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中央教育審議会大学分科会質保証システム部会(第2回)のメモ

令和2年7月31日(金曜日)の10時~12時に行われた中央教育審議会大学分科会質保証システム部会(第2回)がWEB会議(ZOOM)で開催されました。(古沢委員は欠席)

今回もWEB中継があり、傍聴したので、メモ(要約)を置いておきます。なお議題は「我が国の高等教育の質保証システムの在り方について」です。(下線はブログ執筆者)

資料1及び資料5(事務局より)

前回の部会の資料を検討の視点、質保証の仕組み、定員関係などでまとめた。

また資料5は教育再生実行会議の資料でポストコロナに関してとなっている。例えば秋季入学などもここで検討される。また本部会と重なる議論やテーマもあるため、適宜議論の状況を紹介する。

委員の事前意見提出について

日比谷先生

質保証システム部会の委員は約四分の一は設置審に関わっている。

非常に意識の低い大学や劣悪大学について前回に話があった。また前回部会から今回部会の間に大学分科会があり、「経団連から採用と大学教育の未来に関する〜」の説明があり、要望が4点ある。(詳細は大学分科会資料

設置認可を厳しくするか、認証評価(事後チェック)を厳格にみることなどバランスをどうとっていくかが重要。

浅田先生

日比谷委員と同じ立ち位置。設置審査が緩和したが、事後チェックがうまくできていない。

グランド・デザインを受けて教学マネジメント指針は大学として必要なものが整理されている。これをもとに設置基準の再構築が望ましい。

PDCAについては、製造業の概念のPDCAについてはが教育現場でやるのは難しいが。しかし他のいいものがないので、PDCAの柔軟性などが必要(周期やサイクルの開始時期など)(当日資料浅田委員のレジュメのPDCAの周期と非同期性を参照)周期は大学設置形態でもバラバラである。チェックの段階はPPDACの概念の導入も必要。

学位の種類と学位分野が法律で定められている。これは認可申請や届出で必ずチェックするが世間ではあまり知られていない。大学でもこれを出していない、認識していない、忘れているということがしばしばある

飯吉先生

オンライン授業は多くの大学で進められている。これが外部的・強制的に行われている。サプライプッシュは今までうまく行かなかった。各大学が自発的・積極的に教育の拡張として、オンライン教育を検討することが必要。そのための政策や刺激策が必要。

今後オンライン教育の活用、対面・ブレンディッド・オンラインもある。多くの学生に満足のいく教育を提供できるか?

マイクロクレデンシャルについて、MOOCなどを活用して、学位とは別の認証など(ナノディグリー等)既存学位と仮想学位のバランスをどう取るか?

瀧澤先生

コロナ禍で大学はオンライン化をおこない、ある程度は機能はしているが十分な教育効果はあったか?人間的な成長がオンラインでは難しい。

STEAM分野の教育は(関わっている大学院で)しっかりしているが、社会課題に関する教養教育などは少し足りていないのではないか。例えばグループで課題を取り組ませるとリーダーシップがとれる人が限られている(リーダシップの訓練が必要)知識がある割には人生の生き方を今まで考えてこなかった学生も見受けられる。

(大学に関する議論は)なるべく現場にいる教員や学生の声を幅広く取り入れて合意形成をしていただきたい。

質の高い大学の個々の事象の横展開(情報交流の場の設定など)をしていただきたい。

土屋委員

オンライン授業を今までなんとか推進したいと思っていたが教員の総意が得られず、コロナで進んだ。

7月27日から文科省から出た後期の授業のお知らせについて、教室で授業を行うことを想定しているので対面をできるだけ実施してほしいという要望がきている。これ(関連設置基準)は今後適切なものであるかを議論いただきたい。

教室で授業を行うことが前提条件であるものは今後変えていく必要があるのではないか?

対面授業を重要視するあまり、元に戻そうという動きが出てきているということが心配している点である。教育の先端化が止まらないようにしていただきたい。

オンライン授業で留学のオンライン化など。

オンライン授業は教育の質保証の議論の根幹である。多くの大学は教学マネジメント指針で言われていることはすでにやってきている。今後はオンライン教育の質保証の観点が重要である。日本の未来はオンライン授業にある。

宮内先生

(質そのものについて)オンライン教育はとめてはいけない。このコロナで遅れていたオンラインが半分ぐらい追いついてきたかもしれない。(原因は意識だった)

オンラインの利点は時間空間を越えて、いつでもどこでも誰とでも好きに学習できる。画一教育からの脱却でもある。またマスターやドクターへの進学もあがるのではないか。

今後は何を学習したのかが重要で、どこの大学に言ったのかは重要でなくなる。またクリティカル・シンキングの必修化(WHY意識の教育)をしてほしい。質保証の議論は喫緊の課題に振り回されていいのか?質保証は誰のためにするか?オンライン授業は教育の公開性の促進がされる。

認証評価は設置基準にそっているかどうかは重要だが、国際的視点も取り入れることが重要である。

企業では監査に求められる基準は日々厳しくなっている。日本でも監査法人が連携して国際的なコンソーシアムの一員となっている。また企業と監査法人の癒着をふせぐための強制ローテーションもある。認証評価に監査法人の監査の手法が参考になるのではないか?

