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IRと大学職員㉚IRは大学改革に寄与するのか

近年、高等教育政策や大学評価、補助金(特に私立大学等改革総合支援事業)により、IR(Institutional Redearch)が大学の中で認知されてきているかと思います。

 

さて2019年1月7日に法政大学の児美川先生の次の記事が出されました。

jbpress.ismedia.jp

上記記事について、その通りであるが、現場でIRや評価、補助金を担当してきた中小規模の1大学職員として少し書いてみます。

 

IRは他人事であった

2004年に認証評価の受審が義務化されました。例えば認証評価機関の1つである大学基準協会で認証評価を受審する場合、「大学基礎データ」を作成する必要があります。

認証評価は7年に1回、受審する必要がありますが、2004年からの所謂第1サイクルでは、各大学は教育及び研究から学生の受入れ、財務など様々なデータを収集し、それらをまとめたうえで「大学基礎データ」を作成しました。

これらは認証評価の中でやらなければいけない事であり、認証評価が終わった後でも継続的に認証評価と同様のデータを集めているかといえば、そうでない大学もあったと思います。

また文部科学省からの各種答申や報告では「IR」と言われても、そんな所に割り当てるリソース(人・金、そしてシステム)はないという風潮が強かったかと思います。データを収集し分析する専門の人を置くぐらいなら、他に人を配置したいというものとIRは本当に必要なのか?単なる流行りではないかと冷めた目が所属機関でもありました。

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補助金による私学のIRの導入

児美川先生の記事でも述べられていますが、大学は補助金があると大学はその誘導にのるケースは多いです。「補助金で求められているから、やらざるを得ないよね」と重い腰をあげて、慌てて取り組む大学もあったでしょう。

私立大学のIRについては、私立大学等改革総合支援事業の後押しが強かった事は間違いないでしょう。

平成29年度までは私立大学等改革総合支援事業のタイプ1「教育の質的転換」には、IRの(専門or担当)部署があるかどうか、専任の教職員が配置されているか、委員会や担当組織があるかどうかが問われました。

問われている内容は年度によって異なりますが、IRの専任職員がいるかどうか、何を担当させるかは大きな課題でした。部署を作るぐらいは学内の調整で済みますが、IRの専任の職員を置くという事は、人件費の観点からも中小規模の大学では中々踏み切りにくかったです。

改革総合支援事業のタイプ1でIR人材の配置については、平成30年度の私立大学等改革総合支援事業から大きく内容が変更され、IRの企画や実施方法に関する高等教育プログラムを受けた教職員の配置か、IRの研修を定期的にうけるIR担当教職員が必要です。

各大学にIRの専任教職員が普及して、次は質を求めるのであれば、このようなIRの教職員に関する設問もうなずけますが、平成29年度私立大学等改革総合支援事業の設問ごとの該当件数を見ると、とりあえずIRの業務を担うなんちゃってIR担当者が見受けられたから、IR担当者の質を求めるようになったのではとも感じます。

 

IRが大学改革に寄与する為に

どうもIRを導入すれば、大学改革は進むと考える人も少なくはないようです。でもIRは、データを情報へ変換し、それを報告するのが第一の目的です。

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またIR担当者、少なくともIR部署としては学内のデータ(データの所在、集約、整理、分析、データ定義)等に精通している必要があると思います。

大学改革に必要な材料として、データや情報を見えない場所から見える場所に、そして分かりやすい形で出すのがIRであると思います。それを活かすのは、IRの担当者や部署そのものではなく、大学の執行部や教学マネジメントに連なる人や組織です。

私が感じるIRを大学改革に活かすには最低限これぐらいは必要かなと考えています。

  1. IR担当者や部署はデータ分析屋だけではなく、教育研究をはじめとした現状や背景を知り、理解しておく必要がある。
  2. データを活かす側(例えば執行部側)も大学改革に資する為のデータリクエストをIRにきちんと行う
  3. IRと執行部側の密接なコミュニケーション

 

最後に

IRは魔法の杖と例え話があります。またとりあえず毎年度同じ分析レポートを出しておけばいいのではという空気もたまに感じます。

また分析も報告だけで何も活かされないケースもあるように感じます。(この場合は、活かせない執行部側に原因があるのか、活かせないデータや報告をするIRに原因があるのかはケースバイケースでしょうね)