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私立大学等改革総合支援事業は専門的業務のハードルを下げていないだろうか

私立大学の助成について、平成30年度の一般補助に教育の質に係る客観的な指標や私立大学等改革総合支援事業(以下、「支援事業」)のタイプ1では大幅に設問内容が変わりました。 

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一般補助の教育の質に係る客観的な指標は、補助金の増減率に関連しますので、大規模大学程、影響を受けやすいでしょう。また学部自治が強い大学な程、大学として教育の質の指標に対応する事は難しいかもしれません。

 

スペシャリストかゼネラリストか

大学職員の議論に関わらず、人事や出世、組織といった観点からスペシャリストとゼネラリストについての議論はありました。また教員と職員の間に、専門的職員という議論もあります。

 

既にリサーチ・アドミニストレーターといった事例もありますが、平成30年度の支援事業のタイプ1における専門業務を担う職員は様相が少し異なるように感じます。

 

平成30年度で言及されている専門的業務や職員

支援事業では、IRerやカリキュラムコーディネーター、アドミッションオフィサーといった設問があります。

ここで気になるのは、特に次の2点です。

  • IRerは大学外部の研修(履修証明プログラムやセミナー等)を受けているか
  • カリキュラムコーディネーターは外部の研修を受けているか、もしくはカリキュラムコーディネーターとしての辞令を出しているか

つまり、外部研修に参加や辞令を出していれば、その業務の専門性が持っていると見てしまう事は非常に危惧を感じています。

 

例えば研修によく参加する人は、その業務の専門的な知見を持っているとみなせるのでしょうか?IRであれば、履修証明プログラムに参加していれば、大学のIRが出来るという考えにはならない事は、IRや評価を担当している職員はよく実感していると思います。

 

どうも専門的業務を担えかどうかを判断する基準のハードルが下がっている気がしてなりません。

 

大学規模によって、専門的業務だけを担う人材を置くことは難しい

昔、小中規模大学にカリキュラム・コーディネータを置くことは難しく、関連業務までやる必要があるのではと述べたことがあります。

 

昨年度までの支援事業では専任のIRを担う教職員を置いているかが問われていて、専任職員でIR室配属だけど、実態は・・・という事例をかなり聞きました。結局、今年行われるのは、研修に参加させて、名ばかり専門的業務を担う人が増えてしまうだけではないでしょうか? 

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平成30年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1の留意点と疑問点

平成30年度の私立大学等改革総合支援事業は、タイプ2の地域連携がタイプ5のプラットフォームに吸収されました。またタイプ1の「教育の質的転換」については、大きく設問が変更されています。

<タイプ1の変更点の概要はこちら>

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しかし、設問が変わった事により、いくつかの疑問点や懸念点、留意点があります。

 

留意点

1.設問ごとによる基準時点が異なる

今回は特に基準時点が設問によってかなり異なります。

殆どは期間設定は昨年の9月から今年の9月末からですが、平成28年度から基準となっているものもあります。

また、ある一定の時点を示したものや、平成30年度の事業であればいいとなっているものもあるので、逐一チェックが必要となります。

 

2.3つのポリシーを踏まえた点検・評価

H30から、3つの方針の点検評価は外部評価だけではなく、学生の代表者が参画する事となりました。これについては特に異論はありませんが、基準時点が平成28年度4月からなのが違和感があります。

ただ各大学には自己点検評価サイクルがあります。例えば、施設設備は毎年点検評価を行う必要はないかもしれません。しかし、入学者選抜や学修成果については毎年点検評価を行う必要があると判断する場合も多いでしょう。

今回タイプ1に申請する場合は、どのような自己点検評価サイクルでやっているのかといった資料も準備したほうがいいかなと感じています。

 

3.様々なFDの実施

平成30年度から、FDは参加率100%ではなく、成績評価、シラバス作成といった具体的なFDの実施が求めらています。また成績水準の設定や成績評価基準の平準化も組織として行うのであれば、FDとしても差し支えないと思います。

ただFDについては、内容が固定化限定化されるのは果たしていいのかといった懸念もあります。(どれぐらいの回数のFDをやると国や事業団は考えているのでしょうかね)

 

疑問点

1.根拠資料について

根拠資料は、原則「~~等」となっているので、その設問に対して大学が組織的に取り組んでいる事実を示せればよいと解釈しています。ただ、困惑するのは「方針(ポリシー)の規程」と記載されていたりします。

方針は方針であって、規程にする必要はないと思いますが、これについては混乱する大学もあるでしょう。規程にする意味や重みが大学によって異なりますが、規程とはどういうものが該当するのかを踏まえるべきだという印象があります。

 

2.IR機能強化

「IRの企画や実施方法等に関する専門的な高等教育プログラムを受講するもの」という内容があります。

例として履修証明プログラムが記載されています。さらに条件として修了証明書といった証明書が必要です。ただ、これに該当するプログラムは全国でどのぐらい開催されているのでしょうか?

高等教育のマネジメントに関するものなどもOKとの事ですが、筑波大学、東北大学、千葉大学などが該当するのではとも思っています。(千葉大学はちょっと難しい判断ですね)

寧ろ、IRの実績や修士号以上の関連学位がある人は駄目なんでしょうかね?

 

 3.アクティブラーニング

アクティブラーニングは昨年度までPBLでしたが、今年からはディベートやグループワークも入りました。ただ対象科目が平成30年度開講科目となっています。これだと実習なども全部対象に入る事になります。学位プログラムによっては、達成の難易度が変わるかもしれません。

あと、シラバスの15回の内、1回でも書いてあればいいですのかね?調べるのはかなり大変そうです。

 

4.カリキュラムコーディネーター

カリキュラム編成に係る外部研修を受けているかといった内容が今回はあります。IRと同様で、これもカリキュラム編成の外部研修は年間でどこがどれぐらいの頻度でやっているのかと思います。

東北大学で先日ありましたが、定期的にやっているものは殆どないと思います。またカリキュラムコーディネーターを小規模中規模大学が採用するのはかなり困難ですよね。

 

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5.SDの実施

SDは「当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、その職員に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修」と大学設置基準に記載されています。

ただ、今回の改革総合支援事業では、教員向けのFDが職員の事務にも係る内容があるから職員のSDとカウントしてもいいという解釈が記載されています。内容は理解できますが、かなり違和感がある内容です。 

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平成30年度私学助成一般補助の教育の質に係る客観的指標とH29年度改革総合支援事業タイプ1との相違点メモ

平成30年度から私学助成に「教育の質に係る客観的指標」が新しく追加されました。平成29年度の私立大学等改革総合支援事業(以下「支援事業)を踏襲すると聞いていたのですが、若干変更点があるようです。

 

そこで私がここは押さえておこうと思った点をメモとして残しておきます。なお

さほど変更がない設問は記載していないのと、見出しで赤字は新規の設問となります。

 

 

1.全学的チェック体制

①3つのポリシーを踏まえた点検・評価

平成29年度の支援事業は、3つの方針の点検評価にあたって学外(地域社会や産業界等)の参画を得て、客観的な視点と取り入れているかが焦点でした。

H30の一般補助では、「全学部等で取り入れているか」といった聞き方に変わっています。つまり全学部を対象とした外部の参画を得た点検・評価を行う必要があるでしょう。またこの設問は認証評価は該当しない事はきちんと明記されています。

 

②教学マネジメント体制

教学マネジメント体制の構成員の中に、学部長が入っているかが新規に求められています。満点を取るには、全学部長が入っている必要があります。

また研究科を対象としなくなった為、この教学マネジメント体制は「全学部等の教育活動を対象として活動するもの」と要件が変わっています。

またこの教学マネジメント体制は、平成30年度の教育課程編成について議論を2回以上する必要があります。ただ平成30年度の教育課程についての議論であれば、平成28年度に開催した会議でも恐らくは大丈夫だと解釈しています。

 

