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参加録 大学職員の専門性開発ーその現状と課題ー

   東北大学で開催された教育関係共同利用拠点提供プログラム 大学人材開発論の「大学職員の専門性開発ーその現状と課題ー」に参加してきました。

講師は、広島大学 高等教育研究開発センターの大場淳先生です。
 
なお、メモは全ての講演内容を記載するのではなく、重要と思った箇所をまとめております。
 
1・大学職員の現状
・平成27年度以降の大学職員(正規)は233,260人(内、医療系は半分程度)
・大学数や学生数が増えたことにより、職員数は経年で比較すると増えているが、技術系は減っている。
・設置者別では、私立大学増加に比例して職員数は増えている。一方、国立大学は法人化以降に職員は増えている(医療系と事務系が増えており、医療系は診療報酬の関係があるのではないか。)
   ⇨事務系が増えている理由として、法人化以後の大学運営の専門職能集団があるのではないか。
専門的職員の配置状況(昨年度行われた専門的職員の活用の実態把握に関する調査)は、図書・就職やキャリア形成・ITなどが多いが全ての大学に整備されているわけではない。
 
2・専門職に関するこれまでの検討
・戦後の学生支援改革から、student personal serviceから、①教員とは別の特殊な教育職、②厚生補導業務に専任される教授等の一種とする案が示され、②が適当であるとされた。
・昭和62年の臨教審第三次答申では、「大学の職員はある意味ではすべて専門職」と示されている。
・平成17年中教審答申では、様々なタイプの職員が採用された(広告代理店・リクルート・銀行など)
・平成20年学士課程答申や平成26年ガバナンス改革の推進についてでは、いくつかの専門職員例示がされている。
<参考>
大規模大学では、専門機能を担うセンターが設置されている。(例えば、大学教育センターや学生支援センターなど、ただ国立大学の場合は教員が担当している場合は多い。理由として職員だと公務員試験があり、教員の身分のほうが都合が良かった
・他の国でも専門性のある人を教員として雇う例もある。
 
3・中教審大学分科会大学教育部会での議論と省令
・近年、大学改革の中で職員改革が議論されている。
・平成26年の大学教育部会(第31回)では、想定される職種・領域が紹介されている。
・平成27年6月8日の「大学運営の一層の改善・充実のための方策について」では、大学の自律性にまかせるが、職務等を明確にし独立性や活動の保証を行うことが重要などと示されている。
<参考>
専門的職員の活用の実態把握に関する調査では、各大学は運営においては重要と考えるものについては一定の傾向はうかがえる、専門的職員の配置は多様で求める資格処遇は確立されていない。(設置者によって、傾向も異なる)
課題として専門的職員に特化した評価はどうするか
・省令の改正(平成28年3月31日)大学設置基準によるSDの義務化
・米国における専門職については、最初は教員が兼務してきたが、教育の拡大とともに19世紀後半から20世紀前半に様々な職種の管理職員が置かれる。ここ数十年では教育外専門職員が増えている。分類は、管理運営・学事・渉外・学生業務が細かく分類化されている。
  ⇨専門性を支える仕組みとして、労働市場や流動性・専門職団体・人事制度・キャリア開発プログラム・職員向けの大学院教育が挙げられる。
  ⇨課題は専門職員は高コストであること(学費に反映され学費が高くなる)、大学の組織文化が変わる(管理運営職が入ることで教員同士の同僚性から、価値観の対立など。)
 
4・大学職員の専門性を巡る諸論点
・専門性の向上の在り方として、職員個人が主体的に行うことを原則として大学が支援を行う。(事務系職員をどう専門性を高めるのかといった議論は不可避である)
・専門職とはアイデンティティが専門にある(大学にはない)
・世界中では教員・職員の境界の不明瞭化が話題になっている。
   ⇨日本でも同じような議論がされている(例、行政管理職員など)
・制度整備にあたって、①求められる専門性とは何か、②養成(どこで養成するのか)と資格、③処遇とキャリアパス、④外部人材の登用の在り方が論点として挙げられる。
   ⇨①を明確にしないと、他の議論もできない。②は大学院をどのように寄与できるか、専門職大学院が大学職員に適応できるか。
 
5・まとめ
・専門的機能の確保は必要であるが、専門職化は容易ではない。
・複雑化する大学運営で、成果をもたらす要因は多様である。
・ガバナンス改革の中で職員の専門性向上を併せて検討するべきである。
・専門職員と教職員間の信頼関係とどう構築するか。
 
6・質疑応答(一つのみ紹介)
Q:専門職化しなければならない場合は、OJTだけでは専門性と獲得できず、どこで専門性を獲得すればいいか、専門性獲得は業務になるのか・ならないのか。(国立大学では研修は業務ではないとされている事もある)
A:研修そのものは自分で管理する必要がある。専門性は自分に帰着するということは、自分で管理をしないといけない。専門家は学内だけではなく、学外の人との関係も重要。
 
 
  個人の感想ですが大学職員向けの大学院としては東京大学や桜美林大学、また関連する大学院もあります。しかし名城大学では大学・学校づくり研究科は募集停止をしておりますし、桜美林大学の大学院も入試状況を見ると、苦しいだろうなということが伺えます。個人経験ですが、修士号を取るという事は道楽と思われている一面もあるのかなと感じています。
 
  処遇とキャリアパスについては、例えばIRで言うと京都大学のASAGAOメーリングリストで見る限り、IRの専門的職員の募集は任期付&給与も決して高いとはいえません(給与について言えば、私大職員だと自分の専門性の仕事といっても、任期がついて、その給与額だと応募さえしようとは思えない待遇もありました)先日、会った人には今の(私学の)現状だと、専門性で働こうとすると給与は下がるからと話題にもなりましたし、ここは大きな問題かと感じています。ようは職員から専門的な道へ進むにはどのような魅力があるのかが重要でしょうか(ここで、やり甲斐がありますとか採用側が言いだしたら、ブラック企業の採用文句になってきますね)
 
最後に疑問に思ったこととして、設置形態によって、大学職員の自己投資に関する価値観や考えは違うのでしょうかね。(私は、自分のキャリアを考える上で自己投資は必須と思っています。無論、仕事に関係する研修は上司に掛け合って旅費は出してもらいますが、自分の専門に関するものは自費となります。)