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大学職員が理解すべき大学設置基準と解説⑩事務組織について

大学設置基準シリーズの第10弾です、今回は第9章の「事務組織等」についてです。この章はかなり短い章となります。 

 

第四十一条 大学は、その事務を遂行するため、専任の職員を置く適当な事務組織を設けるものとする。
(厚生補導の組織)
第四十二条 大学は、学生の厚生補導を行うため、専任の職員を置く適当な組織を設けるものとする。
(社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を培うための体制)
第四十二条の二 大学は、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を、教育課程の実施及び厚生補導を通じて培うことができるよう、大学内の組織間の有機的な連携を図り、適切な体制を整えるものとする。
(研修の機会等)
第四十二条の三 大学は、当該大学の教育研究活動等の適切かつ効果的な運営を図るため、その職員に必要な知識及び技能を習得させ、並びにその能力及び資質を向上させるための研修(第二十五条の三に規定する研修に該当するものを除く。)の機会を設けることその他必要な取組を行うものとする。

事務組織について

大学には事務組織を置くことが必要です。ここで覚えておきたいのは、平成29年4月1日から施行された大学設置基準の改正についてです。

 

この改正までは「大学は、その事務を処理するため、専任の職員を置く適当な事務組織」と大学設置基準に記載されていました。そこから大学設置基準の改正により「処理から遂行」に設置基準が改正されました。

 

処理とは物事を整理したり始末する意味があり、遂行とは物事を成し遂げる事の意味となります。大学事務組織は事務作業のみを行うのではなく、業務を遂行する事や成し遂げる事が期待されているのです。

 

この理由として、大学設置基準の改正の通知には次のように記載されています。

大学が行う業務が複雑化・多様化する中,大学運営の一層の改善に向けては,事務職員・事務組織等がこれまで以上に積極的な役割を担い,大学総体としての機能を強化し,総合力を発揮する必要があること,また,大学教員を取り巻く職務環境の変化も踏まえ,教員・事務職員等の垣根を越えた取組が一層必要となっており,各大学が,教員と事務職員等とが連携協力して業務に取り組む重要性を認識し,教職協働の取組を進めていく必要があることから,大学の事務組織に係る規定の改正及び教職協働に係る規定の新設等を行う

 

なお、この時の大学設置基準の改正は「教員と事務職員等の連携及び協働」もあります。

 

<関連過去記事> 

www.daigaku23.com

 

<参考>

大学設置基準等の一部を改正する省令の公布について(通知):文部科学省

 

厚生補導と職業的自立

大学設置基準では、専任の職員を置いた学生の厚生補導の組織が必要です。厚生補導とはこんな意味があります。(コトバンクより)

学校における厚生補導は、自治会やサークルなどの課外活動、福利厚生、修学、宿舎、アルバイト、進学・就職等学生の生活全般にかかわる事柄に関して、組織的、専門的に相談を受けたり、指導・助言あるいは援助を行ったりする、いわば「学生サービス活動」である。

 

最近は、学生センターや学生支援センターとする組織が多いのではないでしょうか。

 

また「社会的及び職業的自立」に関する内容があります。ここは大学はキャリアガイダンスを行うとよく言われます。この点について留意すべき所として、「教育課程の実施」と「厚生補導」を通じて培う必要があります。

 

つまり正課内教育と正課外教育で連携して、キャリア教育を行う必要があります。しかし、これは単位が出る科目の中でキャリア教育をすることであり、就職指導をすることがイコールではありません。

 

まずは下記を確認します。

キャリアガイダンス(社会的・職業的自立に関する指導等)の法令上の明確化について:文部科学省

(1) キャリアガイダンス(社会的・職業的自立に関する指導等)は,単に卒業時点の就職を目指すものではなく,生涯を通じた持続的な就業力の育成を目指し,豊かな人間形成と人生設計に資するものである。

(2) 大学教育や学生生活の経験を通じて獲得する成果(知識・技能,態度・志向性等)には,専門分野に関する知識・技能とともに,社会的・職業的自立に必要な資質能力が本来的に内在している。各大学では,こうした資質能力の涵養のため,それぞれの個性・特色や学問分野に応じた取組を行っている。

 

つまり就職そのものを目的としたガイダンスではなく、豊かな人間形成と人生設計に資するものである必要があります。大学によって、この点はどのように捉えるかは、またキャリアガイダンスを行うかは異なります。ただし、就職支援のみを行うものではなう事は留意する必要があります。