大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

大学や高等教育関連、法令の解説が中心のブログ

【スポンサーリンク】

平成28年度私立大学等改革総合支援事業タイプ①の昨年度からの主な変更点Ⅰ

平成28年度5月30日から私学補助の説明会が始まり、補助金担当者ではどのようにこの事業に申請するかといった話が出ていることかと思います。

また既に担当者の手元には本事業の調査票が届いているようです。

 

前回は説明会資料に基づいて私学が取組む事項をまとめましたが、今回はタイプ1「建学の精神を生かした大学教育の質向上」を昨年度との比較でまとめました。(前回の記事の内容とかぶりますが、この記事だけをみてわかるようにしたいと思いますのでご容赦ください)

 

なお、新が今年度、旧が平成27年度の事項です(全てを記載するのではなく、一部のみを記載しております)また内容が多いため、2回に分けて記事を投稿します。

 

 

1.全学的な教学マネジメント体制の構築

①3つのポリシーについて

新:3つのポリシーの点検評価を行う際に地域社会や産業界等、学外の参画があること

旧:3つのポリシーを策定し、ホームページで公開していること

 今年度は既に(学校教育法施行規則で求められている)ポリシーを策定している事は前提であり、その為のPDCAサイクルを構築する中で外部の視点を求めるという昨年度より問いが厳しくなっています。また地域社会や産業界は大学等が所在する都道府県や市町村を主たる所在地とする地方自治体や商工会・企業の必要があるとの事です。

 例えばこんな手段が考えられます。

 ⅰ)自己点検評価委員会に学外の方の参画ができるように規定を見直す

 ⅱ)規程の解釈(例えば学長の認めたものを自己点検・評価委員とすると記載があれば学外を参画させ、名簿に名前をいれ、議事録にも出席者と明記する)

 ⅲ)外部評価委員会を立ち上げる

外部評価委員会は、内部質保証のシステムの観点からも必要性が言われております。

これは大学基準協会の下記の資料の11ページ目の内部質保証体系図が参考になるでしょう。

http://www.juaa.or.jp/images/accreditation/pdf/explanation/university/2015/ex_u_15_02.pdf

②学長を中心とした教学マネジメント体制の構築

新:要件追加「教育課程の編成に関する全学的な方針に基づくプログラムの成果を検証し、改革サイクルを確立していること」

 学長を中心とした全学的な教学マネジメントシステムの構築を聞いておりますが、要件が追加されています。これは3つのポリシーのガイドラインにカリキュラムポリシー(教育課程の編成方針)は次のように整理されている事も理解しておく必要があります。

「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の策定及び運用に関するガイドライン(平成28年3月31日 大学教育部会):文部科学省

カリキュラム・ポリシー

ディプロマ・ポリシーの達成のために,どのような教育課程を編成し,どのような教育内容・方法を実施し,学修成果をどのように評価するのかを定める基本的な方針。

 また全学的な方針と書いてありますので、大学としての方針をきちんと立て、そのプログラム成果を検証する必要があります。(その為に、大学の方針が各学位プログラムのカリキュラムにどのように当てはまっているかをカリキュラムマップ等で明確にしておくと評価がやりやすいでしょう)

④SDの実施方針と計画の全学的策定と①3つのポリシー・自己点検・内部質保証、②教学マネジメントに関わる専門的職員の育成、③大学改革、④学生の厚生補導、⑤業務領域の知見の獲得を目的とするもの、以上5つの内、取組を4つor3つ以上しているか

新:上記の通り。

旧:教育の質的転換に関するSDを実施しているか

 まずSDの対象のどうするかです。以前にも述べましたが、大学設置基準の改正により次の改正がでています。

大学は,当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため,その職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第25条の3に規定するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとすること。(第42条の3関係)

 またこの改正では対象を次のようにしています。

対象となる職員について
「職員」には,事務職員のほか,教授等の教員や学長等の大学執行部,技術職員等も含まれること。

 さて、私立大学等改革支援事業では職員の対象をどうするかですが、Q&Aに次のように記載されていました。

取組の対象が職員(事務職員だけでなく、教員や技術職員を含む)であれば、対象者の範囲は問題となりません

 つまり教員もこれらのSDの取組に含めてよいということです。

例えば②の教学マネジメントに関わる専門的職員の育成は、学科長・学部長・部長・局長を対象とした教学マネジメントに関する研修を実施してもよいのかもしれません。④の学生厚生補導も該当の委員会が中心となって、研修会を実施することもできます。ただ注意するのはSDの実施方針・計画を全学的に策定することですので、「大学の教育研究活動等の運営を図るため,該当する教職員に必要な知識及び技能を習得させ,並びにその能力及び資質を向上させるための研修を年間でどのように組んでいくか」を早急に検討する必要があります。(一部の職員を対象とする場合でもOKという事です)

また教育課程形成・編成にあたり、職員が参画する仕組みは今回は削除されています。

 

2.教育の質向上に関するPDCAサイクルの確立

⑤シラバスの記載内容

新:シラバスの作成要領により、①準備学習の具体的な内容及び必要な時間、②授業における学修の到達目標及び成績評価の方法・基準、③卒業認定・学位授与方針と当該授業科目の関連、④課題に対するフォードバックを求めているか

旧:シラバスの作成要領により、準備学習(予習・復習等)に必要な時間又はそれに準じる程度の具体的な内容をシラバスに明記することを全教員に求めていますか?

