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組織を対象とした調査の回答の負担は回答の手間だけではない

大学という組織で働いていると、大学に対して多くの調査が来ていると感じます。調査をするのは文部科学省をはじめとした官公庁から、あるいは企業から、あるいは研究を目的とした研究者からなどと様々です。

特に研究を目的とした調査の場合は、今までの先行研究(先行で行った調査)を踏まえた新規性があることを前提に調査が行われるのですが、回答した方としてはどうも似たような調査だなと感じることも多々あります。

ただ大学がどのぐらい調査について回答を行い、負担はどれぐらいあるかといった調査や研究は「調査対応への業務負担の可視化を試みた」藤原・齋藤・上畠(2019)ぐらいで他には殆どありません。

今回は調査の負担について、私が所属する大学を踏まえて書いてみたいと思います。

調査負担は2種類ある

調査の負担というと、回答の手間であるとも言えます。ただ回答の手間を分解していくと2種類あると思っています。

  1. 回答の為のデータ(根拠)を集め、確認する手間
  2. 回答を出すための手間

1つめは依頼された調査に正しく回答するための根拠資料やデータ収集です。組織に依頼された調査であれば、根拠資料がきちんとある事が前提ですし、誰が回答しても同じ回答になることも大前提です。

ささいな設問であれ、規程を確認したり、関係各部署に確認する事は多少なりとも手間になる事項です。

特に学長宛にきた調査などは、根拠資料やデータを集め、学長ならどう考えるかを踏まえて、回答案を出す事もあります。特に「学長ならどう考えますか」「大学は今後どうあるべきだと思いますか」「文科省の〇〇の政策についてどう考えますか」といった設問だと、かなり悩む設問です。(他の大学にも聞きましたが、忙しい学長に調査依頼がきても、回答を作るのは別の人が多いですね)

また各部署に依頼を出さなければいけない調査だと、先方の仕事の都合もあるので、それらを鑑みながら依頼をし、回答を作り上げなければなりません。

回答を出すための手間

回答を作っても、担当者がさっと出す事は基本ありません。そもそも調査が大学に来た場合は組織として受けますので、記録を取り、いつ対応したのかを残す事が必要です。

その為、回答する時は(調査の内容にもよりますが)関係各所に確認するだけではなく、きちんと決裁をすることが求められます。

調査対応というと、担当者に依頼文が来る→調査に回答する→調査を提出するといった流れだと思う人もいるかもしれません。

しかし実際はこんな流れになります。

担当者に依頼文がくる→調査に対応するか確認する→調査の為のデータや根拠を集める→回答をする→決裁ルートに流す→決裁後に調査を提出する

担当者だけで回答して提出していいのであれば、そんなに負担でない調査もあるのですが、組織にきた調査の場合は結構面倒な手続きを経ることがある訳です。

大学は公共機関でもあるので、このような手続きは面倒がってはいけないとは思っていますが、既に前例がある同じような調査は新規性や意義などをきちんと明示してもらえると回答する担当としては嬉しいなと感じています。

 

参考文献

藤原僚平・齋藤 渉・上畠洋佑(2019)「大学への調査の実態把握に関するパイロット分析-A 大学における調査負担可視化の試み-」,「大学評価とIR」11,p.3-14.