大森先生

柔軟性と最低限の質保証の分岐点はどのへんにあるのか?

グランドデザイン答申では多様性と柔軟性の確保が重要であるとされている。大学は学生の将来の幸せのためにやっている。学生は卒業して社会に受け入れてもらっている。そのため社会に必要な力を養成する教育をやっている⇒大学の変化と社会の変化のスピードはどうか?

研究業績主義から脱却できるのか?実務家教員もあるが、研究業績が設置でみられるので大学の中でも研究至上主義がある。今は教育や地域との関わりもある。

多様な学生の受け入れの場合、地方だとフルで入学したい社会人はいないが短期のリカレント人気はある。しかしこれは学生数に加えられないので、定員割れ大学と言われる。

教育の質と定員充足は相関があるのか?

国際通用性が議論で出てくるが、すべての大学で必要なのか?多くの大学では地域通用性を高めていく必要があるのではないか?

教学マネジメントのモデルづくりや監査の支援などがあるといい。また社会からは大学はだめと言われるが言葉は違うのではないか?社会から教育の質を伝えても、社会(地域)はぴ〜んと来ない。そのため、社会に理解していただく取り組みを並行して行う必要がある。

谷本先生

(短期大学の立場から)

ICTを活用した授業の質保証について、コロナ対応で多くの短期大学でオンライン授業が行われている。今は模索状態だがオンライン化が多くなっている。オンライン教育を評価するフレームワークが必要。

リカレント教育の質保証について、社会人が大学に通うのは時間の問題から大変。例えば単位や期限などを柔軟性をもたせる(アメリカコミュニティカレッジが参考)

地域社会からの視点にたった質保証システムについて、地域で魅力的な教育プログラムを提供する、地域の産業等と連携を行い、実践的な学び、地域で活躍できる人材育成が必要。地域に対しての情報公開など

留学生に対する質保証について、留学生は増えている。欧米以外からの留学生の質の担保はどうするか。

(以下、質問や意見交換)

大森先生

設置基準での教室等について、オンラインの関係で土屋先生はコメントされているが、本学は地域で学んでいるので、そういう観点からも議論できるのではないか?

前田先生

オンライン教育をすすめると提案されているが、認証評価やオンライン教育をすすめるにあたって、大人数のオンデマンド型の成績評価の質保証の課題がある。

⇒土屋先生>オンラインの質保証はフレームワークを作る必要がある。オンデマンドについては慶応や早稲田でやっているので、そこでの成績評価の成果について伺いたい。自分が聞いたのはオンデマンド授業はリピーターが多く、教育の成熟度が高まった(聞きっぱなしでなく、何回も見直す)今はどこを見直したかを分かるので教員側もどこが学生がわからないかを確認できる。

Q.日比谷先生の撤退や退場制度の構築とはどのようなものか?

事後チェックを想定している。

飯吉先生

オンライン授業で質が担保できるか?は、オンライン化すると見えるかできる。大規模授業におけるオンデマンド教育や他のタイプのオンライン教育はどれが人気があるかというと、どれも人気がありどれも人気がない。学生は教える内容にうまくあっているかを見ている(評価している)対面かオンデマンドかといった議論は終わりにしたい。

どこの大学もオンラインで期末試験や入試をどうするかをいった議論をしている。評価は複合的・多角的に考える必要があり、オンラインはオプションとして用意する。

小林先生

宮内先生に学習歴が大事で評価すべきと言っていたが、単位を集めて新たな団体が学位を認定できるのか?

>宮内先生 たまには日本が世界をリードできることをやったらいいと思う。そのためには国際的なネットワークが必要。大教室のオンデマンド型の質保証はアンケートとると、集中できるという意見やスマホでノートの写真を撮ること(出席とする)をノートに対する意見交換などが行われた。今後は学習評価はリアルとオンデマンドのハイブリッドでやるようになるのではないか?チーティングについては目の動きなどで分かるようになる(?)

