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文部科学省からの文書を読むときの心得~文科省文学作品の歩き方:初心者編~

仕事(業界)によって、所轄官庁の動向を気にしているという人は少なくはないと思います。私自身は大学に勤務していますので、文部科学省、内閣府、文化庁(著作権関連)、所属機関の学部で取得できる資格に関係する省庁については動向チェックをしています。

ただこういう所が出す文書というのは、読むのに慣れが必要であるなと感じます。ここでは文部科学省(以下「文科省」)の文書、令和3年3月4日に出された「令和3年度の大学等における授業の実施と新型コロナウイルス感染症への対策等に係る留意事項について(周知)(令和3年3月4日)」(以下「周知文書」)を例として、自分であればどう読むかをメモとして残しておきます。

おそらく今回の文書は、令和3年の「3月文書」とか、「お気持ち文書」とか呼ばれるのでしょうね。

文科省文学作品を読む前の前提として

まずは文科省の文学作品を読む前の前提や土台です。

文書は単独ではなく、背景やその前の文書も読むべし

国から出される文書で、0から1ではなく、1から1´や1から2というものが多くあります。そのため、発出された文書だけではなく、今までに連なる(関係する)文書を読みこんでみたり、関連法令を調べておくことが重要です。

文科省作品の対応や考え方は組織・人次第

文科省が何を書こうが、「そんなのは関係ない」というスタンスの大学もあれば、とりあえず言う事に従っておこうというスタンスの大学もあります。設置形態によっても国との関係性は異なりますし、もしかしたら大学の規模や歴史でも違うかもしれません。

また人によっても同様に考え方が異なります。●●大学がこうだったのにウチは何故〇〇なのかは、大学の風土や組織文化・執行部の考えなどにも左右されます。すべてが右向け右とはならないのです。

文書は必ずアーカイブすること

近年の通知文書などは文科省のホームページ上に残っていますが、リンクが切れたり、たまに削除されていることもあります。PDFで配布されているのであれば必ずアーカイブしておきましょう。

周知文書を読む時の留意事項について

異論は沢山ありますが、ネガティブにある程度文科省の方向を見ている状況という設定で周知文書を読む時の留意事項について、いくつか挙げておきます。

留意しておくことという表現

留意しておくという表現はよく使われます。挨拶とかで「健康に留意する」は使う表現ですね。さて、留意という言葉には日本国語大辞典には次のような意味があります。

りゅう‐い[リウ‥] 【留意】
〔名〕
ある物事に意を留めること。気をつけること。注意。
"りゅう‐い[リウ‥]【留意】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2021-03-05)

「留意しておくよう」にというと、「注意しておくように」よりは柔らかい言い方という印象がありますが、周知文書の中では留意は「こちらとして言うべきことはいったらから、組織内で充分周知をして漏れがないように注意をし、最善を尽くすように」ぐらいかもしれません。言い方を少し乱暴にするなら「絶対忘れるなよ!しっかり覚えておけ!」とかでしょうか。

~をする予定です

周知文書内でさらっと周知だけしておいたから、読んだらしっかり対応するようにぐらいでしょうか。ここに書いておけば、あとで何かをする時の根拠にもなります。

~お願いいたします。

一言「拒否は認めん」。お願いしますだから、こちらも考えて結論を出すのではなく、結論ありきです。

「努めること」「望ましい」はやっていて当然

以前、文科省に補助金の構想や書類の相談にいった事があります。その補助金はいくつか申請要件があり、「~望ましい」という要件がありました。ある法令が根拠となっている努力義務の事項ですが、当時の担当者からは努力義務であっても「やっていて当然」「数字は100%であることは当然」と言われたことがあります。

同様に努めることは最大限の努力(議論含む)をすることや、「望ましい」はもちろん出来ているよね?と言われていると考えることもあります。

~の例が見られる

これも簡潔に。

「同じ大学として〇〇大学は出来ているのに、なぜ貴学はできていないのか?(できないのか?)」

曖昧な表現こそ注意する

曖昧な表現だと後でいくらでも再解釈が可能です。もしかすると担当者によって解釈が変わる可能性もあります。曖昧な表現はこちらも解釈がしやすいのですが、電話で先方に確認して「あの時はこうだったではないか」と言っても「今はこうです」で終わりです。

おわりに

周知文書は出し、大学側に送られると何故それをやらないのかといった話は大学側に移ります。ただ大学も全てが同じではなく、設置形態、規模、学部構成など様々です。大学としては、周知文書について様々な考えがあるかと思いますが、今回の周知文書は時期としては数か月ほど遅いですし、今の大学が出来ることを社会状況を見ながら粛々とやっていくしかなさそうです。