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学校法人制度の改善方策から見る大学改革と学校法人・大学の撤退

私立大学等の振興の議論の中での学校法人におけるガバナンス機能の強化の検討の為にに大学設置・学校法人審議会学校法人分科会 学校法人制度改善検討小委員会が2017年(平成29年)から置かれています。

 

なお、学校法人制度については下記をご参照下さい。

学校法人制度の概要:文部科学省

日本私立大学協会 | 「学校法人」ってなに?

 

さて、この検討会の報告が2019年(平成31年)1月7日に文部科学省のホームページ上に公開されました。

 

この報告の大きな内容としては下記の4点となります。

  • 学校法人の自律的なガバナンスの改善・強化
  • 学校法人の情報公開の促進
  • 学校法人の経営の強化
  • 学校法人の破綻処理手続きの明確化

今回は大学に関する上記赤字の箇所の一部、特に大学に関係する箇所についてまとめます。

 

学校法人の経営の強化

学校法人の経営の強化は、私立大学だと大学の特色化や強みのある分野への資源の集中が求められています。

例えば、地域との関係が強く大学、国際色豊かな大学や英語教育に強い大学、国家資格取得率100%の大学、研究型大学、もしくは地域のハブとなる大学もあるかもしれません。

大学は教育研究や地域貢献、そして国際など様々な分野に手を出すとお金や人的資源が足りなくなって、いずれも中途半端に終わる事があります。

そこで、今回の報告で求められているのは「複数大学が協力した授業や学生募集、施設設備・調達・事務処理等の共同化」などです・これによって支出の効率化や大学連携を促進する事を想定しているようです。

でも例えば同じビルにいくつもの大学があるのならともかく、学生の立場から他の大学に行って授業受けたり、ライバル大学なのに共同募集をしたりしますかね?まだ何とか出来そうだなと思うのは共同調達ぐらいでしょうか。

 

学校法人や私立大学の連携・統合

学校法人について定めた私立学校法第52条から57条に、学校法人間の合併について定められています。例えば私立学校法52条は下記の内容です。

第五十二条 学校法人が合併しようとするときは、理事の三分の二以上の同意がなければならない。ただし、寄附行為で評議員会の議決を要するものと定められている場合には、更にその議決がなければならない。
2 合併は、所轄庁の認可を受けなければ、その効力を生じない。

さて、報告の中で気になるのは、次の箇所です。

学校法人には株式会社のような持分という概念がないため、金融機関の仲介やM&Aなどを通じた連携・統合も進みにくく、仲介者の少なさから連携・統合に関する情報も限られている。連携・統合は学校法人の自主的な経営判断によることは言うまでもないが、連携・統合や事業譲渡を希望する法人に関して、財務状況・経営方針・役員の受入れ等に関する情報や条件について、日本私立学校振興・共済事業団(以下「私学事業団」という。)等において必要な情報を収集し、条件の見合う法人へ情報提供を行うようなマッチングの仕組みを構築すべきである。

大学の連携・統合は、需要がないと成立しませんし、企業が間を取り持って収益化をはかるのは難しいですよね。(例えば、既に銀行の資本が入っている場合、同じ銀行の資本が入っている複数大学の合併というのはあり得ない話ではないと思います。既に事務局長に銀行からの出向者というケースもありますし。)

コンサルティング会社が法人の合併等に乗り出すかどうかは、ある規模・お金を持っている法人から「●●学部が欲しい」というケースぐらいでしょうか。

また、さらに気になるのは次の点です。

都道府県あるいは地域レベルでどのような人材を育成する必要があり、どのような学部・高等教育機関が必要かを検討してもらうことと併せて、地域における学校法人間・大学間の連携・統合等について、都道府県などにもコーディネート機能を担ってもらうべきと考える。

2017年度から私立大学等改革総合支援事業の1つであるプラットフォーム構築の設問の中に「特定の地域の学術分野マップを作成し、公表」が求められています。この学術マップとは平成29年度私立大学等改革総合支援事業タイプ5の設問の要件(p13)に次のように記載されています。

