令和6年に中央教育審議会の大学分科会に「高等教育の在り方に関する特別部会」が置かれ、下記を検討することとなっております。
- 2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿
- 今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の在り方
- 国公私の設置者別等の役割分担の在り方
- 高等教育の改革を支える支援方策の在り方
<参考>大学分科会第176回資料「【資料2-1】第12期大学分科会における部会等の設置について 」
この特別部会では「急激な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方」が検討されており、第6回では中間まとめが公表されています。ただ、まだポンチ絵などもないため、こちらでメモとして要点のみまとめています。
なお、P1からP12までの高等教育を取り巻く状況は今までの政策や状況をまとめたものであるため、本記事からは除外しており、「今後の高等教育の目指すべき姿」「今後の高等教育の政策の方向性」を取り扱います。
また赤枠の中は個人的なメモとなっています。
今後の高等教育の目指すべき姿
高等教育政策の目的
・政策目的→「質(Quality)」「規模(Size)」「アクセス(Access)」が必要
- 質とは「教育研究の質の向上を図ることであり、学生一人ひとりの能力を最大限高めることが必要」
- 規模とは「社会的に適切な規模の高等教育機会の供給」
- アクセスとは「地理的又は社会経済的な観点からの高等教育の機会均等の実現を図ること」
・上記3つは調和・トレードオフもあるので、価値の選択と調整が必要。
・「質」の高度化や「アクセス」確保に留意しつつ、急速な少子化等を踏まえた高等教育全体の「規模」の適正化を図ることが必要である
重視すべき観点
①文理横断・文理融合教育の推進
・ユニバーサル段階における大学で、時代に担う人材には基礎的で普遍的な知識・理解、汎用的な技能等が中核である。例えば、21世紀型市民、学士力、2040年度に必要とされる人材(数理・データサイエンス・AIなどを含む)
・Society5.0において必要される人材の育成とここに応じた能力や個性を伸ばし、備える。
・専門知を持ち寄って多様な他者と対話し、交流・融合・連携を進めることにより、知の活力を生み出すことのできる人材が求められる。
・リベラル・アーツ教育を中核に据えた学位プログラムや文理横断・文理融合教育を通じた課題解決力等の涵養に重点を置いた学位プログラム等により、文理融合・文理横断教育に取組むことが重要
②成長分野を支える人材の育成
・デジタル化と脱炭素が潮流であり、高度専門人材が不可欠
・デジタル・半導体、グリーン等の成長分野への再編や文理融合教育の推進
・社会の変化に応じて、高等教育機関が柔軟に対応できることが重要
③流動性に支えられた多様性の確保
・転入学や編入学などの各高等教育機関の間の接続を含めた流動性を高め、学生がより多様なキャリアパスを実現していくことも必要
・留学生モビリティを一層推進し、我が国の高等教育の国際通用性・競争力を向上させる必要
・リカレント教育・リスキリングも一層求められることから、社会人経験を経た者の学び直しを促進することも必要
④国際競争の中での研究力の強化
・新たな知を社会的・経済的価値の創造に結び付け、さらなる人材育成と持続的なイノベーションの創出を進めていくためにも、大学の研究力を引き上げていくことが重要。
⑤学生への経済的支援の充実
・高等教育の受益者は学生等本人であると同時に、我が国の将来の社会、経済、文化の発展を支える人材育成という観点からは、社会全体が受益者である。
・高等教育での修学を経て、経済的に安定した生活を送ることができる者が増加することにより、将来の生活保護費や医療費、失業給付等の抑制が見込まれるといった社会全体に対する経済的な効果も期待できる。
・上記を踏まえ、貸与型奨学金を通じた支援や、奨学金返還の負担軽減、高等教育の修学支援新制度の導入・拡充、地方公共団体や企業による奨学金の返還支援などの取組を実施
⑥初等中等教育との接続強化
・「大学入試のあり方に関する検討会議提言」(令和3(2021)年7月)等を踏まえ、初等中等教育段階における多様な学びを踏まえた高等教育機関との接続の推進を図ることが重要
・1人1台端末、探究学習など
⑦高等教育における社会との接続及び連携の強化
・高等教育機関と企業等の連携(学修成果や学業への取組状況の適切な評価)
・高等教育機関と企業等との接続及び産学連携を、教育及び研究の両面でより一層強化していくべき
⑧地域との連携
・「地域の中核となる高等教育機関」の実現