③IR機能の整備

平成29年度の支援事業はIRは専門の担当部署の設置や専従の教職員の配置が求められていました。しかし、今年はIR機能があるかどうかのみと簡略化されています。

IRの組織がある事を示す資料と、活動実態が分かる資料(業務日報など)があれば該当する質問になりました。

 

④IR情報の公開

H29年度の支援事業にはない質問です。ここでは①学修時間・学修実態、②授業評価(アンケート)結果、③学修成果、④資格取得実績、⑤就職の情報をHPや大学ポートレート、広報誌で広く公表する必要があります。

 

2.カリキュラムマネジメント体制

⑦アセスメント・ポリシーの整備

新規でアセスメント・ポリシーが出ています。なお、全学・全学部で教育課程編成と授業科目レベルのポリシーが必要です。

ただQ&Aに、カリキュラムポリシーに今回の要件に該当する内容が入っていれば、OKなようです。まずはカリキュラムポリシーに「学修成果の評価」があるかを確認しておくといいと思います。

ただ根拠資料例に「アセスメント・ポリシーの規程」とありますが、ポリシーはあまり規程化しないと思うのですけど。

 

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⑧GPA制度の導入、活用

GPA制度の導入とGPAを進級判定・卒業判定・退学勧告のいずれかの基準として活用しているかは昨年度と変わりません。

ただし、成績評価にあたっては、成績評価基準を定める、成績の分布状況の把握を行うといった要件がついています。

 

⑩準備学習に必要な時間等のシラバスへの明記

シラバスには次の項目の記載が求められています。

①準備学修の具体的な内容及びそれに必要な時間

②課題に対するフィードバックの方法

③各授業における学修の到達目標及び成績評価の方法・基準

④ディプロマポリシーと当該授業科目の関連

⑤当該授業科目の教育課程内の位置づけや水準を表す数字や記号(ナンバリングを含む)

①~④H29の改革総合支援事業タイプ1を踏襲したものですが、⑤は新規項目です。もうこれはナンバリングぐらいしかないと思うのですけど。

 

3.学びの質保証体制

⑫学修時間・学修行動の把握

大きな変更はありませんが、H29の支援事業にあった「学修行動調査の結果を教育課程の編成の方針の策定に活用しているか」がなくなりました。

ただしH30の支援事業タイプ1に設問2に「教育課程の適切性の検証」に移動したと解釈していいと思います。

 

⑬学修成果の把握

H29の支援事業では、アセスメントテストや調査、ポートフォリオ、ルーブリックを用いて実施しているかが問われていました。H30もそこは変わりません。ただ、「調査及びテストの結果については、学生本人及び大学等がそれぞれ把握していること」と要件に明記されています。

 

⑭学生による授業評価結果の活用

H30では「評価結果を用いた改善への具体的な取組」と明記されるようになりました。これは制度が示せるようにしておかないといけません。ただ、担当教員への自主的な改善は記載がなくなっています。

また授業評価結果の分析について各学部等の(予め理由があり除外する科目を除く)全授業科目ときちんと明記されるようになっています。

 

終わりに

一般補助の平成30年度教育の質に係る客観的指標は、平成30年度の改革総合支援事業のタイプ1の基礎資料となるものが多く含まれています。つまり、エビデンスとなる資料は同じものを使うものが多いです。

タイプ1のエビデンスのファイリングは、この指標の資料に加えて、タイプ1の項目のエビデンスを追加していく感じですね。

 

<関連記事>

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平成30年度私立大学等改革総合支援事業【タイプ1:教育の質的転換】のメモ(最終版10.4更新)

平成30年7月31日に私立大学等改革総合支援事業の調査の依頼が各私立大学になされました。

 

本ブログの本記事では、タイプ1「教育の質的転換」に着目し、昨年度からの変更点も含め、メモとしてまとめます。

(平成30年8月1日更新)

(平成30年8月2日更新)

(平成30年10月4日更新)

一般補助の教育の質に係る客観的な指標についてはこちらに解説をしています。 

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改革総合支援事業の根拠資料に関する留意点

改革総合支援事業、また経常費の教育の質に係る指標もそうですが、根拠資料については大学がきちんと説明できるものである事が必要です。

ただ、調査票に掲載されている根拠資料全てを集めないといけないかというとそうではありません。例えば授業アンケートに関して、根拠資料では「規程」となっていますが、授業アンケート実施について規程化するのではなく、実施要領等で明示している大学もあります。その場合は、規程ではなく実施要領を示せばよいでしょう。

また、たまに聞くのは設問の根拠資料だけは集めたけど、確認表に記載されている内容の根拠資料は集めていなかったという事です。統合版の根拠資料欄だけではなく、確認表欄も見たうえで根拠資料をそろえましょう。

1.経営組織の活性化

①3つの方針の点検評価について

昨年度までは、3つの方針を点検評価は地域社会や産業界等の学外の参画が必要でした。おそらく外部評価委員会が各大学で該当していたかと思います。

今年度は大きく変わり、上記に加えて学生の代表者が直接参画する必要があります。また全学か全学部で実施している事が必要になります。

点検評価項目には、入学者選抜や施設設備などのいずれかについて聴取していればよいとされています。

ここで押さえておくのは、昨年度まで求められていた外部評価委員会等はやっている事を前提に、学生の代表者も入れたPDCAサイクルの構築をしているかどうかです。

おそらくは地域社会や産業界の参画を得た外部評価とは別でよいのではないかと推察されますので、半期か1年に1回は学生を入れた点検評価を行う機関決定を行うのがよいでしょう。(もちろん9月末までには全学か全学部で、その会議等を行う必要があります)

 

②教学マネジメント体制の構築とIR情報の利用の教育課程の適切性の検証

学長を中心とした、副学長や学長補佐などの教学マネジメント体制の構築は昨年度と大きく変わりません。しかし、IRの情報を活用して教育課程の適切性について検証しているかの項目が入ってきています。

このIRは学修時間や学修実態成績や学修行動調査などのアセスメント関連や資格取得実績や就職等についてが該当します。つまり教育課程編成について、様々な量的データをもとにカリキュラムが適切であるかを組織的に検討する必要があるのです。

(例えばアセスメントポリシーに則った評価として、学修行動調査などの活用も考えられます)

また今年から教学マネジメント体制について、厳しく設定がされています。例えば半数以上の学部長がいるなども求められているので、注意しましょう。

なお、これは昨年度中に今年度の教育課程について検討した会議ですので、やっていない大学は間に合わないですね。

 

③IR機能の整備と機能強化

IRは専任教員や職員が配置している事が求められていました。しかし今年度は、IRの企画や実施方法等に関する高等教育プログラムを履修した者を担当教職員に配置している事が求められています。

さらにIRに関する情報の公表が求められるようになりました。無難なのは、公表データや報告書にIR室(組織)から発信しているものであることを書いておく場合ですね。

さて私が知っている限りは、IRを学ぶ高等教育プログラムは殆どありません。しかしIRに関するプログラムだけではなく「高等教育のマネジメント」や「調査・統計・分析等」に関するものとあります。これらに関するプログラムに参加して、証明書があればいいわけですね。

例えば考えられるものとして下記の履修証明プログラムがあります。

履修証明プログラム|筑波大学 大学研究センター

アカデミック・リンク 教育・学修支援専門職養成プログラム|千葉大学アカデミック・リンク・センター

履修証明プログラム「アカデミック・リーダー育成プロ... | ニュース | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

ただ履修証明プログラムを受けて、プログラムを終了して、履修証明発行までは時間がかかります。

また学位、例えば修士号はどうなるかは「高等教育のマネジメント」に関する学位であば該当するという話がありました。(この辺りは大学によって話は違いましたので、各大学で確認して下さい)

例えば東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策コースや桜美林大学の大学アドミニストレーション研究科、広島大学大学院教育学研究科高等教育学専攻といった修了生、また学士ですが大正大学教育人間学科教育・学校経営マネジメントコースの卒業生をIR担当教職員としたら、要件はクリアできてしまいます。

