昨日、出勤したら机の上にBetween6-7月月号 2015 No.262が置いてあり、特集が「動き出す入試改革~”多面的評価”の第一歩でした。
内容については、WEBにも直にアップされるので紹介はしませんが大枠をつかみ、追手門学院をはじめとした事例も紹介されていますので大学経営、企画担当、アドミッション(募集・入試)、IR担当者は必読すべき内容かと思います。
さて、前々回に私立大学等改革総合支援事業について取り上げました。
このタイプ1では新しい設問として次が加えられています。
学力を構成する3つの要素を踏まえた多面的・総合的に評価する入学者選抜を実施しているか(新設)
詳細としては次の3つです。
ア 多面的・総合的な入学者選抜を実施しているか
イ アドミッションオフィスの整備・強化
ウ 入学者の追跡調査等による選抜方法の妥当性の検証
アやイについては、根拠資料が入試要項や組織図が例として挙げられていますが、ウについてはどのような事をやればいいのかが判断が難しい所ではないのでしょうか。
そもそも選抜方法の妥当性の検証とは何かですが、入学者選抜は3つのポリシーの内のアドミッションポリシー(AP)にそって行われています。
図にするとこんなイメージですね。
アドミッションポリシーは各大学で公表されているかと思いますが、おそらくアドミッションポリシーでは学力や知識だけの記載だけではないかと思います。
アドミッションポリシーで検索すると上位に出てくる日本大学法学部のアドミッションポリシーを見てみましょう。
日本大学法学部が求める人材は以下の通りである。
高等学校などの教育課程において,充分な学力と知識及び判断力を身につけた人。法律学・政治学・経済学・新聞学・専門的な学びのなかから,自らの視点を習得し,社会の問題点を発見するとともにその解決策を見出す努力を惜しまない人。高度な倫理観,責任感を持ち,社会的存在としての自己を客観的に見ることのできる人。
①充分な学力と知識、②判断力、③社会の問題の発見と解決のための努力、④高度な倫理観や責任感、⑤自己を客観的に見る
大きくはこのような事が挙げられているかと思います。これらの事を踏まえ入学者選抜が行われているという理解ができます。
つまり、アドミッションポリシーの通りに入試が行われている事を前提に、ポリシーに記載している人材を入学できているかどうかを検証する必要があるという事です。
その為の例として、私立大学等改革総合支援事業の資料には入学後の学生の成績や留年・中退率、卒業後の進路等の調査が挙げられています。
ここからは、まだ私自身も出来ていない部分ではありますが、以前、入試(選抜方法)区分ごとにGPAや中退率などの調査をした事があります。入試によって、成績や中退は確かに差が見られるのですが、多変量解析では入試区分は成績に与える影響は学部によって大きく差があるものでした。また理系と文系でも入試(選抜方法)区分ごとの成績の傾向は異なりました。
しかしこの結果だけでは妥当性の検証ができるものかと言われると懐疑的です(補助金を貰うためのエビデンスであれば、もう少し拡大すればよいかもしれません)
私自身としては成績のみでは、例えば上記の例のアドミッションポリシーの検証はできないかと考えています。一つの指標だけではなく、成績・ポートフォリオの内容・リテンション・学修行動調査・卒業後の調査やディプロマポリシーを達成したかのアセスメントの結果など、複合的に組み合わせないと検証は難しいかと考えています。
ただ複合的な指標を用いての検証は、アドミッションオフィス単体ではかなり難しいかと思われます。近年、各大学でIR室やIR推進室が出来ていますが、(学修行動・学生生活の実態)調査等や各種データを収集する機能がIR室にあるならば、積極的に連携し活用する必要があるのではないでしょうか。(IR室になくとも機能を持った企画の部署や高等教育センターなども考えられます)
ただふと思うのは、妥当性の検証をIR室に丸投げするという事が起こりうるかもしれません。IR室の役割として、「データの集約や分析、報告等は行うが、アドミッションオフィスできちんと妥当性を検証する」という事を明文化しておかないと補助金獲得の為の証拠作りで終わってしまいそうです。そしてIR室の重要な役割として、アドミッションオフィスにデータの読み方や検証の方法の支援をする必要があると考えています。データそのものだけではなく、人への支援も含めたFDやSDも担う必要があるという事ですね。
その前にIRの方としても、学内の調査をどのようにマネジメントするか(調査が多く・重複しないように、入学者選抜も含めての学修行動調査の構築)、ポートフォリオとIRをどのように結びつけるか、学内の様々なログをどのように活用するか等も検討する必要がありそうです。