・新産業の創出や産業構造の転換に貢献する地方大学等の魅力向上や高等教育機関を核とする地域活性化を図ることが重要
今後の高等教育の政策の方向性
学修者本位の教育の更なる推進
<検討の方向性>
・ 教育内容・方法の改善
- 文理横断・文理融合教育や実践的な教育研究の推進
- 教育の密度を確保・充実するための、クォーター制の導入促進等を通じた同時に 履修する授業科目数の絞り込み
- ティーチングアシスタント(TA)の組織的トレーニングの仕組みの導入促進
- 厳格な成績評価や卒業認定など「出口における質保証」の促進
・ 学生の学修成果や大学等の教育成果(卒業後の活躍状況を含む)の可視化とこれに基づく教育改善の促進
- 卒業後の進路や学生等の満足度等を含めた各高等教育機関の自律的な情報発信
- 全国学生調査への参加率の向上や各高等教育機関におけるIR等での活用促進
・ 各高等教育機関や諸外国の状況も踏まえた、情報公表の更なる促進
- 学修成果や教育成果に関する情報公表の更なる推進
- 利用者にとっての利便性向上を図るための、高等教育機関間の比較が可能となる情報の可視化
- 認証評価機関による評価情報の一覧性の向上<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 高度な生成AIの普及や遠隔教育の急速な普及等も踏まえた教育の質の充実のための方策
② レイトスペシャライゼーション等の柔軟な教育課程編制を促進する上で、現在の学部学科単位による定員管理制度等における課題・解決策
③ 情報公表の在り方や必要な配慮
④ 認証評価における、機関毎の評価項目や評価基準等の多様性と、情報の受け手側の利便性とのバランスの在り方
・TAの研修については、個別が多く、組織的かどうかが難しい(小規模・中規模大学だと研修実施できる組織がない、そもそも大学院生は社会人や留学生が多く、TAなんてという実態もあるように思う)
・CAP制度の厳格化、日本で一番厳しいのは玉川大学だと思うが、資格免許等の関係や色んな事情を勘案するとどこまでできるか(認証評価だと50単位はダメという場合も)
・学修成果の可視化は、包括的に実施できるようにしないといけないが、学修成果の可視化は、人的リソースやお金を大変必要とする。
・全国学生調査や高等教育機関間の比較と官製大学ランキング、国側がそうでなくとも、どこかが面白おかしく取り上げるのは止められない
②多様な価値観が集まるキャンパスの実現
<検討の方向性>
・ 初等中等教育段階の学びの変化や多様な学生に対応できる、多面的・総合的な入試の推進
・ 転編入学等の柔軟化
- 単位互換・科目等履修・履修証明制度、単位累積加算による学位授与制度の活用促進
- 高等教育機関間の連携による転編入学促進
- 転編入学生を受け入れる際の定員の扱いの柔軟化
・ 留学生の受入れ・日本人学生の派遣の推進- 休学や留年をせずに留学しやすい環境の整備
- 早期からのリクルートや、日本の強みである学問分野のアピール、卒業後の定着に関する取組など、戦略的な広報・情報発信の強化
- 所在する自治体のニーズを踏まえた留学生の受入れ推進
- 留学生の受入れ促進を踏まえた、入試の実施
- 外国語による授業の増加に向けた取組の推進
- 留学生を受け入れる企業と大学等の連携強化
・ 社会人の受入れ推進
- 科目等履修・履修証明制度の活用促進
- 社会人やパートタイム等で学生以外の者を受け入れる場合に当たっての、教育環境の質の確保のための学内資源の管理の見直し
- 高等教育機関と産業界との組織レベルでの連携の推進
<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 多様な価値観が集まるキャンパスの実現に向けた入学者選抜の多面的・総合的評価の促進方策
② 転編入学等を柔軟にしていく上での課題・解決策
③ 留学生の受入れ・日本人学生の派遣促進のための課題・解決策
- 留学生の選抜方法・手続き
- 歩留まりの読みが難しい留学生の定員管理方策
- 留学生の増加に対応するための日本人学生との交流も含めた生活・学業支援体制整備
- 大学間連携強化のための方策
- その他留学生受入れ促進方策
④ 社会人の受入れ促進のための課題・解決策
- 社会人やパートタイム等で学生以外の者を相当数受け入れる場合における具体的な教育環境の質の担保方策
- その他社会人受入れ促進方策
⑤ その他の具体的方策
・編入学における単位認定の再整理
・留学生の受入れをするのはいいが、場合によってはコスト増となる可能性もある。
・パートタイム学生が今後推進される可能性も含めた教学(特に教務)との連携
③大学院教育の改革
<検討の方向性>
・ 質の高い大学院教育の推進
- 大学院教育の質保証や円滑な学位授与などの教育改善の取組推進