また、点数は下がりますが、IRに関する研修を定期的に受けている回答もあります。その場合は、今までの出張に関する書類(特に研修や出張報告書)を過去数年分用意しておいたほうがいいです(少なくとも昨年度から今までのものはコピーしておきましょう)

なお、IRのセミナーに出ていると、参加証明や証明書に印鑑が欲しいという人も見かけますが、そのようなものがなくとも良いのではと考えます。2018年の夏に行われたIR系のセミナーには、は証明だけ欲しいような人も見られました。

 

④学長裁量経費について

学長裁量経費は今まで制度(予算)があればよかったのが、その予算額もしくは教育研究経費の割合で点数がつくことになります。ただ研究や社会貢献活動、学修環境の整備まで幅広く含まれる事に留意が必要です。

例えば教育・社会貢献・研究などそれぞれ学長の裁量で選定するような事業があれば、それぞれの予算を合算してよいと解釈しています。

また学長の裁量が規程や要領、会議などの議事録などから確認できる資料が必要です。例えば、学内の競争的資金は学長の裁量で選定されるといったものであれば該当するでしょう。 

⑤学修成果の卒業時のアンケート調査の回収・実施率

平成30年度からの新規の設問となります。ただ、卒業時のアンケート調査をやっているかどうかを求められるのではなく、回収率や実施率まで問われています。⑥の卒業後調査の設問と分かりにくいですが、こちらは卒業時にするアンケートで学修成果に関するものです。⑥は卒業後に行い、キャリアの状況や学位プログラムの教育目標の点検評価などにも活用できる調査となります。

またこの設問で厳しいのは回収率が50%以上・80%以上が求められている事です。まあ卒業前にやるアンケートであれば、もしかしたら回収率のハードルは比較的低いかもしれません。なお、全学で80%以上の回収率が必要と解釈しています。

 

⑥卒業生のキャリアの状況等に調査の実施

⑤と異なり、卒業生へのキャリアの状況等に関する調査を実施しているかどうかになります。⑤と違い、ハードルは若干低くなりそうです。

何故なら卒業生へのアンケートはどうしても回収率が課題です。大学によっては数パーセントの回収率となっているとも聞きます。

ただ今後、この質問が改革総合支援事業で数年間続くようであれば、回収率も今後問われる可能性があります。回収率アップの施策も検討しておいたほうが無難かと思います。

 

2.教育内容・教育方法に関する取組

⑦事前事後学習を促す授業の開講

学生に講義等で事前事後学習を促す授業の開講について求められています。おそらく、シラバスに事前事後学習がしっかり書いているかが求められています。

ここでの事前事後学習には「授業の下調べ、学生同士のディスカッション」などが例示されています。基準は今年度のシラバスですが、ウェブシラバスは9月末が基準日となっている事については注意したほうがいいですね。

シラバス全てを印刷してエビデンスにするのは、あまり現実的ではないので、シラバス作成要領とシラバスの代表例を各学部2~3用意しておけばいいかなと思います。

 

⑧アクティブラーニング

平成29年度も開くアクティブラーニングの設問はありました。そこではアクティブアラーニングは課題解決型の学習と定義されておりました。

ただ今年からは、それに加えて、ディスカッションやグループワークなども入ってきています。アクティブラーニングとはこんなものというような皆が思うものになったのは大きいです。

これらがシラバスに書いてあればエビデンスにはなりそうです。ただ開講科目の割合になっていますが、アクティブラーニングと言うのであれば、講義科目とかに限定しなくていいのかはちょっと疑問です。理由としては、実習や演習が多いカリキュラムであれば必然的に増えるとも解釈はできる事が挙げられます。

私がここで困ったのは、シラバスで授業形態や授業内容での記載を調べるときに、「プレゼンテーション」「プレゼン」「presentation」や半角全角が混じっていたりと、同じ意味なのに微妙に違うのは大変でした。 

⑨情報リテラシー教育に関する授業

これはさほど難しくはないかと思います。おそらく1年次に情報科目の必修であれば、やっている事ですね。具体的には情報のモラルに関するものや情報検索に関するものが含まれるようです。

根拠資料はシラバスとありますが、大学によってはシラバスの授業内容が簡潔に書いているものもあるので、使っている教材やテキストなどもあったほうが後々安心かもしれません。

 

⑩ICTを活用した双方向型授業や自主学習支援

双方向型授業はクリッカーなどで分かるのですが、自主学習支援の範囲が問題ですね。機材の貸し出しだけではなく、例えばeラーニングなどが該当するとの事です。ただ全学や学部とは書いていませんので、一部でもやっていればいいかもしれません。

これはシラバスや学生への案内文(もしかすると履修の手引き)などがエビデンスとなります。自主学習支援も定義が書いていないので、資格支援でeラーニングなどを使っている場合は確認が必要ですね。LMSならOKだと思います。

 

⑪全授業科目で履修系統図もしくはナンバリングの実施し、HPで公表

HPで公表が新しく加わりました。履修系統図とナンバリングは昨年度と同じ内容ですので、それをHPで公表していればOKなので、履修系統図が既に履修要項にあるなどしていれば難しくはないです。

 

⑫成績評価でGPAの導入と進級判定・卒業判定・退学勧告のいずれか及び、①履修上限単位数や、②履修者に求める成績水準の設定、③教員や授業科目間の成績評価基準の平準化に使われているか

昨年まではGPAは進級判定・卒業判定・退学勧告のどれかに活用されていれば良かったです。今年はさらにCAP制度の緩和や成績に関する事項まで踏み込んできています。さらに①~③のやっているかどうか、成績の分布状況を公表しているかまで求めています。これはかなり難しいですね。①はともかく、②と③の対応できる大学はそう多くないと思います。

また組織的にやっているかが必要ですので、科目間で教員同士が口頭で打ち合せをしたはエビデンスが作りにくいです。会議(根拠規程含む)とその次第や議事録などが用意できるかが重要ですね。

 

⑬CAP制度の成績による上限数緩和制度などがあるかどうか

昨年はCAP制度があるかどうかでしたが、今回から成績による緩和や成績不振者への支援制度などもあるかどうかが問われています。

まあ履修要項や規程にあればいいですし、上限何単位までのキャップ制かまでは書いていないので制度としてあればいいわけですね。

 

⑭学生の学修成果について、学修指導やキャリア相談に活用しているか?

アセスメントテストやアンケート調査結果、ルーブリックについて学修指導等で活用しているかが問われています。今まではルーブリックやアンケート調査をやっていれば良かったのですが、今回からきちんと指導に活用する事が求められています。

特にどのように活用したかは記録などをきちんと取るようにし、それをエビデンスにする必要があります。

解釈に迷うのは、挙げられている4つの選択肢のいずれかを全学的に行い、それを学修相談に活用している事が条件なのかです。ちょっと分かりにくいので表にしてみます。

まず下記のようにアンケート調査を全学部で複数学年実施し、その結果を活用していれば問題ありません。

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では次の場合はどうでしょうか。このパターンはア~エのどれかについて学部でやっています。これは「活用については、仕組みが確立されたうえで、いずれかの活用実態があれば、実際の対象が学部等の一部の学生であっても構わない」のいずれかをどう解釈するかだと思います。

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調べて出した結論としては、どうもこれでいけると判断をしてはいます。

 

⑮カリキュラムコーディネーターがカリキュラム編成に参画しているか

現在、日本にカリキュラムコーディネーターと呼ばれる人が何人いるのでしょうか?そう多くはないと思うのですが…。

カリキュラムコーディネーターの外部研修を受け、教育課程編成に関わる会議に委員として参加していればいいでしょうが、該当者がいる大学はさほど多くないのではないでしょうか。

また専任職員が参画しているほうが、専任教員が参画しているより点数が高く配点されています。さらにカリキュラム編成に関わる外部研修の受講など、少しハードルが高くなっています。

