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2022年度前半における大学や高等教育の政策に関わるメモ

改革地獄に陥るのか、社会情勢によって変化していくためなのか、様々な背景や理由がありますが、2022年度も大学・高等教育に係る議論がされています。

特に大学設置基準改正に係るものもあり、大学では教育、人事、規程など見直しをする必要があるかもしれません。

そこで、まずは大学(高等教育)の教育等に関する事項で、この辺りは見ておこうと思うものだけをピックアップしてみます。なお、地方私立大学に勤める立場から書いていますので、国公立に関するものは今回はおってません。

内閣官房「教育未来創造会議」

まずは内閣官房の「教育未来創造会議」です。大学・高等教育政策は、文科省ばかりみていれば言い訳ではありません。

内閣府、財務省などでも議論をされていますので、そちらも確認をする必要があります。

さて、この会議の目的ですが下記とされています。

 我が国の未来を担う人材を育成するためには、高等教育をはじめとする教育の在り方について、国としての方向性を明確にするとともに、誰もが生涯にわたって学び続け学び直しができるよう、教育と社会との接続の多様化・柔軟化を推進する必要があります。このため、「教育未来創造会議」を開催しています。

第1回は令和3年12月27日ですが、本記事を書いている令和4年6月下旬の直帰開催は令和4年5月10日となります。

教育未来創造会議 開催状況|内閣官房ホームページ

今回は第3回の資料にある、「我が国の未来をけん引する大学等と社会の在り方について 第一次提言(案)」を見てみましょう。

ここで注目したのは、この提言の中にある未来を支える人材像です。(下線は筆者)

 これらは、予測不可能な時代な中で、好きなことを追究して高い専門性や技術力を身に付け、自分自身で課題を設定して、考えを深く掘り下げ、多様な人とコミュニケーションをとりながら、新たな価値やビジョンを創造し、社会課題の解決を図っていくことのできる人材である。

 こうした人材を育成するために、初等中等教育で育まれた基礎学力や素質を土台として、高等教育においては、リテラシー(数理的推論・データ分析力、論理的文章表現力、語学力・コミュニケーション能力等)、論理的思考力と規範的判断力、課題発見・解決能力、未来社会を構想・設計する力、高度専門職に必要な知識・能力を培うことが求められる。

さらに、社会人になってからも、一生涯、何度でも学び直し、自らの能力をアップデートし続けていく意識が必要になる。

高等教育では、どのような能力を身につけるのかが具体的に書かれており、データ分析力などもあるのが特徴でしょうか。

ただ未来社会を構想・設計する力など、漠然としたものも含まれています。

さて、この提言では、大学等の機能強化にも言及されています。

大学等の再編促進と産学官連携の強化、学部・大学院を通じた文理横断教育の推進と卒業後の人材受入れ強化、理工系や農学系の分野をはじめとした女性の活躍推進、グローバル人材育成・活躍推進、デジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への転換、大学法人のガバナンス強化と人口減少下での教育環境の確保、知識と知恵を得る初等中等教育の充実を一体的に進める。

上記は書かれている内容の一部で、提言の中ではより詳細に触れられています。また具体的取組もあり、例えば「進学者のニーズ等も踏まえた成長分野への大学等の再編促進と産学官連携強化」は下記が記載されています。

  • デジタル・グリーン等の成長分野への再編・統合・拡充を促進する仕組みの構築
  • 高専、専門学校、大学校、専門高校の機能強化
  • 大学の教育プログラム策定等における企業、地方公共団体の参画促進
  • 企業における人材投資に係る開示の充実
  • 地方公共団体と高等教育機関の連携強化促進
  • 地域における大学の充実や高等教育進学機会の拡充
  • 地域のニーズに合う人材育成のための産学官の連携強化

またデジタル技術を駆使したハイブリッド型教育への転換も確認しておきましょう。

  • 知識と知恵を得るハイブリッド型教育への転換促進
  • オンラインを活用した大学間連携の促進
  • 大学のDX促進

このように上記に言われていることは今後、国として進められていく(例えば補助金事業創設や申請による制度緩和などの政策誘導)可能性はあると考えています。

内閣府「統合イノベーション戦略2022」

第6期科学技術・イノベーション基本計画(以下「第6期基本計画」という。)の実行計画と位置付けられる2年目の年次戦略として、統合イノベーション戦略2022が公表されています。

www8.cao.go.jp

①知の基盤と人材育成の強化、②イノベーション・エコシステムの形成、③先端科学じぎゅつの戦略的な推進が3本の柱であり、例えば大学関係個所でいうと下記があります。

  • 10兆円規模の大学ファンドがけん引する異次元の研究基盤の強化と大学改革
  • 研究DXを支えるインフラ整備や研究施設・設備の共用化とデータ駆動型研究の推進
  • 地域中核・特色ある研究大学の振興
  • 探究・STEAM教育とリカレント教育の推進

内閣府「AI戦略2022」

大学ではデータサイエンスに関する学部学科が設置される、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度がはじまり、いくつもの大学が認定されています。

大学としても情報教育だけではなく、数理・データサイエンス・AI教育に取組む必要がある時代になっているのです。そのため、ここではAI戦略2022としていますが、2019からきちんと読んでおくことが必要です。

www8.cao.go.jp

なお、大学に関する箇所はいくつもありますが、基本は下記ではないでしょうか。(下線は筆者)

大学・高専・社会人】

具体目標1

文理を問わず、全ての大学・高専生(約 50 万人卒/年)が、課程にて初級レベル の数理・データサイエンス・AIを習得

具体目標2

多くの社会人(約 100 万人27/年)が、基本的情報知識と、データサイエンス・AI等の実践的活用スキルを習得できる機会をあらゆる手段を用いて提供

具体目標3

大学生、社会人に対するリベラルアーツ教育の充実(一面的なデータ解析の結 果やAIを鵜呑みにしないための批判的思考力の養成も含む)

このように文理問わず、どの大学であっても、数理・データサイエンス・AI教育を実施していくことが求められます(もちろんレベル感はありますが、参照は数理・データサイエンス・AI教育認定制度ではないかと思います)

文科省「質保証システム部会」

大学設置基準の大幅な改正が今度ありますが、そのためには質保証システム部会の「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)」を読んでおきましょう。

www.mext.go.jp

この審議まとめの概要をみると、大学設置基準の改正についても理解が深まるかと思います。

出典:質保証システム部会より

大学設置基準の一部を改正する省令案骨子案について

こちらは大学分科会での議論を継続的におっかけていく必要があります。

www.mext.go.jp

今回の大学設置基準の改正は例年になく大きいものです。

  • 基幹教員
  • 単位制度(計算方法)
  • 教育研究実施組織
  • 設備
  • 特例制度(制度緩和だが、先導的な教育の実施と申請がセット)

このほかにもまだありますが、大学は人事計画、学則や規程、組織のあり方など様々な返答が必要です。つまり、どの部署であっても、今回は何かしらの影響はあるかと思います。

<関連記事 ※下記は初期の改正案の記事なので、最新は大学分科会資料参照>

www.daigaku23.com