- 世界トップ水準の大学院教育を行う拠点形成
・ 修士号・博士号取得者数の増加に向けた取組推進
- 初等中等教育段階での探究学習やキャリア教育の充実、学部等学生向けのキャリア支援など早期からの取組によるモチベーションの向上
- ロールモデルのPR等を通じた博士人材として社会で活躍する魅力の発信
- より実践的で多様なキャリアにつながるインターンシップの推進
- 大学等における組織的なキャリアパスの支援の取組推進
- 国や地方公共団体等の公的機関での活躍促進
- ポストドクター・若手研究者の処遇向上やキャリアパス支援
- 博士課程の学生に対する生活費相当額の支援や授業料減免の充実
- オンライン授業の特性等を活かした社会人の受入れ促進
・ 学士課程から博士課程までの教育課程の体系化と連続性の確保
- 多様な学修ニーズに対応できるような履修体系(優秀な学生が学士・修士課程を5年間で履修するモデル等)を取り入れる取組の促進
- 修士・博士課程の5年一貫学位プログラムの構築促進- 実務経験が豊富な社会人学生が短期で博士課程を修了できるようにするなど、個々人の能力と希望に応じた柔軟な体制の構築促進
・ 多様な学生及び教員の受入れ促進
- 大学院教育研究の国際化や優秀な留学生の受入れ促進、学生等の海外研究活動・留学機会の充実
- 大学と産業界との人材循環の促進、産業界のニーズを踏まえた社会人への大学院教育の推進
- アカデミックインブリーディングの抑制
<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 博士課程への進学者増を図る上での課題・解決策
② 優秀な学生に対する早期修了の積極的適用の方策((教育研究の質確保が前提)
③ 産学連携や国際的な大学間連携をより促進するための方策
④ 博士課程修了者のアカデミア以外の多様なキャリアパス構築の方策
⑤ その他の具体的方策
・研究大学や大規模大学でない場合は大学として大学院にどこまで資源を投入できるか
高等教育全体の適正な「規模」の確保
①18歳で入学する学生以外の受入れ拡大
<検討の方向性>
・ 多様な者を受け入れるための「学生」概念の見直し
・ 留学生や社会人の受入れの更なる促進【再掲】
・ 遠隔教育やオンライン授業等の進展を踏まえた取組の推進
<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 科目等履修生などの学生以外の者を含め、大学が受け入れる者の取扱い
② 選抜性の高い機関において、これまで各機関が受け入れてきた学生とは異なる層まで受け入れることの課題・解決策
③ 留学生・社会人の受入れ促進のための課題・解決策【再掲】
④ 高等教育機関のデジタライゼーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)による変化、遠隔教育の拡大等の影響(通信教育課程も含む)
⑤ その他の具体的方策
・遠隔授業は、遠隔のほうが効果がある場合、実施後の点検・評価も必要(双方向性の担保やオンデマンドの場合は動画の質なども)
・教育DXの推進の検討
②高等教育全体の適正な規模の確保
<検討の方向性>
・ 意欲的な教育・経営改革を行うための支援
- 教育研究や財務・経営状況等の客観的な分析を踏まえた、主体的な経営判断・経営基盤の確立- 経営基盤の確立の観点からの設置認可審査の厳格化
- 改革やチャレンジに取り組む大学への支援強化
・ 連携・再編・統合の支援
- 複数大学等の連携による機能の共同化・高度化への支援
- 各法人・大学が共同利用できる共通的なプラットフォームの構築
- DX等の活用を通じた、連携・統合等を希望する学校法人への経営相談や、客観的な経営診断を踏まえた「アウトリーチ型支援」の充実
・ 縮小・撤退への支援
- 定員未充足の状況が継続する大学の定員規模適正化の促進
- 定員未充足や財務状況が厳しい大学等を統合した場合のペナルティ緩和
- 学生募集停止を行った学部等の継続的な教育研究活動の支援
- 早期の経営判断を促す指導の強化
- 学校法人が解散する場合等における学生保護の仕組みの構築66(や残余財産の帰属の要件緩和
<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 設置認可に係る法人運営面の審査の厳格化のための方策
② 大学の再編・統合に向けてソフトランディングができる仕組みの在り方
③ 収容定員の引下げに対する大学等の忌避感を緩和するための方策
④ 定員未充足や財務状況が厳しい大学等を統合した場合の特例措置の在り方⑤ 学部等の開設後に定員未充足や不採算の状態が継続する場合、規模縮小や撤退に係る指導の強化の在り方
⑥ その他の具体的方策
・大学連携が本当に経営改善になるのか?
