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大学職員が理解すべき大学設置基準と解説⑨校地、校舎等と校舎面積の考え方

大学設置基準シリーズの第9弾です、今回は第8章の「校地、校舎等の施設及び設備等」です。この章も非常に長いのですが、内容はさほど難しい箇所もありませんので、最低限覚えておけばいい箇所だけピックアップします。

 

(校地)
第三十四条 校地は、教育にふさわしい環境をもち、校舎の敷地には、学生が休息その他に利用するのに適当な空地を有するものとする。
2 前項の規定にかかわらず、大学は、法令の規定による制限その他のやむを得ない事由により所要の土地の取得を行うことが困難であるため前項に規定する空地を校舎の敷地に有することができないと認められる場合において、学生が休息その他に利用するため、適当な空地を有することにより得られる効用と同等以上の効用が得られる措置を当該大学が講じている場合に限り、空地を校舎の敷地に有しないことができる。
3 前項の措置は、次の各号に掲げる要件を満たす施設を校舎に備えることにより行うものとする。
一 できる限り開放的であつて、多くの学生が余裕をもつて休息、交流その他に利用できるものであること。
二 休息、交流その他に必要な設備が備えられていること。
(運動場)
第三十五条 運動場は、教育に支障のないよう、原則として校舎と同一の敷地内又はその隣接地に設けるものとし、やむを得ない場合には適当な位置にこれを設けるものとする。
2 前項の規定にかかわらず、大学は、法令の規定による制限その他のやむを得ない事由により所要の土地の取得を行うことが困難であるため前項に規定する運動場を設けることができないと認められる場合において、運動場を設けることにより得られる効用と同等以上の効用が得られる措置を当該大学が講じており、かつ、教育に支障がないと認められる場合に限り、運動場を設けないことができる。
3 前項の措置は、原則として体育館その他のスポーツ施設を校舎と同一の敷地内又はその隣接地に備えることにより行うものとする。ただし、やむを得ない特別の事情があるときは、当該大学以外の者が備える運動施設であつて次の各号に掲げる要件を満たすものを学生に利用させることにより行うことができるものとする。
一 様々な運動が可能で、多くの学生が余裕をもつて利用できること。
二 校舎から至近の位置に立地していること。
三 学生の利用に際し経済的負担の軽減が十分に図られているものであること。
(校舎等施設)
第三十六条 大学は、その組織及び規模に応じ、少なくとも次に掲げる専用の施設を備えた校舎を有するものとする。ただし、特別の事情があり、かつ、教育研究に支障がないと認められるときは、この限りでない。
一 学長室、会議室、事務室
二 研究室、教室(講義室、演習室、実験・実習室等とする。)
三 図書館、医務室、学生自習室、学生控室
2 研究室は、専任の教員に対しては必ず備えるものとする。
3 教室は、学科又は課程に応じ、必要な種類と数を備えるものとする。
4 校舎には、第一項に掲げる施設のほか、なるべく情報処理及び語学の学習のための施設を備えるものとする。
5 大学は、校舎のほか、原則として体育館を備えるとともに、なるべく体育館以外のスポーツ施設及び講堂並びに寄宿舎、課外活動施設その他の厚生補導に関する施設を備えるものとする。
6 夜間において授業を行う学部(以下「夜間学部」という。)を置く大学又は昼夜開講制を実施する大学にあつては、研究室、教室、図書館その他の施設の利用について、教育研究に支障のないようにするものとする。
(校地の面積)
第三十七条 大学における校地の面積(附属病院以外の附属施設用地及び寄宿舎の面積を除く。)は、収容定員上の学生一人当たり十平方メートルとして算定した面積に附属病院建築面積を加えた面積とする。
2 前項の規定にかかわらず、同じ種類の昼間学部(昼間において授業を行う学部をいう。以下同じ。)及び夜間学部が近接した施設等を使用し、又は施設等を共用する場合の校地の面積は、当該昼間学部及び夜間学部における教育研究に支障のない面積とする。
3 昼夜開講制を実施する場合においては、これに係る収容定員、履修方法、施設の使用状況等を考慮して、教育に支障のない限度において、第一項に規定する面積を減ずることができる。
(校舎の面積)
第三十七条の二 校舎の面積は、一個の学部のみを置く大学にあつては、別表第三イ又はロの表に定める面積(共同学科を置く場合にあつては、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積に第四十八条第一項の規定により得られる当該共同学科に係る面積を加えた面積)以上とし、複数の学部を置く大学にあつては、当該複数の学部のうち同表に定める面積(共同学科を置く学部については、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積)が最大である学部についての同表に定める面積(共同学科を置く学部については、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積)に当該学部以外の学部についてのそれぞれ別表第三ロ又はハの表に定める面積(共同学科を置く学部については、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる面積)を合計した面積を加えた面積(共同学科を置く場合にあつては、第四十八条第一項の規定により得られる当該学科に係る面積を加えた面積)以上とする。
(図書等の資料及び図書館)
第三十八条 大学は、学部の種類、規模等に応じ、図書、学術雑誌、視聴覚資料その他の教育研究上必要な資料を、図書館を中心に系統的に備えるものとする。
2 図書館は、前項の資料の収集、整理及び提供を行うほか、情報の処理及び提供のシステムを整備して学術情報の提供に努めるとともに、前項の資料の提供に関し、他の大学の図書館等との協力に努めるものとする。
3 図書館には、その機能を十分に発揮させるために必要な専門的職員その他の専任の職員を置くものとする。
4 図書館には、大学の教育研究を促進できるような適当な規模の閲覧室、レフアレンス・ルーム、整理室、書庫等を備えるものとする。
5 前項の閲覧室には、学生の学習及び教員の教育研究のために十分な数の座席を備えるものとする。
(附属施設)
第三十九条 次の表の上欄に掲げる学部を置き、又は学科を設ける大学には、その学部又は学科の教育研究に必要な施設として、それぞれ下欄に掲げる附属施設を置くものとする。
学部又は学科
附属施設
教員養成に関する学部又は学科
附属学校又は附属幼保連携型認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園であつて、大学に附属して設置されるものをいう。)
医学又は歯学に関する学部
附属病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第七十条第一項に規定する参加法人が開設する病院(医学又は歯学に関する学部の教育研究に必要な病院の機能が確保される場合として文部科学大臣が別に定める場合に限る。)を含む。)