吉見先生

オンラインといっても少人数の同期型や多人数のオンデマンド型は異なる。前者はST比と関わる。質保証も前者はそんなに問題にはならない。一方、多人数のオンデマンド型は一人の教員が数百人を受け持つ場合の質保証は疑念がある。必ずティームティーチングが必要。大学として組織的な教育をする体制が必要。

オンラインで重要なのは身体障害者や子育て中やリカレント教育と親和性が極めて高い。やる気と能力があると受けられるので母集団が広がる。そのためには修業年限の柔軟化が必要。そのためには技術だけではなく制度の改革も必要。

オンラインの先には何があるのか?地球規模で距離が次第になくなっていく。未来の大学の質保証を考える場合にグローバル、地球規模での質保証を考えることになる。地球社会における高等教育の質保証を見据えて議論が必要ではないか?

土屋先生

オンデマンドをすることによって、他の教員も見ることができるので、(FDとして)質保証が前進するのではないか?

地域について、インターンシップがすすんでいるのは地方である。大学の授業も教室の中ではなくて、企業や官庁などでも拡張していくことでコミュニティ型の大学も考えていくこともある。

飯吉先生

教育の考え方や教員の文化を変えていかないといけないというのは重要。TAの重要性、ティームティーチングは院生も巻きこんで教育のトレーニングもかねてやっていく。

地球規模でみた場合は同期型だと時差があるので、オンデマンドだといつでも見られるので有用である。

濱中先生

オンラインは大人数であっても学生にとっていい環境を出すことはできる。チームで行う教育に関して、オンラインは今回は特殊事情で大学はロックアウトの状態で教員同士で打ち合わせができなかった。オンライン授業を行う場合は教員が話あえる状況と今回の状況はちょっと異なる。

孤立化しているなかで、国立情報学研究所のシンポジウムや他のセミナーに助けられた。学術界でオンライン教育の質の担保に関しての取り組みがあっていいのではないか?

永田先生

世界基準や国際的なステージの上での質保証はシステム部会はどう考えるか?ここでできるのは観点を示すことである。高等教育の質保証で、視点はあっても基準は述べられない。基準が決められないのは個性をもった大学が質保証をする。大学によってオンライン取り組みの有無や文理融合教育実施の有無がある。

「〜〜ができたか、できなかったか」を議論する場ではない。オンラインをどう考えるかは大学によって変わる。

なぜ大学の質保証か?⇒大学にしかできないことは学位授与である。教育はカルチャークラブでもできる。大学の学位の質ということになる。

個々の大学は同じではない、学風があるが、その中で学ぶことが保証されているかどうか。十分条件(個々の大学がなすこと)が十分議論されていない。

 

教育の質保証とはなにか?(どのレベルか?)

授業の質保証と学生が大学にいって学ぶことの意味が異なるのではないか?オンライン化でできることとキャンパスが持つ意味、課外教育(活動)の意味、留学やインターンシップの意味は? これらは大学教育の中に含まれているのでどこまで視野に入れて議論をするか?

 

 

土屋先生

オンライン授業の問題は教授会で足を引っ張る人の存在の問題がある。

杉谷先生

ここは質保証システムについて議論をする場であるので、ここをぶれないで議論することが重要。制度設計に落とし込んだときに大学の現場は教員だけではなく、学生もいるのでそこを視野にいれて制度設計をすべきである。国が制度として保証すべき質保証システムはどこまでなのか?

林先生

認証評価は内部質保証にシフトしているが、内部質保証をみるときに図書館なども有効に機能しているかをチェックするようになっているが、チェックできているか、有効はどうあるかは議論が必要。

国際的に大学が流動していくときの質保証は2つの側面がある。学位の最低限で学んでいるものと、個別大学の独自の観点で最低限より上のレベルで教育を行っていることを質保証する。日本は内部質保証がゆるいのでそこをしっかりどうやるかをつめていく必要がある。例えば初回の認証評価を厳しくするなど。

小林先生

大学の外からだと、外に説明するときにこういう議論は伝わらない。大学の数は増えている。外からみると大学の特徴がわからない。情報公表の質保証が求められるのではないか?

大学や学部をみるときにわかりやすく、3つのポリシーに示す。オンラインになればポリシーがより見られる。大学の努力はわかるがわかりやすく伝えること。

前田先生

課外活動が重要な点は設置基準に今は視野にはいっていない。教育課程のみである。世界レベルでの質保証は、アクレディテーション団体と世界レベルでどうなっているかを確認してもいいのではないか?

浅田先生

認証評価は7年サイクルだが、学長が変わるなど良い状態の大学が変わっていることもある。質保証で見るときに質が変質しているという観点も必要。

コロナで通信制の大学になってきているが、通信制大学の質の保証は現状でどうなっているのか?

 

職員の位置づけが重要ではないか?(職員にも実験系など色々いる)特に国際化は職員も中心になっている。職員も大学教育の中に位置づけることも必要。

次回について

次回は8月31日13時〜15時で大学団体からのヒアリングを予定している。 

<関連メモ>

www.daigaku23.com