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卒業生調査の概要と設問と大まかな整理の試み

近年、大学の教育の質保証や補助金の政策誘導によって、学生に対して学修行動等の調査、所謂「学修行動調査」を実施している大学が増えました。

そしてここ数年は在学生だけでけではなく、大学の教育の成果や効果を検証するために、卒業時に調査を行ったり、卒業後就職してからの社会人を対象に調査を行う大学も出てきています。この実施の理由として大学の質保証という一面と、卒業時調査や卒業生に対して行う調査は、私立大学は補助金の項目にあるため、実施している大学が増えてきているという一面・理由もあるでしょう。

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それでは卒業生に対して行う調査は、各大学はどのような調査方法で行い、どのような設問にしているのでしょうか。今回、Googleで「卒業生調査」と検索し、表示された大学で卒業生調査を公表しているものから、方法や設問を整理しました。なお、本調査はあくまでネット検索結果によるものですので、全国の大学を対象としたものではありません。

また卒業生調査と名称がなっていても、内容を精査して、卒業式前後に行う卒業時調査の性質をもつもの、実施時期が3年以上前のものは除きました。今回参考した大学は本記事最後にリンク等を掲載しています。

卒業生調査の方法

今回調べた大学では卒業生調査の実施時期は夏~冬にかけてが多いようです。対象は直近から数年以内の卒業生を対象とした大学は弘前大学や大谷大学などがあります。一方、学習院大学は卒後5年経過し卒業生団体へ連絡先を提供している人を対象としています。方法として回収方法として郵送やWEB形式の併用している大学もあり、謝礼500円を出している大学も見受けられました。

卒業生調査目的

卒業生調査の調査目的例として、東京薬科大学は下記のように報告書に記載しています。

この調査では、
①本学における学修経験と卒業後のキャリア形成との関係
②卒業論文研究の効用
③本学の教育において身につけた能力および社会において必要と感じる能力
を明らかにした上で、これまで本学が教育機関として果たしてきた役割を評価するとともに、未来に向けた教育・研究の礎となる情報を集成し、本学教育の質保証に資することを最終的な目標としています

ただ東京薬科大学は大学教育再生加速プログラムに基づいて実施された調査との事ですので、上記のような質保証を主目的とした調査になっています。

また静岡県立大学や大谷大学はャリア支援センターなどの学生支援や教育等の評価をするためとしているケースもあります。

卒業生調査の回収率

今回公表している大学では卒業生の調査の回収率は15~28%程度となっていました。ただ謝礼500円を出している大学は回収率は20%を必ずしも高いわけではありません。

卒業生調査の質問項目の類型化と整理

公表している卒業生調査の報告書あるいは調査票から、質問をマインドマップで整理を試みました。なお細かい設問は省略しています。

例えば「大学で養成した能力で社会に役立った能力は何か」といった設問の場合、設問内で能力の内容まで記載していましたが、大学によってこの辺りは大きく異なる為に今回は省略しています。

さて整理した結果として、今回の大きい区分けとして①属性、②大学入学前、③在学中、④仕事・キャリア、⑤能力、⑥大学にしてみました。

卒業生調査

また上記図をテキストに落とし込んだものは下記となります。

①属性

 性別

 生年月日

 年齢

 住所

 最終学歴

 大学

  入学年

  卒業年

 高校入試

  出身高校所在地

  入試時志望順位

  現役or浪人

②大学入学前

 高校生時代の学修行動

 卒業した高校の進学率

 部活動や生徒活動の有無

 本学の受験理由

 高校3年時(中学3年時)の成績

 高校までの海外経験

③在学中

 大学時代に力を入れたこと

    熱心に取り組んだ事

 学習

  成績

  留年回数

  卒業論文研究

    経験あり

       実施内容

       成果

    経験なし

  1週間あたりの学修行動(平均的活動時間)

  積極的に出席したくなる科目割合

  在学中に受けた授業

 学生生活

  人間関係

  教育内容

  就職活動

    卒業後の進路

  留学海外プログラム経験

  奨学金の有無

 満足度

  入学時の満足度

  在籍時の満足度

  卒業後の(授業)満足度

④仕事キャリア

 キャリア

   最初についた仕事について

     企業等概要

        業種

        職種

        雇用形態

        企業規模

     本人の考え

        希望していた企業か

        仕事と学び(専門性)との関連

            実社会で役に立った科目

        配属された職場の興味

   現在の仕事について

   転職退職経験

     相談相手

     理由

   海外勤務経験

 個人の環境状況

   相談できる友人の有無

   仕事やキャリアに費やす時間

      研修会や読書で行っている学習内容

      読書に費やす時間

   持っている資格

   生活の感じや満足度

   収入年収

   同居家族

   生活面で重視すること

   生活と学びとの関連

⑤能力

  現在の能力

  卒業時の能力

  卒業時に身につけておく必要性がある能力

⑥大学

  大学を卒業してよかったか

  大学を薦めるか

  大学に対する期待や望むこと

     教育

     各種支援

       就職キャリア支援

  大学と交流の有無

  大学の取組み支援

  就職支援活動

これらの調査項目を見ると、就職の状況や能力、大学に対するものはどうかといった設問がいくつかの大学で見られました。2019年度の私立大学等改革総合支援事業では卒業後の進路の状況から教育の成果や効果を検証することが求められていますので、④就職の状況や⑤能力は卒業生調査を見直す際は検討すべき設問なのかなと考えています。

卒業時調査を参考にした大学

国立大学

弘前大学

卒業生・企業アンケート 弘前大学教育情報

島根大学 

卒業生調査 | 国立大学法人 島根大学

公立大学

静岡県立大学

卒業生調査報告書 | キャリア支援・就職 | 静岡県公立大学法人 静岡県立大学

私立大学

学習院大学

www.univ.gakushuin.ac.jp

東京薬科大学 

東京薬科大学は大学教育再生加速プログラムに採択され、それから実施しています。その為、調査内容のボリュームが大きく、教育の質に関する設問が多いのが特徴です。

www.toyaku.ac.jp

京都外国語大学

https://www.kufs.ac.jp/about/projects/pdf/report_alumni_2016.pdf

東北公益文科大学

東北公益文科大学/卒業生調査

今回は対象外ですが金沢工業大学も参考になります。

この大学は在学生から卒業生まで調査しており、卒業生調査として独立していない為、今回は外しています。

www.kanazawa-it.ac.jp