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教学マネジメント指針から見る、今後大学が検討及び確認する事項のメモ

教学マネジメント特別委員会第11回が2019年11月21日に開催され、資料として「教学マネジメント指針(案)」が示されています。

これは指針であり、マニュアルではない、各大学で独自の文化も鑑みえて「学修者目線」の教育を行うようにとの事ですが、今後は補助金などにもこの内容が波及していくのだろうなと感じます。

そこで、個人的にまとめたメモを公開しておきます。なお、今後教学マネジメント指針の修正や正式版が出ると内容が一部変わることがあります。

教学マネジメントと内部質保証・自己点検評価

大学教育の成果を点検・評価しているか

大学で示しているディプロマ・ポリシー等について、学生のアウトカム(何が出来るようになるか)を明確化にしておくとともに、どのように把握するかが定められているかを確認する。

また3つの方針に示した内容と、実際に教育成果がどうかをレベル(大学・組織・教員や授業)に点検・評価し、大学の教学マネジメント体制や内部質保証体制により、改善を図る。

関連 令和元年度 私立大学等改革総合支援事業タイプ1 設問2

大学教育やその成果に関する情報を集め、定期的に情報を収集し、点検する体制を構築しているか

該当する学部等やIRが集めた情報を収集・分析することによって、学位プログラムごとに毎年度点検評価をする体制と評価を行っているかを確認する。

なお、学位プログラムであり、決して学科単位とは限らないことに留意する。例えば1学科に複数のコースがあり、分野や取得できる資格が異なる場合はそれぞれ点検評価を行う事も考えられる。

点検評価にあたってはメタ的な評価も重要であり、大学レベルの点検・評価組織や評価室が、該当の評価についてメタ評価を行う。

関連 令和元年度 私立大学等改革総合支援タイプ1 設問③・⑲

分野別参照基準やモデルコアカリキュラムの活用

日本学術会議では分野別参照基準等の公表がされている。また特に資格課程ではモデルコアカリキュラムが定められている。教育課程を点検・評価、あるいは改訂するさいにこれらをどう活用したかが問われる。また他大学の同じ分野において、ベンチマーク大学(学部)を情報収集して、選定しておく必要がある。

これらはIRコンソーシアムなど大学間連携の取組みがあれば、対応できる可能性があるかもしれない。

学位プログラムの構築に関して、ふさわしい体制を整えているか

令和元年度の私立大学等改革総合支援事業では、教学マネジメント体制の構築として、副学長・学長特別補佐や学部長、さらには専門的な支援スタッフからなる体制を整えている必要がある。

ここで学位プログラムに関して3つの方針の適切性の点検・評価や策定を行うとすれば、対応できると考えてもいい。

なお、専門的な支援スタッフは、カリキュラムコーディネーターなども考えられるが、令和元年度の私立大学等改革総合支援事業の設問からはなくなっている。(改革総合支援事業でのカリキュラムコーディネーターはハードルが低く、該当する研修に出ているか、高等教育の学位+αでOKになる場合があった)

ただ大学として、カリキュラムコーディネーターもしくは準ずる人は必要であり、養成が課題である。

関連 令和元年度 教育の質に係る客観的指標 設問②、令和元年度 私立大学等改革総合支援事業タイプ1 設問②

学位プログラムは社会(産業界・国際社会・地域社会)のニーズを捉えているか

近年、認証評価とは別に行う外部評価を行う大学をよく聞く。おそらく理由として、平成30年度までの私立大学等改革総合支援事業や令和元年度の教育の質に係る客観的指標に外部者(大学以外の地域社会や産業界)からの意見をふまえた点検・評価を行うことが求められているからと考えられる。

地域社会や産業界からの意見を大学教育(カリキュラムや教育方法、評価等)にダイレクトに反映させることは賛否があるし、これらの外部評価は分野別(外部)評価とは性質が異なるものである評価担当者は捉えておく必要がある。

関連 令和元年度 教育の質に係る客観的指標 設問①

授業科目や教育課程について

3つの方針等を踏まえ、体系的な教育課程を編成する必要がある。分野別参照基準やコアカリキュラムも踏まえて、大学や学位プログラムとしてどうするかは検討する必要がある。

カリキュラムマップとカリキュラムツリーの策定と公表

カリキュラムマップは、2040年に向けた高等教育のグランドデザインでは、履修系統図として説明されている。

履修系統図

学生が身に付けることが期待される知識・技能・態度と授業科目との間の対応関係や学修の道筋を示した図の総称。学生と教職員がカリキュラム全体の構造を俯瞰できるようにすることで、体系的な履修を促す意図を持つ。カリキュラム・マップ、カリキュラム・チャートとも呼ばれる。