  シラバスの作成要領により、シラバスに到達目標の明記を求めていますか

 具体的な内容が上がっていますが、注目するのは「及び」と「又は」です。

・A及びB(AとBの両方とも)

・A又はB(AとBのいずれか)

つまり今年度は「準備学習の具体的な内容と必要な時間」の両方の記載を求めている必要があります。まあ求めているかどうかを問われているので、シラバスに反映していなくてもいいだろうという理解もできなくはないのですが、私が監査をする場合はシラバスの具体例も見せろというかなと思います。

 

⑥シラバスの第三者チェック

新:要件追加「編集上のチェック(必要事項の記載の有無のみ等)をするだけはだめ。記載内容等の改善等を担当教員まで要望することまで要する。

  根拠資料「組織から命ぜられた者が職務内容を確認した資料」

旧:根拠資料「第三者としての職務内容を確認できる資料」

シラバスチェックする人が職務内容を確認した資料であれば、依頼書等を確認したという書面、もしくは自分がシラバスチェックを行うものであるという同意書みたいなイメージでしょうか。

 

⑨教員の教育面における評価制度を設けていますか

新:要件「顕彰だけではなく、処遇に反映をさせること」

処遇の定義をどう判断するかですが、要件では昇任や給与などの処遇と明記されています。(ただ現実的には昇任は難しいのではと思います。逆に評価を受けることが昇任するための条件としても教育を評価しての昇任はどうか)

なお処遇についてはQ&Aで「教員の個別の人事制度上の取り扱い」とされ、研究費の増額は該当しないとされています。

 

⑩FDの実施のための組織の設置と実施

新:FDの参加率(全員or3/4以上or左記以外)

旧:FDを三回以上、全学部or一部学部orしていないか

ここで問題となるのは、FDの参加率を100%とするのか、それとも全教員はFDに必ず1回以上は参加させることによって教員の参加率を100%とするのかでしょう。

(前者は不可能に近いですので、おそらく後者で大丈夫かと思いますが、言い方は悪いですがFDの欠席者向けのFDをしないと100%は難しいと感じています。)

 

www.daigaku23.com

 

 

平成28年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1から見る、これから私学が取組む事項

 5月末から「平成28年度私立大学等経常費補助金説明会」が開催されます。このブログでは私立大学等改革総合支援事業について、取り上げていますが、平成28年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ①について備忘録として何をしなければいけないかをまとめてみました。

(なお、本記事は説明会の資料を基にしているので、説明会での口頭での説明、後日文部科学省のHPに記載される私立大学等改革総合支援事業の更新を待って、修正する場合があります)

 また当然ですが、高大背素族システム改革会議「最終報告」と3つのポリシーのガイドラインの内容が盛り込まれています。特に高大接続が重点的に新規設問が追加されています。

 

さて、それでは主な変更点と取組む事のメモです。 

①今年度は基準時点が変更

 今までは前年度+本年度の8月まででしたが、平成28年度は平成27年度9月1日から平成28年度8月31日までとなりますので、例えば調査関係、会議の議事録、研修の取組み等、前年度前期にやったから得点をつけられる訳はありません。

 (まあ本来は毎年やっている事を前提としているものが、4~8月中に実施しておけば、2年間申請の根拠として使用できるのは問題があったとは言えます)

 

②【設問①】3つのポリシーの点検・評価の学外の参画が必要

 詳細な私立大学等改革総合支援事業の統合版を見ないと判断がつきませんが、まずは3つのポリシーの点検を大学の点検・評価(内部質保証)のどこでやるのか、またどのレベルでやるのか、例えば大学(学部)自己点検評価委員会か学部学科か、そこに学外を参画させる規程になっているのか、それとも点検・評価の一環として外部評価委員を置くのかも検討する必要があるかといった事が考えられます。

 例えば対応としてこんな所でしょうか

 ⅰ)自己点検評価委員会に学外の方の参画ができるように規定を見直す

 ⅱ)規程の解釈(例えば学長の認めたものを自己点検・評価委員とすると記載があれば学外を参画させ、名簿に名前をいれ、議事録にも出席者と明記する)

 ⅲ)外部評価委員会を立ち上げる

 ※個人的にはⅱはグレーゾーンな気がします。

これに関係するのは、高大接続システム改革会議「最終報告」がありますね。

高大接続システム改革会議「最終報告」の公表について:文部科学省

・ ステークホルダー(高等学校関係者、企業関係者、自治体関係者、学生等)の
視点を取り入れた評価の実施及び社会への評価の積極的な発信

また例えば外部評価委員会を置く場合は、次のような事例もあります。

自己点検・評価 | 情報公表 | 福岡大学

外部評価委員会 | 明治学院大学

学外の参画も地域社会や産業界等とされていますので、他大学の偉い先生だけを招けばいいという事ではなく、例えば学部と関連のある業界の企業の方を招いたりする必要もありそうです。

 

③【設問④】SDの取組み

 平成27年度までは教育の質的転換に関するSDの実施が求められていました。例えば質的転換の共通理解や他大学の取組事例の紹介などを行い、一部の職員を対象として実施したものでもOKでしたのでハードルは低めでした。しかし今年は、SDの実施方針・計画を全学的に策定し、①3つのポリシー・自己点検・内部質保障、②教学マネジメントに関わる専門的職員の育成、③大学改革、④学生の厚生補導、⑤業務領域の知見の獲得を目的とするもの、以上5つの内、いくつ取組んだかで得点が変わります。

 今の段階だと、研修会を開催する必要があるのか、それとも②の場合は大学院や履修証明プログラムの参加とかでOKになるのかはこれからの状況を見たいと思いますが少なくともSDの実施方針・計画は早急に策定しなければなりませんね。SDをスポット的に研修を行うのは(全員参加を求められていない限り)難しくはないのですが、実施方針や計画はきちんと出来ている大学は少ないのではないでしょうか。

 ②の教学マネジメントに関わる専門的職員の育成とはどうするのでしょう?学内でどう育成するとかの方針策定も難しいですし、例えば企画課に交代で異動するとか出向とか大学院に行かせるとかでしょうか。自分は②には当てはまっている気がしますが、組織としての方針や根拠書類が難しいなと思います。

 

④【設問⑤】シラバスに記載すべき内容の見直し

 今年度は、具体化されて①準備学習の具体的な内容及び必要な時間、②授業における学修の到達目標及び成績評価の方法・基準、③卒業認定・学位授与方針と当該授業科目の関連、④課題に対するフォードバックを求めていることが必要です。

