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平成29年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1の昨年度からの主な変更点

 私立大学の補助金に関わる人達が、首を長くして待っていた「私立大学等改革総合支援事業」の書類が各大学に届きました(なお、タイプ5は後日との事です。)

 そこでタイプ1「教育の質的転換」について、調査票をもとに昨年度との違いについてメモをまとめました。(あくまで私的なメモですので、一部抜けがありましたらご容赦下さい)

なお今年度は ほとんどの項目の基準日が今年度は9月30日(昨年は8月31日)となっています。

Ⅰ.昨年度との配点の違いについて

まず、配点について見てみましょう。下記のように、H28およびH29の配点区分表比較一覧を作成しました。なお、設問に記載については特に変更がないのと、一部未実施による得点はH28と変更がなかった為に、実施のみの比較表となります。

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 今回、変更があったのは「基本的事項に係る評価」の中で、教学マネジメントと授業評価結果の活用に関する部分です。

 この2つについて、昨年度の取組み率を見てみましょう。

(参考URL:平成28年度私立大学等改革総合支援事業 設問毎・回答毎の該当件数)

http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/03/07/1340519_306.pdf

 教学マネジメント体制の構築は、タイプ1の申請校(678校)91%、選定校(362校)100%が実施されています。また授業評価結果の活用は、申請校(678校)65%、選定校(362校)93%となっています。実はH28の項目別結果を見ると、授業評価結果の活用のように、同様の申請校と選定校の実施率がある項目はいくつかあります。ただ今回、点数が変更があったのは、高得点項目であり、一発逆転項目はなくなった(これだけまず頑張れば良かった項目はなくなった)とする見方も出来ると思います。もう満遍なく各項目に対応しないと高得点を狙っていくのは難しいのでしょう。

 

Ⅱ.調査票から見る各設問の変更点

 ここからは各設問ごとに、設問や要件について見ていきます。なお、軽微な変更は、言及しません。

1.基本的事項に係る評価

(1)全学的な教学マネジメント体制の構築

①3つのポリシーの点検・評価

設問

・3つの方針の名称が、学校教育法施行規則第百六十五条の二に合わせて変更されています。

要件

・「地域社会や産業界」に大学等が所在する都道府県や市町村等を主たる地方自治体、商工会、企業といった定義に、他大学は原則として含まないが追記。(他大学を含んだ大学があったのでしょうか)

 ・新たに下記が追記(一部筆者で分かりやすいように追記)

委員等として委嘱されている者は学外者として差支えないが、役員等として当該法
人や大学等から発令されている者については学外者には含めない。
意見の聴取方法に特に制限はない。大学等として依頼したことがわかる書類(相手へ
の協力依頼文や協定書等)のほかに、対面の場合は議事録等、メールの場合は日付入
りのメール文等を根拠資料として保管しておくこと。
本設問については、基準時点で、①学外者を交えた当該取組に係る点検・評価の実
施について学内ですでに決定されており、②実際に取組作業を開始していれば、点検・
評価が基準時点以降であっても「1」に該当するものとする。
3つのポリシーについては引き続き大学等のホームページで公表されていることを前
提とする。

  これ見ると、依頼をしていれば、点検評価への参画はメールでもいいという事と読み取れます。

 

②学長を中心とした全学的な教学マネジメント体制の構築

設問:変更なし

要件

・教学マネジメント体制構成員に、短大や高専では「学科長」から、「学科長等の学科の校務をつかさどる者」と記載。

・教学マネジメントの合議体がある場合に、平成28年度は「平成27年度の教育課程編成にあたって2回以上の開催」から、平成29年度は「平成29年度の教育課程編成にあたって2回以上の開催」と、対象年度が過去から実施年度への変更。

 

③IR担当部署の設置及び専任の教職員への配置

設問:変更なし

要件

・IRの専門の担当部署について、「(IRに)関連又はそこから派生する業務を含む場合までを上限とする部署」から「IRに関連またはそこから派生する業務に年間を通じて専従する部署」と記載。また「既存の部署の一部として行う場合」は「専門の担当部署を設置し、専従する専任教員又は専任職員を配置している(5点配点)」に該当しない。

・新規の説明として、「IR室を法人に設置している場合には、学校法人の専任職員として発令されている者も含むが、その場合、当該大学等のIRに携わっていることが明らかであること。」と記載。

 

④SDの取組状況

設問

・対象年度の記載の有無のみ(なお、基準時点に記載されており、昨年度と今年の9月までとなっている)

