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令和2年度の文部科学省の予算案について~私立大学の立場から~

2019年12月20日に文部科学省のサイトにて、令和2年度の予算の案が公表されました。文部科学省がどのように予算の案を作っているのかを予め把握しておくことは、特に補助金の業務をする上で必要な事です。

www.mext.go.jp

そこで、令和2年度(2019年度)の私立大学の補助や関連のものだけ、重要なものや新規分をピックアップしました。なお、文部科学省全体の令和2年度の予算額は令和元年度予算額を比較すると微減ですが、子ども・子育て支援新制度移行分を含めると増えています。

一般補助の教育の質に係る客観的な指標

今年の一般補助には、教育の質に係る客観的な指標として昨年度より少し厳しい指標が出てきました。また増減率が2018年度は指標の達成度(点数)によって+2%~-2%だったのが、今年度は+5%~-5%と増減率が拡大しました。

大規模大学のように補助金額が大きいところは影響が大きいですが、例えばFDやSDの参加率が100%など達成するには中々難しいものもありました。印象的には数年前の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の教育の質的転換でしたね。

さて令和2年度は次のように書かれています。

大学等の運営に不可欠な教育研究に係る経常的経費について支援する。アウトカム指標を含む教育の質に係る客観的指標の本格導入等を通じたメリハリある資金配分により、教育の質の向上を促進する。

昨年度も同様な事が記載されていましたので、令和2年度も教育の質に係る客観的な指標(もしくは同等のもの)はあるでしょう。

この指標については、単に補助金担当者が各部局に対して、指標を達成しているかどうかを聞くだけではなく、出来ていない場合はどうしたらいいかを大学全体として考えないといけない性質の補助金になっています。

補助金担当者というとエビデンスだけまとめて提出する仕事という人もいますが、そうではなくて、どうすれば戦略的に補助金の増額が出来るのかを提案出来ないといけない仕事であると捉えています。

 

私立大学等改革総合支援事業

令和2年度にも私立大学等改革総合支援事業があります。まずは令和元年度の予算案との事業の説明内容を比較してみます。

令和元年度 令和2年度
特色ある教育研究の推進や、産業界・他大学等との連携、地域におけるプラットフォームを通じた資源の集中化・共有など、役割や特色・強みの明確化に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援する。 「Society 5.0」の実現に向けた特色ある教育研究の推進や、地域社会への貢献、イノベーションを推進する研究の社会実装の推進など、特色・強みや役割の明確化・伸長に向けた改革に全学的・組織的に取り組む大学等を重点的に支援する。

<参考>2019年度予算:文部科学省

令和元年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1ではデータサイエンスに関する設問は多く追加されるなど、補助金担当者はかなり苦慮したことかを感じます。

令和2年度をみると「「Society 5.0」の実現に向けた特色ある教育研究の推進」とあるので関連の文書はチェックしておいたほうがいいかもしれません。

例えば文部科学省の「Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」では大学改革(P20-21)の内容として次のキーワードがあります。

Society5.0に向けた人材育成 〜社会が変わる、学びが変わる〜 昨年11月から林大臣の下で議論をすすめ、この度まとめられました|今日の出来事:文部科学省

STEAM教育、デザイン思考などの教育、文理融合、全学的な数理・データサイエンス教育、学部横断的な教育、MOOCsの活用

なお、これらのキーワードは令和元年度の私立大学等改革総合支援に含まれているものばかりです。

<参考>

Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府

 

知識集約型社会を支える人材育成事業

グローバル人材育成の為の大学の国際化と学生の双方向交流の推進の中で知識集約型社会を支える人材育成事業が新規としてあります。

内容としては、入学した後に自分の専門を学びながら選んでいくレイトスペシャライゼーションプログラムやダブルメジャーな、また才能ある学生に個別最適化した学びを実現するプログラムが挙げられています。(全学的な共通教育を整備し、そこから専門教育に進むという昔の教養部のイメージでしょうか)

<参考:レイトスペシャライゼーションプログラム)

学びの特徴|大手前の強み|学部・大学院|大手前大学

桜美林大学 リベラルアーツ学群 学部の特色|大学ポートレート

さて、気になるのは、教育プログラム以外にも教学マネジメント改革への対応や全学的な管理運営体制の強化(例:研究業績重視の人事給与マネジメント改革やFD/SDの実質化)がイメージ図にありますので、大学が全学的に改革を行う、教学マネジメント指針を具体化する(その予定がある)大学であることが求められそうです。

 

おわりに

他にも、高大接続に関わる予算として、大学入学者選抜における共通テストの調査研究を行う「大学入学者選抜における共通テスト改革推進事業」が新規で出ています。

また若者の地元定着と地域活性化を推進することを目的とした、産学官が連携し、地域が求める人材を養成するための教育改革を実行するとともに、出口(就職先)と一体となった大学による地方創生人材教育プログラム事業があるので、地方の私立大学は多少関係あるかもしれません。