学部又は学科
附属施設
教員養成に関する学部又は学科
附属学校又は附属幼保連携型認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)第二条第七項に規定する幼保連携型認定こども園であつて、大学に附属して設置されるものをいう。)
医学又は歯学に関する学部
附属病院(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第七十条第一項に規定する参加法人が開設する病院(医学又は歯学に関する学部の教育研究に必要な病院の機能が確保される場合として文部科学大臣が別に定める場合に限る。)を含む。)
農学に関する学部
農場
林学に関する学科
演習林
獣医学に関する学部又は学科
家畜病院
畜産学に関する学部又は学科
飼育場又は牧場
水産学又は商船に関する学部
練習船(共同利用による場合を含む。)
水産増殖に関する学科
養殖施設
薬学に関する学部又は学科
薬用植物園(薬草園)
体育に関する学部又は学科
体育館


2 工学に関する学部を置く大学には、原則として実験・実習工場を置くものとする。
(薬学実務実習に必要な施設)
第三十九条の二 薬学に関する学部又は学科のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするものを置き、又は設ける大学は、薬学実務実習に必要な施設を確保するものとする。
(機械、器具等)
第四十条 大学は、学部又は学科の種類、教員数及び学生数に応じて必要な種類及び数の機械、器具及び標本を備えるものとする。
(二以上の校地において教育研究を行う場合における施設及び設備)
第四十条の二 大学は、二以上の校地において教育研究を行う場合においては、それぞれの校地ごとに教育研究に支障のないよう必要な施設及び設備を備えるものとする。ただし、その校地が隣接している場合は、この限りでない。
(教育研究環境の整備)
第四十条の三 大学は、その教育研究上の目的を達成するため、必要な経費の確保等により、教育研究にふさわしい環境の整備に努めるものとする。
(大学等の名称)
第四十条の四 大学、学部及び学科(以下「大学等」という。)の名称は、大学等として適当であるとともに、当該大学等の教育研究上の目的にふさわしいものとする。