要件

・新たに「SDの実施方針・計画は基準時点にかかるものであること」と記載。

・SDとはの説明に、「職員に必要な知識及び技能の習得」から「教職員に~」と変更。

・SDの対象について詳細に記載

管理職、特定の部署や新入職員のみ等、一部の教職員を対象としている場合や、対象に事務職員以外の教員や技術職員を含む場合も該当する。

・外部団体が実施する研修への派遣は本設問の実施とはしない事が明記。

・他大学との合同は、主催または共催とする事が必要と明記。

 

(2)教育の質向上に関するPDCAサイクルの確立

⑤準備学習に必要な時間等のシラバスへの明記

設問:変更なし

要件:変更なし

 

シラバスの記載内容の適正性について、担当教員以外の第三者によるチェックの実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

⑦学生の学修時間の実態及び学修行動の把握の組織的な実施

設問

「学生の学修時間の実態及び学修行動の把握」結果を、②の教育課程編成の全学的な方針の策定の検討に活用しているか

要件

・アンケート調査は無記名でも該当と新たに記載

・アンケート調査一連の作業(配布・回収・集計や分析)のいずれかが基準時点に実施されていれば該当(←9月末までに調査用紙を配布していればOK)

・根拠資料として、教育課程編成の策定の検討として活用が分かる資料が必要(例えば、全学的な教学マネジメント体制の組織体の議事録など)

 

⑧学生による授業評価制度の設定

設問

・選択肢の大幅な変更(分かりやすくシンプルになった)

ア 授業評価の結果を集計し、授業の改善を図るための制度的取組

(例:評価の高い教員への顕彰や評価が低い教員に対し改善計画の提出を義務付ける等)を行っている。
イ 担当教員に担当する授業の評価結果を開示し、自主的な改善を促している。


1 全学部等・研究科において、アを実施している。  6点
2 一部の学部等・研究科においてアを実施している。 4点
3 全学部等・研究科においてイを実施している。   2点
4 一部の学部等・研究科においてイを実施している。 1点
5 上記のいずれにも該当しない。          0点

 要件:大きく追記がされている。

・「授業の改善を図るための制度的取組」とは、平成28年7月に全学部等・研究科において授業評価を実施し、平成28 年9 月(基準時点内)に評価の高い教員への顕彰を行った場合。

・「授業毎の評価結果」は、個別の授業の評価結果の開示を前提。学部等・研究科の単位で集計した結果のみを開示している場合は、含まれない。

・対象外として、「当該大学等の授業評価の活用方法に合わせて、授業評価及び授業改善の規程等に、改善の対象とする授業科目にゼミや実習科目等を除外している場合で、かつ、当該授業科目を除外していることに明確な理由がある場合はこの限りではない。」と新たに記載。(各大学でゼミや実習は、授業アンケートに含めるかどうかは議論になる所もあります。また通常の授業アンケートと実習は設問が合わないケースもあるからでしょう)

・新設学部についての取り扱いを記載。

授業評価規程等において、基準時点内に設置する全学部等で、ア又はイに該当する内容が定められていれば、新設学部についてのみ評価結果が活用されていない場合であって
も、本設問の選択肢の「全学部等」に該当することとする。

 

⑨教員の評価制度の設定

設問:変更なし

要件

・評価制度を教育面で優れた教員と記載(従来は優れた教員)。

・処遇を()で個別の人事制度上の取扱いと記載。

・研究面のみの評価や、研究費に結果を反映する場合は該当なし。

・任期付教員は該当しない事を明記。

・制度があれば、評価実績の有無は問わないが、教員に制度を周知していることが必要。

 

⑩FD実施のための組織(委員会等)の設置及び教員の参加状況

設問:変更なし

要件

・専任教員の具体的な定義を明示

①本年度の5 月1 日現在で在籍している専任教員であり、②本年度の5 月1 日現在で受持授業時間があったものとする。そのため、サバティカル制度に基づく海外研究や産休、病休等により5 月1 日時点で学内にいない者や、研究に専念する教員、助教・助手等で正課の受持時間を持たない者、前年度末で退職した者などは対象外となる。

 ・参加教員数の計算について記載(定められた期間内の複数回のFDのなかで1回以上参加していれば、FDに参加しているとみなす)

 

