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2019年以降の私立大学の支出抑制と行く末

18歳人口が2018年以降から減少する2018年度問題は、大学の学生募集や大学経営で大きな問題です。大手私立大学や有名ブランド大学ではない小中規模大学や地方に立地している大学は、数年前から2018年度問題に戦々恐々としていました。

ただ関東近郊の小規模中規模私立大学、そして中堅の私立大学は大学の定員超過抑制の政策の為に、入学者数が回復した例もかなりあったそうです。

でも、大学(特に東京23区内や地方都市の中心にはない小規模中規模大学)は冬の時代というより終わりのない氷河期に突入していくと考えています。

 

大学の現状

大学の今、直面している現状や今後起こるであろう社会の内容として、定員超過の抑制や厳格化、消費税が10%にアップ、補助金等の傾斜配賦などが挙げられます。

定員超過をどうするか?

私立大学等経常費補助金の観点から

平成27年7月に通知された「平成28年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」は私立大学に大きな衝撃でした。この時は入学定員充足率が1.0倍を超える(例えば100名の入学定員があると101名となる)と、その分の補助金を差っ引くよという内容でした。

平成31年度から、入学定員充足率が1.0倍を超える入学者がいる場合、超過入学者数に応じた学生経費相当額を減額する措置を導入する。現在の一般補助における教育研究経常費等の算定の中でも、学部において収容定員充足率が1.0倍を超えている学生分は措置していないが、平成31年度からは、入学定員充足率が1.0倍を超える入学者に見合う額をさらに減額する予定である。一方で、定員管理の適正化に向けた努力をする中で、結果として定員を下回ることも考えられることから、入学定員充足率が0.95倍以上、1.0倍以下の場合には、一定の増額措置を行う予定である。

今まで大学は、入学定員1.29倍近くの入学者受入れをしていた大学も少なくはなく、「補助金を減らされてはいかん!」と入学定員超過をあまりしませんでした。つまり、今まで入学できていた高偏差値帯の受験者がつまって、ところてん式に中堅大学やさらにその下の大学にまで受験者がきたのです(※大学によっては入学辞退を見込んで合格を出したのに、辞退をせずに、入学定員を超える入学者数となってしまった大学・学部もあります)

 

そして平成30年9月の「平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の
取扱について(通知)
」で上記の引用部分について「当面実施を見送り、後記措置の実施状況及び効果等を検証しつつ、3年後を目途に実施の要否を検討」と変更されました。

ただ、定員管理適正化に向けた入学定員充足率が1.0倍を下回る場合は増額措置があります。

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入学定員充足率と私立大学等経常費補助金

出典: 平成31年度以降の定員管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)

今回、1.0倍を超えた事による減額措置がなくなった事で、私立大学側は少し安堵しているかと思います。特に小規模大学だと数人程度で入学定員超過率が大きく変動しますので、合格者数やどれぐらい辞退しどうかを読むのが非常に難解になっているのです。

ただ、大規模大学は入学定員1.0倍を超えたことにおる減額措置がなくなり、定員より少し多い入学者受入れをすると、その下の大学は入学者数が減るという事も十分あり得ますね。

設置等に係る認可の基準と入学定員超過

学部学科を新しく設置する時は、どういう時でしょうか?例えば、大学の外部環境が変わって、社会のニーズに合わせた学部学科が必要になった時が挙げられます。(言い換えると、募集しても上手くいかなくて定員割れをしているから、学部学科を変えて、テコ入れをしようですね)

ただ大学側が学部学科等を設置する場合は、学部単位で平均入学定員超過率が一定値未満である必要があります。

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大学設置申請と平均入学定員超過率

出典:平成30年度大学設置等に係る事務担当者説明会資料(その1)

学部の規模に応じて数字は異なりますが、平均入学定員超過率を1.05倍~1.15倍未満にしておく必要があるのです。これは大学側は「数年間は学部等の設置はしない!」としていればいいですが、何かの際に学部学科等の設置をする、収容定員を増やす申請は出来なくなります。