対応としては、

・教育課程編成に関する会議の委員の誰かを外部研修に参加させる(なお、カリキュラム編成だけではなく、設置・課程認定等に関する手続きや履修指導まで含めるとされていますので、だいぶ幅が広い解釈が出来ます。)

・誰かをカリキュラムコーディネーターとして特別の職務で雇用する

研修に参加した後で、9月末までに教育課程編成に関する会議を開催するぐらいしかないかなと思います。実現性は低いので、私は後回しにする設問ですね。

 

3 教職員等の質的向上に関する取組 

⑯ティーチングポートフォリオの作成の義務付け

教員の教員面の評価制度を発展させた設問です。なお教員の評価制度は、優れた教員の表彰などが該当します。なお評価制度は前提条件でさらにさらにティーチングポートフォリオを全学部に義務付けているかが求められています。

義務付けなので、やっているかや内容の是非については問われません。またQ&Aにありますが業績書の教育活動に関するものではない事には注意しましょう。

なおここでは自己省察が重要です。例えばティーチングポートフォリオという名称でなくとも、教育面について自己省察があるものは該当する可能性があります。

 

⑰FDの組織の設置とFDの実施

これは昨年度とおそらく変わりません。注意するのは教員のFDの参加率が100%かどうかですね。大学によっては参加していない教員には、FDのビデオを見せて、レポートを書かせるといった事もやっていると聞きます。

 

⑱授業評価結果の分析・検討し、学生の代表者またが学外者が参画するFDを実施

今までは授業アンケートの結果を教員表彰や自主的な改善に活用していればよかったのですが、FD、しかも学生や学外者が参画するものが求められています。

注意すべきは、その学部の全授業を対象にしていること、このFDの参加者は一部の教員でもよいという事ですね。また参画なので、授業評価結果に関する講演ではなく、意見聴取の場をFDとして行うという解釈になると思います。

 

⑲アセスメントポリシーを踏まえた成績評価のFDの実施

アセスメントポリシーは教育課程や授業レベルで策定されることが求められています。

ただ、カリキュラムポリシーをガイドライン

ディプロマ・ポリシーの達成のために,どのような教育課程を編成し,どのような教育内容・方法を実施し,学修成果をどのように評価するのかを定める基本的な方針。

を受けて作成してれば、学修成果や学修評価について記載していると思います。この記載があれば、アセスメントを定めていると解釈もできます。

成績評価に関するFDの実施については、アセスメントポリシーの理解と成績評価の実態(例えば科目ごとの分布図の提示)についての議論をするのでもいいかなとは思いますが、確認が必要になりそうです。例えばアセスメントポリシーやカリキュラムポリシーの学修評価でルーブリックが記載されていれば、ルーブリックのFDでも該当する可能性があります。

 

⑳シラバス作成方法に関するをFDの全教員を対象として実施

これは昨年度に行っているかが肝ですね。またシラバスについての記載項目が決められていますが、昨年度の改革総合支援事業にあった内容ですのでハードルはそう高くありません。

シラバスの依頼はおそらく冬だと思うので、今年はこれについてFDをやるかどうかは検討案件にもなります。

 

㉑SDを実施しているか

FDは今まで参加率がキーでしたが、SDは実施していればOKでした。しかし今回から、全ての専任教職員の全員が参加していることが求められています。SDの参加率は来るだろうと思っていましたがとうとうですね。

なお複数回のSDを実施していれば、どれかに参加していればいいそうなので、FDの参加率とさほど変わらない要件になりそうです。

また内容についてはいくつも提示されていて、ハラスメントもOKという事なので、これについてはだいぶハードルが下がった気がします。(懸念は全教員がSDに参加しているかですので、ハラスメント研修がOKなら教員は参加している事が多いのでだいぶ楽になります)

 

㉒TA等の教育サポートスタッフの資質向上の研修

これSAでもいいそうです。またメンターも含まれます。雇用やボランティアについても含むそうですが、地方の小規模大学にはTAなどはいないケースも沢山ありますよね。

 

4.高大接続改革の推進

㉓多面的・総合的に評価する入学者選抜

アドミッションポリシーに基づいて、学力の3要素を踏まえた多面的・総合的に評価する入学者選抜を実施に関する項目です。

これは次の3つが記載されています。

ア 一般入試において、学力検査のほか、学力の3要素を多面的・総合的に評価する入学者選抜を実施しているか 

イ 高等学校学習指導要領を踏まえた「言語活動」を通して育成された「思考力・判断力・表現力」を評価するため、自らの考えを立論し、それを表現するなどの記述式問題を出題しているか
ウ AO入試及び推薦入試において、大学教育を受けるために必要な基礎学力の状況を把握するため、独自検査や高等学校の教科の評定平均値のいずれかを合否判定に活用しているか

これらについては昨年度とほぼ変わりません。

 

㉔-ア アドミッション・オフィサー

これは昨年と変わらずですが、入試・学生募集にかかるアドミッションオフィサーが企画や選抜に参画しているかが求められています。これはある職員が企画と選抜の両方に参加しているかのエビデンスが必要です。

最近は、AO入試や推薦入試の面接に職員が入るケースも聞きますので、それなら該当しそうです。

 

㉔-イ 入学者の追跡調査

こちらも昨年度と同じですね、成績や活動実績から入試の選抜の妥当性について検証する必要があります。例えばIRが基礎資料をつくり、入試委員会などで検証をするといった事が考えられます。

 

㉕多様な背景を持つ受験生の受入れ

これは昨年度より具体的になりました。下記から、いくつ以上を受け入れているかが求められています。

ア 専門高校から進学を希望する者

イ 帰国生徒、日本語を母語としない生徒、留学生

ウ 特別な支援を必要とする者

エ 高等学校や大学の中退等で再チャレンジを志す者

オ 学び直しや新しい分野の学修をしたい社会人

カ 地域に貢献したい意欲を有する者

キ 科学や芸術などの特定の分野で卓越した能力を磨いてきた者

例えばカの地域貢献だとこういうものでしょうかね

地域人材育成入試 | 地域創生学部特設サイト-地域創生の最先端を学ぶ【大正大学】

㉖入学前教育の実施

これは全学部の全ての選抜方法で入学前教育について実施しているかが求められています。一般入試で合格した学生にも入学前教育を課しているかのチェックをしましょう。

なお、設問は義務付けをしているかどうかですので、内容や回収率は関係ありません。また課題なので、入学前セミナーなどでは該当するかは精査が必要ですね。

 

㉗初年次教育の実施

補完教育ではない、初年次教育の実施について求められています。根拠資料にシラバスともありますので、正課内外の初年次教育でいけそうです。

ただ大学としてどの科目が初年次教育として考えているのかは、学内での共通認識が必要かと思います。(おそらく基礎ゼミなどの科目が多いと思います。)

 

㉘高校と大学との連携

これも昨年と変わらない項目です。高校生が大学の授業を経験する機会はあるか(例えば出前授業やオープンキャンパスでの授業体験)、高校と大学との協議体制はあるか、人事交流はあるかなどが求められています。

 

終わりに

全体としてみるとFDの実施が増えたような気がします。提示されているFDの全てをやろうとすると他のテーマのFDはやりにくくなってしまいますね。また学生の参画を求めるものもいくつか見られるようになったのは今年度の大きな特徴であろうと思います。

平成29年度私立大学等改革総合支援事業選定状況~複数選定状況について~

 平成30年2月5日に私立大学等改革総合支援事業の選定結果が文部科学省のHPに掲載されました。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

なお、同様に私立大学等経営強化集中支援事業の結果も公表されております。

私立大学等経営強化集中支援事業:文部科学省

 

 さて、私立大学等改革総合支援事業は平成29年度はタイプ1(教育の質的転換)、タイプ2(地域発展)、タイプ3(産業界・他大学等との連携)、タイプ4(グローバル化)、タイプ5(プラットフォーム形成)の各事業がありますが、それぞれの詳細は文部科学省の私立大学等改革支援事業のページをご覧下さい。このページには得点分布、大学規模別の選定状況、都道府県別の選定状況が掲載されておりますので、本ブログでは複数選定された大学数はどのぐらいかを概観してみます。