特定の地域におけるプラットフォーム形成大学等の学術分野の現状認識・把握等を目的としたものであり、プラットフォーム全体を俯瞰して1つの大学として捉えた場合、どのような分野があるか、同系統であっても細分化した場合の相違点などを明確化したもの。特定の地域外の大学は含まなくてよい。

今回の地域レベルでの人材育成はまさにこれですよね。ただ地域内での大学の連携・統合について都道府県にコーディネートをやれというのは、些か乱暴な気がします。都道府県側は、特に若手の県外流出などを含めた問題解決等に資するのであればいいですけど。

学部単位等での円滑な事業譲渡の在り方

既に2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申にも「「私立大学の学部単位等での事業譲渡の円滑化等」に必要な制度改正」とあるように同じ事が答申や他の報告で何回も言われています。

この学校法制度の改革報告でも、記載されている学部譲渡について、高等教育の質保証に留意することや学生・保護者への説明の実施などが触れられています。1つ違うのは、2040年グランドデザイン答申では「学部等」と標記されていたのが、「学部・学科単位での事業譲渡」と標記されている事です。

 

学校法人の破綻処理手続きの明確化

いくつかの学校法人の財務諸表を見ると「このペースだと持って10年未満かな」という学校法人があります。今は現実感があまりないかもしれないですが、学校法人の破綻はそう遠くない将来に出てくるでしょう。(不思議な事に、その該当の学校法人で働く人と話をすると危機感をまったく感じない時があります)

学校法人(大学)が解散する場合は、全ての在学生が卒業してから解散が原則です。また解散が決まった場合、大学は何とかして4年間で卒業をしてもらうようにすることがあります。これは1年生の学生は4年間で卒業をせずに、留年すると1年解散を延ばさないといけなくなります。そうすると、施設や人件費など莫大な費用がかかるのです。

さて、今回の報告では、「学生を抱えたまま解散せざるを得なくなった緊急時の学生受入れの相互扶助」について指摘されており、その役割を大学のコンソーシアムの参加大学間とする事も検討されています。

学生の学びの継続性の維持に資するため、単位互換や共同教育課程を実施するコンソーシアムの参加大学間において、各学校法人の自律的で健全な学校経営を前提としつつ、参加校が学生を抱えたまま破綻せざるを得ない万が一の経営危機に陥った場合には、相互に学生受入れに協力する趣旨の了解事項をまとめておくことも考えられる。

これについては、受入側のコンソーシアム加盟の大学の定員に空きがあれば、難しい事ではないでしょう。過去には解散を命じられた法人の学生受入れについて文部科学省が音頭をとった事もありました。

むしろ定員割れをしている大学で、編入でも来てもらえるなら喜んで受け入れる大学もあるでしょう。

学校法人が解散した場合の学籍簿の扱い

社会人になったから、卒業証明書が必要だと大学に発行申請をします。でも、母校がなくなってしまった場合はどうすればいいでしょうか?

解散する学校法人が設置する学校の学籍簿の管理についても、一義的には、解散した学校法人が自己の責任において適切な引き継ぎ先を確保することが必要であるが、学生の受入れ同様、コンソーシアム等において、万一の場合の参加大学間での協力事項としてまとめておくことも考えられる。

今回の報告では、大学のコンソーシアムの参加大学間での協力事項としてまとめる事が記載されています。これは中々難しい問題だと感じます。電子データで保管するのにもコストがかかりますので、それをどう担保するかといった課題も出てくるでしょう。

これは、地域ではなく国としても検討を進めたほうがいい事項ではないでしょうか。

おわりに

今回の報告は学校法人の自律的なガバナンスが大きな焦点です。その中でも大学に関する箇所のみ、まとめました。ただ言っている事は、他の答申や報告でも変わりません。言い換えると、同じ点について多面的に指摘を行い、事業実施や法令の改正を必ず行うという事ではないかとも考えられます。