 対象となる期間のシラバスは既に作成されていますので、現在あるものを見るわけですが、これを全て満たすシラバスは金沢工業大学の他に、数大学しかないだろうと思います。特に準備学修に必要な時間を載せている大学はあまり見かけません。この5つを出来ていると回答としている大学があり、自分が私学事業団の人だったら真っ先にヒアリング(もしくは検査)に行きます。

 また平成27年度同質問項目は次の通りです。

H27私立大学等改革総合支援事業調査票

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

⑥ シラバスの作成要領等により、準備学習(予習・復習等)に必要な時間又はそれに準じる程度の具体的な学修内容をシラバスに明記することを全教員に求めていますか。

 昨年度から比べると非常に厳しくなっていますね。この全てを満たすシラバスを作成するには、カリキュラムマップや単位制度の理解と共有なども出来ていないと満たすことが難しいと思います。

 

⑤【設問⑧~⑩】設問によっては研究科も含めている

 昨年度までは「学部」しか記載がなく、研究科を含めなくていいという理解ができた質問項目がありました。今年は授業評価の結果や教員の教育面の評価制度なども研究科は評価対象になっております。

 昨年まで、設問によっては「全学部において」と記載してあるものは研究科を入れなくてもいいという解釈だったのが、授業評価結果の活用、教育面における評価制度、FDの実施が求められます。研究科でできていなくとも学部でやっていれば部分点はもらえるようです。

 

⑥【設問⑳~】アドミッションポリシーの明示、一般入試での記述式問題の出題、AOや推薦入試での基礎学力の状況の把握、多様な背景を持つ受験者を受け入れるための定員枠があるか

 ポリシーの明示は何とかなりそうですが、他の高大接続関連は、次年度の入試は入試案内を高校に配布したりと既に決まっているものもありそうなので、今から取組むという事は難しいかもしれませんね。

 

 今年度のタイプ1の設問を見ていて感じるのは、設問が発表されて、補助金申請までの期間で付け焼刃として取組む事は年々難しくなっている事です。高等教育政策に目を光らせ、報告やガイドラインを理解し、学内に共有・理解してもらい、大学一丸となって改革に取組むという事を日常からやっていかないと、特にタイプ1の選定は難しいです。さて、まとめの代わりとして今更ですがこの補助金を申請する上でポイントを2つだけ挙げてみます。

①根拠書類はきちんと整理をする。

 特に議事録があるかどうか、あってもそれが議事録になっているかどうか(単に記録や発言をまとめただけになっていないか)も確認が必要でしょう。(私学事業団や国から監査・検査があったら、根拠書類をきっちり見られるでしょうから、不確実ではないようにする必要があります)

②その設問に対し、出来ているかは複数の目でチェックを行う(解釈の目線あわせ)

 設問について、実際に担当している人と文科省・私学事業団では前提や理解が異なることも考えられます。現場担当者が出来ていると主張しても、文科省・私学事業団の定義に合っていなければなりません。(その為にも①の書類が重要です)

 

 私立大学等改革総合支援事業は何故そんなに取りたいの?と言われる事もあるでしょうが、COCやAP、スーパーグローバルなどの補助金は大学の改革のスタートアップの為の補助金であり、お金の使い道も決まっており(さらには自己負担も必要)です。しかしこの支援事業は、改革の結果についてお金がつき、経常補助や特別補助に上乗せなので、使途が定められていないお金とも言えます。

 

H27私立大学等改革総合支援事業タイプ1 選定結果を見て気になる6点

11月18日に平成27年度私立大学等改革総合支援事業の採択結果が公表されました。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

今まで本ブログでは私立大学等改革総合支援事業について、様々な視点からの記事がありますが、今回はタイプ1(教育の質的転換)の結果を見て思う事・懐疑的な事について整理してみます。

 

①採択ラインの大幅な上昇

タイプ1の採択ラインはH25は68点、H26は78点、今年度の採択ラインは88点となり、毎年10点アップしています。とは言え、配点はH25及びH26は100点、今年度は106点となっていることは留意が必要です。

②学内にIR担当部署及び専任教職員の設置は選定校で32%

IRの関連の集まりでは、この補助金で私立大学にIR担当セクションが出来始めているという事は聞きます。しかし全体から見るとそんなには多くはないようです。以前、コストについての記事をあげたことがありますが、IR担当者の人件費と天秤をかけたらどうなんでしょうか? 

as-daigaku23.hateblo.jp

 ③選定校では99%が教育の質的転換に関するSDをやっている

選定大学の大部分は取組んでいる教育の質的転換に関するSDですが、実は一部の職員を対象として実施しているものでも「実施している」とみなすことができます。実はハードルがあまり高くはない項目です。

シラバスに準備学習の明記を求めているか

申請校では88%、選定校では99%が出来ていると答えていますが、個人としては非常に懐疑的な結果です。シラバスは原則公表されていまして、きちんと記載されている大学は金沢工業大学などが挙げられますが。シラバスはシンプルな様式の大学は少なくないと思います。

<参考 金沢工業大学シラバス

学習支援計画書の照会

 ただ根拠資料がシラバスの作成要領や教員への依頼文であり、教員へ依頼している事を問われていると解釈できますので、実際にシラバスに書いているかどうかは実は別のようです。事前事後学習をきちんと指示している大学のシラバス様式は一度どのようなものがあるか、調べなければならないなと感じます。

⑤アクティブラーニング型授業の実施

この補助金でいうアクティブラーニングは、学外の特定の組織と連携して課題解決に学生に主体的に関与させることが目的といった解釈のものであり、PBLというほうが近しいです。選定校での実施はH26は50%でしたが、今年度は29%とタイプ1の項目で実施率が下がっている唯一の箇所です。まあPBLは非常に準備や調整に労力がいるものであり、例えば組織が想定する学生像と実際の学生像との乖離があったりします。