 資料は本選定結果の選定状況の大学一覧の資料を活用しました。よって、短期大学等も含んだ数字になり、全体で473校となります。まずは、複数選定された大学がどれぐらいあるかを見てみましょう。

 下記の表は、「タイプ1~4」もしくは「タイプ1~5」の中でいくつのタイプに選定されたのかを出しました。

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 上記表を見ると約半分が複数のタイプに選定されているのが分かります。これをもう少し詳しく出したのが下記の表です。

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 3つ以上の選定となると、殆どがタイプ1に選定されている事が分かります。最後に4つ以上のタイプに選定されている大学名を挙げておきます。長崎国際大学のみが全てのタイプに選定されておりますが、タイプ1~4に選定されている大学も5つあります。

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 さて余談ですが、文部科学省の平成30年度の予算案を見ていると改革総合支援事業の採択数がだいぶ減るようです。 

as-daigaku23.hateblo.jp

  平成30年度は項目や点数配分も変わるのでしょうが、今年と同様と仮定するとタイプ1は80点半ばはないと選定されないかなと思っています。今後どうなるかは動向があればまとめていきたいと思います。

 

 最後に1つ気になった点について、本事業の委員長所見で私学事業団への期待とありありますが、平成28年度は「 昨年度に選定された大学等に対する現地調査の結果も踏まえつつ、調査票に記載された取組の実施状況を確認するなど丁寧かつ有効な現地調査を継続し、国費の配分方法として疑念を持たれることがないようにすること。」とあったのが、平成29年度は「国費の配分方法として疑念を持たれることがないよう、調査票に記載された取組の実施状況について、従前から実施している選定後の現地調査に加え、選定前の根拠資料の確認や、学校法人における申請に係る責任体制の明確化を通じ、審査チェック方法の見直し・強化を図ること。」と記載されています。このあたりは次年度どうなるのでしょうか。

平成29年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1の昨年度からの主な変更点

 私立大学の補助金に関わる人達が、首を長くして待っていた「私立大学等改革総合支援事業」の書類が各大学に届きました(なお、タイプ5は後日との事です。)

 そこでタイプ1「教育の質的転換」について、調査票をもとに昨年度との違いについてメモをまとめました。(あくまで私的なメモですので、一部抜けがありましたらご容赦下さい)

なお今年度は ほとんどの項目の基準日が今年度は9月30日(昨年は8月31日)となっています。

Ⅰ.昨年度との配点の違いについて

まず、配点について見てみましょう。下記のように、H28およびH29の配点区分表比較一覧を作成しました。なお、設問に記載については特に変更がないのと、一部未実施による得点はH28と変更がなかった為に、実施のみの比較表となります。

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 今回、変更があったのは「基本的事項に係る評価」の中で、教学マネジメントと授業評価結果の活用に関する部分です。

 この2つについて、昨年度の取組み率を見てみましょう。

(参考URL:平成28年度私立大学等改革総合支援事業 設問毎・回答毎の該当件数)

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/07/1340519_306.pdf

 教学マネジメント体制の構築は、タイプ1の申請校(678校)91%、選定校(362校)100%が実施されています。また授業評価結果の活用は、申請校(678校)65%、選定校(362校)93%となっています。実はH28の項目別結果を見ると、授業評価結果の活用のように、同様の申請校と選定校の実施率がある項目はいくつかあります。ただ今回、点数が変更があったのは、高得点項目であり、一発逆転項目はなくなった(これだけまず頑張れば良かった項目はなくなった)とする見方も出来ると思います。もう満遍なく各項目に対応しないと高得点を狙っていくのは難しいのでしょう。

 

Ⅱ.調査票から見る各設問の変更点

 ここからは各設問ごとに、設問や要件について見ていきます。なお、軽微な変更は、言及しません。

1.基本的事項に係る評価

(1)全学的な教学マネジメント体制の構築

①3つのポリシーの点検・評価

設問

・3つの方針の名称が、学校教育法施行規則第百六十五条の二に合わせて変更されています。

要件

・「地域社会や産業界」に大学等が所在する都道府県や市町村等を主たる地方自治体、商工会、企業といった定義に、他大学は原則として含まないが追記。(他大学を含んだ大学があったのでしょうか)

 ・新たに下記が追記(一部筆者で分かりやすいように追記)

委員等として委嘱されている者は学外者として差支えないが、役員等として当該法
人や大学等から発令されている者については学外者には含めない。
意見の聴取方法に特に制限はない。大学等として依頼したことがわかる書類(相手へ
の協力依頼文や協定書等)のほかに、対面の場合は議事録等、メールの場合は日付入
りのメール文等を根拠資料として保管しておくこと。
本設問については、基準時点で、①学外者を交えた当該取組に係る点検・評価の実
施について学内ですでに決定されており、②実際に取組作業を開始していれば、点検・
評価が基準時点以降であっても「1」に該当するものとする。
3つのポリシーについては引き続き大学等のホームページで公表されていることを前
提とする。

  これ見ると、依頼をしていれば、点検評価への参画はメールでもいいという事と読み取れます。

 

②学長を中心とした全学的な教学マネジメント体制の構築

設問:変更なし

要件

・教学マネジメント体制構成員に、短大や高専では「学科長」から、「学科長等の学科の校務をつかさどる者」と記載。

・教学マネジメントの合議体がある場合に、平成28年度は「平成27年度の教育課程編成にあたって2回以上の開催」から、平成29年度は「平成29年度の教育課程編成にあたって2回以上の開催」と、対象年度が過去から実施年度への変更。

 

③IR担当部署の設置及び専任の教職員への配置

設問:変更なし

要件

・IRの専門の担当部署について、「(IRに)関連又はそこから派生する業務を含む場合までを上限とする部署」から「IRに関連またはそこから派生する業務に年間を通じて専従する部署」と記載。また「既存の部署の一部として行う場合」は「専門の担当部署を設置し、専従する専任教員又は専任職員を配置している(5点配点)」に該当しない。

・新規の説明として、「IR室を法人に設置している場合には、学校法人の専任職員として発令されている者も含むが、その場合、当該大学等のIRに携わっていることが明らかであること。」と記載。

 

④SDの取組状況

設問

・対象年度の記載の有無のみ(なお、基準時点に記載されており、昨年度と今年の9月までとなっている)

要件

・新たに「SDの実施方針・計画は基準時点にかかるものであること」と記載。

・SDとはの説明に、「職員に必要な知識及び技能の習得」から「教職員に~」と変更。

・SDの対象について詳細に記載

管理職、特定の部署や新入職員のみ等、一部の教職員を対象としている場合や、対象に事務職員以外の教員や技術職員を含む場合も該当する。

・外部団体が実施する研修への派遣は本設問の実施とはしない事が明記。

・他大学との合同は、主催または共催とする事が必要と明記。

 

(2)教育の質向上に関するPDCAサイクルの確立

⑤準備学習に必要な時間等のシラバスへの明記

設問:変更なし

要件:変更なし

 

シラバスの記載内容の適正性について、担当教員以外の第三者によるチェックの実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

⑦学生の学修時間の実態及び学修行動の把握の組織的な実施

設問

「学生の学修時間の実態及び学修行動の把握」結果を、②の教育課程編成の全学的な方針の策定の検討に活用しているか

要件

・アンケート調査は無記名でも該当と新たに記載

・アンケート調査一連の作業(配布・回収・集計や分析)のいずれかが基準時点に実施されていれば該当(←9月末までに調査用紙を配布していればOK)

・根拠資料として、教育課程編成の策定の検討として活用が分かる資料が必要(例えば、全学的な教学マネジメント体制の組織体の議事録など)

 

⑧学生による授業評価制度の設定

設問

・選択肢の大幅な変更(分かりやすくシンプルになった)

