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教職課程の実地調査 各大学の指摘事項のまとめ(R3~R5)

ほとんどの大学にあると思われる教職課程ですが、実地調査が毎年行われ、その情報が公開されています。

www.mext.go.jp

本学もそろそろ実地調査がきそうだと毎年おびえています。そこで過去3年の教職課程の実地調査の各大学の指摘事項を主観でまとめたものを下記として残しておきます。

また重複などは削除し、全てが網羅しているわけではないこと、太字は個人的に大事だなと思った箇所です。

教職課程の実施・指導体制(全学組織等)

評価できる事項

自己点検・評価を丁寧に実施している

・学校体験活動が授業科目となるよう検討するなど、中央教育審議会の答申に対応しようとしている

・大学として地域の課題に応える人材養成をうたっており、特に防災教育・震災復興に対応した科目が教職課程にも配置されている

努力・改善・検討

・教育活動の目標の明確化・具体化のために、全学的な組織、教職課程や教員組織の充実

教育課程、履修方法及びシラバスの状況、教員組織

評価できる事項

・大学が独自に設定する科目で、現代的な教育課題について学生に指導している

・少人数クラスで効果的な授業を実施している

努力・改善・検討

カリキュラム

・カリキュラムの見直しについて、学生のニーズを踏まえつつも、大学としてのカリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシーに沿ったものとなるよう検討すること。

科目

・保育内容の指導法と領域に関する専門的事項は、科目の目的や扱う内容が異なるので、それぞれに応じて、生徒の知識が深まり、技術を獲得できるように授業内容や指導方法の改善すること。

・学生が卒業後に教育現場で対応できるよう、アクティブラーニングを積極的に取り入れた講義になるよう改善を検討すること。

「教育の基礎的理解に関する科目等」及び「各教科の指導法(情報通信技術の活用を含む。)」の授業科目との連携を図り、より一層の充実に努めていただきたい。

一部の科目で教職課程コアカリキュラムを満たしているか判然としないものがある

・授業科目名と授業内容があっていない

シラバス

・()内の内容が確認出来ない(例えば(~~の対応を含む)で~~がシラバスにはない

・シラバスについて、コアカリキュラムの各目標に対応しているようであるが、そのことが明確となるよう、記載内容や記載方法を見直すこと。

シラバスや授業について担当教員に任せるのではなく、全学的なチェック体制を確立することが望ましい。

・教育職員免許法施行規則で必要な単位数を定めている教育の基礎的理解に関する科目等については、規定する単位数が満たされていることを明確にすることが必要であるため、シラバスの記載について検討を行うこと。

研究・研究業績

・教員組織に関連し、学内の紀要について確認したところ、執筆者によって論文の質に差があることが見受けられたため、学内の査読体制の充実や編集方針等を検討することが望ましい。

教員が継続して研究業績を積んでいるかを確認する仕組みの構築をすること

・「教育の基礎的理解に関する科目等」及び「各教科の指導法(情報通信技術の活用を含む。)」の科目を担当する実務家教員のうち、担当授業科目に関する研究業績が充分にあるか判然としない教員が一部見られた。

・大学教員の研究と学生への指導は両輪の関係であるため、大学教員が研究に従事できるよう学内の整備について引き続き検討すること。

授業科目を指導する際に期待される専門的知識が、研究業績等を踏まえると充分であるか判然としない教員が散見された。採用後も研究業績を積むよう、大学として支援していただきたい

・大学のホームページで公表する教員の業績が外部の研究者データベースサービスのリンクになっており、公表されていることは確認できたものの、大学が責任をもって教員の業績等を把握しているか判然としなかった←確認したところリサーチマップ

FD

・保育の内容について、最新の情報が学内で学べるようFDの充実を図ること。

中教審の動きや教育の最新の情報等について定期的に学内で共有できるよう、FDの内容の充実を図ること。

・FDやSDを行う際は自己点検・評価を踏まえた内容とすること。

組織

・教職教育センターについて、教職課程の全学的なマネジメントだけでなく、各学部・学科の教職課程の質を確保及び向上できるよう、各学部・学科との有機的な連携及び学内での位置づけを検討すること。