消費税10%への対応

2019年10月1日から消費税率及び地方消費税率が引き上げられます。

大学に払う入学金や授業料には消費税はかかりません。ただ言うまでもなく大学が支出するものについては消費税がかかります。つまり、来年の10月から支出は増える事になります。

一方、学生の授業料や補助金で大部分を占めている収入については、学費を値上げしない限り、急に増える事はありません。(附帯事業収入は除きます。)

2014年に消費税が5%から8%となり、学費を上げた大学ばかりではありません。小規模中規模で地方の大学は、「学費を上げると学生募集に影響があるのでは?」と考え、経費を削って対応した大学もあるでしょう。

そして消費税10%となり、支出は増えて収入は据え置きの大学だと財政はかなり厳しくなります。

補助金の配分

2019年1月14日、文部科学省の「2019年度文部科学省 予算(案)の発表資料一覧」が公表されました。今回は、奨学金事業の充実や授業料減免等の充実に関する予算がかなり増額されて出されています。

私立大学への支援などの私学の振興についても、私立大学等経常費補助は微増ですが教育の質に係る指標が本格導入されることや、私立大学等改革総合支援事業は選定予定校数が減少するなど、補助金を取っていくのはかなり難しくなっています。

補助金を取るには、地域や研究など分野特化したり、大学改革に勤しむ事が求められています。

 

2019年(年度)以降の大学の支出抑制

学生は多くとれなくなった、学費は値上げできない。さらに補助金も取りにくく(もらいにくく)なった事により、収入はほっておくと下がります。

一方、消費税増税に加えて、最近はキャンパスのICT環境整備や少人数教育、学習環境の構築などで、ひと昔前の大人数講義が中心だった時代と比較して、支出が増えています。

そうすると必要になるのは何を減らすか?です。

事業を減らす?

大学は様々な事業を行っています。例えば地域連携、国際、正課外などです。事業があるという事は、予算や人員のリソースを注ぎ込んでいるとも言えます。

でも、なぜか「大学は事業廃止が苦手だよな」と思っています。前年主義が強く残っている組織や人に要因がある場合や、その事業をスタートさせたときの人の想いが強く残っている場合もあります。特に事業をスタートさせた人が学内にいる場合は、なかなか事業を廃止できない場合が多いです。

(でも、その人が定年や他の組織に行ってしまうとあっさりと事業がフェードアウトしてしまう事もあります)

予算を減らす?

収入が少なくなるのなら、その分予算を減らすという選択肢も手っ取り早い方法です。例えば学生の教育に直接関わらない管理系の予算の削減から始まります。

そして次が教育関連の予算や人件費です。教育系の予算は何とか死守したい所ですが、本部から総額で〇%は予算削減と言われると昨年度若干余った予算から減らしていきました。

人件費を減らすと早いでしょうが、おそらく人件費削減に着手された場合は余程の時ですね。

教育のコストの見直し

大規模大学はともかく、小規模大学だと教育にかかるコストの見直しも視野に入れて動いているでしょう。例えば、兼任(非常勤)教員が担当していた科目を専任教員が担当したり、開講科目・授業数の見直しといった事も行わないといけなくなるかもしれません。

施設の見直し

施設は維持するだけでお金がかかります。一方、教室が足りないという声も本学内ではあります。教室規模ごとの最低限の数はどれぐらいか?、時間割を最適化して、みっちりつめるとどうなるかなど、教育のコストの見直しと同時に施設のコストを出来るだけ下げようという動きも出てくるでしょう。

 

支出抑制について

大学で働いている者として、教育研究のカットする事は出来るだけしたくはないと思います。でも、管理系の予算を削るのにも限界があります。

そうすると、学生の授業料や補助金以外に、寄付金を集めたり、事業収入を増やしていくのが1つの解になるでしょう。