ア 授業評価の結果を集計し、授業の改善を図るための制度的取組

(例:評価の高い教員への顕彰や評価が低い教員に対し改善計画の提出を義務付ける等)を行っている。
イ 担当教員に担当する授業の評価結果を開示し、自主的な改善を促している。


1 全学部等・研究科において、アを実施している。  6点
2 一部の学部等・研究科においてアを実施している。 4点
3 全学部等・研究科においてイを実施している。   2点
4 一部の学部等・研究科においてイを実施している。 1点
5 上記のいずれにも該当しない。          0点

 要件:大きく追記がされている。

・「授業の改善を図るための制度的取組」とは、平成28年7月に全学部等・研究科において授業評価を実施し、平成28 年9 月(基準時点内)に評価の高い教員への顕彰を行った場合。

・「授業毎の評価結果」は、個別の授業の評価結果の開示を前提。学部等・研究科の単位で集計した結果のみを開示している場合は、含まれない。

・対象外として、「当該大学等の授業評価の活用方法に合わせて、授業評価及び授業改善の規程等に、改善の対象とする授業科目にゼミや実習科目等を除外している場合で、かつ、当該授業科目を除外していることに明確な理由がある場合はこの限りではない。」と新たに記載。(各大学でゼミや実習は、授業アンケートに含めるかどうかは議論になる所もあります。また通常の授業アンケートと実習は設問が合わないケースもあるからでしょう)

・新設学部についての取り扱いを記載。

授業評価規程等において、基準時点内に設置する全学部等で、ア又はイに該当する内容が定められていれば、新設学部についてのみ評価結果が活用されていない場合であって
も、本設問の選択肢の「全学部等」に該当することとする。

 

⑨教員の評価制度の設定

設問:変更なし

要件

・評価制度を教育面で優れた教員と記載(従来は優れた教員)。

・処遇を()で個別の人事制度上の取扱いと記載。

・研究面のみの評価や、研究費に結果を反映する場合は該当なし。

・任期付教員は該当しない事を明記。

・制度があれば、評価実績の有無は問わないが、教員に制度を周知していることが必要。

 

⑩FD実施のための組織(委員会等)の設置及び教員の参加状況

設問:変更なし

要件

・専任教員の具体的な定義を明示

①本年度の5 月1 日現在で在籍している専任教員であり、②本年度の5 月1 日現在で受持授業時間があったものとする。そのため、サバティカル制度に基づく海外研究や産休、病休等により5 月1 日時点で学内にいない者や、研究に専念する教員、助教・助手等で正課の受持時間を持たない者、前年度末で退職した者などは対象外となる。

 ・参加教員数の計算について記載(定められた期間内の複数回のFDのなかで1回以上参加していれば、FDに参加しているとみなす)

 

⑪アクティブ・ラーニングによる授業の実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

2.多様な取組に関する評価

⑫履修系統図又はナンバリングの実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

⑬オフィスアワーの設定

設問:変更なし

要件

オフィスアワーについての定義を記載

「オフィスアワー 」とは、授業科目等に関する学生の質問・相談等に応じるための時間として、教員があらかじめ示す特定の時間帯(何曜日の何時から何時まで)のことであり、その時間帯であれば、学生は研究室を訪問することが出来るものをいい、学生に周知されていることを前提とする。また、非常勤教員及び通信教育課程の教員を除き、時間の明記のないものや、予約がある場合のみ教員がオフィス(研究室)に在室するというケースは該当しない。

 

⑭GPA制度の導入、活用

設問:変更なし

要件

・制度を教員や学生に周知していることを前提とするが新たに記載

 

⑮学生の学修成果の把握

設問

・学修成果の把握の取組が、学生自らの学修成果の把握や動機付けだけではなく、授業の改善や教育課程の編成など、教育の向上に資するためとなっているか(下線が新たに追記、学修成果の把握が学生自身だけではなく、教員レベルやマクロレベルまで活用されているか)

要件

・課程を通じた学修成果の把握について明記するとともに、選択肢にある学修成果の把握について細かく定義づけしている。

例:アセスメントテストは、国家試験や資格試験等の対策テスト(模擬試験)は該当しない。

 

⑯1年間あるいは1学期間に履修科目登録ができる単位数の上限の設定

設問:変更なし

要件

・複数の学科を持つ学部に対しての、必修科目の割合が90%を超える場合について説明が記載

 

⑰学内の教育改革に取り組む教員又は組織(学部等)を財政的に支援するための予算の設定

設問:変更なし

要件:変更なし

 

⑱大学ポートレートで発信する情報の検討・見直しの実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

3.高大接続改革の推進

⑲アドミッション・ポリシーにおける求める学生像の明示

設問:変更なし

要件

・新たに受験生や保護者に伝わるよう具体的かつ分かりやすいことに留意することと記載

 

⑳能力・意欲・適正等を多面的・総合的に評価する入学者選抜の実施

設問

・一般入試の記述式問題について詳細に説明

平成30 年度入学者選抜において、高等学校学習指導要領を踏まえた「言語活動」を通して育成された「思考力・判断力・表現力」を評価するため、自らの考えを立論し、それを表現するなどの記述式問題を出題しますか。

要件

・「言語活動」について記載

 

㉑入学者選抜体制の充実の強化

設問

・従来はアドミッション・オフィスを整備しているかだったが、今年は専門的な専任職員(アドミッション・オフィサー)が、企画立案や入学者選抜まで参画しているかが問われている。

要件

門的な専任職員の定義を記載

 ⅰ)入試及び学生募集にかかる企画立案業務、及び入学者選抜おける多面的・総合的な評価(書面審査・面接審査等)の業務において直接的、主体的に関わる専任職員であること。

 ⅱ)単に各業務の事務作業を行うのみでは該当しない。

 ⅲ)学力検査のみの評価でなく、その他の資料・書類や面接等による多面的・総合的な審査・評価の業務であること。

 ⅳ)教員と同程度の立場での参画であり、各業務において当該職員が一定の権限を有することが規定等から確認できること。

 ⅴ)評価業務については一部の試験区分や形態の評価を実施していれば該当するものとする。

 ⅵ)本設問における「専任職員」とは、当該大学等の専任職員として発令されている者とし、専任教員は該当しない。

・選抜方法の妥当性の検証は、基準時点内で完了していることが必要

 

㉒多様な背景を持つ受験者の受け入れ

設問:変更なし

要件:変更なし

 

㉓高等学校教育と大学教育の連携強化

設問

・高等学校又は教育委員会との定期的な協議は年2回以上の定期的な協議体制の構築が必要(今までは回数までは明記されていない)

要件

・高等学校又は教育委員会との定期的な協議は2回の実施ではなく、協議を実施すると合意しておくことと明記

 

 今回は、大きな変更点はなかったように思いますが、個人として気になる所は、教育課程の編成やアドミッションオフィサーについてです。規定で権限があるかも確認できる必要があると思いますので、IRの次はアドミッションオフィサーをどのように担保するかが各大学は考える必要がありそうです。(規程か申し合わせとかをつくって、アドミッションオフィス室長とかの権限とかを明確にしてお茶を濁すとかしそうです) 

 

平成29年度私立大学等改革総合支援事業タイプ5「プラットフォームの形成」のメモと勝手な憶測~COC+と比較して~

 私立大学の関係者は気になっているであろう私学助成ですが、現在、説明会が行われ、私立大学等改革総合支援事業についても少しづつベールを脱ぎ始めています。

 特に気になるのは、新しいタイプ5「プラットフォーム」(以下「タイプ5」)の新設ではないでしょうか。説明会の資料でしか、概要は伺い知ることは出来ないのですが、既存のタイプ1「質的転換」からタイプ4までとは異なり、複数大学での申請などいくつか気になるものがあります。そこで説明会資料ベースですが、自分のメモとして少しまとめてみました。