⑥履修体系図・ナンバリングは選定校で79%も出来ているのだろうか

ナンバリングは履修体系図がないと実施は難しいとは思いますが、そもそも79%も履修体系図を本当に整備しているのでしょうか?履修体系図は公表していない大学も多いですので確認する術はありませんが、履修モデルや樹形図と混同していないかは不安です。 

as-daigaku23.hateblo.jp

 補助金の説明会で再三言われている事ですが、私学事業団の監査が随時行われていると聞いています。私学事業団の年間計画を見ると次のように記載されています。

大学等の補助事業の実施状況について実地調査を行うとともに申請事務等の指導・助
言を行う。
なお、「私立大学等改革総合支援事業」に係る調査を引き続き文部科学省と協力して
実施する。 

http://www.shigaku.go.jp/files/g_27keikaku270629.pdf

補助金を取ることは私学にとって重要な事である事には間違いないのですが、例えば改革総合支援事業のように項目の解釈次第で得点と出来てしまうこともあり得ます。大学職員は、「適切な方法で確認を行う」という仕事は重要な仕事であると思っておりますので、例えば答申を改めて見直したり、私学事業団に電話して確認を取るといった事が必要です。某省に電話するならともかく、私学事業団に電話することは怖くありません。必要であれば色々問い合わせてみる事も必要です。

 

 

 

 

平成27年度COC+の申請状況~設置申請及び地域別に見てみる~

 本日、平成27年度「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」申請状況が発表されました。

平成27年度「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の申請状況について:文部科学省

 そこで申請状況について気になった事を簡単にメモしました。(申請状況の詳細は、上記リンクからご覧下さい)

なお、COC+については過去に申請要件や申請資格について触れたことがあります。 

as-daigaku23.hateblo.jp

 Ⅰ・申請状況(設置申請別)合計56件

 ①国立大学を中心とし、周辺の国公私大学・短大・高専が参加   37件

 ②公立大学を中心とし、周辺の公私大学・短大・高専が参加     7件

 ③私立大学を中心とし、周辺の私立大学・短大・高専が参加     5件

 ④私立大学を中心とし、他地域も含む私立大学・短大・高専が参加  2件

 ⑤私立大学が単独での申請                    3件

 ⑥高等専門学校を中心とし、周辺の国公私大学・短大・高専が参加   2件

 まずCOC+の概要が発表された際に関係者が思ったように国立大学を中心とした事業が非情に多いです。またいくつか気になったものとして次の点があります。

・国立大学を中心とした申請では同一県内の大学で申請を行うが、私立大学では他地域と組んでいるケースが2件あり、北海道と東京、群馬と東京である。東京は流入超過の地域の為、申請は難しい。

・私立大学が単独での申請が3件あるが、原則は単独申請できなかったはずなので、今度どこかと連携するなどを想定しているのか。(何も知らずに単独申請したとは考えにくい)

・流入超過の地域(東京などの大都市や地方都市)に在る大学が、参加大学として申請しているケースも少ない⇒文部科学省の目論見どおりの地方にお金を流す政策としては成功かもしれない。

 

Ⅱ.申請状況(対象とする地域)合計56件

 今回の申請では、参加する自治体として申請大学等一覧に記載されています。そこで申請状況を見ると次のようになっています。

 ①他地域(県や市)も含めた複数地域での申請(例 北海道と東京) 56件中1件

 ②市町村(複数)レベルでの申請                 56件中8件

  ※COC+は県レベルの申請を求めていますが、市町村レベルでも申請を妨げないとしています。

 ③申請がされていない地域             東京都・神奈川県・愛知県

 COC+は若年層人口の東京一極集中の解消を目的とし、地方を対象としており、最初の就職時に若者の人口移動が超過している地域は申請できません。③の3つの地域は超過地域なので申請はできませんが、他の超過している埼玉や千葉、宮城などを対象に申請している大学もあります。例えば超過地域(県)でも、対象とする市町村によっては申請をしてみたという事も考えられます。

 ④同一県内で複数申請がされている県 

  北海道・兵庫県奈良県岡山県広島県・福岡県・長崎県

 COCの予算規模から考えて、採択はそう多くはないはずですし、地域創生の観点からも同一県内で複数採択される事は考えにくいと思います。

 

 上記にも書いていますが、特に気になったのは、私立大学の単独申請と転入超過地域を対象とした大学の申請です。公開されているCOC+の資料では、そのあたりの説明が読み取れないのですが、今後この申請が採択されるのかどうかの動向にも注意をしていきたいと思います。

補助金獲得における職員の役割~補助金のマネジメントは何をすればいいかの一例~

COC(+)や大学教育再生加速プログラム(AP)や、私立大学を対象とした私立大学等改革総合支援事業など、経常の補助金とは別に様々な補助金があります。今回はCOCなどをはじめとした「国公私立大学を通じた大学教育改革の支援」や「私学助成の充実」を目的とした補助金申請を対象に標記のことについて一例をまとめました。

国公私立大学を通じた大学教育改革の支援:文部科学省

私学助成の充実:文部科学省

 

 私立大学で補助金をもらわずに運営している大学はほとんどないですが、補助金を獲得する為の申請業務は書類や証憑類を揃えたりと煩雑な事業です。以前、このブログでも補助金について述べたことがあります。 

as-daigaku23.hateblo.jp

 従来であれば、補助金の申請において大学職員は書類の整合性のチェックや製本など事務手続きがメインであったかもしれません。しかし近年の補助金事業は教職協同となりうるものであり、教員・職員のどちらかだけでは申請書作成すら非常にハードルの高いものです。そこで、今年度の申請もふまえ、次のような事を行っています。

 

①学内外のネットワークの活用(情報収集)

