大学設置基準シリーズ第7弾、今回は教育課程です。今回はちょっと長いです。
(教育課程の編成方針)
第十九条 大学は、当該大学、学部及び学科又は課程等の教育上の目的を達成するために必要な授業科目を自ら開設し、体系的に教育課程を編成するものとする。
2 教育課程の編成に当たつては、大学は、学部等の専攻に係る専門の学芸を教授するとともに、幅広く深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性を涵かん養するよう適切に配慮しなければならない。
(教育課程の編成方法)
第二十条 教育課程は、各授業科目を必修科目、選択科目及び自由科目に分け、これを各年次に配当して編成するものとする。
(単位)
第二十一条 各授業科目の単位数は、大学において定めるものとする。
2 前項の単位数を定めるに当たつては、一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、授業の方法に応じ、当該授業による教育効果、授業時間外に必要な学修等を考慮して、次の基準により単位数を計算するものとする。
一 講義及び演習については、十五時間から三十時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
二 実験、実習及び実技については、三十時間から四十五時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。ただし、芸術等の分野における個人指導による実技の授業については、大学が定める時間の授業をもつて一単位とすることができる。
三 一の授業科目について、講義、演習、実験、実習又は実技のうち二以上の方法の併用により行う場合については、その組み合わせに応じ、前二号に規定する基準を考慮して大学が定める時間の授業をもつて一単位とする。
3 前項の規定にかかわらず、卒業論文、卒業研究、卒業制作等の授業科目については、これらの学修の成果を評価して単位を授与することが適切と認められる場合には、これらに必要な学修等を考慮して、単位数を定めることができる。
(一年間の授業期間)
第二十二条 一年間の授業を行う期間は、定期試験等の期間を含め、三十五週にわたることを原則とする。
(各授業科目の授業期間)
第二十三条 各授業科目の授業は、十週又は十五週にわたる期間を単位として行うものとする。ただし、教育上必要があり、かつ、十分な教育効果をあげることができると認められる場合は、この限りでない。
(授業を行う学生数)
第二十四条 大学が一の授業科目について同時に授業を行う学生数は、授業の方法及び施設、設備その他の教育上の諸条件を考慮して、教育効果を十分にあげられるような適当な人数とするものとする。
(授業の方法)
第二十五条 授業は、講義、演習、実験、実習若しくは実技のいずれかにより又はこれらの併用により行うものとする。
2 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、前項の授業を、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させることができる。
3 大学は、第一項の授業を、外国において履修させることができる。前項の規定により、多様なメディアを高度に利用して、当該授業を行う教室等以外の場所で履修させる場合についても、同様とする。
4 大学は、文部科学大臣が別に定めるところにより、第一項の授業の一部を、校舎及び附属施設以外の場所で行うことができる。
(成績評価基準等の明示等)
第二十五条の二 大学は、学生に対して、授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
2 大学は、学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たつては、客観性及び厳格性を確保するため、学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに、当該基準にしたがつて適切に行うものとする。
(教育内容等の改善のための組織的な研修等)
第二十五条の三 大学は、当該大学の授業の内容及び方法の改善を図るための組織的な研修及び研究を実施するものとする。
(昼夜開講制)
第二十六条 大学は、教育上必要と認められる場合には、昼夜開講制(同一学部において昼間及び夜間の双方の時間帯において授業を行うことをいう。)により授業を行うことができる。
この第六章はかなり重要なところであり、①教育課程の編成、②単位、③授業期間、④授業を行う学生数、⑤授業の方法、⑥成績評価基準等の明示等、⑦FD、⑧昼夜開講制が記載されております。また所属機関の学則を見ていただくと、単位や授業期間などが記載されていると思います。学則や教学を理解するためにも、第6章に何が書いてあるかは知っておく必要があると言えます。今回は上記下線について見ていきます。
大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知):文部科学省
①教育課程の編成
教育課程の編成方針となっておりますが、ここでは教育課程を教育上の目的にそって体系的に教育課程を編成する必要があります。例えばそれを可視化したものとして、カリキュラムマップなどがあります。
では体系化とはどういうことでしょうか?
