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アセスメントポリシーとカリキュラムポリシー~アセスメントポリシーの整理・課題と私学助成の要件~

平成30年度、私立大学の補助金担当者は、次のニュースが気になる人が多かったのではないでしょうか。

between.shinken-ad.co.jp一般補助に平成29年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1の項目が一般補助にうつるという話もありますが、筆者が特に気になったのはこの部分です。(下線は筆者)

「改革総合支援事業では教育の質の『向上』を掲げながら、実際には質の『維持』に該当するような項目も含まれていた。それらは今後、私学助成を配分する大学に標準的に求める要件として位置付ける」と文科省の担当者。「アセスメントポリシーの整備」は改革総合支援事業にもない新しい項目だが、それ以外は大学設置基準レベルの課題にきちんと取り組んでいれば補助金を大きく減らされることはなく、ある程度、定員割れしていてもここでカバーできるような設定にするという。

私立大学等改革総合支援事業の項目内容から、担当者間では「そのうち一般補助になるだろう」と話をしていたのが、現実になってきたなと思います。

ただアセスメントポリシーがこの中に含まれているのは個人的には問題があるのではと思っています。今回はそ問題点についてまとめています。

  

アセスメントポリシーとは

まずアセスメントポリシーとは何でしょうか?本ブログでもアセスメントポリシーについて、過去に何回かふれたことがあります。

www.daigaku23.com 

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実はこの2つの記事が書かれた数年年前の2012年の質的転換答申の用語集にアセスメントポリシーの記載があります。

http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_3.pdf

【アセスメント・ポリシー】(p17、20)
学生の学修成果の評価(アセスメント)について、その目的、達成すべき質的水準及び具体的実施方法などについて定めた学内の方針。英国では、高等教育質保証機構QAA:Quality Assurance Agency for Higher Education)が中心となって質保証に関する規範(※)を策定し、各大学が満たすべきアセスメントの質的水準や手法などについて規定している。各大学では、これを踏まえて学内の方針を定めている。

 また大学ポートレートの用語集にも、アセスメントポリシーの用語解説があります。

アセスメントポリシー|大学ポートレート(私学版)

学生の学習成果の評価(アセスメント)の方針です。
アセスメントポリシーは学生の学修成果の評価について、各大学等が、その目的、達成すべき質的水準、評価の実施方法などについて定めた学内の方針です。

 

先進的な大学はおそらく2014年ぐらいからアセスメントポリシーを策定し始めたと記憶しております。

そしてアセスメントポリシーと一体して議論される3つの方針について2016年3月に大きな契機がありました。

 

それは中央教育審議会大学分科会大学教育部会から出された「「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン」です。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2016/04/01/1369248_01_1.pdf

このガイドラインには、3つの方針の基本的な考え方が示されています。(ガイドラインP3)(下線は筆者)

ディプロマ・ポリシー
各大学,学部・学科等の教育理念に基づき,どのような力を身に付けた者に卒業を認定し,学位を授与するのかを定める基本的な方針であり,学生の学修成果の目標ともなるもの。

カリキュラム・ポリシー

ディプロマ・ポリシーの達成のために,どのような教育課程を編成し,どのような教育内容・方法を実施し,学修成果をどのように評価するのかを定める基本的な方針。

アドミッション・ポリシー

各大学,学部・学科等の教育理念,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容等を踏まえ,どのように入学者を受け入れるかを定める基本的な方針であり,受け入れる学生に求める学習成果(「学力の3要素」※についてどのような成果を求めるか)を示すもの。

※(1)知識・技能,(2)思考力・判断力・表現力等の能力,(3)主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度

 このガイドラインでは、カリキュラム・ポリシーに教育課程の編成に加えて、学修成果について記載がされていることに留意する必要があります。

 

また同ガイドラインのカリキュラム・ポリシーの個別留意事項として次のように記載されています。(同ガイドラインP6)

(カリキュラム・ポリシーについて)
ディプロマ・ポリシーを踏まえた教育課程編成,当該教育課程における学修方法・学修過程,学修成果の評価の在り方等を具体的に示すことその際,能動的学修の充実等,大学教育の質的転換に向けた取組の充実を重視すること。
・ 卒業認定・学位授与に求められる体系的な教育課程の構築に向けて,初年次教育,教養教育,専門教育,キャリア教育等の様々な観点から検討を行うこと。特に,初年次教育については,多様な入学者が自ら学修計画を立て,主体的な学びを実践できるようにする観点から充実を図ること。

これにより、カリキュラムポリシーに教育評価が記載されることになったのですが、そうすると今までに策定していたアセスメントポリシーとの整合性の問題が出てきました。これを受けて、平成28~平成29年当時、筆者はこのように考えておりました。

 

アセスメントポリシーの内容は既にカリキュラムポリシーに含まれる事になるのだから、策定する必要はないかもしれない。

 

②しかしあくまでポリシーでありアセスメントに関する具体性が乏しいため、いつ・どのようにアセスメントをするかを記載したアセスメントプランを策定する必要がある。

 

よって、「カリキュラムポリシーに記載した学修成果に沿ったアセスメントプランやアセスメントツールの再構築が必要ではないか?」と思い、学内でも同様に検討を行っておりました。(ただ、従来策定したアセスメントポリシーは生きておりましたので、これらも踏まえ、検討をしておりました)

 

しかし、今回補助金の要件としてアセスメントポリシーが新たに脚光を浴びた印象があります。私としては、私学助成の要件にするのであれば、混乱しない為に、

①今回の3つの方針の基本的な考え方とアセスメントポリシーの定義との整合性をどうするのか?