 申請業務は様々な情報が必要です。学外だと、どのような大学が該当の補助金に申請しようとしているのか(私立大学等改革総合支援事業なら、何点ぐらい獲得を目標値にしているのか)といった情報も集めます。学内であれば、補助金を申請する上で様々な申請する要件や申請資格(例えば、収容定員充足率を満たしているかなど)を満たしているかといった情報や、COCであれば先行となる取組が学内であるかといった情報の収集は重要です。(特に学部やキャンパスがいくつもある大学の場合は、情報が共有化される仕組みがなかったりして、実はこんな事やっていると聞くケースも珍しくはないと思います)

 

②高等教育政策や法令への理解

 補助金の書類を作るうえで、今までの高等教育政策や法令の理解は必要です。その補助金が創設された背景は何かを読み解くことができますし、学校教育法や大学設置基準への理解も必要です。例えば、補助金の申請要件に「FDは教員の75%以上参加していますか?」があっても、大学設置基準第二五条の三でFDの実施について記載がありますので、本来であれば全教員がFDを参加している事をふまえて、該当の要件に記載する必要があります。

 

③補助金の使途可能範囲の判断

 補助金は国の税金でありCOCやAPなどの補助金は、支出が可能な経費について細かく決められています。また学内での規程がどうなっているかも理解の上、事業を進行する上でその経費は補助金として支出が可能かどうかを判断しなければなりません。(補助金で支出できなくても、必要がある費用の場合は補正予算として出すかどうかも検討する必要があります)

 

④申請書の作成

 ③の補助金の使途についての記載様式作成も含め、学内の状況や申請要件に関する書類などを、補助金申請を一緒に行っている教員と分担で作成したり、プロジェクト体制の場合はマネジメントを行います。(大学職員が書類を作るというと決まった様式の作成や従来あるものを一部変えるといった事が多いように思いますが、補助金書類の作成(特に作文)は、チャレンジできるのであれば若いうちから経験しておくといいと考えています。このような経験は、管理職になった時に中期経営計画立案などにも活かせるはずです。)

 

⑤ポンチ絵

 説明するまでもないポンチ絵です。該当事業の概念をおおまかに図を交えて説明したものですが、どうすれば読み手(審査員)が理解できるか・見やすいかをふまえて、原案を基に加工したり調整を行います。

 

⑥学内の調整

 実はこれが一番大きな仕事であったかなと思います。人事異動やいくつかのプロジェクト会議に参加していたりしますので、学部キャンパス問わずキーとなる人が分かり、事前相談(根回し)も含め調整するために出向くことが多くありました。採択後の実施支援の依頼も含めて、調整業務は非常に重要です

 

 補助金の申請は他大学はライバルであるので、あまり安易に聞けるものではなく、各大学が試行錯誤しながら申請しているケースもあると思います。また試行錯誤の経験が求められる業務です。また、大学職員は人事異動がありますので、補助金申請を担当する人も入れ替わりますが、経験を文書化し全てを引き継ぐのは至難であると思います。(私の力量不足もありますが…。)そのために補助金申請はプロジェクト化にしましょう!と提唱し、補助金申請業務を時間をかけて伝えるということを最近はやっています。

 

 補助金業務において職員のやる事・チャレンジできる事はたくさんありますが、今後はどのようにして継承するかは大きな課題でもあります。 

多面的・総合的に評価する入学者選抜の妥当性の検証について考える~IRと連携の必要性~

昨日、出勤したら机の上にBetween6-7月月号 2015 No.262が置いてあり、特集が「動き出す入試改革~”多面的評価”の第一歩でした。

内容については、WEBにも直にアップされるので紹介はしませんが大枠をつかみ、追手門学院をはじめとした事例も紹介されていますので大学経営、企画担当、アドミッション(募集・入試)、IR担当者は必読すべき内容かと思います。

between.shinken-ad.co.jp

 

さて、前々回に私立大学等改革総合支援事業について取り上げました。

 

このタイプ1では新しい設問として次が加えられています。

学力を構成する3つの要素を踏まえた多面的・総合的に評価する入学者選抜を実施しているか(新設)

 詳細としては次の3つです。

ア 多面的・総合的な入学者選抜を実施しているか

イ アドミッションオフィスの整備・強化

ウ 入学者の追跡調査等による選抜方法の妥当性の検証

 アやイについては、根拠資料が入試要項や組織図が例として挙げられていますが、ウについてはどのような事をやればいいのかが判断が難しい所ではないのでしょうか。

そもそも選抜方法の妥当性の検証とは何かですが、入学者選抜は3つのポリシーの内のアドミッションポリシー(AP)にそって行われています。

図にするとこんなイメージですね。

f:id:as-daigaku23:20150613090727j:plain

アドミッションポリシーは各大学で公表されているかと思いますが、おそらくアドミッションポリシーでは学力や知識だけの記載だけではないかと思います。

アドミッションポリシーで検索すると上位に出てくる日本大学法学部のアドミッションポリシーを見てみましょう。

www.law.nihon-u.ac.jp

日本大学法学部が求める人材は以下の通りである。
高等学校などの教育課程において,充分な学力と知識及び判断力を身につけた人。法律学・政治学・経済学・新聞学・専門的な学びのなかから,自らの視点を習得し,社会の問題点を発見するとともにその解決策を見出す努力を惜しまない人。高度な倫理観,責任感を持ち,社会的存在としての自己を客観的に見ることのできる人。

①充分な学力と知識、②判断力、③社会の問題の発見と解決のための努力、④高度な倫理観や責任感、⑤自己を客観的に見る

大きくはこのような事が挙げられているかと思います。これらの事を踏まえ入学者選抜が行われているという理解ができます。

 つまり、アドミッションポリシーの通りに入試が行われている事を前提に、ポリシーに記載している人材を入学できているかどうかを検証する必要があるという事です。

その為の例として、私立大学等改革総合支援事業の資料には入学後の学生の成績や留年・中退率、卒業後の進路等の調査が挙げられています。

 