 なお、既に教育体系図は公表が求められているが、教学マネジメント指針では作成を通じて、教育課程や各授業科目の関係、履修規程に定めている事項等を検証する必要がある。

現在求められているのは公表のみだが、今後はカリキュラムマップやカリキュラムツリーの点検・評価と各授業科目の点検・評価を個別教員にまかせるのではなく、組織としてどうするかも求められる可能性がある。

関連 令和元年度の教育の質に係る客観的指標 設問⑧

ナンバリングについて

該当の授業科目の教育課程での位置づけや水準を示すためにナンバリングがあるが、これらの実施も求められている。むしろ、教育の質に係る客観的指標では既に設問として存在している。

しかしナンバリングの付け方もいくつかあり、単に番号だけつけてなんちゃってナンバリングとして公開すると、後での変更も非常に面倒である。
ナンバリングを検討していく過程も重要であり、教育課程の点検・評価と同時に行うほうが望ましいのではないか。

関連 令和元年度の教育の質に係る客観的指標 設問⑧・⑩

履修指導の実施について

つまみぐい履修で単位を寄せ集め、卒業することはあまり推奨されていない。ただ、近年は履修系統図や履修モデルの提示などで、DPを達成するための道すじは出来ている。

これも良いか悪いかは賛否あるし、その学部の分野によっても考えは異なる。ただ学生に履修体系図や履修モデルを示していても、履修指導の重要性はある。

履修指導は誰の仕事か?教員にアドバイザーとして、全面的にまかせる大学もあれば、職員も入る大学もある。また専門的なスタッフとしてアカデミックアドバイザーを大学としておくことも考えられる。むしろ今後は専門職にまかせていいのはないか?

また履修指導は成績が良くない学生に対して行うだけではない。単位の履修上限制度、所謂CAP制度はGPAに応じて緩和することが一般的である。

ただ認証評価においては基準GPAの根拠が今後求められるかもしれない。また基準GPAに達した学生を機械的・システム的に緩和するのではなく、教学マネジメント指針では履修指導を行い、学生自身に無理がないか適切かどうかを確認する必要がある。

関連 令和元年度の私立大学等改革総合支援事業タイプ1 設問⑧シラバス等の相互確認やチェック

シラバスの相互チェックについて

2018年度までは私立大学等改革総合支援事業等において、第三者によるシラバスチェックが求められていた。しかし令和元年度の私立大学等改革総合支援事業ではその記載はなくなっている。

ただカリキュラムツリーやカリキュラムマップでも示しているように、授業が教育課程の中でどう位置付けられているかを踏まえて、互いに到達目標や授業内容などが被らないように科目間の連携も踏まえた、(シラバスチェックではなく)相互チェックを今後行うことが補助金等で求められるかもしれない。なお、シラバスに入れなければいけない項目は今までにも補助金等で示されている。

関連 令和元年度 教育の質に係る客観的指標 設問⑩

学修成果や教育成果

GPA制度の確認と課題

教学マネジメント指針ではGPAの信頼性確保のために、算定方法や分布状況を公表することが必要とされている。

算定方法とは、Sであれば4点…とGPを定め、しかるべき計算方法を示すことだが、大学あるいは学部によっては、GPAの計算に入れない科目がある場合や、履修辞退制度がない大学もある。このあたりはブラックボックス化にしておくかどうかといった懸念点がある。

教学マネジメントを支える基盤

教務事項に係る職員の研修の実施

何故、教務事務なのかといった疑問はあるが、教学マネジメント指針では3つの方針の共有や法令や規程に基づく制度理解などがあげられている。これらは教務担当部署に関らず、ふれておくべき課題ではあるが、これらについては学内あるいは大学間共同で出来るかは検討が必要。地域によっては教務事務担当者の連絡会とかあるので、そこで出来るか?またプラットフォームなどは活用できるかもしれない。

FDやSDの効果測定

政策の効果をきちんと測り示さないのに、なぜFDやSDの効果を測れと言われるのか?そしてどのように測るかは難題である。知識や技能の修得度合いや調査を行うとあるが、より負担増ではあるなと思う。そもそも、FDやSDを企画立案できる専門的な教職員が必要といっても、小規模大学にそれを求めるのはかなり大変なので、大学間やプラットフォームで融通するのが最適かもしれない。

関連 令和元年度 教育の質に係る客観的指標 設問⑤・⑥