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私立大学は補助金は申請する必要があるのか~私立大学等改革総合支援事業から考える~

教育改革や教育改善を進めていく上で、学内で改革を取組んでもらうよう「補助金を獲るためです!」と言う大学関係者は少なくはないと思います。

 

申請をする為の条件や採点項目として、今まで答申などで記載されている事項が求められていることは以前にも本ブログで触れたことがあります。 

as-daigaku23.hateblo.jp

 

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  学内からは「先の見えない大学改革に疲弊した」「そもそも大学は補助金を獲る必要があるのか?」といった意見や疑問を聞きます。

そこで今回は、昨年度私立大学等改革総合支援事業に採択された大学をベースに補助金を申請する必要があるのかを考えてみます。私立大学等改革総合支援事業を取り上げる理由は、本事業は次のように補助金が出るからです。

私立大学等改革総合支援事業:文部科学省

 1.私立大学等経常費補助

 (一般補助)
  支援対象校に対し、「教育研究経常費」(教員経費・学生経費)に一定割合(10%程度)を増額。ただし、増額できる額に上限を設ける。

 (特別補助)
  支援対象校に対し、「私立大学等改革総合支援事業調査票」の点数に応じ一定額を増額。

 COCやスーパーグローバル、大学教育再生加速プログラム(AP)は採択されても、補助金はその事業で使用することが前提です。しかし、私立大学等経常費補助は、COC等のように予め計画を申請しているわけではない、言い換えれば使用が制限されてはいない補助金です。

<参考>私立大学等経常費補助金交付要綱:文部科学省

 

ようやく本題ですが、各大学の補助金額はWEB上から見ることができます。

平成25年度私立大学等経常費補助金 学校別交付額一覧

http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h25a1.pdf

平成26年度私立大学等経常費補助金 学校別交付額一覧

http://www.shigaku.go.jp/files/s_hojo_h26a.pdf

今回はこの数字と、平成26年度私立大学等改革総合支援事業に採択データを合わせました。単純に考えると平成26年度私立大学等改革総合支援事業に採択されていれば平成26年度の経常費補助金は増えていると思えます。

(今回調べた大学は559大学となります。これは公立化や合併等に伴う大学もあり、H25とH26の両方に補助額が記載されている大学のみをした為です。また私立大学等改革総合支援事業のいずれかに採択されている大学は317大学となります。)

簡単ですが、統合したデータをもとに全体の傾向は次の通りです。

○559大学の内、経常費補助金が増えている大学は216大学(38.6%)

○私立大学等改革総合支援事業採択の大学317大学の内、136大学は経常費補助金は増えている(42.9%)=私立大学等改革総合支援事業採択大学の181大学は補助金が減っている。

…採択大学なのに補助金が減っている大学は少なくありません。

もちろん補助金の基準によって、学生数や教員数が減って補助金が減るという事もあるでしょうし全国に大学や教職員が増えたなど要因は様々考えられますが、予想外に補助金が増えている大学は少ないです。

 

ちょっと視点を変えると、私立大学等改革総合支援事業に採択されているのに補助金が減った⇒採択されなかったらもっと経常費補助金が減っているという事ともいえます。

ということは、補助金を増やす為に、私立大学等改革総合支援事業に応募するのではなく、現状維持の為に応募をすると考えたほうが良いかもしれません。

本来であれば使用したデータのJPEGを全て載せようかと思ったのですが、上位大学のみ私立大学等改革総合支援事業に採択された大学一覧のみとさせていただきます。

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  大学が進むべき道や教育改革を補助金で誘導するのは良くないという意見もあるでしょう。しかし、大学に関わる者として組織が存続する事も考える必要があります。職員は中期計画作成や経営にも関わる事が多いかと思いますので、せめて現状維持にはなるように、職員が補助金獲得の為のマネジメントをする必要があるのではないでしょうか。