ここからは、まだ私自身も出来ていない部分ではありますが、以前、入試(選抜方法)区分ごとにGPAや中退率などの調査をした事があります。入試によって、成績や中退は確かに差が見られるのですが、多変量解析では入試区分は成績に与える影響は学部によって大きく差があるものでした。また理系と文系でも入試(選抜方法)区分ごとの成績の傾向は異なりました。

 

しかしこの結果だけでは妥当性の検証ができるものかと言われると懐疑的です(補助金を貰うためのエビデンスであれば、もう少し拡大すればよいかもしれません)

私自身としては成績のみでは、例えば上記の例のアドミッションポリシーの検証はできないかと考えています。一つの指標だけではなく、成績・ポートフォリオの内容・リテンション・学修行動調査・卒業後の調査やディプロマポリシーを達成したかのアセスメントの結果など、複合的に組み合わせないと検証は難しいかと考えています。

 

ただ複合的な指標を用いての検証は、アドミッションオフィス単体ではかなり難しいかと思われます。近年、各大学でIR室やIR推進室が出来ていますが、(学修行動・学生生活の実態)調査等や各種データを収集する機能がIR室にあるならば、積極的に連携し活用する必要があるのではないでしょうか。(IR室になくとも機能を持った企画の部署や高等教育センターなども考えられます)

 

ただふと思うのは、妥当性の検証をIR室に丸投げするという事が起こりうるかもしれません。IR室の役割として、「データの集約や分析、報告等は行うが、アドミッションオフィスできちんと妥当性を検証する」という事を明文化しておかないと補助金獲得の為の証拠作りで終わってしまいそうです。そしてIR室の重要な役割として、アドミッションオフィスにデータの読み方や検証の方法の支援をする必要があると考えています。データそのものだけではなく、人への支援も含めたFDやSDも担う必要があるという事ですね。

 

その前にIRの方としても、学内の調査をどのようにマネジメントするか(調査が多く・重複しないように、入学者選抜も含めての学修行動調査の構築)、ポートフォリオとIRをどのように結びつけるか、学内の様々なログをどのように活用するか等も検討する必要がありそうです。

平成27年度私立大学等改革総合支援事業 タイプ1(教育の質的転換)のH26からの変更点

私立大学補助金担当者は、内容が気になっていた私立大学等改革総合支援事業ですが、今年度は昨年度と比較して若干変更点が見られました。

そこで変更点全てではありませんが、個人的に気になる点をいくつかピックアップしてみました。

①IRの定義等の一部変更

「IR」とは、学修時間・教育の成果等に関する情報の収集・分析を必須とし、大学等が自ら置かれている客観的な状況を収集・分析するだけでなく、内外に対して必要な情報を提供する活動等を含む。

 H26は学修時間や教育成果の情報の収集分析を行っていれば該当したものが、内外に対しての必要な情報を提供する活動が含まれたのは大きな変更点ですね。情報だけ集めて、分析にひたるIR室はもってのほかです。例えばファクトブックの発刊なども検討する必要があるかと考えられます。

 

②学生の学修時間の実態や学修行動の把握の点数の変更

過去のブログ記事でもふれましたが、昨年度は把握については選定校は96%が出来ていました事もあるかと思います。それでも5点満点ですので小さくはない項目でもあります。 

 

③教員の評価制度が、評価するだけではなく処遇に反映しているかが追加

処遇とは何を指すかは、「昇任や給与などの処遇」とあります。ただ、例えば教員表彰制度の優秀者に副賞は該当するかどうかは問い合わせる必要がありそうです。しかし昇任は論文や著書があるかなど昇任するための要件がある大学もありますので、個人的には昇任を処遇とするのは難しいなと感じます。

 

④学力を構成する3つの要素を踏まえた多面的・総合的に評価する入学者選抜を実施しているか(新設)

ア 多面的・総合的な入学者選抜を実施しているか

イ アドミッションオフィスの整備・強化

ウ 入学者の追跡調査等による選抜方法の妥当性の検証

 特に気になるのはウの入学者の追跡調査等による選抜方法の妥当性の検証ですが、入学後の学生の成績や留年・中退率、卒業後の進路等の調査を行っていると記載されています。

ここはIR等の部署が担当することも考えられと思いますが、IRはデータの分析や調査等を行い材料等を提供することはあっても、入学制度の妥当性の検証はアドミッションオフィス等が行う必要があると考えています。

例えば入試に関する自己点検委員会を組織してそこで検証を行うのがいいのではないかと思います(内部質保証のサイクルを入学試験等にも行うということですが、ここは認証評価にも必要な事項です)

例えば明治大学では、入学センター自己点検・評価委員会というのがあるそうです。

www.meiji.ac.jp

(困るのが、アドミッションオフィスがIR室に調査や検証を丸投げして、結果は何も活かされることなく、募集のための入試制度を構築し続けているという事でしょうか)

昨年度は、私立大学等改革総合支援事業のタイプ1の選定ラインは100点満点の78点でした。今年は設問の追加により106満点となっています。個人の予想としては、選定ラインは88点前後と思いますが、どのような結果になるかは非常に楽しみです。

 

前回書いた事ですが、このような事を学内で言うと補助金取らなくてもいいのではという声も少なからずあります。しかし補助金が年々減額されている事もあります。その点を踏まえ、じゃあ自分達の給料や授業ならカリキュラムを見直し体系化にそって科目のスリム化を行うといった何らかの方策をする必要があります。

 そもそもそのようなことを言える時点でまだ幸せなのかもしれません。地方の大学は、そんな事さえ言う余裕はない大学は少なくないと聞きます。

このタイプ1にある項目は最低限の事であり、さらにどのような特色を出すかを考えないと大学は生き残っていけないと考えています。

 

