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大学の情報公開の現在までとこれから~法令と補助金の視点から~

大学は、自身の透明性を確保する為、また説明責任やステークホルダーに情報提供する為に情報公開を行っています。この情報公開について平成30年度は大きな変革が進みつつあります。

 

そこで、情報公開に係る近年の法令改正や高等教育政策の中での議論を踏まえ、今後の大学の情報公開について取り上げます。

 

 

1.大学の情報公開に関する法令の改正

大学の情報公開は、2011年度までは大学設置基準第2条により次のように定められていました

第2条

大学は、当該大学における教育研究活動等の状況について、刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によつて、積極的に情報を提供するものとする。

ここで定められていたのは、情報を積極的に提供する事のみとなります。

 

情報公開に関する学校教育法施行規則等の一部の改正

2010年6月に学校教育法施行規則の改正に関して通知が出されました。

学校教育法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(通知):文部科学省

 

ここでは「大学等が公的な教育機関として,社会に対する説明責任を果たすとともに,その教育の質を向上させる観点から,公表すべき情報を法令上明確にし,教育情報の一層の公表を促進すること」を目的として、情報公開に関して第百七十二条の二が加えられてます。

第百七十二条の二

大学は、次に掲げる教育研究活動等の状況についての情報を公表するものとする。
一 大学の教育研究上の目的及び第百六十五条の二第一項の規定により定める方針に関すること
二 教育研究上の基本組織に関すること
三 教員組織、教員の数並びに各教員が有する学位及び業績に関すること
四 入学者の数、収容定員及び在学する学生の数、卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること
五 授業科目、授業の方法及び内容並びに年間の授業の計画に関すること
六 学修の成果に係る評価及び卒業又は修了の認定に当たつての基準に関すること
七 校地、校舎等の施設及び設備その他の学生の教育研究環境に関すること
八 授業料、入学料その他の大学が徴収する費用に関すること
九 大学が行う学生の修学、進路選択及び心身の健康等に係る支援に関すること
2 大学は、前項各号に掲げる事項のほか、教育上の目的に応じ学生が修得すべき知識及び能力に関する情報を積極的に公表するよう努めるものとする。
3 第一項の規定による情報の公表は、適切な体制を整えた上で、刊行物への掲載、インターネットの利用その他広く周知を図ることができる方法によつて行うものとする。 

この法令改正では、大学はどのような情報を公開するのかが定められ、クローズドではなくインターネットなどのオープンな場で情報公開する事が義務付けられました。

 

併せて、大学設置基準第2条の「情報を積極的に提供する事」は削除されています。

 

この法令改正に合わせて、各大学はホームページに「情報公表」や「情報公開」のページを作り、毎年度の5月1日の数字や昨年度の状況について情報を公開しています。

 

2010年の時に話題になったのは「卒業又は修了した者の数並びに進学者数及び就職者数その他進学及び就職等の状況に関すること」、つまり就職率を公表をして大学の受験生の募集活動に影響を与えないかの不安がありました。

 

ただ、現在は就職率の公表は当然のようになっていますね。それで就職率ランキングが作られるという事もありますね。情報が独り歩きをしてしまうのは、大学としは困った状況でもあります。

 

「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」での情報公開

2017年度に文部科学省中央教育審議会大学分科会制度・教育改革ワーキンググループで教育の質保証の観点から情報公開について議論がされました。

 

ここでの論点は「質保証と情報公開」であり、学修成果や教育成果の情報公表について議論がされています。これらの議論をうけ、平成30年6月28日に出た「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(平成30年6月28日 将来構想部会)」では教育の質に係る情報公開について述べられています。 

今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ(平成30年6月28日 将来構想部会):文部科学省

 

この中間まとめの中では、学修成果について「大学教育の質の向上に係る情報を積極的に把握・公表していくことが重要である」とされています。併せて次の項目が例示されています。

【参考①】把握・公表の義務付けが考えられる情報の例
(学修成果・教育成果の可視化に係る情報)
単位の取得状況、学位の取得状況、進路の検討状況等の卒業後の状況(進学率や就職率など)、学修時間、学生の成長実感・満足度、学生の学修に対する意欲等

(大学教育の質に係る情報)
入学者選抜の状況、修業年限期間内に卒業する学生の割合、留年率、中途退学率、教員一人当たりの学生数、学事暦の柔軟化の状況、履修単位の登録上限設定の状況、授業の方法や内容・授業計画(シラバスの内容)、早期卒業や大学院への飛び入学の状況、FD・SDの実施状況等

