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大学基準協会の認証評価受審に提出する大学基礎データの変遷のメモ

大学は文部科学大臣の認証を受けた認証評価機関による認証評価を受審する必要があります。この認証評価は7年以内に1回受審する必要があり、2018年度から第3期の認証評価が始まりました。

第3期となると、第2期で言われていた内部質保証システムがきちんと運用され、大学は内部質保証を運用し、適切に検証している事が問われています。

また認証評価機関の1つである大学基準協会での認証評価では、内部質保証システムがきちんと出来ている事を確認する為、受審する際に自己点検評価報告書をはじめ、根拠資料、大学基礎データなどを準備し、提出する必要があります。

 今回は、大学基礎データに焦点をあて、2004年から始まった第1期の認証評価と、2011年からの第2期、第3期認証評価で大学基礎データとしてどのようなデータが求められているのかを簡単にまとめます。

 

使用した基礎データ

2019年5月19日時点で大学基準協会のホームページに掲載されている大学基礎データを使用します。詳細したデータが下記です。

第1期は2006(平成18)年度評価者用第2期は2010(平成22)年度評価者用・2011(平成23)年度申請大学用第3期は大学評価ハンドブック(2018(平成30)年度以降の大学評価用)です。

※各期とも1年目の基礎データの使用しての比較が望ましいですが、大学基準協会のHP上で公開していないものもあるため、上記を取り扱います。

各期の大学基礎データでどのような情報を出す事が求められているか、概観したものが下記の図になります。

大学基準協会第1期から第3期のデータ項目比較

大学基準協会基礎データ比較

 

これだけみると、第1期では様々なデータを出す事が求められていますが、第3期ではかなり整理されているかのような印象です。

 

大学基準協会 第1期の大学基礎データ

第1期 の2006(平成18)年度「大学基礎データ」は大学基準で分類された「教育研究組織」「教育内容・方法等」「学生の受け入れ」「教員組織」「研究活動と研究環境」「施設・設備等」「図書館および図書・電子媒体」「学生生活」「財務(私立大学のみ)」「情報公開・説明責任」に関するデータをとりまとめ、データ表を作成する必要があります。

第1期の「大学基礎データ」の表は48の様式が示され、認証評価を受審する大学は教育研究の様々な且つ膨大なデータを取り纏め、提出をする必要があったのです。(下記図参照)

大学基準協会第1期基礎データ

例えば、教育内容・方法の基礎データには「単位互換協定に基づく単位認定の状況(表4)」や「国家試験合格率(表9)」といった情報を示す必要がありました。

 

大学基準協会 第2期の大学基礎データ

第2期1年目にあたる2011(平成23)年度の「大学基礎データ」は、最低限のデータとして「教育研究組織」「教員組織」「学生の受け入れ」「施設・設備等」「財務」に関する表の提出を求めています。

なお、2011(平成23)年度に限っては、「大学基礎データ」以外に根拠資料として必要に応じて提出を行う「大学データ集(参考)」[1]が提示されています。

 

この「大学データ集」は大学基準協会発刊の『大学評価ハンドブック』において「あくまでも参考様式として提示するもので、すべての表を作表することを求めるものではありません」(大学基準協会,2010)と説明され、大学が自己点検評価報告書の記載によって必要に応じて提出するものです。

 

第1期から第3期の大学基礎データの変遷

第1期の「大学基礎データ」では多様なデータを求めていますが、この第2期で求められるデータが大幅に減った理由として、前述した各サイクルにおける評価の位置づけが変化したことにあります。

第1期では「自己点検・評価の実質化」を図るべく、多様なデータに基づいて大学の教育研究をはじめとした現状を評価しています。

第2期では「内部質保証システムの構築」を目指し、各大学が自己点検・評価によって自らの質を保証する事に力点を置いた評価のあり方に代わりました。

これは「自己点検・評価の質を向上させ、自らの判断と責任において評価結果を改革・改善に繋げる内部質保証システムの構築を支援する」(大学基準協会,2010:6)観点から大学基準協会が行った大学評価システムの改革の一つです。

なお第3期[2]の2017(平成29)年度の「大学基礎データ」では「基本情報」「学生の受け入れ」「教育・教員組織」「学生支援」「教育研究等環境」「大学運営・財務」のデータを求めています。 (下記表)

 

            第3期認証評価大学基礎データ一覧

 

大学基礎データ

基本情報

(表1)組織・設備等

(表2)学生

学生の受け入れ

(表3)学部・学科、研究科における志願者・合格者・入学者の推移

教員・教員組織

(表4)主要授業科目の担当状況(学士課程)

(表5)専任教員年齢構成

学生支援

(表6)在籍学生数内訳、留年者数、退学者数

(表7)奨学金給付・貸与状況

教育研究等環境

(表8)教育研究費内訳

大学運営・財務

(表9)事業活動収支計算書関係比率・消費収支計算書関係比率(法人全体) ※私立大学のみ

(表10)事業活動収支計算書関係比率・消費収支計算書関係比率(大学部門) ※私立大学のみ

(表11)貸借対照表関係比率 ※私立大学のみ

(表12)財務関係比率 ※国立大学・公立大学のみ

第3期の表1「組織・設備等[3]」は、教育研究組織だけではなく、非常に幅広い情報が含まれている表です。さて、第3期と第2期「大学基礎データ」と比較するとこのようになります。

大学基準協会第2期及び第3期基礎データの比較

第2期の表1「全学の設置学部・学科・大学院研究科等」、表2「全学の教員組織」及び表5「1 校地、校舎、講義室・演習室等の面積」の内容は、第3期の表1「組織・設備等」に統合されています。

一方、第3期の表4から表8[4]は、第2期「大学基礎データ」にないものの、第1期「大学基礎データ」でも同様のデータや情報の提出を求められています。

また表5「専任教員年齢構成」に関しては、第2期においても「過去のデータを求める点」ですが、第1期「大学基礎データ」では、過去3年が、第2期及び第3期では過去5年のデータが必要となっており、期ごとに求められるデータが若干異なっています。

 

[1] 大学データ集(参考)として参考様式が提示されたのは、第2サイクルでこの年度のみです。

[2] 第3サイクルから基礎要件確認シートの作成及び提出が求められています。このシートは「理念・目的」、「内部質保証」「教育課程・学修成果」「学生の受け入れ」「教員・教員組織」「教育研究等環境」「大学運営・財務」に関する情報について取りまとめる事が必要です。

[3] この表には、例えば大学の名称、学校本部の所在地、学部・学科等の名称、開設年月日、所在地、専任教員数、非常勤教員数、ST比、校舎敷地面積(基準面積・専用・共用)、運動場用地(基準面積・専用・共用)、校地面積(基準面積・専用・共用)、教員研究室数、教室等施設(講義室・演習室・実験実習室・情報処理学習施設・語学学習施設)、図書館面積・閲覧座席数・図書・学術雑誌・電子ジャーナル、体育館面積が含まれています。

[4] 表6は在籍学生数も記載するが、退学者数・留学者数を記載するのは第2サイクルの表4と異なる。

<引用文献>

大学基準協会(2010)「大学評価ハンドブック 2011(平成 23)年度申請大学用」