私立大学は補助金は申請する必要があるのか~私立大学等改革総合支援事業から考える~

教育改革や教育改善を進めていく上で、学内で改革を取組んでもらうよう「補助金を獲るためです!」と言う大学関係者は少なくはないと思います。

 

申請をする為の条件や採点項目として、今まで答申などで記載されている事項が求められていることは以前にも本ブログで触れたことがあります。 

as-daigaku23.hateblo.jp

 

as-daigaku23.hateblo.jp

 

  学内からは「先の見えない大学改革に疲弊した」「そもそも大学は補助金を獲る必要があるのか?」といった意見や疑問を聞きます。

そこで今回は、昨年度私立大学等改革総合支援事業に採択された大学をベースに補助金を申請する必要があるのかを考えてみます。私立大学等改革総合支援事業を取り上げる理由は、本事業は次のように補助金が出るからです。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

 1.私立大学等経常費補助

 (一般補助)
  支援対象校に対し、「教育研究経常費」(教員経費・学生経費)に一定割合(10%程度)を増額。ただし、増額できる額に上限を設ける。

 (特別補助)
  支援対象校に対し、「私立大学等改革総合支援事業調査票」の点数に応じ一定額を増額。

 COCやスーパーグローバル、大学教育再生加速プログラム(AP)は採択されても、補助金はその事業で使用することが前提です。しかし、私立大学等経常費補助は、COC等のように予め計画を申請しているわけではない、言い換えれば使用が制限されてはいない補助金です。

<参考>私立大学等経常費補助金交付要綱:文部科学省

 

ようやく本題ですが、各大学の補助金額はWEB上から見ることができます。

平成25年度私立大学等経常費補助金 学校別交付額一覧

http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h25a1.pdf

平成26年度私立大学等経常費補助金 学校別交付額一覧

http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h26a.pdf

今回はこの数字と、平成26年度私立大学等改革総合支援事業に採択データを合わせました。単純に考えると平成26年度私立大学等改革総合支援事業に採択されていれば平成26年度の経常費補助金は増えていると思えます。

(今回調べた大学は559大学となります。これは公立化や合併等に伴う大学もあり、H25とH26の両方に補助額が記載されている大学のみをした為です。また私立大学等改革総合支援事業のいずれかに採択されている大学は317大学となります。)

簡単ですが、統合したデータをもとに全体の傾向は次の通りです。

○559大学の内、経常費補助金が増えている大学は216大学(38.6%)

○私立大学等改革総合支援事業採択の大学317大学の内、136大学は経常費補助金は増えている(42.9%)=私立大学等改革総合支援事業採択大学の181大学は補助金が減っている。

…採択大学なのに補助金が減っている大学は少なくありません。

もちろん補助金の基準によって、学生数や教員数が減って補助金が減るという事もあるでしょうし全国に大学や教職員が増えたなど要因は様々考えられますが、予想外に補助金が増えている大学は少ないです。

 

ちょっと視点を変えると、私立大学等改革総合支援事業に採択されているのに補助金が減った⇒採択されなかったらもっと経常費補助金が減っているという事ともいえます。

ということは、補助金を増やす為に、私立大学等改革総合支援事業に応募するのではなく、現状維持の為に応募をすると考えたほうが良いかもしれません。

本来であれば使用したデータのJPEGを全て載せようかと思ったのですが、上位大学のみ私立大学等改革総合支援事業に採択された大学一覧のみとさせていただきます。

f:id:as-daigaku23:20150525183326j:plain

  大学が進むべき道や教育改革を補助金で誘導するのは良くないという意見もあるでしょう。しかし、大学に関わる者として組織が存続する事も考える必要があります。職員は中期計画作成や経営にも関わる事が多いかと思いますので、せめて現状維持にはなるように、職員が補助金獲得の為のマネジメントをする必要があるのではないでしょうか。

 

COC+の申請要件及び申請資格から考える大学改革の方向性

文部科学省の補助金について、本ブログで何回も書いており、先日も大学教育再生加速プログラムの申請の厳しさについて記事を書きました。

  

www.daigaku23.com

 

さて、今回は先日公表された平成27年度大学教育再生戦略推進費「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」の公募要領から、申請要件及び申請資格について気になった点についてまとめました。

平成27年度「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」の公募:文部科学省

 

COC+に申請するためには、次の条件をクリアする必要があります。

①申請資格は、所定の項目に該当しないこと

②申請要件を申請時、もしくは平成30年までに全学で満たすこと。

なお、いずれも昨年度のCOCの公募要領には記載されていなかったものであり、今年度から補助金を申請する条件がかなり厳しくなっています。

(言い方を変えれば、申請資格及び申請要件に引っかかる大学は、「退場して結構です」とも暗に言っているのかもしれません)

 

まずは、申請資格についてです。いずれかに該当する大学は申請することすらできません。

①学生募集中の大学

②認証評価で「不適合」の判定を受けている大学

③いずれかの区分の直近の修業年限期間中、連続して規定の収容定員充足率を満たしていない大学

  基準 学部・短大・高等専門学校は70%、大学院(修士)は50%(なお、今年度は修士課程の基準はCOC+には適用しない。(一部省略しています)

⇒①及び②はあまり当てはまる大学はないかと思いますが、③は実はかなりあるのでしょうはないでしょうか。(特に気になるのは、大学院の50%は今年は適用しないとしても、次年度以降は適用する可能性があるという事です。個人的には、大学院のほうが深刻な問題であり、該当する大学は少なくないと思っています。)

 

④私立大学等計上補助金で前年度に不交付・減額の措置を受けている

⑤平成26年度の大学教育再生戦略推進費事業の評価(事後評価及び中間評価)で中止や目的を達成できていないと評価された大学(対象事業例 グローバルCOE等)

⑥設置計画履行状況等調査で「警告」が付されている

⑦設置等の認可の基準を満たしていない等

 

⇒⑤は以前補助金を申請、採択されて事業に着手したけど申請時の目的に達成していないと評価された大学ですね。また先日公表された履行状況報告書の結果で「警告」の大学もダメとの事(今年度は該当の大学はなかったはずです)