校地・運動場・校舎等施設について 

第34条から36条は、校地や運動場、また校舎や施設について定めた内容となります。特に校舎に備え付けなければならない施設については、当然の内容として、教室や研究室も記載されていますし、図書館だけっはなく学生自習室や学生控室も記載されています。

 

またこの内容は平成3年の大学設置基準の大綱化により、情報処理施設や語学学習のための施設をなるべく設けることや、学生の心身の健康の保持・増進及び学習環境の整備を図るため、校舎のほか、原則として体育館を備える事をするように改正されています。

<参考>

大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について

(文高大第一八四号 平成三年六月二四日)

大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について:文部科学省

 

また研究室については、個室でなくともいいとされますが、研究執務に専念できる、オフィスアワーに対応できることは、教育研究上から適切である必要があります。

 

校地・校舎の面積

重要なのはこの第37条及び37条の2です。ここでは必要な最低限の校地や校舎面積について書かれています。

まず必要な校地の計算は非常に簡単です。原則として一人当たり10㎡です。ただ、この校地面積に含まないものもありますので注意が必要です。

 

また校舎面積に該当する箇所は()が多すぎて、分かりにくいので、まずは()をとってみましょう。()は共同学科についての記載ですので、殆どのケースでは使いません。

 

校舎の面積は、一個の学部のみを置く大学にあつては、別表第三イ又はロの表に定める面積以上とし、複数の学部を置く大学にあつては、当該複数の学部のうち同表に定める面積が最大である学部についての同表※に定める面積に当該学部以外の学部についてのそれぞれ別表第三ロ又はハの表に定める面積を合計した面積を加えた面積以上とする。

※別表第三 イのこと 

校舎面積を見るには、別表イロハの3つの表があります。医学歯学がなければ、ロは使いません。別表はかなりの量ですのでここには掲載しませんが計算例をあげておきます。計算例は、下記の記事の例示した大学を使います。 

www.daigaku23.com

 

さて例示のA大学の学部学科構成は以下の通りです。

 A大学 2学部3学科 入学定員500名、収容定員2,000名

 (内訳)

 法学部 法律学科 入学定員200名、収容定員800名

 文学部 歴史学科 入学定員100名、収容定員400名

     国文学科 入学定員200名、収容定員800名 

法学部と文学部のうち、表をもとに面積を計算してみましょう。

法学部は4,958㎡、文学部は6,280㎡となります。一番最大の学部は別表イ、それ以外は別表ハを用います。

そうすると人文学部は別表3のイ、法学部は別表3のハになります。

 

そして計算すると人文学部の収容定員が801人以上のところが該当しますので

人文学部(1,200人-800)×1,322÷400+4,958=6,280㎡・・・①

法学部 800名=3,801㎡・・・②    ①+②で10,081㎡となります。

 

この例示大学で必要な校舎面積は、野球のグラウンドより一回り小さいぐらいのイメージでしょうか。そう考えると大学設置基準で定められている校舎面積は少ないような感じもします。

 

しかし、大学にある全ての土地や施設が校地や校舎として計算できるわけではありません。

この点について、設置担当者は必ず理解していることですが、設置業務を担当した事ない人は間違えるというより知らない人が多いと思います。

そこで大学設置の手引きから下記の図を見ます。(大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き 平成30年度版のP46より)

f:id:as-daigaku23:20180714144909j:plain

この図によると、校地面積に含まれないものとして、寄宿舎や第39条第1項に記載されている(附属病院以外)の付属施設があります。

校舎の場合は、校舎面積に含めないものとして、36条5項に記載されているものです。

5 大学は、校舎のほか、原則として体育館を備えるとともに、なるべく体育館以外のスポーツ施設及び講堂並びに寄宿舎、課外活動施設その他の厚生補導に関する施設を備えるものとする。

 大学の校地・校舎面積を計算する時は、大学設置基準では計算に含めないものがあるという事を知っておくことが重要です。

 

その他

この章のほかは、図書館には何が必要か、大学が持つ学部学科に応じて必要な付属施設、必要な経費を備えることという事が記載されています。