 なお、複数大学での連携は聞いた事があるよなと思い、平成28年度の事業であるCOC+と比較しながら見ていきたいと思います。なお、本記事は現時点で判明している資料を基にしていますので、今後内容が変わる場合があります。

まずが分かりやすいように表にしてみました。

名称 私立大学等改革総合支援事業タイプ5「プラットフォーム形成」 知(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)
年度 平成29年度(ただし中長期計画策定や実施などもあるため、事業は継続する事が前提) 平成28年度から最長5年間
概要(目的) 各大学等の特色化・資源集中を促し、複数大学間の連携、自治体・産業界等との連携を進めるためのプラットフォーム形成を支援する
(※教育機関・自治体・産業界を含めたプラットフォームを形成し、地域における高等教育に関する中長期計画の策定。複数校の申請が必要)
各大学の強さを活かし、大学の機能別分化の推進と地域再生・活性化の拠点となる大学の形成であるCOCを発展し、学生にとって魅力ある就職先の創出・開拓と人材養成。またひとの地方への集積が目的。
補助金 一般補助の増額(タイプが選定されれば、「教員経費」「学生経費」が一定割合で増額)
特別補助の増額(調査票の点数に応じた一定額を増額)
※他に設備整備事業や施設・装置等の整備事業に対して申請をすると補助される場合がある(私立大学等教育研究活性化設備整備事業や私立大学等教育研究施設整備費補助)
※今後については今のところ、資料には記載なし
補助金基準額:68,000千円(上限はなし)
この費用は補助事業を実施する事を目的とする経費である。なお、補助事業終了機関は自律的に事業を継続することを前提に、補助期間終了後前年度は当初予算の2/3、最終年度は1/3となる。補助金の配分は、COC+に参加している大学のみ。
スケジュール タイプ1(質的転換)やタイプ2・3・4と基準時点が異なる(前者は10月31日、後者は9月30日)
タイプ5は、他大学や地方自治体、地元産業界とここまでにどのように連携するかを明確にし、中長期計画の策定が必要
最大5年間
(ただし財政状況による)
参画する団体 ・地元の高等教育機関(国公私や4大・短大など)また別地域等の大学等も参画可能。大学等はそれぞれの特色や資源を集中し、財として共有化と活用する。
地方自治体や地域産業界等は計画や取組への意見や支援(財政支援や人的支援)
国公私立大学及び高等専門学校
また地方公共団体や学生の受け入れ先企業、NPO、産業団体や経済団体、金融機関、マスコミなど
地域 いずれかで申請
①単独の市区町村、②原則として隣接するまたは同じ都道府県の複数の市区町村、③単独の都道府県、④原則として隣接する複数の都道府県、⑤都道府県及び隣接市町村)
都市型と地方型の設定
・都市型とは市区町村単位だと、首都圏整備法近畿圏整備法中部圏開発整備法に根拠。また都道府県単位は、東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城・京都・大阪・兵庫・奈良・愛知・三重
・地方型は、都市型に該当する地域以外で構成
基本的には都道府県レベル(ただし小さいレベルでも可能。選定は小さいレベルでの選定もある)
若者が流出超過となっている地域(都道府県単位となっているが、選定を見ると県としては流入超過であっても、市町村単位で流出超過になっている地域を対象としている大学もある)
条件 ・複数の法人かつ、2大学以上で構成(例えば2つで構成する場合は片方が国立大学でもいい)
・特定の地域所在する大学等の参画が、総数のうち大多数(75%)以上
・特定の地域の地方自治体が1つ以上参画
・申請とりまとめ校は特定の地域内に所在する私立の大学
・平成30年度末までに達成すべき申請要件がある。
・申請資格がある(例えば収容定員充足率など)
・学則に地方創生を推進する大学である事を学則等に位置づける。

①年度について

 タイプ5は、中長期計画を策定して実行していく事が必要ですが、補助金は1年単位です。また来年度はタイプ5があるかどうかは確定ではありません。そもそも私立大学等改革総合支援事業そのものが確実に来年度あるかどうかは、断定はできないかと考えています。一方、COC+は最長5年間で申請をします(ただこちらも財政状況により保証はされないです)

②目的について

 いずれも大学の特色化としているのは共通ですね。ただCOC+は地域創生がメインですが、タイプ5は、特色化と資源集中とありますので、例えば看護学分野や工業系などを特色として、他大学との連携を図ってもいいのでしょう。まあ地域に同じようなライバル大学と手を組むのは少し考えてしまいますね。まったく別分野であれば、申請はしやすいように感じます。ちょっと悪いほうに考えると、その地域(プラットフォーム)内で、学問分野や想定する学生数もふまえて、大学間で学問分野とか学生数とか調整してね、もしくは合併も推奨するよという事でしょうか。

補助金について

 私立大学等改革総合支援事業は、一般補助や特別補助が増額されます。一方、COC+は事業経費として補助金が出ます。つまり前者は、使用目的について選択の幅があるのですよね。ただタイプ5に採択されたとすると、この事業を進めなければなりません。このような補助事業は、人出が必要です。COC+の場合は、補助金の中から経費として人件費をあてて、そこから特任教員とか、事務補佐員とかを雇って人員配置をするという案もあります。ただタイプ5は、自大学で誰かを担当させる必要があり、人件費等もかかる可能性があります。特に申請取りまとめ大学だと、事業のマネジメントをする場合もあり、かなりの業務負担になるでしょう。

 仮に採択されて、人を雇おうとすると、お金の増額は一般補助や特別補助なので大規模大学のほうが有利な訳です。小規模中規模大学だと、人を雇っても、このタイプ5に選定されたとしても、人件費のほうが高くつかないのかなと想像してしまいます。(つまり大規模大学が代表となりながら、コバンザメのように特色ある学部等を持つ大学が連携する事が想定されていたりしてと思ってしまいます。)

④地域について

 COC+は、対象地域が都道府県としながら、公募要領には具体的には記載されていなかったと当時思っていました。タイプ5については、かなり明確になっていますので、申請を検討する大学としてもかなり考えやすくなっています。

⑤条件

 COC+は、国立大学が主となるという条件はなかったのですが結果的に国立大学が代表となる採択事業が多くありました。一方、タイプ5は私立大学等改革総合支援事業ですので私学が中心です(ただ国立大学も入ってもかまわないようですが)また非常に気になる条件があります。それは「地域内の大学等が最低でも75%以上である」という点です。これ、京都とかは狭い地域に大学が集中している印象があるのですが、大変ではないでしょうか(でも地域でのコンソーシアムがしっかりしている所は、それのネットワークが使えますね。)

 概要を見れば見るほど、現場の担当者は大変だろうなという印象です。今年はタイプ1だけではなく、タイプ5も注目していきたいと思います。 

 

 

私立大学等改革総合支援事業委員長所見の比較

 先日、ようやく私立大学等改革総合支援事業の平成28年度の採択の報道発表がありました。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

 近年、文部科学省はこの事業の選定について、大学規模など、様々な資料を出しているのですが、今回は支援事業の委員長所見、特に「選定にあたっての所見」について少し掘り下げてみます。ただ今年度の所見を見るだけではなく、平成26年度の同様の所見も対比しながら見ていきましょう。

<引用元>

平成26年度私立大学等改革総合支援事業委員長所見

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2014/10/22/1341277_10.pdf

平成28年度私立大学等改革総合支援事業委員長所見

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/07/1340519_308.pdf

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 選定にあたっての所見は、大きく2つで構成されているかと思います。

 1つ目は全体の支援事業の選定にあたっての状況(得点等)や国・大学へのお願い。2つ目は1つ目を受けての期待するものも含めた具体的な記述です。上記の表だと文字ばかりなのと、H28とH26では少し内容が異なる箇所がありますので、重要な点も含めてピックアップしてみました。

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                                   筆者作成

