新型コロナウイルスの感染拡大により、殆どの大学では授業を対面授業からオンライン授業などといった対応を行っています。
今は、現状の課題、特に学生に不利益にならないように教育や学生支援・経済的支援などを行う必要があります。
しかし、(いつになるかわかりませんが)同時に余力のある時に今後同じような状況、また今回を機に変わる教育も見据えて、大学として何ができるか、何を検討するか、何を重点的に予算を配分していくかも考えていく必要があります。
- 遠隔授業の導入について
- BYODの導入
- 入学前教育における情報教育の是非
- 大学のシステムの全てのレスポンシブあるいはアプリなどの対応
- 教室の規模や設備
- 管理側のオンライン化〜電子決済の導入の検討〜
- 寄付やファンドレイジング
- 大学を取り巻く業者や働く人はどうするか?
遠隔授業の導入について
遠隔授業については、大学設置基準第25条に次のように規定されています。
また遠隔授業については、60単位を超えないものとすることが大学設置基準に定められています。
なお、2020年度において、かなりの大学が遠隔授業を実施していますが「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&Aの送 付について(4月 21 日時点)」では、本来対面授業だったものを遠隔授業として行う場合は60単位の上限に含まないと問17でに書いています。
その場合は大学として「上記特例的な措置の面接授業以外の授業の成績評価を行う場合であっても,当該授業の実施状況及び成果を確認した結果,当該授業科目の到達目標を十分に達成できていることに加え,面接授業に相当する教育効果が認められる必要」を確認する必要があります。
なお、確認する事項としては下記の3点です。
(1)授業担当教員の各授業ごとの指導計画(シラバス等)の下に実施されていること
(2)授業担当教員が,オンライン上での出席管理や,確認的な課題の提出などにより,当該授業の実施状況を十分に把握していること
(3)大学として,どの授業科目が遠隔授業で実施されているかなど,個々の授業の実施状況について把握していること
例えば各教員への調査や(実施していれば)授業アンケートなどを活用して組織として確認を行い、議事録を作っておくと安心かと思います。
さて、2020年度の特例はともかく、大学として今後は遠隔授業についても慎重に検討しなければならないと感じています。既に同志社大学ではインタネット授業の取組を行っており、オンデマンド配信やeラーニングを活用しています。
オンライン授業は導入費用がかかるなどもありますが、大学として例えば学部横断型の授業を一部遠隔授業をすることによってノウハウの蓄積や緊急時における対応などもしやすくなるかもしれません。
また2021年度以降は対面授業を遠隔授業で行った特例措置があるかは分かりませんので、同時に学則に卒業に関する事項に遠隔授業の単位が含まれることに関してきちんと入れていくことも必要です。
プラットフォームやコンソーシアムによる遠隔授業と単位互換
遠隔授業ができるようになると、コンソーシアムやプラットフォームなど大学間で行っていた授業の相互履修などがやりやすくなります。大学がお互いに科目を開放しても学生は他の大学に行く時間だけロスとなり、よほどの魅力がないといけませんでした。
遠隔授業として実施しているものが開放されると、単位互換などはやりやすくなります。(その際は、CAP制度なども合わせて検討しないといけなそうですね)
BYODの導入
BYOD (Bring your own device、ビーワイオーディ)とは自分のデバイスを大学に持ち込み、それを使うことをさします。なおBYODには、大学で端末を配布する場合、推奨パソコンやスペックを示す場合などいくつかパターンがあります。
今回、オンライン授業ではスマホしかない学生に対しても先生方は苦労して授業を設計しやられています。もしパソコンがある前提であれば、名古屋商科大学のようにやり方がだいぶ違ったかと思います。
ただこれは、大学あるいは学生に負担がかかる話なので慎重に検討しなければならない事案です。また同時に大学の情報環境の在り方もあわせて検討が必要です。
なお、別問題として学生の個々のインターネット環境についても何らかの方法で担保しなければなりません。
入学前教育における情報教育の是非
今回、3〜5月という時期で特に大変なのは新入生ではないでしょうか。大学のシステムについてあまり説明をうける機会もなく、突然にオンラインでこれをやれと言われても困惑されたことと思います。
また大学としては既に高校で情報の授業を受けていて、一定以上の情報スキルを持っているという前提でしたが、実はスマートフォンを使うことには長けていても、パソコンの所持率はあまり高くない、さらに実はメールを送ることもあまりないなどの状況もありました。
最近、思うのは入学前教育で情報リテラシーや情報倫理についても少しやる必要があるのではないかということです。なお、東洋大学や実践女子大学では入学前にやられているようですね。
大学のシステムの全てのレスポンシブあるいはアプリなどの対応
インターネットにあるサイト、もちろん大学のホームページも大部分はスマートフォンやタブレットに合わせた表示が出来ます。
しかし、実はシステムだけではスマートフォン対応でないという大学ありませんか?ここもAndroidやiPhoneなどの環境から確認しないといけない部分です。特にPCやがない現状だと、早めに対応する必要があるように感じます。
教室の規模や設備
昔は大教室に学生が大勢入り、授業を受けるといった光景はよくあるものでした。私も大学生自体は800名以上入る教室で一般教養の授業を受けた記憶があります。さて、近年では、所属機関においては例えば300人以上の規模の授業はなくなりました。それに伴い、新しい建物を作るときも教室は小教室や中規模の教室が多く作られています。
しかし、現状は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、対面授業が始まったとしても大教室は少なく、履修者の間をあけて授業を実施することはかなり難しいです。そのため、1つの授業を2つに分けるなどいくつかの手を打たねばなりません。
また教室には教員がPCや書画カメラなどを用いて授業をできるようになっていますが、今後は教室間のリアルタイムの配信や、録画できる環境などを揃えていくことも検討しないといけません。
管理側のオンライン化〜電子決済の導入の検討〜
大学はまだ紙文化が根強く残っています。特に決済については膨大な量があり、在宅ワークではどうしようもない部分があります。
電子決済導入については検討の余地がありますが、お金がかかることもあり、優先度は教育研究活動の支援よりだいぶ下になります。
また他のブロガーの方は電子決済の導入大学について一覧にしてくれています。
寄付やファンドレイジング
様々な学生の支援策を打ち出し、原資をどうするかは経営として悩みどころではあります。既に新型コロナウイルスの寄付金の募集をしている大学もありますが、支援自体、特に家計が急変した学生を対象に行う支援は一過性ではなく持続的に行っていく必要があります。
そのため、持続的な寄付金募集やファンドレイジングなどもやっていかねばなりません。言うまでもなく教職員にも寄付金のお願いはきます。寄付をするかどうかは個人の自由ではありますが。
大学を取り巻く業者や働く人はどうするか?
大学は入校制限があっても、施設の維持のために清掃や保全ははいっています。清掃などは外部委託を行っている大学もあるかと思います。
ただ学食などは、ずっと閉まっていますし、そこで働く人も仕事がほとんどないでしょう。また大きな大学は8月は学食は開いていることが多いですが、小さい大学だと夏休みは開いていません。ただ今回で夏に対面授業をすることになると、学食を開けてもらったりなどのお願いもしないといけません。