⑪アクティブ・ラーニングによる授業の実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

2.多様な取組に関する評価

⑫履修系統図又はナンバリングの実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

⑬オフィスアワーの設定

設問:変更なし

要件

オフィスアワーについての定義を記載

「オフィスアワー 」とは、授業科目等に関する学生の質問・相談等に応じるための時間として、教員があらかじめ示す特定の時間帯(何曜日の何時から何時まで)のことであり、その時間帯であれば、学生は研究室を訪問することが出来るものをいい、学生に周知されていることを前提とする。また、非常勤教員及び通信教育課程の教員を除き、時間の明記のないものや、予約がある場合のみ教員がオフィス(研究室)に在室するというケースは該当しない。

 

⑭GPA制度の導入、活用

設問:変更なし

要件

・制度を教員や学生に周知していることを前提とするが新たに記載

 

⑮学生の学修成果の把握

設問

・学修成果の把握の取組が、学生自らの学修成果の把握や動機付けだけではなく、授業の改善や教育課程の編成など、教育の向上に資するためとなっているか(下線が新たに追記、学修成果の把握が学生自身だけではなく、教員レベルやマクロレベルまで活用されているか)

要件

・課程を通じた学修成果の把握について明記するとともに、選択肢にある学修成果の把握について細かく定義づけしている。

例:アセスメントテストは、国家試験や資格試験等の対策テスト(模擬試験)は該当しない。

 

⑯1年間あるいは1学期間に履修科目登録ができる単位数の上限の設定

設問:変更なし

要件

・複数の学科を持つ学部に対しての、必修科目の割合が90%を超える場合について説明が記載

 

⑰学内の教育改革に取り組む教員又は組織(学部等)を財政的に支援するための予算の設定

設問:変更なし

要件:変更なし

 

⑱大学ポートレートで発信する情報の検討・見直しの実施

設問:変更なし

要件:変更なし

 

3.高大接続改革の推進

⑲アドミッション・ポリシーにおける求める学生像の明示

設問:変更なし

要件

・新たに受験生や保護者に伝わるよう具体的かつ分かりやすいことに留意することと記載

 

⑳能力・意欲・適正等を多面的・総合的に評価する入学者選抜の実施

設問

・一般入試の記述式問題について詳細に説明

平成30 年度入学者選抜において、高等学校学習指導要領を踏まえた「言語活動」を通して育成された「思考力・判断力・表現力」を評価するため、自らの考えを立論し、それを表現するなどの記述式問題を出題しますか。

要件

・「言語活動」について記載

 

㉑入学者選抜体制の充実の強化

設問

・従来はアドミッション・オフィスを整備しているかだったが、今年は専門的な専任職員(アドミッション・オフィサー)が、企画立案や入学者選抜まで参画しているかが問われている。

要件

門的な専任職員の定義を記載

 ⅰ)入試及び学生募集にかかる企画立案業務、及び入学者選抜おける多面的・総合的な評価(書面審査・面接審査等)の業務において直接的、主体的に関わる専任職員であること。

 ⅱ)単に各業務の事務作業を行うのみでは該当しない。

 ⅲ)学力検査のみの評価でなく、その他の資料・書類や面接等による多面的・総合的な審査・評価の業務であること。

 ⅳ)教員と同程度の立場での参画であり、各業務において当該職員が一定の権限を有することが規定等から確認できること。

 ⅴ)評価業務については一部の試験区分や形態の評価を実施していれば該当するものとする。

 ⅵ)本設問における「専任職員」とは、当該大学等の専任職員として発令されている者とし、専任教員は該当しない。

・選抜方法の妥当性の検証は、基準時点内で完了していることが必要

 

㉒多様な背景を持つ受験者の受け入れ

設問:変更なし

要件:変更なし

 

㉓高等学校教育と大学教育の連携強化

設問

・高等学校又は教育委員会との定期的な協議は年2回以上の定期的な協議体制の構築が必要(今までは回数までは明記されていない)

要件

・高等学校又は教育委員会との定期的な協議は2回の実施ではなく、協議を実施すると合意しておくことと明記

 

 今回は、大きな変更点はなかったように思いますが、個人として気になる所は、教育課程の編成やアドミッションオフィサーについてです。規定で権限があるかも確認できる必要があると思いますので、IRの次はアドミッションオフィサーをどのように担保するかが各大学は考える必要がありそうです。(規程か申し合わせとかをつくって、アドミッションオフィス室長とかの権限とかを明確にしてお茶を濁すとかしそうです)