・実務家教員を多く採用していることは有効と思われるが、一方で、授業科目の特性に応じて研究者教員とのバランスも重要なため、計画的な人事配置に努めてもらいたい。

教育実習の取組状況

評価できる事項

・理論と実践の往還の実現のため、教育実習以外でも学生全員が学校現場で実習している

・「教育実習」の事前指導において、指導案の作成や模擬授業の実施の指導を丁寧に行っている。

・必修の学校体験活動についても学生の理解が深められるように丁寧に対応している

努力・改善・検討

・遠隔地の学校や学生の母校における実習ではなく、可能な限り大学が所在する近隣の学校において実習校を確保することが望ましい。

・教育実習中の学生のトラブル対応やサポート体制について、大学としてより組織的な対応ができるよう検討いただきたい

・教育実習における大学としての教育目標を明確にし、目標の到達度がより的確に評価できるものとなるような教育実習の評価表や評価方法の工夫を期待する。

・大学がある地域外での実習について、直接指導を行えるような体制について検討いただきたい。

学生への教職指導の取組状況及び体制

評価できる事項

・学生の基礎学力向上に向けて、1年生から4年間を通じ丁寧に教職指導を行っている

・教職に就いた卒業生のプレゼンテーションを取り入れるなど、学生のモチベーションを高める工夫が見られた

教職教育センターを中心とした、学生の教職志向性を高め維持する取り組みについて評価できる。

・教員採用試験に向けた面接や論文の指導だけでなく、通常の授業科目における相談やサポートなど4年間を通じて学生の支援を行っている。

・ピアノや模擬授業の練習ができるよう、音楽室や理科室を放課後に開放することで、学生の自己研鑽を促している

・教員免許取得者及び教員就職者が徐々に増加しており、学生が教職科目を履修しやすいよう時間割の配置を見直す等の取組が見られる。

・配慮が必要な学生が円滑に実習を実施できるよう丁寧に対応している

・入学試験に教職に関する小論文を課し、教員志望度の高い学生を入学させる取組や、教員就職特任指導員を活用した手厚い指導体制等が学生に指導ができるよう実務家教員にもICTに関する指導を行っている点は評価できる。

・教育実習先についての生徒の記録を蓄積しており、これから実習に行く生徒が自由に閲覧できるようにするなど、工夫が見られる。

努力・改善・検討

・細かく教職指導ができるよう履修カルテのデータ化について検討いただきたい

・通信課程の教職課程を開設している大学として、教職の履修者への指導や支援体制について、進路の希望や卒業後の状況の把握を含め、より充実した取組を検討していただきたい。

・教員養成を主たる目的とする学科等であることから、基本的には所属する学生の大部分が教員免許を取得することができるよう、教員免許取得に必要な授業科目の必修科目を増やすなど、学位プログラムにおける授業科目の位置付け等の見直しを検討していただきたい。

履修カルテについて、ルーブリックの導入や指標の具体化など、学生が自分自身の強みや弱みに気づき、今後の課題がより明確になるよう、一層の充実に努めていただきたい。

・課程認定を有する各学科でそれぞれ教職指導をしているが、学科間で連携可能な部分がないかを検討していただきたい。

・卒業後の学生のフォローや追跡調査等について今後検討していただきたい。

教育委員会等の関係機関との連携・協働状況(学校現場体験・学校支援ボランティア活動等の取組状況)

評価できる事項

・学校インターンシップ等や教育委員会による出前授業など、近隣の教育委員会との連携体制が構築されている

・「スチューデント・インターンシップ」及び学習支援ボランティアは有効な取組みである

学校ボランティアの早期化等により、教員を志望する学生を早期から確保できるよう取り組んでいる点

努力・改善・検討

・近隣の学校における実習先の確保なども含め、地元教育委員会や附属学校との連携を進めていくことを検討いただきたい。

・学生の学校ボランティア派遣や学校現場に関するゲストスピーカーの招聘などを通じて、教員や・教職センターの職員等との交流が充実するよう、近隣の教育委員会との連携を図っていただきたい。

施設・設備(図書を含む。)の状況

評価できる事項

・学生達が自主的に学びに向かうスペース等が充実している

・模擬保育室が設けられており、教育現場に近い環境で模擬授業の演習ができるよう整備されている点は評価できる。

・学生の将来の学校現場での活動に資するため、理科室や家庭科室等の備品・物品等がよく整理整頓されている

努力・改善・検討

・学生がICT活用能力を身に付けられるよう、教職課程の授業科目においてもこれに対応した授業内容・方法を検討すること

・学内の環境もGIGAスクール構想を念頭に置いた整備等ができないか検討いただきたい

・最新の教科書や専門書を置くこと

・学習指導要領については学生が閲覧しやすい環境となるよう、教職のセンターのみでなく、図書館への配架も検討いただきたい。

・指導法に関する図書は多数見られたが、教科専門に関する図書の充実を検討すること。

・図書館の一層の充実のため、図書のための予算の拡充を検討すること。

・教職課程センターに保管されている図書について、特定の出版社の教科書しか用意されていない教科が見られた。

・学生数に対して教科書の蔵書が充分でないように見受けられるため、複数の出版社の教科書を揃える等、図書の充実に努めていただきたい。

その他

評価できる事項

・「学生モニター制度」や「授業リフレクションのための学生による授業参観」等、学生が大学の運営に参画していくことができる仕組みが積極的に取り入れられている

・学生が教育実習や学生ボランティアを通じて、教育現場に触れる機会を多く提供している

・学生が「学生ICT支援員」として能動的に活動している

・ICT活用について、デジタル教科書の授業内での活用も含めて対応していることが確認できた。

努力・改善・検討

・複数免許状の所持を希望する学生への履修指導についても取り組んでいただきたい。

・新カリキュラムに向けて、現行の問題点や課題点を洗い出すだけでなく中教審等教育に関する動向を把握し、学校現場で求められている教員を養成できるよう学内で十分に検討し、常に改善を図っていただきたい。