大学設置基準シリーズの第8弾、今回は第7章の「卒業の要件等」です。
今回、5千字程度ですので、目次をつけておきます。
それではまず該当の設置基準を確認しましょう。
(単位の授与)
第二十七条 大学は、一の授業科目を履修した学生に対しては、試験の上単位を与えるものとする。ただし、第二十一条第三項の授業科目については、大学の定める適切な方法により学修の成果を評価して単位を与えることができる。
(履修科目の登録の上限)
第二十七条の二 大学は、学生が各年次にわたつて適切に授業科目を履修するため、卒業の要件として学生が修得すべき単位数について、学生が一年間又は一学期に履修科目として登録することができる単位数の上限を定めるよう努めなければならない。
2 大学は、その定めるところにより、所定の単位を優れた成績をもつて修得した学生については、前項に定める上限を超えて履修科目の登録を認めることができる。
(他の大学又は短期大学における授業科目の履修等)
第二十八条 大学は、教育上有益と認めるときは、学生が大学の定めるところにより他の大学又は短期大学において履修した授業科目について修得した単位を、六十単位を超えない範囲で当該大学における授業科目の履修により修得したものとみなすことができる。
2 前項の規定は、学生が、外国の大学又は短期大学に留学する場合、外国の大学又は短期大学が行う通信教育における授業科目を我が国において履修する場合及び外国の大学又は短期大学の教育課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられた教育施設であつて、文部科学大臣が別に指定するものの当該教育課程における授業科目を我が国において履修する場合について準用する。
(大学以外の教育施設等における学修)
第二十九条 大学は、教育上有益と認めるときは、学生が行う短期大学又は高等専門学校の専攻科における学修その他文部科学大臣が別に定める学修を、当該大学における授業科目の履修とみなし、大学の定めるところにより単位を与えることができる。
2 前項により与えることができる単位数は、前条第一項及び第二項により当該大学において修得したものとみなす単位数と合わせて六十単位を超えないものとする。
(入学前の既修得単位等の認定)
第三十条 大学は、教育上有益と認めるときは、学生が当該大学に入学する前に大学又は短期大学において履修した授業科目について修得した単位(第三十一条第一項の規定により修得した単位を含む。)を、当該大学に入学した後の当該大学における授業科目の履修により修得したものとみなすことができる。
2 大学は、教育上有益と認めるときは、学生が当該大学に入学する前に行つた前条第一項に規定する学修を、当該大学における授業科目の履修とみなし、大学の定めるところにより単位を与えることができる。
3 前二項により修得したものとみなし、又は与えることのできる単位数は、編入学、転学等の場合を除き、当該大学において修得した単位以外のものについては、第二十八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)及び前条第一項により当該大学において修得したものとみなす単位数と合わせて六十単位を超えないものとする。
(長期にわたる教育課程の履修)
第三十条の二 大学は、大学の定めるところにより、学生が、職業を有している等の事情により、修業年限を超えて一定の期間にわたり計画的に教育課程を履修し卒業することを希望する旨を申し出たときは、その計画的な履修を認めることができる。
(科目等履修生等)
第三十一条 大学は、大学の定めるところにより、当該大学の学生以外の者で一又は複数の授業科目を履修する者(以下「科目等履修生」という。)に対し、単位を与えることができる。
2 科目等履修生に対する単位の授与については、第二十七条の規定を準用する。
3 大学は、科目等履修生その他の学生以外の者(次項において「科目等履修生等」という。)を相当数受け入れる場合においては、第十三条、第三十七条及び第三十七条の二に規定する基準を考慮して、教育に支障のないよう、それぞれ相当の専任教員並びに校地及び校舎の面積を増加するものとする。
4 大学は、科目等履修生等を受け入れる場合においては、一の授業科目について同時に授業を行うこれらの者の人数は、第二十四条の規定を踏まえ、適当な人数とするものとする。
(卒業の要件)
第三十二条 卒業の要件は、大学に四年以上在学し、百二十四単位以上を修得することとする。
2 前項の規定にかかわらず、医学又は歯学に関する学科に係る卒業の要件は、大学に六年以上在学し、百八十八単位以上を修得することとする。ただし、教育上必要と認められる場合には、大学は、修得すべき単位の一部の修得について、これに相当する授業時間の履修をもつて代えることができる。
3 第一項の規定にかかわらず、薬学に関する学科のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするものに係る卒業の要件は、大学に六年以上在学し、百八十六単位以上(将来の薬剤師としての実務に必要な薬学に関する臨床に係る実践的な能力を培うことを目的として大学の附属病院その他の病院及び薬局で行う実習(以下「薬学実務実習」という。)に係る二十単位以上を含む。)を修得することとする。
4 第一項の規定にかかわらず、獣医学に関する学科に係る卒業の要件は、大学に六年以上在学し、百八十二単位以上を修得することとする。
5 第一項の規定により卒業の要件として修得すべき百二十四単位のうち、第二十五条第二項の授業の方法により修得する単位数は六十単位を超えないものとする。
(授業時間制をとる場合の特例)
第三十三条 前条第二項ただし書により授業時間の履修をもつて単位の修得に代える授業科目に係る第二十一条第一項又は第二十七条の規定の適用については、第二十一条第一項中「単位数」とあるのは「授業時間数」と、第二十七条中「一の授業科目」とあるのは「授業科目」と、「単位を与えるものとする」とあるのは「修了を認定するものとする」とする。
