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大学等の開設と事前相談の重要性

 専門職大学の設置認可や取下げについて、大学関係者は想像した以上に取下げが多いと感じたと思います。

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その原因について、Betweenでは取材により事前相談について書いています。 

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 2017年12月の文科省への取材では、当時の担当者が「通常、大学の設置審査では申請前に文科省に事務相談をするのが一般的だが、今回の専門職大学の申請では事務相談を経ずにいきなり申請してきたケースも多い」と話していた。

大学設置に係るものとして事務相談(通常は事前相談と言いますので、以後「事前相談」)をしないで申請をすることは考えにくいケースだと思います。ただ何故事前相談をするのかは、大学設置業務を経験していないと分かりにくい事もあります。

大学の設置等の申請の前に事前相談

まずは大学の設置等に関しての事前相談とは何かを簡単にみていきます。

その前にまずは事前相談には大きく2つあります。

1つ目は文部科学省の大学設置室への事前相談

2つ目は大学設置・学校法人審議会大学設置分科会運営委員会への事前相談

なお、1つ目の事前相談については、2018年10月16日に公開された大学の設置等に係る提出書類の作成の手引き(平成31年度改訂版):文部科学省に説明があります。

2つ目の事前相談については、運営委員会への事前相談の手続について:文部科学省

に概要や日程が掲載されています。

なお、大学の設置等は大学の新規開設だけではなく、学部や学科の改組や開設、収容定員の変更(主に増やすほう)を含みます。

 

大学設置室への事前相談とは

大学の設置等に関する事前相談とは、設置の手引きによると

大学の設置等の申請又は届出を行おうとする申請者からの,手続(申請書の記入方法や審査スケジュールの確認等)に関する問合せ

とあります。大学の設置等に関する手続きの申請方法などについて、事務的な相談を受け付けるをいう意味合いとも取れます。

なお、大学の設置等に関する審査は大学設置・学校法人審議会:文部科学省が行います。審査に係る事は話が出来ない、また助言は出来ませんので手続きにのみ限定しているのでしょう。

またこの事前相談は大学の設置等の申請をする上での条件ではありません。

事前相談の事前予約

事前相談も、文部科学省にふら~っと訪問して相談にのってくれる訳ではありません。事前相談が出来る日程は決まっており、事前予約が必要です。

大学の設置等に関する御相談:文部科学省

この事前相談予約から、戦いが始まります。

事前相談枠が決まっておりますので、多くの大学が事前相談する年であれば、どこを第一希望とするか、他の大学はどこを狙うかを想定し、自分たちに最適な日程を確保する必要があります。

事前相談では何を聞くか 

大学によって大きく考えが異なると思いますが、まずは申請にあたって、大きな変更がしにくい箇所を優先的に聞きます。解釈によって、大きな変更が考えられる、しかもその変更点を修正するのは容易ではないものから潰してくのが基本です。小手先の疑問を聞きたがる人がいますが、 それは後でどうとでもなります。

 

大学設置・学校法人審議会大学設置分科会運営委員会への事前相談

この事前相談は、プレ審査みたいなイメージです。

運営委員会への事前相談の手続について:文部科学省

に事前相談の事項として次が挙げられています。

(1)教員審査の省略
当該案件の「大学の設置等の認可の申請及び届出に係る手続等に関する規則」第2条~第6条に係る教員審査の省略の該当の適否

(2)認可又は届出
当該案件の「学校教育法」第4条第2項に係る届出の該当の適否

(3)名称変更
当該案件の「学校教育法施行令」第26条第1項又は「学校教育法施行規則」第2条に係る届出の該当の適否

 大学の設置等の申請では、審査の省略がある事は大きなアドバンテージです。

大学の開設の際に、「教員〇〇の業績が足りないから、業績がある教員を入れるように(一部意訳)」はよくある話です。研究業績が足りないからといって、翌日に出来るものでもありませんので、そうすると大慌てで、代わりの教員を探す事になります。

また(2)の認可又は届出かどうかの判断も事前相談でチェックします。認可は審査などがありますが、届出は審査がない為に、大学側として学部等の設置と学生募集活動について計画的・戦略的に進められます。そのため、事前相談で認可で受付なのか、届出でいけるのかの確認が必要になるのです。

 

事前相談をする大きな理由

設置業務は一方通行のイメージをもってもらうといいと思います。2回ぐらいは軌道修正できますが、大きなペナルティ(警告)が出たり、取り下げと言われたらアウトです。ダメと言われたら今回は諦めるしかありません。(近年は、何かあると「取下げをしたらどうですか」と言われるケースもあるようです)

 

<参考>

無理やり大学等の設置を進めようとしたケースが下記ですね。

大学,大学院,短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準第2条第1号の規定に基づく期間について(通知):文部科学省

 

また大学等を開設する場合は、予め教員を募集・採用していたり、施設を作ったりもしています。開設が1年遅れると、収入がなく支出だけとなるので、負債が増えてしまいます。

だからこそ事前相談をして、足場を固めてから、確実に大学の設置等が出来るように準備をしていくのです。

大学の設置業は決して失敗できない仕事の1つです。だからこそ面白いのはありますが、多少の経験がモノ言う業務でもあるなとも思います。