【参考②】把握や活用、公表の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報の例
(学修成果・教育成果の可視化に関する情報)
・アセスメントテストの結果、TOEICやTOEFL等の学外試験のスコア、資格取得や受賞、表彰歴等の状況、卒業論文・卒業研究の水準、留学率、卒業生に対する評価等

(大学教育の質に係る情報)
・ナンバリングの実施状況、履修系統図の活用状況、GPAの活用状況、IRの整備状況、教員の業績評価の状況等

ここでは、公開の義務付けが考えられる情報例と指針を示す情報例が示されています。前者は今後、法令等で情報公表について義務付けがされていく事も考えられるでしょう。ただ教員一人当たりの学生数などは、既に学生数と教員数が公表されていますので、計算すればいいような気もします。

 

また各大学は、これらの情報について既にホームページなどで公表しているかを確認し、学校基本調査などを活用しながら 、情報公開について備えていく必要があります。

 

2.大学の情報公開や補助金との関連

 大学は、法令による義務付けに対応する為、各大学のホームページで情報を公表しています。また「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」(以下、「中間まとめ」)では、公開が義務付けらが考えられる情報について提示がありました。

 

ただ平成30年9月上旬の時点で気になる2点があります。

  • 大学の教育情報の公表・活用のための共通的な仕組みである大学ポートレートの公表項目に入っていないかどうか
  • 補助金等による設問で示されている情報の公表はどうか

 

補助金等による設問とは、特に平成30年度の私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の「教育の質的転換」や、私立大学等経常費補助金の「教育の質に係る客観的指標」に情報の公表に関する記載があります。 

 

           <過去関連記事>

www.daigaku23.com

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ようやく本題ですが、そこで中間まとめで示されている情報公開項目の例示を次の項目と対応させました。

  1. 現在の学校教育法施行規則の情報公開項目
  2. 大学ポートレートの公表項目、
  3. H30私立大学等改革総合支援事業タイプ1の設問内にある情報の公表を求めている内容
  4. H30 私立大学等経常費補助金の「教育の質に係る客観的指標」の設問内にある情報の公表を求めている内容

 

把握・公表の義務付けが考えられる情報の例について

大まかではありますが、中間まとめで示された把握・公表の義務付けが考えられる情報の例を次のようにまとめました。

3の私立大学等改革総合支援事業タイプ1の△は設問に回答するための前提条件の為に、△と標記しています。

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既に、「学修成果・教育成果の可視化に係る情報」については、中間まとめでの例示は、平成30年度の補助金の中に含まれている事が分かります。

 

改革総合支援事業のタイプ1を申請するかなりの大学は、これらの項目について情報公表の対応ができている大学もあるのではないでしょうか?

 

一方、大学教育の質に係る情報については、既に法令や大学ポートレートで公表されているものもあるでしょうが、留年率や退学率など、大学側が公表を渋る情報もありますね。

 

ただFDやSDの状況は、情報公開より、大学の活動報告に載せている場合もある気がします。

 

把握や活用、公表の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報の例

情報の把握や公表について義務付けではなく、在り方の指針についてです。こちらも先ほどと同じように改革総合支援事業は、設問に対し情報の公表が前提になっているものは△、設問になっているのは〇にしています。

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把握や活用、公表の在り方について一定の指針を示すことが考えられる情報の例については、学修成果・教育成果の可視化に関する情報は、改革総合支援事業や経常費補助の教育の質の客観的指標とだいぶ重複しています。

 

一方、大学教育の質に係る情報は、改革総合支援事業で一部のみです。

 

情報の公表に関するH30.9時点の状況とまとめ

中間まとめでは、教育の質に係る情報についての公開及び項目の例示がありました。しかし、実は平成30年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1と経常費補助の教育の質の客観的指標にはいくつか情報公開をする項目が含まれ、公開しなければ補助金を取るための点数が取れないようになっています。

 

これらの補助金に対応している大学は「大学教育の質に係る情報」の項目についてどうするかと検討していけば良さそうです。 

 

ただ、昨年度と今年度の改革総合支援事業や経常費補助を見ていると、教育の質に係る情報を公表しないと、補助金を取るための点数がマイナス扱いになるとかもありえそうな気がしてなりません。