大学の履修とカリキュラム、文科省との関係について興味深いニュースがありました。
このニュースでは、大学の履修システムの設定不備により、対象の学年(学生)が卒業に必要な科目を履修できていないというものです。その上で、大学は文科省と協議したが「法令上問題ない」とし、それはどうなのかという提起がされています。
あと気になるのは日本大学を弾弓しようという構成であり、制度とインタビューが都合よく使われているように大学で働くものとして思うのです。
大学のミスと用語について
履修制度ではなく履修システムの設定のミス
履修システムのミスというと、履修システムそのものが悪いような印象がありますが、履修の設定上のミスでしょう。文科省は「事務の不備」みたいな言い方をされることがあります。大学で働くものとしてこの言葉はあまり好きではないのですが、今回の一因としてはこの言葉は否定できないでしょう。
今回のケースは履修制度についてが悪いみたいな書き方をされていますが、履修システムのチェック機能がうまく働いていなかったことによるものではなかったのではないでしょうか?
例えば今回のケースだと、教学事務のチェック、学生が体系的に履修できているかのチェック、カリキュラムの理解(特に事務組織)、アカデミック・アドバイザーの登用などいくつも改善手段があるかと思います。
卒業に必要な単位と必要な科目について
卒業に必要な単位というと、今回は科目ベースで記事が書かれているように感じます。
本来であれば卒業に必要な単位を取得できていない学生が続出し、卒業生も出てしまった。
この卒業に必要な単位は各学位プログラムで定めらた卒業要件であると捉えておきます。つまり学生(特に卒業生)は設置基準や卒業要件の一部である124単位以上は修得しているものの、一部条件は満たしていないとも言い換えることができるのかもしれません。
大学設置基準とその対応について
日本大学は文科省と協議をしたとありますが、資格課程でない限り大きな問題かというと疑問があります。
日大が文科省と協議した結果、「法令上問題ない」との回答を得て、学生は追加履修の必要もなくなり、卒業生についても卒業資格は有効となったという。日大側に行政指導などはなされなかったのだが、本当に問題はないのだろう
ここの論点としては大学設置違反なのかと、設置基準違反に伴う行政処分についてです。前者については既に大学としても見解が出されています。
学生は4年間在学して必要な単位数も取っており、学位の授与は大学が決めるルールなので対応に問題はなく、これは文科省も認めている。
さらにインタビューとしてこんな事も紹介されています。
税法・商法については日大側が自分の勝手な都合で、本来自由科目の単位を選択必修科目にするということですから、この二十条に違反する可能性も考えられます。
この点については言っている意味がよくわかりません。本来は学位プログラムの3つの方針に則り、大学がカリキュラムを策定します。大学側は税法や商法について、選択必修科目であるとするならそれでいいのではないでしょうか?
大学のカリキュラムの変更について
気になる箇所として下記があります。
大学のカリキュラムは事前に文科省に届け出なければならず、それを大学の都合ですぐに変えることがまかり通ると、学生と教員に混乱を招きます。今回は結果的に卒業生も含めて追加履修の必要はなくなりましたが、そうなる可能性もあったことを考えれば、事態は重いといえます
大学のカリキュラムは、新しく学部学科等を作るときは設置認可あるいは届出をしています。その後、原則として完成年度まではアフターケア(履行状況等報告書)において状況の報告が必要で、完成年度までは原則カリキュラムを変えることはほとんどありません。
その後はカリキュラム改正は学則変更で届出を行うことになります。引用した部分の文科省の届出とは学則変更を指しているのかはわかりませんが、学則変更だとすると大学の都合で変更することはできるのです。
ただ指摘のように毎年カリキュラムを変更すると学生や教員に混乱を招くことは否定できません。また履修システムの設定もあるため、カリキュラムを変えることは膨大なコストがかかることを忘れてはいけません。
必要なのは大学のカリキュラム見直しの体制や仕組みとその客観性なのではないかと思います。
大学の質保証は文科省のみではなく、内部質保証や認証評価などもある
今回のケースだと文科省は大学設置基準違反だからといって、これぐらいで処分することはないのは当然だと思います。
また大学設置基準は大学として必要な最低限の基準であり、これらを遵守するためには内部質保証の実質化が不可欠なのです。言い方を変えると自浄作用をきちんと機能させるということでしょうか。
さらには認証評価では大学設置基準を満たしているかを確認します。大学(学部等
)の完成年度後は内部質保証と認証評価などの外部評価が重要なのだと思うのです。