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2021年度(第3期4年目)認証評価 大学基準協会での指摘事項(内部質保証・教育)のメモ

大学は学校教育法109条により、自己点検・評価を行い・結果を公表することや、認証評価を受けることが定められています。この認証評価ですが、大学の評価機関は、現在5つあります。

認証評価機関によって、評価方法や視点が異なるのですが、今回は大学基準協会に焦点をあて、第3期認証評価の4年目にあたる2021年度の認証評価で重要な内部質保証や教育においてどのような指摘がされているのかをみてみましょう。

www.juaa.or.jp

今回対象とするには2021年度の評価を受けた49大学(国公立3、私立46、再評価除く)です。※再評価は1大学ありました。

大学基準協会の認証評価は10の基準があり、評価結果によっては基準ごとに「長所」「改善課題」「是正勧告」といった提言が附されます。

それでは内部質保証や教育課程について、どのような提言があるのでしょうか。なお、各大学の委員会名などの固有名称は筆者で言い換えをしています。
(例:具体的な内部質保証の委員会名を内部質保証推進組織など)

内部質保証における提言について

まずは内部質保証から見てみましょう。長所→改善→是正の順で評価結果から重要だと思われる箇所を抜き出しています。また重複した内容は記載しておりません。なお、個人の主観ですが重要な提言と思われる箇所には赤字にしています。

まず長所ですが、明治大学のみ長所がありましたので、重要な箇所のみいれておりますが、IRの活用など参考になるものが記載されているので

長所

「全学委員会」のもと、「学長方針」を起点とした「全学レベル」、各学部等の教育プログラムにおける3つの方針を起点とした「ミドルレベル」、各教員の授業計画(シラバス)を起点とする「ミクロレベル」の3つのレベルで内部質保証に取り組んでいる。~略~ さらに、「評価委員会」で外部評価を行うなど、重層的な内部質保証システムを整備したうえで多様な仕組みを採り入れ、教育活動等を充実・向上させていることは評価できる。(明治大学)

改善課題

・自己点検・評価を実施しているが、結果に基づく内部質保証推進組織による改善のためのフィードバックが十分には行われていない。

・学部独自の自己点検・評価委員会と全学の自己点検・評価委員会との関係が不明瞭であり、学部の委員会の結果を全学的にどのように取り扱うか不明確

・自己点検・評価について、内部質保証推進組織では自己点検・評価の報告内容を確認・了承するのみで、研究所やセンターなどの自己点検・評価は結果を内部質保証推進組織に報告していない。附置施設についても全学的な内部質保証システムのサイクルに適切に組み込む必要がある。

内部質保証の主要な組織と教授会や各委員会など大学全体の各組織との連関が明確になっていない

・内部質保証推進組織はあっても、実質的には教授会が内部質保証を行っている(大学院大学)そのため、内部質保証推進組織が内部質保証システムにおいて果たす役割を明確にし、有効に機能させるよう改善が求められる。

・教育職員免許法施行規則で公表が求められている教育情報のうち、一部が公表されていない。

内部質保証推進組織とされる組織は規程上の位置づけがなく、組織の正当性や内部質保証を推進するための会議体としての永続性が十分であるとはいえない

・内部質保証システムの適切性について定期的に点検・評価 を実施する体制を体系的に整理し、点検・評価の結果をもとに内部質保証システムの改善・向上につなげることが求められる

・内部質保証システムにおいて、研究科の取り組みは十分とはいえず、学生支援や社会連携についても点検・評価活動の実態を確認することができないことからPDCAサイクルが適切に組み込まれているとはいえない

・教員に関する情報公開が不十分(研究や基本情報)

・内部質保証推進組織を設置していても、2019年9月以降に開催は不定期で1年弱会議の開催がなかった状況もあり、~略~内部質保証体制のもとでのマネジメントが行われているとはいいがたい

是正勧告

・内部質保証推進組織と自己点検・評価委員会との関係で、自己点検・評価委員会から内部質保証推進組織への助言の手続きや各学部・研究科へのフィードバックについて規程・方針、手続きに明示されていない

・内部質保証推進組織の規程に内部質保証に関する事柄が含まれていない。~略~方針に基づく点検・評価及び改善・向上が適切に行われていない。

内部質保証推進組織は点検・評価の結果からの課題に対し、各学科等への改善指示を出すことにとどまっておおり、実際に行われている改善活動のマネジメントを適切にお行っていない

・内部質保証に係る取り組みの位置づけに関する規定が整備出来ていない。

・自己点検・評価を行っていても、改善・向上を促す仕組みが機能していない。

教育課程における提言について

教育課程は学士課程と大学院で分けて記載します。

長所

(学士課程)