2 授業時間数を定めた授業科目については、当該授業科目の授業時間数をこれに相当する単位数とみなして第二十八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第二十九条第一項又は第三十条第一項若しくは第二項の規定を適用することができる。
①単位について
第二十七条は単位制度に関する記述です。設置基準では試験の上、単位を与えることと記載されています。また分かりにくいのは「ただし~」とある箇所でしょうか。「第二十一条第三項の授業科目」とされていますが、これは次のように記載されています。
3 前項の規定にかかわらず、卒業論文、卒業研究、卒業制作等の授業科目については、これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には、これらに必要な学修等を考慮して、単位数を定めることができる。
カリキュラムを見ていると、例えば卒業論文の科目は2単位だったり、4単位だったりしますが、根拠の基準はこことなります。
<関連リンク>
平成三年六月二四日
大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について:文部科学省
<関連した過去記事>
②CAP(キャップ)制
第二十七条の二は、履修科目の登録の上限、所謂CAP制についてです。またCAP制度の緩和について、「大学は、その定めるところにより、所定の単位を優れた成績をもつて修得した学生については、前項に定める上限を超えて履修科目の登録を認めることができる。」とされています。ここで注目すべきなのは①大学が予め定めている、②優れた成績であるという2点です。
4年生の時に、卒業時までに単位が足りなくて、定められた履修単位数より「下駄を履かせる」事がありますが、これは大学設置基準とはまったく違うとはいえます。
<関連リンク>
大学院設置基準等の改正について (答申) ((平成11年9月6日 大学審議会)):文部科学省
<関連した過去記事>
③既習得単位の認定等
第28条から第30条について簡単に見ていきましょう。
まず第28条は大学の単位互換ですね。単位互換は地域でコンソーシアムを組んでいたり、また放送大学といったケースもあります。あと留学に関する単位の考え方もここが根拠となります。
第29条は、該当するケースについては下記のリンク先をご覧下さい。
平成三年文部省告示第六十八号(大学設置基準第二十九条第一項の規定による大学が単位を与えることのできる学修):文部科学省
第30条ですが、入学前にどれだけ単位を認めるかについて記載されています。また第30条の2では長期履修制度について定めています。
<関連リンク>
大学等における社会人受入れの推進方策について(答申):文部科学省
④科目等履修生
科目等履修生は、その大学の学生等でないものが1科目から複数科目の授業を履修する事を指します。この科目等履修生は少人数ならばあまり問題ないのですが、相当数受け入れる場合は、教育に支障のないよう、それぞれ相当の専任教員並びに校地及び校舎の面積を増加するものとすることや、クラス規模の適正について言われています。
<関連リンク>
平成19年7月31日
大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知):文部科学省
⑤卒業の要件
ここは学則に記載されている卒業の要件の根拠となる所です。
- 大学は4年以上在学で124単位
- 医学は歯学に関する学科は、
- 薬学に関する学科のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするものに係る卒業の要件は、6年以上在学で188単位以上
- 獣医学に関する学科に係る卒業の要件は6年以上在学で188単位以上
では何故、124単位なのかは、単位制度1週間に勉学に取れる時間は平日8時間×5日+土曜日5時間とすると45時間となる事から考えてみましょう。なお、これを計算すると4年間で120単位※ですが、残りの4単位は、大学設置基準制定以前にあった体育4単位が名残でこれは総単位数の枠外の扱いでしたが、大学設置基準制定の時にその4単位が入ったと言われています。
※1週=45時間(平日8時間×5日+土曜日5日)
1学期=15週=15単位
4年間=8学期=120単位
⑥授業時間制
第32条の授業時間制はあまり聞き馴染みない制度ですよね。自分もそうですが、医学又は歯学に関する学科がないとまったく知りませんでした。
ではこの授業時間制とは何かを知るために下記を確認します。
大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について:文部科学省
ここには次のように書かれています。
従来専門教育科目について授業時間制をとっていた医学又は歯学に関する学科についても、授業科目の区分の廃止等に関連し、授業科目全体について単位制を原則とすることとし、これらの学科に係る卒業の要件は、大学に六年以上在学し、一八八単位以上を修得することとしたこと。ただし、医・歯学教育の特性にも配慮し、各大学の判断により教育上必要と認められる場合には、修得すべき単位の一部の修得について、これに相当する授業時間の履修をもって代えることができるものとしたこと。(改正後の第三二条第二項関係)
なお、改正前の第三三条の規定を廃止したことに伴い、「大学設置基準第三三条第一項の規定に基づく医学又は歯学の学部の卒業の要件のうち専門教育科目の履修に係る要件(昭和五〇年文部省告示第一六七号)」は、制定の根拠となる規定を失うこととなり、効力を失うものであること。
前記に関連して、授業時間制をとる場合の当該授業科目に係る修了の認定、単位互換等の規定の適用について定めたこと。(改正後の第三三条関係)
また次からもその制度について読み取ることができます。
単位制への移行 - 新潟大学歯学部
http://www.dent.niigata-u.ac.jp/ShigakubuNews/83/tannisei.html
さて、ここも学則や履修規程と非常に深い関連がある内容です。また設置や評価といったところからも、ここはきちんと見られますので、大学に関わるものとしては理解をしておくことをおススメします。