 ①~④は、2つの大きな構成の中で1つ目にあたり、2つ目は⑤以降となります。

 内容としては1つ目を見ると①は事業の申請数についてのコメント、②は事業の評価項目へのコメント、③は国への依頼・お願い事項、④は2つ目の構成への対象者です。大きく違うのは④でしょうか。H26は、⑤以降の内容は事業に選定された大学を対象としていたのに対し、H28は各大学と記述が変わっています。(この各大学は選定された大学を指すのか、日本にある私立大学を指すのかは断定できないと思います)

 2つ目については、年度で比較しても大きな変更点はないのですが、本事業の成果を社会へ発信することと、実施率100%の取組みについての記述が出ています。実施率100%という事は、次年度はその項目はなくなる可能性があるか事業での得られる得点が下がる可能性がある為でしょうか。

 

 この事業は、意味があるのかといった話を聞く事がありますが、定員超過についての厳格化による収入減や補助金の減額と傾斜配分などによって、大学の収入は年々厳しくなっている現状があります。教育と経営は中々相入れない事も承知していますし、この事業に対応したから改革が進んだと言えるかは少し疑問です。この事業に選定される事は、取組みはやっているかもしれないが本当に大学改革と言えるのだろうか、小手先だけなのではという思いもあります。そこは⑪の学内一体となってやったかどうかが一番問われるのかもしれません。

 

 

 

 

 

補助金申請書類作成における大学職員が押さえておくべきこと

先日こんなつぶやきをした。

 補助金の申請書(特に文章の箇所)は、教員が作成する大学もあれば職員も作成する大学もあるだろうと思います。そこで本記事では、職員が補助金申請書(特に物品や設備系の補助金)を初めて書く場合は何をすればいいかを経験を踏まえてまとめてみます。

①高等教育政策の理解と補助金の趣旨の理解

 まずはこれからだろう。高等教育政策の理解は、中教審の答申や、各種部会の報告書と言い換えてもよいです。この読み込み、そして背景や語句の理解が不可欠であって、語句の理解で分からない場合は、答申にある用語集や次の本(特に後半の用語集や資料)も参考になります。 基本的に補助金は高等教育政策に基づいて設定されているので、ここで主となるキーワードは押さえておく必要があります。

※2番目は絶版ですが、手に入るなら各部署に1冊は欲しい本です。

 

 2.所属機関の取組を広く情報収集し、分析する

 所属機関では今までにどのような取組をしていて、何が問題になっているのか。もしくは長所を伸ばすためには何が必要なのかを情報収集します。文書で残っている場合もあれば、教員や各部局へヒアリングする場合もあるでしょう。○○が欲しいとかやりたいだけではなく、今までの大学の取組と今後がどうなるかを見据える作業が必要です。(要は現時点だけの欲望を出さないという事ですね)

3.数量的な数値は何かあるかを検討する

 (個人的には)申請書を書く際に、大学の課題・長所は定性的なものだけではなく定量的なエビデンスも必要と考えています。まあ補助金申請によって、「この数字を補助金によって、ここまで伸ばします」と無理な目標を立てると自身の首を絞めることになりますので、無理は禁物です。各部局や学部学科で補助金申請に活用できる数字はないかを調べておきましょう(学生調査とか、学修行動調査とかは使いやすかと思います)

4.書類を書く際は、大学自慢を延々と書かない!

 これたまに聞くのですが、所属機関の取組の自慢話だけ書いて、肝心の補助事業の内容を記載するスペースが短くなり、内容が薄くなってしまう例です。押さえておくのは補助事業と関係あるものを記載するです。

5.外部の目線を入れる

 本人だけが分かった文章では意味がありません。何回も推敲して自信あるのは分かりますが、第3者が読んだ場合でも分かりやすい文章とするため、数人には見てもらいましょう。

6.補助事業の評価・成果をどうするかを考え、打診しておく

 最近の補助事業は、やって終わりではなく、成果はどうだったかが求められます。補助事業は申請以外にも、実施報告書が必要ですので、成果をどのように把握するのかは予め検討しておく必要があります(補助金申請書にも概要を記載する場合はあります)

7.他大学の事例を見る

 他大学に知り合いがいれば、昨年度の補助金の申請書を見せてもらいましょう。(おそらくこれが1番勉強になりますが、1・2はやっておかないと真似っ子で終わってしまいます)

8.補助金申請書作成要領を読み込む

 ざっとですが8点に整理してみました。いずれも基本的な事項ですが、ここから始めるのがいいのではと今までの経験から感じています。(中には業者に申請書のコンサルタントをお願いする例もあると聞くのですが、大学としての力が身につかないので、きちんと学内で申請書を作成できる人材養成が不可欠であると思います) 

 

平成28年度私立大学等改革総合支援事業タイプ①の昨年度からの主な変更点Ⅱ

平成28年度の私立大学等改革総合支援事業の平成27年度からの主な変更点をまとめた第二弾です。第一弾は下のリンクからご覧ください。 

www.daigaku23.com

 

 

3.多様な取組に関する評価

⑮学修成果の把握

新:学生本人が、自らの課程を通じた学修成果を把握するために、アセスメントテスト・学修行動調査・ルーブリック・学修ポートフォリオ等をいずれかで行っているか

旧:課程を通じた学生の学修成果の把握

 今年度は把握する主体が変わったように読み取れます。例えば学修行動調査を実施しても、報告書の公表だけではなく、例えば1年次と3年次に調査を実施した場合は学生個人に経年変化も記載した帳票を渡すなどが考えられます。アセスメントテストも結果を学生個人に返却することが前提ですね。一番いいのは、学修ポートフォリオでしょうか。そもそも学生が個々でポートフォリオに入れていきますので、本人が学修成果を把握できていると言えるでしょう。

 

⑱大学ポートレート

新:学内の委員会等において、大学ポートレートで発信している情報の内容や種類に関わる検討・見直しを実施しているか

旧:大学ポートレートに参加しているか

 大学ポートレートに大学の情報が記載されていればよかったのが、組織として大学ポートレートに関与しているか、そして内容を検討しているかが問われています。大学関係者では、大きい大学ほど、大学ポートレートの内容が自学HPのリンクだけといった事がよく見られるよねと話をしますが、そういう事もあっての変更かもしれません。(そもそも大規模大学は、私立大学等改革総合支援事業には申請をしにくいのですが)

 

4.高大接続

⑲アドミッション・ポリシー(以下「AP」)

新:APを示しているか

3つのポリシーのガイドラインを参照することとありますので、何を記載するかはそちらを確認ください。

 

⑳入学者選抜について

新:APに基づき、一般入試で学力検査以外に小論文・面接・プレゼン等々で学力の3要素を多面的・総合的に評価しているか

  一般入試で記述式問題を出題するか

  AO入試で基礎学力の把握(独自の検査、評定平均値など)

 気になるのは記述式問題でしょうか。記述式も単語を応えさせるのではなく、センテンスを書かせるものと聞いており、要件としては思考プロセスが自覚的なものとなり論理的な思考力・表現力の発揮が期待できる問題や思考力や表現力の発揮が期待できる問題という事です。

 

㉑アドミッションオフィス

新:アドミッションオフィスの整備

旧:アドミッションオフィスの整備・強化

 既にアドミッションオフィスを整備していた大学は強化とは何かで昨年度は苦慮されたことかと思います。このように整備だけになったのは分かりやすくなりました。(そもそも強化とは、人員なのか、質なのか、基準が曖昧だったためです)

 

㉒H29入試で多様な背景を持つ受験者を受け入れるための定員枠を設けているか

新:上記の通り

 

今年度のタイプ1は、高大接続に関する設問の新設があり、得点も昨年度より多く配点されています。今回は気になる箇所のみの記載ですので、Q&Aも含め、読み込んだほうがいいかと思います。

高大接続については、入試は平成29年度でも既に決まっていることがおおく、多くの大学は対応に苦慮しそうですね。

 

タイプ1の選定ラインですが平成26年度は78点/100点、平成27年度は88点/106点でした。今年は質問項目の見直しや得点配分が変わったのがありますが、個人の予測では86点/102点あたりではなかろうに考えています。