・建学の精神の要素を重視した大学らしい教育プログラムがある

・副専攻プログラムの学部・学科横断の開設、担当教員の手厚いフォロー体制、学生の学びあい及び学習成果

・大学独自の教育方針に基づき、該当教育を推進する組織の設置や科目の配置、また専門科目への効果的な連結などの特徴的な取組みがある

・応用国際教養教育の取組み

・薬学部での1年から4年まで臨床現場に出るまで必修とし、様々な能力や姿勢の醸成

・各種振り返りシートなどや成績を活用して担任が面談を行うなどの体制や学生一人ひとりに合わせた丁寧かつきめ細やかな指導

・学士課程において、アクティブ・ラーニングを組み込んだ授業づくりを進める 「 授
業設計研修 」を原則として全 教員が受講し、内容を統一した研修会を学部別に実施している。

・学士課程において、学修成果を評価・検証するために、「IR推進センター」の客観的データを積極的に活用しており、学部ごとのアセスメント・ポリシーに基づく調査や新型コロナウイルス感染症対策の遠隔授業の成績への影響評価など教育改善の点検・評価及びその結果に基づく改善・向上に一定の成果が出ていることから、評価できる

(大学院)

・プロジェクト科目で専門分野の異なる複数の教員が協働し、多様な院生が参画し、分野を横断した研究及び技術開発に取組み、多様な人材がチームで創造する経験を提供している。これによって、広い視野と企画力や組織力、アイディアの実現力を養っていることは評価できる。

改善課題

(学士課程)

DPに示した学習成果と把握するための直接評価の方法との関係性が明確となっておらず、多角的かつ適切な方法でDPに示した学習成果を把握・評価しているとはいいがたい。

・1年間の単位の履修登録上限はあるが、卒業要件外科目や資格取得に関わる科目について、明確な基準なく上限を超える履修を認めている。また個別の履修指導をしていても、単位の実質化を図る措置として不十分。

・GPAや卒業時アンケート、卒業論文などをしているが学習成果の把握・評価が不十分

・DPの学習成果に対応したルーブリック形式による卒業研究の審査基準の作成が一部にとどまっており、直接的かつ適切な方法で学習成果を把握・評価しておらず、学習成果を把握・評価した結果の活用も十分にされていない(研究科も同様の指摘あり)

GPAが2.5 以上の場合、次セメスターは、〇〇(役職者)に願い出ることにより2単位多く履修することができることとしている。これにより実際に上限を超えて多くの単位を履修登録する学生が相当数おり、単位の実質化を図る措置が不十分である

・成績評価の適切性に関し、学期試験の再試験について、再試験のみの合格点をもって、不合格となった科目の最終評価を抹消する措置を講じている。経年的に一定数の再試験受験者に単位認定する学部・学科が複数存在し、再試験による単位認定が常態化しているため、単位の実質化、厳格な成績評価の観点から、再試験制度のあり方を検証し、適切に運用するよう改善が求められる

・編入制に対して履修登録できる単位数の上限を設定していない。

・予習復習の内容をシラバスに記載しているものの、単位の実質化を図る措置は不十分であるため、単位制の趣旨に照らして改善が求められる。

(大学院)

・後期課程で大学院のCPに教育課程の実施に関する基本的な考え方を示していない

・大学院でDPの学位授与方針に示した学習成果の測定が不十分

・研究科で学位論文の審査基準を課程ごとに定めていない

・博士前期課程と博士後期課程の学位論文審査基準が同一の内容である

・学生のアンケートを行い、学習成果を測定しているが、DPとの連関が明確でない。そのためDPに定めた学習成果と連関した測定指標を設定するよう改善が求められる

・授与する学位が複数存在するが、学位を取得するためのCPが書き分けられていない

是正勧告

(大学院)

・修士論文の代わりの特定課題について、固有の審査基準を設けていない

・研究科でDPを課程ごとに設定していない

・CPについて、課程ごとに設定しておらず、一部の研究科で教育課程の編成に関する基本的な考え方を示していない

・研究指導計画として、研究指導の方法及びスケジュールを定めていない

・学位論文の審査基準が刊行物やHPのいずれの方法によっても公表していない。

終わり~まとめにかえて

第3期4年目となると、教育課程でCAP制度などの指摘される大学はだいぶ減ってきたように感じます。ただ大学院のDPやCPの指摘件数はそれなりにありました。

また内部質保証について長所があったのは明治大学のみであり、今までに内部質保証で長所があった大学なども見ると大学の規模は変わらずに組織が成熟している大学なのかもしれないですね。