学校教育法により認証評価を受ける必要があります。

(学校教育法)

百九条 大学は、その教育研究水準の向上に資するため、文部科学大臣の定めるところにより、当該大学の教育及び研究、組織及び運営並びに施設及び設備(次項において「教育研究等」という。)の状況について自ら点検及び評価を行い、その結果を公表するものとする。

② 大学は、前項の措置に加え、当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者(以下「認証評価機関」という。)による評価(以下「認証評価」という。)を受けるものとする。ただし、認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない。

 この認証評価は2004年からスタートし、7年に1回が1サイクルです。よって2018年度は第3期認証評価の1年目*1に当たります。

大学基準協会の評価で言えば、第2期は内部質保証システムの構築と有効性が着目されていました。そして第3期は各大学が構築(したはずの)内部質保証システムが適切に機能しているかが問われています。また教育評価についてもチェックすると言われておりました。

さて、これらの認証評価結果は、各認証評価機関のホームページで公表されています。

大学基準協会     評価結果検索

日本高等教育評価機構 評価結果検索

そこで今回は大学基準協会の第3期認証評価1年目に受審した大学の大学評価(認証評価)結果 から、「大学基準1 理念目的」「大学基準2 内部質保証」「大学基準4 教育課程・学習成果」でどのような指摘(提言)をされているかを概観し、特に大学の内部質保証や教育課程・学習成果は第3期認証評価で何を問われているかをみていきます。 

 

大学基準協会の大学評価結果について

まずはこれからの話の理解をする為に大学基準協会の大学評価結果について、判定と提言の種類について確認します。

大学評価結果の判定について

大学基準協会は大学評価(書面・実地)を経て、大学評価の判定基準に基づいて大学の状況を総合的に判断し、大学として「適合」か「不適合」か、もしくは「保留」*2をつけます。

不適合は大学としての水準を満たしていないのと重大な問題がある場合につけられています。例えば、大学設置基準に基づいた教員数に実際の教員数が足りないといった場合ですね。 

www.daigaku23.com

大学評価の提言について 

大学評価結果には判定以外にも、提言が付されています。提言は「長所」「改善課題」「是正勧告」があり、具体的には下記となります。(大学基準協会,2017)

長所
① 当該大学の掲げる理念・目的の実現に資する事項であり、有意な成果が見られる(期待できる)もの
② わが国の高等教育において先駆性又は独自性のある事項であり、有意な成果が見られる(期待できる)もの

改善課題
基礎要件の軽度の不備、又は大学としてふさわしい水準を確保するために問題があり、必ず改善を求めるもの
② 上記①にはあたらないが、理念・目的の実現のために必ず改善を求めるもの

是正勧告
基礎要件の重度の不備、又は大学としてふさわしい水準を確保するために重大な問題があり、必ず改善を求めるもの
② 上記①にはあたらないが、理念・目的の実現のために抜本的な改善を必ず求めるもの

特に改善、是正意見が付くと大学として真摯に改善に取組、大学評価結果を受領してから3年経過後の7月終わりまでに「改善報告書」の提出が求められます。

 

各大学の第3期認証評価結果と提言

まず、2018年度に大学基準協会で大学評価を受審した27大学*3の評価結果から、各大学基準でどのような提言を受けているかを見てみます。

下記の表は、各大学の評価結果を確認し、各大学基準で長所・改善課題・是正意見がついているかを一覧にしたものです。

f:id:as-daigaku23:20190411083737p:plain
 

これらを見ると、次の事が言えるかと考えます。

  • 大学基準2の内部質保証では改善や是正が多くついている。
  • 大学基準4の教育課程・学習成果では長所もいくつか見られるが、改善や是正も多い。
  • 大学基準5の学生の受け入れも(特に大学院)が収容定員を満たしておらず改善や是正意見が多くついている。
  • 大学基準7の学生支援や大学基準9の社会連携・社会貢献は長所が多くついている。

 理念・目的、内部質保証、教育課程・学習成果の提言のまとめ

それでは、今回は各大学の評価結果の大学基準1「理念・目的」、大学基準2「内部質保証」、大学基準4「教育課程・学習成果」の提言を取り纏め、何が問われているかを簡潔にまとめてみました。(なお、あくまでも筆者の考えによりますので、参考程度にお願いします。)

大学基準1「理念・目的」

長所

・大学の理念・目的を広報物や式典で周知・浸透を図る。
・使命を体現することを目的とした学長採択型の課外活動の支援。
・中・長期計画に基づき、全教職員への周知徹底と教育研究活動の改善の実現からの大学の目的や使命の達成に向けた成果。
・建学の精神を理解するための取組。

改善課題

・学部の目的が移行前の法人の建学の精神を踏まえている(今の大学の教育理念・目的とつながっていない)
・(大学院)教育研究上の目的を定めていない。

まとめ

理念・目的は適切に人材育成の目的や教育研究上の目的を設定し、公表する事が問われています。今回は長所がいくつかありますが、公表するだけではなく、理念・目的を大学の構成員に浸透させる取組が評価されているかと感じます。

大学基準2「内部質保証」

長所

・方針に基づいた内部質保証推進体制の構築と点検評価結果に基づき全学的な評価及び改善策の提示を行い、改善につなげている。
・教学ガイドライン等の活用と教学マネジメント。
・各学部・研究科での専門分野別外部評価の実施。