例えば、1年次の前期に専門科目区分で「〇〇概論」といった科目が配置されていないでしょうか。まず概論科目からはじまり、そこからその分野のいくつかの領域の分野の科目をまるで枝を伸ばすように順番に学んでいく事が体系化のイメージです。
この体系化がなされていない場合、大学や学部等を設置する際に「配当年次に関する考え方について,設置の趣旨を踏まえて説明するか,より体系的な学修となるよう適切な配当年次に改めること」といったような指摘を受けることがあります。
例えば、(資格の)実習科目を4年後期に配置されている場合、それまでに必要な知識がきちんと履修できるように科目の配置がされていなかったりする場合も指摘がされるかと思います。
また、ここでは、専門教育以外にも「深い教養及び総合的な判断力を培い、豊かな人間性」についても書いており、教養教育にも触れられていることに留意しましょう。
<関連した過去記事>
②単位
単位の記載については、学則に記載されている内容にもなります。単位制度の解説について、別記事に書いておりますので、そちらを参照下さい。
また、この箇所には卒業論文当の単位数については、大学が考える負担によって適宜設定できることは押さえておきましょう。
③授業期間
授業期間については、この通りとしか言いようがないのですが、所属機関の学則がどうなっているかを確認してみましょう。
また第二十三条にある柔軟なアカデミックカレンダーについての議論は、当時の議論をおさえておく必要があります。
例えば中央教育審議会大学分科会(第112回)の資料などを見て下さい。
また関連する省令として下記がありますので押さえておきましょう。
知識伝達型の授業から,教員と学生が双方向に意思疎通を図る授業への改善を行うなど,各大学の創意工夫により,学生の主体的な学びを促進するためのものであり,従来から一般的である週1回の講義に限らず,同一科目の週複数回講義等の実施や,講義とフィールドワークを組み合わせた授業科目の実施,サービス・ラーニングの導入等,授業のあり方の多様化を推進するため,弾力的な学事暦の設定を可能とするものであること。
また,学事暦の弾力化を通じて,諸外国の大学の学生や教員との交流が促進されることも想定されること。
大学設置基準及び短期大学設置基準の一部を改正する省令の施行等について(通知):文部科学省
④授業を行う学生数
昔は、500人とか1000人の講義とかありました。私も、教養科目が1000人入る大講堂で行われ、黒板の文字が非常に大きかったのを覚えています。(まあ設置基準の大綱化前は1クラスあたりの人数が人文及び社会の分野は200人をこえないようにともあったのです。)
また設置基準だけではなく、例えば大学等を設置するときに作成する「設置の趣旨」という書類があります。その中に「⑥教育方法,履修指導方法及び卒業要件」を記載する必要があり、「授業方法に適した学生数をどのように設定するのか」を記載する必要があります。例えば講義科目は200人までとか、演習は30人とかを大学が定めて記載する必要があります。(また1クラスあたりの人数が多いと認証評価で指摘されます)
設置基準だけではなく、資格課程科目の場合は、1クラスあたりの人数が定められている場合がありますので、そこは留意が必要です。(特に厚生労働省関係ですね)
⑤授業の方法
ここでは授業の形態だけではなく、例外事項についても記載されています。例えば、高度なテレビ会議システムを用いて授業を行う、他のメディアを利用して教室以外の場所で行うなど、場所の例外事項についての記載があります。
<関連>
平成十五年文部科学省告示第四十三号(大学設置基準第二十五条第四項の規定に基づく大学が授業の一部を校舎及び附属施設以外の場所で行う場合):文部科学省
⑥成績評価基準等の明示等
内容は成績だけではなく、授業の方法も入り、シラバス等に関連する内容という理解でいいかと思います。
<関連>
大学設置基準等の一部を改正する省令等の施行について(通知):文部科学省
また学修の成果に係る評価や卒業の認定は、大学として出した成績評価の基準、GPA、アセスメントなどが該当するかと思います。
⑦FD
「教育内容等の改善のための組織的な研修等」、つまりFDを設置基準で定めることにより、組織的にFDを行うようにという事です。(いわゆるFDの義務化ですね)個人で常に教育方法を改善しているでは、組織的には該当しません。
また近年、補助金の要件や私立大学等改革総合支援事業ではFDの参加率が求められるようになってきました。例えば全員参加でないと要件に満たしませんよという事もあるので注意が必要です。
この章は、学則だけではなく、例えば履修規程などを理解するにも必要な章です。難しい解釈はあまりないのですが、教学を担当しているのであれば、是非とも押さえておいて欲しい章となります。