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第3期認証評価の内部質保証の検証と付け焼刃施策

第3期認証評価は内部質保証を重視する評価となります。例えば大学基準協会は「内部質保証の有効性に着目した評価」(大学基準協会 2019:1)を大学評価の特徴として述べています。

ただ内部質保証のための内部質保証システムは、少なくとも数年間をかけて検討や試行錯誤が必要です。また大学基準協会の内部質保証ハンドブックでは内部質保証システム例が示されています。ただこのシステムは例示であり、内部質保証システムは大学の設置形態や規模、キャンパスが複数あるか、学部の種類によって異なる事が考えられます。

さて、第3期認証評価では内部質保証の有効性に着目といいました。では何を持って内部質保証が出来ていると言えるのでしょうか?

例えば林(2018)は、先行研究から質の概念について、①非凡さ、②完全性あるいは整合性、③目的適合性、④資金に見合う価値、⑤変容があると整理しています。大学によって内部質保証の観点からどの質概念を第一に置くかは、大学によるでしょうが、おそらく③目的適合性として3つの方針や各種方針(学生支援等)を踏まえている事が多いのではないでしょうか。

学修成果の可視化の検証=内部質保証の検証?

認証評価は受審前年度に認証評価のための自己点検評を行い、報告書を作成します。つまり、大学の取組は認証評価受審前々年度から報告書を執筆するまでが自己点検評価に反映されます。

その為に、学修成果の可視化を受審前々年度やさらにその1年前にしなければならないという意見もありますが、単発的な学修成果の可視化だけをやっても、内部質保証が出来ているとは言えません。

何をどのように測るかをきちんとデザインし、測定し、その結果をフィードバック、さらに教育研究の改善に活かせなければ意味がありません。

というより証拠集めだけの学生調査をやるのであれば、学内でプロジェクトを立ち上げて自己点検評価報告書提出後の実地調査までに何らかの結論を出すか、デザインをしたほうが、大学自体に自浄作用があると捉えて内部質保証が出来ていると主張することは出来るでしょう。

認証評価の証拠(根拠資料)集めをすることが内部質保証ではないのです。そもそも第2期では付け焼刃で何とかなりましたが、第3期はそうはいかないと聞いています。

学修成果をどうしようの前に、まずは大学の内部質保証がどうなっているか、組織は規程化されているか、役割は明確化をきちんと確認しているかを確認する事が不可欠です。

内部質保証の検証はどうすればいいのか?

勘違いされがちですが、内部質保証の検証と学修成果の検証は異なるものと考えています。内部質保証の検証はディプロマポリシーの達成度を測ることではなく、ディプロマポリシーの検証を行い、それらが明文化された内部質保証システムの中で改善・改革が出来ているかを行う事です。

また内部質保証は、例えば大学によっては内部質保証の方針を策定し、公開している大学もあります。この方針に則って、内部質保証を担う組織が自ら点検評価を行う、もしくは外部有識者によるメタ評価を行う事も選択肢の1つです。

第3期認証評価に向けて、ディプロマポリシーの達成度を検証する事は重要ですが、その検証をどうするかが重要なのです。その為には学内にはその大学の文脈や歴史・教学・法令をおさえ、学内でマネジメントもしくはマネジメント層を補佐する人材がいたほうがいいと感じていますし、養成する必要があると思っています。

なお、本論は大学の設置形態や受審する認証評価機関によって、各大学の考えが大きく異なる可能性があります。

 

               参考・引用文献

・大学基準協会(2019)「大学評価ハンドブック(2019(平成 31)年度改訂)」 https://www.juaa.or.jp/common/docs/accreditation/handbook/university/2019/handbook_all.pdf
・林隆之(2018)「内部質保証システムの概念と要素 先行研究のレビューと「教育の内部質保証ガイドラインの定位」」『大学評価・学位研究』第19号, pp.1-22.