改善課題

内部質保証が全学的な責任主体のもと、一貫したプロセスになっていない。
・内部質保証体制の各会議体の連携や役割分担が明らかでない。
非公式の会議が内部質保証の推進に大きな役割を果たしているが、権限や役割を明文化していない
・全学的な内部質保証システムと学部・研究科等のPDCAサイクルの関与が明らかでない。
・点検評価の結果を改善につなげる仕組みが充分ではない。
・改善のプロセスが不透明。
・内部質保証システムの適切性について定期的に点検・評価する仕組みが確立できていない。
・内部質保証の範囲に教育研究組織及び教員・教員組織は含まれていない。
・情報の公表が適切に(刊行物やインターネットを通じて)されていない。

是正意見

・内部質保証に関する方針及び手続を明文化していない。
・自己点検評価の規程と実態の点検評価が異なる。
・改善が適切になされておらず、問題点が多く見受けられる。
内部質保証を担う全学的組織が、どのような手続で改善・向上に取り組むか規程に明示していない。
・内部質保証の委員会と自己評価委員会の役割分担・連携の在り方も明らかでない。
・教学マネジメントを担う複数の会議での関係性が不明確。
・内部質保証の組織が役割を果たしておらず、自己点検・評価が十分に機能していない。
・内部質保証体制における組織間の役割・権限が整理されていない。

まとめ

内部質保証では、全学的な内部質保証システムになっているかどうか、きちんと学部・研究科までつながっているかどうか、内部質保証システムがいくつかに分かれている場合は役割が明確になっているか、内部質保証システムをきちんと明文化しているかといった事が問われているようです。

大学基準4「教育課程・学習成果」

ここについては、長所は各大学独自の取組もありますが、他の大学を見ても自学の取組に参考になりにくそうなものは今回は除外しています。また改善課題や是正意見については学部と研究科で分けて記載しました。

長所

・独自の教育プログラム(能動的学習プログラム、チューター、少人数制教育)。
評価方法にDPと対応するルーブリックの活用
・学部学科横断型の4年間一貫教育プログラム。
・学部大学院一貫教育と大学進学率の向上への寄与。
・英語教育の環境整備。
学生スタッフ(SA・TA・LA)の全学的な登用
教学IRプロジェクトの各学部と連携した教育内容・方法の改善
・アセスメントプランの策定と全学的な複数のルーブリックの運用や学部独自のルーブリックの運用を行い、全学的な学習成果の把握・評価
・学生の授業外学習時間の増加に向けたCAP制度の工夫。
・ポートフォリオ活用による学期末の自己評価の実施。
学生の幅広い知識・教養の修得の取組(教養教育の整理、多様な教育方法、成果をルーブリック評価で把握等)
学生の自己認識による主観データとカリキュラムにおける科目の成績分析を中心とした客観データにより経年的かつ多面的な学習成果の把握及び評価
・カリキュラム・マップ、カリキュラム・ツリー及び科目概要の整備の推進。

改善課題

(学部)
CPに教育課程の編成及び実施に関する基本的な考え方を示していない。
・学習成果の把握に努めているが、DPに示した学習成果を十分に把握できているとはいいがたい。
・シラバスに出席点を含めている科目がある。
・単位の実質化を図る措置が十分になされていない。(例えば、CAP制度があっても教職やインターンシップは上限を超えて履修する事を認めている)
・基礎能力を測る為の外部機関による調査を導入しているが、学習成果の把握・評価の指標の開発は学科に委ねられており、指標の設定には至っていない。
CAP制度の上限緩和条件が学年の半数以上が該当しており、制度が機能しているとはいえない。
・CAP制度が4年生には適用されていない。
・3年次編入学生に対して履修登録単位の上限を設定していない。

(大学院)
・CPに教育課程の編成及び実施に関する基本的な考え方を示していない。
学習成果について修士論文・博士論文の評価を測定方法としているがDPに示した学習成果の把握及び評価は十分に行われていない。
シラバスに出席点を含めている科目がある
・学位論文及び特定の課題についての研究の成果の審査基準について学生に明示していない。
DP及びCPが授与する学位ごとに設定されていない。
・DPに明示した学生の学習成果の把握及び評価については検討段階である。
・前期課程と後期課程で学位論文の審査基準が同一である。
・シラバスに精粗が見られる。

是正意見

(学部)
・単位を修得できなかった科目について、翌年度以降に授業を受講せずに試験への合格のみで単位を認定することは適切ではない。

(大学院)
・研究指導計画として研究指導の方法及びスケジュールが定めていない。

まとめ

今回、教育評価はどのように問われるかが気になる所でしたが、きちんと教育評価について明文化し、それに則って多用な評価を行い、きちんと指針を定めている、ルーブリックを活用しているものは長所として出ている印象を受けます。

一方、CPに教育評価が書いてあっても、あまり実践されていない場合は改善課題として出ているようです。

また単位取得の上限制度の指摘については、前から変わらない印象ですが気になるのは緩和制度が学生の大半が対象になっているのは改善課題として指摘されています。

 

 

                参考引用文献

・大学基準協会(2017)「大学評価ハンドブック(2018(平成30)年度以降の大学評価用)」https://www.juaa.or.jp/images/accreditation/pdf/handbook/university/2017/handbook_all.pdf

 

2019年4月11日図表を一部修正

 

*1:大学基準協会と日本高等教育評価機構のみ。

*2:再評価後に判定をする

*3:再評価及び2017年大学評価結果の判定変更は含まない