 申請資格を見ると、「大学として最低限の基準を満たし、存続できますか」という事が問われていると思います。ただ地方の大学で本事業を国立大学と私立大学が連携して申請しようと計画中に、(特に私立大学は再起をかけている中)私立大学は泣く泣くあきらめないといけない例も少なからずあるのではと推察されます。

 

続いて申請要件です。内容を見ると大学教育再生加速プログラムとほぼ同じ内容になっています。

①全学的に定められた入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)、学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)が各学部(短大、高専にあっては学科)で定める各方針に反映されていること。また、その内容がホームページ等で公表されているとともに、各学部(学科)のカリキュラム編成等に反映されていること。

② 全授業科目において授業計画(シラバス)が作成され、かつその内容として科目の到達目標、授業形態、事前・事後学修の内容、成績評価の方法・基準が示されていること。

③ キャップ制の採用など、全学生を対象として単位の過剰登録を防ぐための取り組みが行われていること(キャップ制を採用している場合は、その上限が適切に設定されていること)。

④ 学部で教育を行う全専任教員を対象として、教育技術向上や認識共有のための FD が実施されていること(各年度中に全専任教員の4分の3以上が参加していること)。

⑤ GPA 制度などの客観的な評価基準を導入し個別の学修指導に活用していること。※短大・高専を除く

⑥ 文部科学省が通知する「大学入学者選抜実施要項」に規定する試験期日等や募集人員の適切な設定(推薦入試の募集人員の割合、2以上の入試方法により入学者選抜を実施する場合における入試方法の区分ごとの募集人員等の明記 等)を遵守していること。※高専を除く

⑦設置計画履行状況等調査の対象となっている大学において、「是正意見」が付されている場合は、当該意見が付されていない状況となっていること。

 ⇒上記について、全学で達成していることが重要な要件ですね。特に教育改革としてやらなければいけない事が多いです。そして気をつけるのは④であると思っています。このブログは大学関係者の方が多いと思いますが、各大学のFDの参加率はどのぐらいなのでしょう?要件では4分の3以上となっていますが、FDは大学設置基準によって努力義務になっています。そこから考えると4分の3以上を達成すればいいかというと疑問です。

申請要件は今まで論議されてきたことをきちんとやっているのか、もしくは数年以内に実施する覚悟を問われています。まああまり高いハードルでもないような気がしますが、申請要件が同じ昨年度の大学教育再生加速プログラムやCOCの申請状況を見ると今年は昨年度のCOCとは申請の傾向は異なるかもしれません。 

 

今後は、申請要件及び申請資格すら満たせない大学は出口はあちらですと言われてしまう時代は近いうちに来るのかもしれませんね。個人としては、このあたりは各自の将来にも関わる内容なので、若手中堅の職員には理解してもらわないとならない部分だなと思っています。

  

 

私立大学等改革総合支援事業H25~H26の採択について(タイプ1・2を中心に)

私立大学に勤務されている教職員で、私立大学等改革総合支援事業の結果で様々な思いがあり、そして関連する補助金等の申請作業等で忙しくされている頃ではないかと思います。

 

さて、今回も私立大学等改革総合支援事業についてです。前回はタイプ1について詳しく見てみました。

平成26年度私立大学等改革総合支援事業タイプ1 設問毎・回答毎から見る傾向について - 大学アドミニストレーターを目指す大学職員のブログ

 

選定状況については、文科省のHPに詳しく載っているので、特にここで言うことはありませんが、少し視点を変えて昨年と今年を比較してみました。

表及びグラフの申請校及び選定校等の数値は、文科省のHPより引用

http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/002/002/1340519.htm

  平成25年度 平成26年度 H25選定
H26選定
申請校数 選定校数 選定率 申請校数 選定校数 選定率
タイプ1(教育の質的転換) 727 255 35% 706 314 44% 185
タイプ2(地域の発展) 540 157 44% 499 155 31% 99

平成25年度はタイプが1~3、平成26年度はタイプが1~4となっている為、タイプ1の教育の質的転換とタイプ2の地域の発展のみを作表しています。

(※私立短大等を含む数値です)

f:id:as-daigaku23:20141102165658j:plain

タイプ1・2とも申請校数は微減となっていますが、タイプ1では採択が若干増えています。

 

続いて、採択校リストをデータに落とし込み、H25にタイプ1あるいはタイプで採択され、H26も同様にタイプ1あるいはタイプ2に採択されている大学数を出してみました。(※タイプ3以降は、H25とH26で異なる為、比較せず)

○平成25年度タイプ1に採択、且つH26にもタイプ1に採択された大学は185大学、平成25年度タイプ2に採択、且つH26にもタイプ2に採択された大学は99大学でした。

○割合にするとタイプ1ではH25にタイプ1に採択された72.5%の大学がH26にも採択されている。タイプ2では63.0%の大学が採択されている計算です。

これは、H25年度の結果やH26年度は説明会から申請要件の基準日まで日数があったことから、様々な改革の取り組みを進めることができた結果ではないかと思います。

 

さらにH25・26ともタイプ1・2に採択されている大学は、53大学あります。

またH26にタイプ2で採択され、COC(H25/H26)にも採択されている私立大学は21大学です。(※COCのH25年度の採択数は17大学(短大含む)、H26年度は17大学(短大含む))COCは2年間で私立大学等は30大学以上採択されています(国立大学の採択が多いですが)

個人としては、COCに採択される大学であればタイプ2の要件はだいぶ満たせると思うのですが、寧ろ地域に志向する大学としてCOCに採択されているので、タイプ2は取れなければならないといえると思います。

 

各大学がいつ何の補助金に採択されているかは、データの統合中ですが、先日結果が出たもののみ今回記事にしました。データはもう少し精査が必要ですが、今後記事にしていきたいと思っています。