②もしくはカリキュラムポリシーとアセスメントポリシーは学修成果に関する記載は重複してもいいのか?

③アセスメントプランは必要なのか?

④どのレベルでのアセスメントポリシーを求めているのか?3つの方針があるレベルでいいのか?

といった内容について説明して、明らかにする必要があると思っています。

なお、平成30年度の私立大学等改革総合支援事業や一般補助の教育の質に係る指標は、大学がカリキュラムポリシー内に定めているとすればよいとされています。特に教育評価をカリキュラムポリシーの中に定めていれば、補助金上はアセスメントポリシーを定めているとみなす事も可能です。

ただ、いくつかの大学のカリキュラムポリシーを見る限りは、意外と教育評価について記載はされていません。

 

アセスメントを考える上での課題①「コストによる格差」

アセスメントが指標化され、それが補助金の要件であったり、何かの指標となる事にはある種の危惧を感じています。 

その一つには、アセスメントには多大なコストがかかる場合があるからです。 

例えばここ5~6年、某社(ここではA社とします)のツールを使う大学が増えました。それは、大学教育再生加速プログラムをはじめとした補助金による推進もあったかと思います(補助金プログラムの成果報告ではいつもA社かライバル社のツールを使った事例を聞いていると、どこも同じようなものを競争的な補助金でやっていて良いのだろうかと感じたりもしました。) 

それゆえか、A社からは「弊社のツールは多くの大学が使っている」「どんなツールよりも素晴らしい」といった営業をうけ、挙句には「(弊社のツールは素晴らしいのに)とあるさんは、弊社のツール好きではないのですか?」と聞かれますが、そもそもない袖はいくらふってもありません。

 

いくら素晴らしいツールで、他大学が使っていても、職員として判断するのはお金の事があります。

例えばアセスメントするのに1年と4年の学生全員に行うとして、入学定員850人の小規模大学の場合、単価が2500円だとするとかかる費用は425万+諸費用がかかります。またそれに使う人件費といったコストもあります。

(個人としては「400万あったら教育環境とかを整えてあげられる」とも思います。)

 

そしてアセスメントは、1つだけでは全てを測る事ができません。直接評価や間接評価を組み合わせて、包括的に様々な面からアセスメントする必要があります。 

つまり、A社のツールだけではなく、学修行動調査をやったりする場合はさらにコストがかかります。 

では大学で研究開発すればよいと思う事もありますが、これも中々難しいです。それでが出来るような環境や人材育成をする必要があります。また時間もかかります。 

小規模中規模大学では、使える費用や人材リソースには限界があります。

(大規模大学もあるんは承知していますが、限界値が違ったり、小規模大学がアセスメントなどの専門の人を雇う事が難しいです)

特に、近年は大学教育再生加速プログラムのような新規補助金はあまりありませんので、補助金を当てにするのも中々難しいのです。(また補助金切れたら、そのツールとは縁の切れ目という事もありそうですね) 

つまり小規模大学で財政規模が大きくない大学や、お金に余裕がない大学はアセスメントをする際に何ができるのかの差がついてしまうだろうと考えています。

 

アセスメントを考える上での課題②「学生負担」

アセスメントを大学・学部や学科(専攻)・学生個人といったレベルでどのように行うのかをアセスメントポリシーやプランに載せる事がほとんどであると思います。例えば、成績評価といった直接評価やディプロマポリシーに対応したルーブリックや学修行動調査などの間接評価をレベル別にポリシーやプランに記載するなどですね。 

ここで一つ考慮しないといけないと思うのは、間接評価の学生負担です。例えば学修行動調査をはじめ、学生生活調査や他の調査など学生の調査がここ十年で増えたように思います。つまり「学生の調査負担が問題」と言われています。

 その原因の一つとして、調査項目が同様の内容なのに、(例えば大学と学部といった)調査主体(レベル)が異なるために学生に同じ事を何回も聞いたり、同じ時期に何個も調査を実施していないでしょうか。また調査は、それぞれのレベルで分析が出来ない・されていないなど、非効率化があったりする場合もあるかもしれません。 

 

学生は直接評価の成績やGPAは目にしますが、間接評価はそれがどう活かされているのかが分かりにくい時があります。例えば学修行動調査の結果はきちんと個人に経年の結果を返却したり、学生がきちんとメリットを感じられるようにしないと、学生は労力を使われるだけになってしまうと感じてしまわないかと懸念があります。

 

間接評価は行う意味はあるとは思いますが、学生から何かを提供してもらっている以上は、組織レベルで何が出来ているかだけではなく、きちんと学生に還元できる仕組みや仕掛け、そして学内での共有をしておかないといけないなと感じています。

 (国立大学や大規模大学では、高等教育・アセスメント・FDなどに関する機構やセンターを持っており、そこで統括している例もありますが、小規模中規模でそのような組織を持っている大学はあまりないので、この点の議論はかなり難しいですよね)

 

(平成30年7月1更新)

(平成30年10月1日更新)