・大学合併、吸収をした場合の手順。吸収された側の雇用は保証か(特任再雇用で1年でバイバイ、残ったのは定員枠と校地校舎だけという良くないシナリオをつくるところもあるのではないか)
・今年は新設はかなり厳しいという噂(特に定員増があるもの)
地域における高等教育への「アクセス」確保
①地理的観点からのアクセス確保
<検討の方向性>
・ 複数の高等教育機関や地方公共団体、産業界などの関係者が地域の人材育成の在り方について議論を行う場の構築
- 地域における志願動向や人材需要の情報収集・整理
- 地域の実態等を踏まえ、各高等教育機関の連携・再編等の計画策定や、各計画の実行を支援するための仕組みの構築
(
・ 各高等教育機関や地域において検討を促すための仕組みの整備
- 国全体や地域ごとのデータ整備
- コーディネーターとなる人材の育成・配置
- 協議会に参画することが見込まれる地方公共団体における地域における大学振興に関する担当部署の整備<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 確保すべき地理的アクセスの範囲、各地域において求められる学問分野や教育水準についての高等教育の機会の確保の具体的な在り方
② 議論を行う地域の範囲の在り方
③ 地域に必要な高等教育機関へのアクセス確保のための支援の在り方
④ その他の具体的方策
・地理的な情報は、県単位ではなく、大学がある路線沿いや地域などを区切ってやる必要がある。(公開情報からある程度はできる)
②社会経済的観点からのアクセス確保
<検討の方向性>
・ 社会経済的観点からのアクセス確保と高等教育機関の質の維持向上との両立性の確保
・ 経済的負担軽減に関する早期からの幅広い情報提供の促進
・ 各学校段階を通じた体系的なキャリア教育や進路指導の充実
・ 幼少期からの保護者や学校、社会による学びや性別役割分担にかかるジェンダーバイアスの排除に係る社会的機運の醸成<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 確保すべき社会経済的アクセスの範囲の在り方
② 奨学金等の支援を必要とする学生等への効果的な情報提供の在り方
③ その他の具体的方策
今までを踏まえて、今後検討を深めていく必要がある論点
(1)設置者別・機関別の役割分担や連携の在り方
<検討の方向性>
・ 各設置者の特性を踏まえた役割・機能の強化・見直し
・ 専門職大学、短期大学、高等専門学校、専門学校などの各機関の特性を踏まえた役割・機能の強化・見直し
<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 設置者別・機関別の役割分担の在り方や果たすべき役割・機能
② 上記を実現するための具体的方策
・設置者の特性という大枠のくくりと今までの機能分化や各種補助金との関係
(2)高等教育改革を支える支援方策の在り方
<検討の方向性>
・ 安定的で明確な支援枠組みを構築するため、授業料を含めた教育費負担や機関への支援、社会からの投資の拡大の在り方の検討
<深掘して御議論いただくポイントの例>
① 家計負担の軽減とのバランスの観点も踏まえた、質の高い高等教育のための授業料、公費支援、寄附金等の在り方
② 社会からの投資の拡大など多様な資金調達を通じた経営基盤の確立・強化の方策
③ 各高等教育機関が共同利用できる共通的なプラットフォームの在り方
④ 高等教育機関に係る情報の共通化等、高等教育機関の事務効率化等を図るための具体的方策
⑤ その他の具体的方策
・事務効率化というなら、文科省からの様々な調査を簡略化してほしい。何でも調査調査は現場が疲弊する